わぁ、鳥!   作:ゆーり

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206話感想。
早紀ちゃんは流石に想定外。


第十七話「響」

「忍田さんの気を引く方法を一緒に考えてほしい?」

 

「ええ、そうよ。お礼はするわ」

 

 忍田さんも沢村さんみたいな素敵なおねーさんに思われてるんだから羨ましい限りである。しかも全く気付いてないとか、恋愛漫画の鈍ちん主人公かな?

 

「しかし、俺に相談してくるなんてさすがは響子さん。お目が高いですね」

 

「そうね……。趣味嗜好が近そうな人や恋愛強者の女の子たちにも散々アドバイスをもらって実行したのに梨の礫だったわ。もういっそバカの意見を採用したほうが効果があるんじゃないかと思って。やけくそってやつよ」

 

 いくら俺が温厚だからって言っていいことと悪いことがあるからね?せめて協力の返事するまでは取り繕ってよ。

 

「それでよく頼みを聞いてもらえると思いましたね。というか告白はもうしたんでしたっけ?」

 

「いいえ、まだ慌てるような時間じゃないもの」

 

 おい突撃系攻撃手、なに日和ってんだよ。忍田さんの首筋に弧月ぶち込みながら愛を叫ぶくらいしてみせろよ。

 

「できたら苦労しないわよ! 乙女の繊細な恋心なの! わかってよ」

 

 そんなこと言ってると乙女で居られる時間が終わっちゃいますよ。

 

「ふふ、今のセリフ録音したわ。あーあー、こんな酷いこと言われるなんて、悲しみのあまり歌歩ちゃんに泣きついちゃいそうだなー」

 

 この女っ!いつからそんな悪辣な手段に手を染めるようになったんだ、見損なったぞ!

 

「私も悪いとは思っているわ。けどね、もう手段を選んではいられないのよ」

 

 告白という王道にして一番有効な手段を取らずになに言ってるんですかね。

 

「もう! うだうだ言ってないで協力して。そんなんじゃ女の子にモテないわよ!」

 

 ここ最近でも屈指の理不尽に遭遇している気がするが仕方ない。お世話になってるから力添えするとしよう。

 

「わかりましたよ。俺もニノさんからアドバイスをもらって、自分のモテ道を見つめ直していたところです。ちょうどいい実践になります」

 

「……すごい組み合わせと内容ね。どんな会話だったのかちょっと聞いてみたいわ」

 

 所詮、俺の独り善がりだったということですよ。恋愛とは一人で完結するものではない。そんな当たり前のことを教えてもらったのさ。

 

「なんか年下のおバカ男子に恋愛で悟ったような顔されるのは微妙に腹立つけど、期待できそうだし見なかったことにするわ」

 

 脅迫して頼みごとを聞かせようとしてるくせに、相手に腹立つ宣言とか自由すぎませんかね。

 

「……話を進めましょうか。まず、なんで響子さんが忍田さんに相手にされてないのか、多少なりと思い当たることはありますか?」

 

「え……。その、仕事が恋人で全然恋愛に興味がないから? ……容姿とか性格の問題だったらどうしよう」

 

 あ、落ち込みだした。まぁ、好みのタイプなんて林藤支部長くらいしか知らなさそうだが、その辺がNGって可能性は低いでしょ。

 

「俺の考えを述べます。ずばり、響子さんに隙がなくて頼りになりすぎるのが良くない」

 

「そ、それどういうこと? 私、本部長の役に立てるように頑張ってるのに……」

 

 よく知ってます。忍田さんからも信頼されてると思いますよ。……同僚として。

 

「外野の意見ですけど、忍田さんの相方として響子さんはお似合いだと思いますよ? 無理しがちな忍田さんを支えられる人ですから。けど、忍田さんが恋愛にそれを求めているかは別問題です」

 

 男はくだらないプライドを抱えている生き物なので、頼りになりすぎる女性にコンプレックスを感じてしまう場合もあるかもしれない。

 

