わぁ、鳥!   作:ゆーり

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最近心配なのは原作の選抜で色々とプライベート設定がお出しされて話が破綻すること。
2月掲載がなくて良かったかもしれない。よくない。


第十四話「堤」

「いらっしゃい、清志くん。来てくれて嬉しいわ」

 

「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」

 

 ここが噂のKACO'Sキッチンか……。ふふ、腹が鳴るぜ。

 

「……竹尾、お前ここがどういう場所か分かっているのか? なんでそんなに嬉しそうなんだ」

 

 堤さんが断頭台に向かう罪人のような顔色で問いかけてきた。

 

「……? 年上の綺麗なおねーさんの手料理が食べられる場所じゃないんですか?」

 

「あら、お上手ね。気分がいいから今日は特に気合入れて作るわ。楽しみにしていてね」

 

 はい!一生の思い出にします!

 

「最期の思い出にならなきゃいいけどな……」

 

 堤さん、なんでこんなにテンション低いんだろう。もしかして食べ慣れ過ぎて大して楽しくないのか?綺麗なおねーさんの手料理を食べ慣れてるとか許せねぇよな。今後の合同訓練では諏訪隊から潰そう。

 

「それにしても竹尾。今まで来たことなかったのに、どうして今日になって来たんだ?」

 

 確かに今までも加古さんから誘われたことは何度もあったんだけど、以前は一切興味なかったからなぁ。断りすぎて加古さんもある時期からは誘いを掛けてこなかったから今回が初である。

 

「実はニノさんが譲ってくれたんですよ。本部を歩いてたら『俺は同期で付き合いも長いからな。世代間の交流をすることも重要だ。お前も行って経験を積んでくるといい』って」

 

「あいつ、そんなボカした言い方で後輩を人身御供に差し出したのかよ」

 

 ブチュリュルルルルルルルルル……

 

 俺なら絶対に譲らないと思うんだが流石はNo.1射手だ。トリオン量も懐も大きい。

 

「お前ってさ、サイドエフェクトがあるから防御得意なのにボーダー内部に対してはやたらとガード低くなったよな」

 

 グチャ、ヌチュ、ニチャァ……

 

 そうかな。元々ガードが高いと思ったこともないけど。まぁ、付き合いはかなり悪かったか。

 

 バシャー、ドチュ、ゴリゴリゴリゴリゴリ……

 

 あのー、堤さん?

 

「どうしたんだ同志よ」

 

 なんかいきなり同志認定された。なにを志してるんですかね。

 

「俺、簡単になら料理も出来るんですけど、炒飯ってあんな音がする調理工程でしたっけ」

 

「ははは、どうだったかな。俺はここによく来るけど、割とあんな音がしてる気がするなぁ」

 

 あ、そっかぁ。経験者が語るんならそうなんだろうなー。

 

「すんません、俺ニノさんと喧嘩しにいくんで帰ってもいいですか?」

 

「つれないこと言うなよ、相棒。最期まで一緒に行こうぜ」

 

 誰が相棒じゃ!勝手に突っ込んで死ね!

 

「……………………了解、しない……!」

 

 しろよ!ニノさんベイルアウトさせてここに放り込むからそれで許して!

 

「心配するな竹尾、確かにセンセーショナルでインクレディブルでデンジャラスな体験になるが、きっと成長できる。生きていれば……」

 

 リスクとメリットが釣り合わねーだろ!黒トリガーじゃねーんだぞ!

 

「大丈夫だって。俺たちには心強い味方が付いてるんだ」

 

 心強い味方? ゾエさんに全部食わせるとかか?

 

「そいつは体が褐色で頭がオレンジでな、趣味は管楽器なんだ」

 

 そんなやつボーダーにいたっけ? 褐色、というか日焼けなら帯島とかだけど……。

 

「……ラッパのマークの正露○じゃねーか! 心強い味方じゃなくて敗戦処理投手だろ!」

 

「もうすぐできるからねー、今日のはかなりの自信作よ」

 

 くそっ!さっきまで楽しい時間だったはずなのに、いつの間にか地獄になってやがる!

 

「堤さん同い年でしょ! 食べ物で遊んじゃいけないって注意してきてくださいよ!」

 

「いや、少なくとも加古ちゃんは一切遊んでいない。真面目に新しい領域にチャレンジしているだけなんだ……」

 

 そんな。年上のおねーさんが何時までも好奇心を忘れずに手料理のレベルアップに勤しんでるとか、可愛いかよ。

 

「覚悟を、決めるしか、ないのか……?」

 

 チチチチチチチチ、ボッ、ジュッ

 

 ちくしょう、餡子とからしの焼ける臭いがしてきやがった……。どっちも単体なら悪くないのになんで炒飯に混ぜるんだ。

 

「あの、皆さんよくこれに来ますね。病院沙汰になる前に禁止にするべきでは?」

 

「一応、八割で普通の絶品炒飯が出てくるからな。まぁ、今日はご愁傷様」

 

 うそだろ、これ二割引いた結果なのかよ。……決めたわ、明日ニノさんの目と口にからしぶち込んでやる。

 

「できたわ! ふふ、いっぱい食べてちょうだいね?」

 

 まるで女神の微笑みだぁ。既に臭いだけできついのだが、この透明感のある豆腐みたいな具はなんだろう。

 

「からし餡子ナタデココ炒飯よ! 食感のアクセントにナタデココを入れてみたの!」

 

 アクセントしかねーだろうが!食材と味付けの調和はどこ……ここ?

 

「ナタデココだけにか?」

 

 堤さんうるさい。あーもーこれ視界が赤いじゃねーかよ。色の濃さからしてニノさんの徹甲弾ってところか?シールドで受けたら落ちるな。

 

「いいか竹尾。無だ、心を無にするんだ。色即是空。味など所詮は肉体の反応でしかない。高度に洗練された精神に影響を及ぼすものではない」

 

 なんで精神修行の話になってるんだよ。俺はおねーさんの美味い手作り料理を食べたいという欲望だだ漏れで来たのに、解脱しなきゃいけないとかおかしいだろ。

 

「心配するな。お前は、一人じゃない」

 

「先輩からこんなカッコいい言葉投げ掛けられるのが、まさか炒飯の試食会だとは思いませんでしたよ。任務中のピンチの時とかにしてくれません?」

 

「お前がピンチになる戦場には行きたくないなぁ」

 

「うふふ、二人とも早く食べないと冷めちゃうわよ?」

 

 永遠に醒めない夢に放り込まれそうなので遠慮したい……。だが、俺はボーダー。人々の平和と笑顔を守る使命があるのだ。そう、この加古さんの笑顔もまた守るべきもの……。

 

「歌歩、京介、秀次、お前達と出会えてよかったよ……」

 

 今度の合同訓練では、加古隊から潰すようにしよう。




実はこれとは別にもう1作投稿しているので、気になった方は覗いてみてください。
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