わぁ、鳥!   作:ゆーり

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サブタイトルを「斧」か「桐」で悩みましたが、小南の魅力は斧ゾネスという点ではないという真理に到達できたのでこちらにしました。


第十話「桐」

「きよしか、ひさしぶりだな」

 

「おっす陽太郎。ちょっと見ない間にデカくなったな。学校の用事で栞ちゃんに会いに来たんだけどいる?」 

 

 玉狛に来たの何時以来かなー。前来た時はゆりさんが誰のお嫁さんか選手権で俺と陽太郎で覇を競ったんだっけ。

 

「おれのせいちょうはとどまるところをしらない。栞ちゃんはいないぞ。かいだしだ。それと、おれのことはキングとよべといっているだろう」

 

 なーにがキングじゃお子様め。王というのは俺のような頭脳明晰、容姿端麗、カリスマ持ちのことを言うのだ。

 

「じゃあ、陽太郎は俺のこと義兄さんて呼ばなきゃな? 瑠花ちゃんのことは俺に任せてくれていいぞ」

 

「やれ、らいじん丸」

 

「その犬、お前の言うこと聞いたことないじゃん。俺が華麗に瑠花ちゃん落すのをそこで指を咥えて見ていたゴフッ!!」

 

 なんで今日に限って言うこと聞くんだよ!しかも尋常じゃなく痛い。というか攻撃時に異常な赤さだったが、本当にこれ犬なのか?

 

「レイジがいっていた。おまえはきけんなそんざいだって」

 

 誰が危険じゃあの筋肉め。自分は二の足踏んでるのに、俺がゆりさんにアタックしまくってるから焦ってるだけだろ。あ、踏んでるのはニノさんの足じゃないよ。え、聞いてない?

 

「ちょっと陽太郎! なんでソイツを中に入れてるのよ!」

 

「小南じゃん、久しぶり。あ、お前京介に余計なこと吹き込んでるだろ。やめろよなそういうの」

 

 京介は素直なやつだから玉狛の先輩たちにいびられてないか心配だ。

 

「馴れ馴れしく話しかけないでちょうだい。あたし、あんたのこと嫌いなの」

 

「え、俺は小南のこと大好きなのに」

 

 まさかいきなり嫌いと言われるとは思わなかった。しょんぼり。

 

「は、はぁ!? ど、どうせあれでしょ、女の人なら誰でもいいって告白して回ってるやつでしょ!」

 

 そんな風に思われてたのか。玉狛派閥とは思想の問題もあって深い付き合いはしてないから仕方ないか。

 

「告白して回ってるのはその通りだけどな。誰でもいいってことはないぞ。それに他の娘に告白していたとしても、俺が小南のこと好きなのが嘘にはならないじゃん?」

 

 あ、顔真っ赤にしてわたわたし始めた。これは脈有りだな。もちろんわかってたけど。

 

「――――、ち、ちなみにどこら辺が好きなのかしら」

 

「顔が可愛い、動きに愛嬌がある、一緒に話してると反応が大きくて楽しい」

 

 小南って普通に可愛いし、たぶんモテるよな。女子高とボーダーと習い事って環境で同年代男子との接点が少ないから、実態としては特に浮いた話がないのか?

 

「ちょ、ちょっと陽太郎、こいつ本当にあたしに気があるんじゃない!? 聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい、あたしのことよく見てるわ!」

 

「おちつけこなみ。レイジが『清志は誰にでも同じことを言っている、信じるな』といっていた。これはわなだ」

 

 あの筋肉は俺になんの恨みがあるんだよ。……いや恋敵だったな。

 

「なっ! だ、騙したのね! 誰にでもこんなこと言ってるなんて、女の敵! すけこまし! 脳みそ下半身!」

 

 脳みそ下半身てどんなクリーチャーだよ。普通に頭に付いてるわ。……いや、見たわけじゃないから下半身にあるかも知れんけど。そんな風に言われるのは心外だ。

 

