わぁ、鳥!   作:ゆーり

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第十二話よりも前の時系列の話です。
順番に行ければ良かったのですが、誕生日には勝てませんでした。
とんこつだと久留米大砲ラーメンが好きです。


第十三話「藍」

「はぁー、何がダメだったんだろうか」

 

 ザキさんからお出掛けのアドバイスを貰えたから未来は良い方向に確定したはずなのに……。当日のイメージを固めるため綾辻に練習相手をお願いしたら『今の時点で既にゼロ点かな』と笑顔で断られた。これが『勝敗はそれ以前に決まっている』というやつだろうか。……このセリフはダメなやつだわ。これ言う相手に会ったらどちらかがこの世から消えるまで戦う事になる。

 

「相変わらずしけた顔してますね。こっちに伝染するので今すぐやめてください」

 

 落ち込んでトボトボと本部の廊下を歩いていると、木虎が呆れた表情で話しかけてきた。相変わらず言うこときついね君。

 

「おつかれ、木虎。嵐山隊に正式に入隊したんだって? あそこのメンバーは皆良い人たちだから、気負わずにな?」

 

 まだ隊に入りたてなのに、既に嵐山さんからはエースとして何ら不満なしと連絡があった。まぁ、おれがいろいろとしこみましたから。

 

「あなたにそんな心配をされる謂れはありません。私は私のやるべきことをやるだけです」

 

 相変わらず自身満々そうな面である。もっぺん足ガックガクにしてやろうか。嵐山隊はともかく、この態度で他の諸先輩方と上手くやっていけるのか心配である。

 

「あ、そうだ木虎。今度の土曜日、予定空けておいて」

 

「ま、またですか! もう最低限は仕込んだからって言って終わりにしてくれたじゃないですか! 毎週毎週、本部に泊まるって言うから家族から変な目で見られてるんですからね!」

 

 ちょっと怯えたような顔で文句を言ってきた。そっちの意味でもまだ最低限だから、教えることはいくらでもあるんだけどな。

 

「いや、訓練のことじゃなくて。昼頃に一緒に出掛けよう。そうだな、万能手初心者コース卒業祝いということで俺がとんこつラーメンを奢ってやろう」

 

 とんこつラーメンがダメな理由を確認しておく必要があるしちょうどいい。

 

「……え? は? なにを言ってるんですか?」

 

 なんか欠片も理解できてませんって感じだな。そんなにおかしなこと言ったか?

 

「あなたにそんな配慮があったことに驚いています。お祝いに女性と二人で行く店にとんこつラーメンを選択するそのセンスに愕然としています。あとアレ、初心者コースなんですか? マスター級にも何本か取れるようになってきたんですが……」

 

 やっぱり、とんこつラーメンはダメなのか……。いや、これはお祝いというシチュエーションの問題か?

 

「見下すつもりはないけど、マスター級は最低条件だ。A級で、しかもエースを名乗るなら一万点を超えろ」

 

 黒トリガーでもない限り個の力だけでは覆せないものを持っているのがA級部隊だが、それも細分化していけば個の集合体だ。同格以下に安定した勝利を得られる自力と格上相手に勝利をもぎ取る切り札の考案。どっちもやっていかなきゃな。まぁ、一万点超えが見えてくると超えてる連中が喜んでポイント奪いにくるから大体の人は叩き落されるんですけどね。

 

「はい。分かっています。今の私ではチームとしての戦績はともかく、個の力ではまだ劣っている」

 

 ん?やけに素直だな。訓練中も生意気な態度だけは崩さなかったのに。

 

「事実を受け入れないと先に進めないので。あなたのことを認めたわけではありませんから」

 

 ……うーん、木虎とは第一印象からして良くなかったみたいなんだが、最近はそれ以外にもなにかありそうなんだよな。

 

「なぁ木虎。お前、俺に何か聞きたいことがあるのか?」

 

「……朴念仁のくせに、そうやって妙に鋭いところが嫌いです」

 

 俺の嫌いなところは聞いてねーよ!

 

「……竹尾先輩は、烏丸先輩の師匠なんですか?」

 

「ん? まぁ、そうだな。と言っても中遠距離について教えたのはレイジさんだけどな。京介は射手じゃなくて銃手だし」

 

 俺もレイジさんも、継戦能力に重きを置いてたり似てる部分はあるのだが、それでも違う二人だ。その二人の指導内容をそれぞれちゃんと吸収してオールラウンダーとして成立させるんだから京介は優秀な子だよ。

 

「ず、随分と親しそうに語るんですね。竹尾先輩は城戸派で烏丸先輩は玉狛なので派閥的には距離があるのでは?」

 

 あー、それなー。なんで玉狛に行ったんだろうな。太刀川隊の件で本部に居づらかったって訳じゃないみたいだけど。教えてくれないんだよな。

 

「派閥問題は別にして、俺と京介は家族ぐるみの付き合いがあったからな。今でも時々お邪魔させてもらってるよ」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

 なんかすごく食い付いてきたな。もしかしてこいつ、京介のファンか?氷見のやつもだけど良い趣味してるな。

 

「えーと、その、烏丸先輩の好物とか好みのタイプとか、そのぅ」

 

 なんかもじもじし始めた。すげー似合わねーな。

 

「うるさいですね! 知ってるのか知らないのかどっちなんですか!」

 

「俺はハンバーグが好きだな」

 

「去年の今日の天気よりどうでもいい情報ですね。脳の容量と時間の無駄なのでさっさと喋ってください」

 

 俺もまさか菊地原より失礼かもしれない後輩が出てくるとは思わなんだよ……。

 

「とんかつが好きだな。あとは特定料理に限らず大人数で取り分けられるタイプの料理」

 

「な、なるほど。ちなみにその、好きなタイプのほうも分かったりします?」

 

 どうなんだろうなー。昔は真面目で落ち着いたやつだったけど、今はだいぶ茶目っ気もあるし、話してて反応が楽しいやつとかじゃないか?

 

「うっ、私も多少はこの人みたいにバカになるべきか、いやでもそれは……」

 

 失敬な悩み方やめろ。多少はバカになった方が人生楽しいのは否定しないけどな。

 

「あ、代わりと言ってはなんだけどさ。なんでとんこつラーメンがダメなのか教えてくれよ。美味しいよな?」

 

「全体的に、ですね」

 

 全体的に!?あまりにも失礼な言いぐさだろ!

 

「とんこつラーメンが、ではなく前提条件を全く鑑みないあなたが、です。相手が望んでいるのでない限り、臭いの強い料理店に女性を連れて行くのはオススメしませんよ。関係性にもよりますけど、相手が素直に食事を楽しみきれない可能性もありますから」

 

 木虎、お前結構いいアドバイスできるんだな。

 

「しばきますよ?」

 

「お前じゃまだ無理」

 

「ちっ」

 

 女の子が思いっきり舌打ちするんじゃありません。じゃあ何料理がいいと思う?

 

「激辛スパイス料理」

 

 臭い強いじゃねーか!…………ん?これもしかして。

 

「じゃあ、土曜日はスパイス料理食いにいくか」

 

「ふふ、やればできるじゃないですか」




竹尾 清志PROFILE10
心を無にするのは得意ではない。
付けてるメガネはフレームの細い黒のオーバル。割と似合う。

木虎は烏丸の好きなものを聞きたかった訳ではなかったのですが、思いのほかバカが有用な情報ソースだったので話題変更してます。みかみかより先に誘われるデキる女、木虎。
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