わぁ、鳥!   作:ゆーり

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ワールドトリガーって会話を回す役割のバカがあんまりいないのにキャラ同士のやり取りがすごくいいよね。と思ったのでバカを投入してみました。
※本編の約1年前。クラスメイト設定はてきとう。


第一話「栞」

「ふわぁ~。眠い」

 

 トリオン体の便利さに依存しすぎの生活はやっぱよくないね。肉体の限界を見誤っちゃう。

 

「朝っぱらから豪快なあくびだね~清志くん。夜更かし? 学生の本分は勉強だよ?」

 

 クラスの席に着くと隣の席の宇佐美が声を掛けてくる。メガネが似合う知的なできる女である。

あるのだが……。

 

「ごもっともな意見だ。反論のしようもない。だが、やしゃまるシリーズ作成に集中しすぎて寝不足になる栞ちゃんに指摘されるのは納得いか~ん」

 

「ふふふ、私は寝不足でも公衆の面前ではちゃんと取り繕える淑女だからね。成績も問題なし!」

 

 淑女……。淑女?いやまぁ間違っているとは言わんが当たってもないような。ボーダーの女連中は天使(主観)だったり女傑だったりアマゾネスだったりが多いから宇佐美は淑女寄りではあるのか?

 

「ほぅ、このわたくしこと竹尾清志に頭の良さを語ると? よろしい、ならば今日の小テストで勝負といこうではないか」

 

「いや特に争う気はないんだけど。そもそも今日小テストあるなんて言われてたっけ?」

 

 宇佐美が淑女であるか否かは人によって意見の分かれるところであろうが、あまり深く突っ込むと戦争が起きかねないので思考を中断して話題を変える。迂闊なこと言うと別のメガネに脳天ぶち抜かれそうで怖いし。

 

「高校入学から早半年。だいたい先生方の傾向も掴めてきた。そろそろ数学の池平が抜き打ちを企んでいる頃だ。しかも前回の小テストでボーダー組が余裕の満点だったから、一問は嫌がらせの高難度を用意してるとみた」

 

 良い先生なんだけど生徒に簡単に満点取られるのは悔しいみたいなんだよな。本部隊員で時間が合った時は勉強会して切磋琢磨したりこっちも裏で頑張ってるんですがね。

 

「その傾向と対策を練っちゃう分析癖は元A級アタッカーとしての習性? 学生生活で活用するのもどうなのよ」

 

「俺は孤高のロンリーウルフだからな! 状況把握と分析を怠ると簡単に詰んでしまうのだ」

 

「前も大概だったけど今は本当に一人だもんねぇ。いい加減オペレーターだけでも見つけてランク戦に戻らないと降格させられちゃうんじゃない?」

 

 半分冗談のように宇佐美が言ってくる。とは言ってもな……。俺の元オペレーターはどこかの誰かさんに取られて返してくれないし、経験の浅い子に担当させると変な癖付かせるからってNG出されてるからなぁ。

 

「あ、じゃあ玉狛第一にくる? 迅さんが抜けてるから枠はあるよ。清志くんなら小南以外は文句ないと思うし」

 

 あの濃い面子から認められてるのは嬉しい気もするが、同類扱いされるのはね。それに……。

 

「城戸派急先鋒の俺を玉狛に誘うか普通? 城戸さんが玉狛潰すってなったら最初に投入されるのたぶん俺よ?」

 

「あー、迅さん相手に持久戦できる人なんて他にいないし手放さないか。それに長年のぼっち族がいきなりアットホームなうちに来たら萎縮しちゃうもんね」

 

「だまらっしゃい! 誹謗中傷を口にするのはそのメガネか! 没収すんぞ!」

 

 まるで俺が誰からも隊を組んでもらえないから今も一人でフラフラしているかのような言い方である。悪口を言う子にはお仕置きが必要だ。悪を断罪すべくメガネに手を伸ばす。

 

「やめろ!! 人前でメガネ外されたら私もう学校に来られなくなっちゃうでしょ!」

 

 宇佐美が突如豹変して大声を上げる。おいおい、クラスのほとんどが何事かとこっち向いてるんですが……。

 

「そのメガネはお前の何を守ってんだよ!? 魔眼でも封じてんの??」

 

 実は生活に支障をきたすサイドエフェクト持ちでメガネがそれを軽減させてる、って事があり得るから迂闊だったかもしれん。

 

「ふっ、持たざる君には分からないことだよ。いつか君がこの"高み"まで登ってくるのを待ってるぜ」

 

 あ、これ大した理由ないやつだわ。いやメガネ一つでここまで言えるこいつは大した奴かもだが。

 

「メガネを持ってる側扱いで"高み"って表現するやつ初めて見たわ。……んじゃあ、俺が小テストの点数負けたら伊達メガネの民になるわ。栞ちゃんが負けたらコンタクトの民になってね」

 

 罰ゲームの内容を伝えるとすっげぇ難しい顔して考えはじめた。俺が食堂のA定かラーメンかで悩んでる時みてーだ。

 

「ぐぬぬ、メガネ人口を増やす絶好のチャンス。だが負けてしまえば剥かれるという露出強要。どうすれば……」

 

「露出強要!? その透明なレンズは衣服より比重大きいの?! あとその言い方だと裸眼とコンタクトが露出狂みたいだろ!」

 

 あまりの暴論に驚愕して訂正を求めると、宇佐美は席から立ち上がって目薬を注しはじめた。急にどうしたんだこいつ?

 

「うわ~ん歌歩ちゃ~ん、清志くんが小テストで負けたら罰ゲームとして脱げって脅してくるよ~」

 

「おい! バカやめろ! 冗談抜きで本当に学校に来られなくなるだろーが!」

 

 嘘泣きしながらでけぇ声でよりによって三上に泣きつきやがった!メガネを脱ぐと表現するんじゃねえ!宇佐美に抱き着かれた三上が絶対零度の視線でこっちを見てくる。へへっ、久しぶりにブルっちまったぜ。こんなにも体が震えるのは真木に「理佐ちゃん今日も可愛いね!」って声を掛けたとき以来か?

 

「奈良坂ァ! 辻ァ! 力貸せ! あの女を止めねーと俺が高校生活からベイルアウトしちまう!」

 

 クラスの頼れる実力派キノコと初心を装った女キラー(偏見)に助太刀を要請する。三上はこのクラスの陰の実力者。だがこちらもA級の実力者が三人。三vs二なら、勝てる……!

 

「くだらないジョークを言う余裕があるなら一人で大丈夫だろ」

 

「巻き込み事故やめてよ! 絶対に関わらないから!」

 

 奈良坂はすかした面してこっちを見向きもしない。辻ちゃんはすげぇ嫌そうな顔で拒否ってきた。クソッ!なにがA級だ!こんど二宮隊の冷蔵庫のジンジャエール全部ドク〇ーペッパーに入れ替えてやる!

 

「メガネはすべて敵だ……!! 緊急脱出!!」

 

 そう捨て台詞を残して男子トイレに避難する。

 おかしい、朝のHR前の朗らかな会話だったはずなのに、なぜ俺が犯罪者みたいに逃げねばならんのだ……。

 

 




竹尾 清志PROFILE1
仲の良い隊員は三輪と烏丸。嫌いな隊員は風間さん。
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