「確かに他の女性に可愛い、愛嬌があると言ったことはある。実際そう思ってるからな。でも、やっぱり小南が一緒に話してて楽しい女の子だよ。男友達ならそういうやつが多いけど、女の子はまた別だからな」

 

 恐ろしいことなのだが、小南はボーダーの中で手が出るのが早いほうではない。少なくとも俺にとっては。一部の連中は俺が視界に入ると腰を落とし拳を握る。戦闘員よりオペレーターのほうが好戦的とか世も末だろ。目が合っただけで戦闘態勢に入るんじゃねぇよ、お前らはポケ〇ントレーナーか。

 

「しょ、しょうなんだ……」

 

「うごけ、らいじん丸! こなみがピンチだ! このままではまけてしまう!」

 

「ああ、俺の行動に嘘なんて一つもない。俺の目を見てくれ。これが女の子に適当なこと言ってるやつの目か?」

 

 近づいて顔を寄せると小南があわあわしながら後ろに下がりだしたが、そっちは壁だ。

 

「あ、ああああのね! わ、わかったから! こういうのは勢いで決めることじゃないと思うの! 一旦落ち着きましょ?」

 

 俺はずっと落ち着いているぞ。ただ、小南に嫌われているという事実をなんとかしたいだけだ。

 

「あわわわわわわわわわ」

 

 逃げて有耶無耶にされると困るので、壁に手を当てて逃げ道を塞ぐ。なぁ小南、本当に俺のことが嫌いなのか?

 

「ただいまー、いやー今日スーパーのセールだったよー。買い過ぎちゃった」

 

 あ、宇佐美が帰ってきた。やっと用件が済ませられる。

 

「あれ、清志くん。珍しいね玉狛に来てるなん……」

 

 いきなり無言になって荷物置いて端末をだし始めた。こいつ毎回やることが唐突だな。

 

「激写。玉狛支部にて現攻撃手一位と元A級隊員が真昼間の逢引! 歌歩ちゃんに知らせなきゃ」

 

「この展開二回目じゃねぇか! おい小南、あいつを止めるぞ! このままじゃ俺が人生からベイルアウトしちまう!」

 

 というか独立して間もない支部でそんなことがあったらお前らの運営にも支障でるだろ!?こいつ自爆覚悟の愉快犯か?! 

 

「ち、ちがうのよ宇佐美! ちょっと話してたら距離が近くなっただけ、それだけなの! お願い歌歩ちゃんにだけは言わないで!」

 

「ああ、ちょっと小南と心と物理の距離が近くなっただけだ。誓って疚しいことはない」

 

「あんたは口を閉じてなさい!」

 

 ひでぇ。今は共に苦難に立ち向かう仲間だろ?力を合わせてこの邪悪を打ち払おうぜ。

 

「そうなんだ。じゃあ、歌歩ちゃんにこの写真送って判断してもらうね」

 

「悪い小南。俺ベイルアウトして本部に帰るわ。言い訳しておいてくんね?」

 

「ふざけんな!」

 

 なんて口汚い娘なのかしら。しかしどうすれば……。最近、歌歩と対峙すると一瞬でトリオン体が破壊されるし、サイドエフェクトも反応してくれないんだよな。

 

「いやー、私もね? 皆が争うところなんて見たくないんだよ? けど歌歩ちゃんに隠し事もしたくないからなー」

 

 こいつ、楽しんでやがるっ!

 

「取引だ。望みを言え」

 

「ふふ、物分かりの良い子は好きだよ?」

 

 ……ちくしょう。近界民と仲良くしよう、なんて言ってる玉狛はやっぱり敵だ。




清志は別に付き合ってくれと告白してないし、小南が一番とも言ってません。
ただ仲良くなりたかっただけです。

清志以外にオペレーターが手が出てしまう隊員はほぼいません。
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