「特に忍田さんは性格的にもヒーロータイプの熱血漢ですからね。守ってあげたくなるような女性を本能的に求めているかもしれない。対して沢村さんは放っておいても問題ないですからね。仕事で迷惑掛けてるからプライベートに踏み込みづらいし、構い甲斐が無さすぎると思われているのかもしれません」

 

「な、なるほど……。たしかに、清志くんもバカで危なかっしいから皆が放っておかないものね。私も少しバカになろうかしら」

 

 どうせ俺はバカですよ、いい加減わかってきましたよ。

 

「拗ねないの。でも、仕事で迷惑掛けるわけにはいかないし、構い甲斐って言ってもどうすればいいのかしら」

 

 まぁ、そこは結構難しいところですよね。沢村さんが素直に甘えられるようなタイプならこうなってない気もするし。

 

「俺に一つ秘策があります。……ずばり、ギャップです」

 

「ギャップ?」

 

「はい、一目見て普段と違うなという変化を付けることで相手に自分を意識させるんです。服装とか髪型とか。例えばの話ですけど、ある日いきなり歌歩が髪染めて派手な服着てきたらどう思います?」

 

「余計なこと吹き込んだクズを見つけ出して斬り捨てるわね」

 

 こえーよ。せめて最初は当人との対話から入れよ。普通にイメチェンしたかっただけの可能性もゼロじゃないだろ。

 

「いいえ、あり得ないわ。悪い虫が付いたに決まってる。ボーダー女子会による殲滅戦よ。必ず探し出して潰すわ」

 

 ……………前にプレゼントしたアクセサリー、セーフ判定だよな?

 

「は、話を戻しましょう。さっきのはただの例ですが、ようは変化を付けることで関係性にも波を持たせようって話です」

 

「分かるけど具体的にどうすればいいのかしら。仕事中って隊服だし。この髪型、気に入ってるんだけど……」

 

 うーん、その問題はあるか。俺たちと違って沢村さんはボーダー本部に居る時に私服ってほぼないからなぁ。

 

「ネクタイ少し緩めてシャツのボタン空けるとかどうです? お色気路線です。男の子は好きですよ?」

 

「いやよ! 万が一、本部長に破廉恥な女だって思われたらどうするの! それに本部長はそこらの単純な男たちとは違うわ!」

 

 どっちかというと、すげぇ単純な人の気がするけどね。いまだに剣術大好きとか相当に男の子してるぞ。

 

「それなら、香水とかどうですかね。あまり強い匂いじゃなければ、仕事中でも怒ったりはしないでしょ。好みに合う匂いなら忍田さんもリラックスできて一石二鳥かもです」

 

「それくらいなら有りかもしれないわね。でも、本部長ってどんな匂いが好きなのかしら」

 

 醤油とか出汁じゃないっすかね。

 

「それじゃ朝食を服に零したまま来たみたいになるでしょ!」

 

「いや、さすがに冗談ですよ。本気にしないでください」

 

 そもそもそんな匂い、香水にもアロマにもないだろ。

 

「……ふぅ、ありがとう。とりあえずはこれで十分よ。なにを選ぶかは他の娘たちにも相談してみるわ」

 

「それがいいと思います。俺だとチョコとかバターの匂いしか思い浮かばないので。ところで、お礼って何してくれるんですか?」

 

「……さっき録音したデータを処分してあげる。感謝することね」

 

 は?謀ったな貴様ァ!

 

「冗談よ。そうね、お礼にいいこと教えてあげるわ。こっちに顔寄せて?」

 

 ん?おいおいおい、いいのかこれ?やっぱ大人ってすげーな。

 

「……ふふ、後ろに歌歩ちゃんいるわよ」

 

 …………は?

 

「それじゃあ、ありがとうねー。そっちもうまくやるのよー!」

 

 決めたわ。もう絶対に応援しねぇ。

 

「あー、その違くてな。その……、あ、それ付けてくれてるんだ。……うん、似合ってるよ」

 

 なんかしらんが許してもらえました。




ひゃみさんは可愛い
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