わぁ、鳥!   作:ゆーり

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このオリ主のバカさは男子高校生のバカ話を大声でしてしまうことに集約されるので、大体近くにいる知り合いの女性が折檻することになる。
オペレーター達にトリオン体を破壊された回数が多い隊員ランキング不動の一位。


第二話「透」

「おはよーっす」

 

 九月。夏も終わりが近いのだが、暑かったり寒かったりが安定しない微妙な時期だ。陽介たちの学校だと男子はまだまだ半袖らしいが、うちの学校は衣替えをするやつも増え始めている。女子は更に衣替えのタイミングが早いのかほとんど冬服モードだ。うーん、女の子たちの解放的な姿を見られなくなるなんて残念。

 

「ま、冬服には冬服の良さがあるか!」

 

 秒で悩みが解決した。今日も素敵な一日になりそうである。

 

「竹尾か。おはよう」

 

 既に登校していた奈良坂が挨拶してきたので、鞄を置いて会話する。

 

「おー、おはよう。三輪隊は夜の防衛任務だったろ?疲れてんだろうにもう登校してるとは偉いな」

 

「…………」

 

 ん?話掛けたのに返事がない。無視してんのかと思ったらちゃんと目はこっち向いてるし。

 

「どうしたんだ? 賢がツインスナイプ! って一個の的狙ったら弾同士がぶつかって合成弾になったの見たレイジさんみたいな顔してんぞ」

 

「どういう顔……いや、それはどういうことだ?」

 

 奈良坂はまるで深淵を覗いてしまったかのような表情で問いかけてきた。

 

「いや、忘れてくれ。その後、近くにいた全員で試しまくったけど二度と再現できなかったから。あれは事故だったんだ」

 

 トリオンはまだまだ謎の多い技術だ。拘り過ぎて視野狭窄になってはいけない。

 

「……いや分かった。分からないが分かった。俺が気にしていたのはお前の顔のことだ」

 

 分からないが分かった。哲学か?それにしても俺の顔か……。

 

「ははーん、お前も遂に俺のイケメンさに気が付いたか。まぁ、俺に勝とうと思ったら? 嵐山さん位の顔面偏差値がいるし?」

 

「お前そのノリで綾辻に告白しにいって笑顔で『今日も冗談が面白いね』って相手にされなかっただろうが」

 

 ぐはっ!こいつ人の心の傷を平気な顔して抉ってきやがる。これだから自分をクールだと思ってる人間は!秀次お前もだぞ!

 

「フリーだって言ってたからいけると思ったんだがなぁ。何がいかんかったんやろ?」

 

「昼休みの賑わってる食堂で片手にニンニク臭いパスタのトレイを持った状態で壁ドンして告白するというお前の思考回路だろうな」

 

 えー、吊り橋効果とかいうのもあるし、お腹空いてる状態でいい匂いがしてたら成功率あがりそうじゃね?

 

「やっぱ防衛任務のときに臨時のオペ頼んでトリオン兵相手に無双したあと、カッコよく告るのが正解だったかぁ。断られるときに『流石にこれで受けちゃうのも悪いし』って言ってたがなにが悪いんだ?」

 

「……体裁とかだろ。広報の仕事もあるんだ。大っぴらに交際するのは何にしろ難しいだろ」

 

 そういえば綾辻はボーダーの女性代表みたいなもんだったな。

 

「って遥ちゃんのことはよくって。俺の顔の良さに気付いたって話だったよな?」

 

 よく考えたら男のこいつに気付かれてもなんの意味もないが、世界の真実は正しく認識されなければならないからな。あわよくばなんかいい感じで那須隊に伝われ。

 

「いやメガネをかけてたから気になっただけだ。視力が落ちたのか?」

 

 あー、メガネね。はいはい、メガネって……。

 

「お前と辻ちゃんが俺を見捨てたからかけることになったんだろうが!見ただろあの後の俺の無残な姿を!」

 

 トイレにベイルアウトして心のトリオンを回復させていた俺だが、予鈴が鳴ったので仕方なく教室に帰ったのだ。そこに待っていたのは……。

 

「まぁ、俺も三上とはそれなりに親交はあるが、あんな冷たい目ができるとは知らなかった」

 

 嘘泣きで冤罪を起こしたことなどなかったかのように平然としている宇佐美とは対照的に歌歩の視線はいまだ絶対零度を保ったままだった。凍結系の黒トリガーかな?

 

「授業が終わるたびに歌歩が来て『正座』って床に座らせて事情聴取してくるんだぞ!? 弁明しても微妙に話が通じないし!」

 

「『メガネを外させようとしただけなんです!』に対してまさか『ふーん? つまり栞ちゃんの素顔が見たかったんだ?』という返しがくるとは思わなかったな。それに『見たいか見たくないかで言えば見たい』と答えるお前も大概だが」

 

 俺は嘘付けない正直な男なんだよ!あと素顔はともかく装備パージは浪漫があるからな!

 

「昼休みから帰ってきたら終わってたが結局どうなったんだ?」

 

「栞ちゃんがすげぇドヤ顔で『清志くんがメガネかけるなら許すよ?』って言ってきてな。歌歩は納得してなさそうだったが、栞ちゃんがなんか耳元で囁いたら引き下がったぞ。弱みでも握られてんじゃねぇか?」

 

 しかもメガネ買うとなったらデザインにやたらと細かく注文付けてくるし。宇佐美はこういうのが趣味なのか?

 

「ところで竹尾。狙撃手の訓練について少し相談があるんだが」

 

「いきなり話題が飛んだな。狙撃手の相談? 俺、いつでもパーフェクトオールラウンダーにはなれるけど狙撃手の実践は凸スナしかやったことないぞ?」

 

超天才たる俺が生み出したゼロ距離でアイビスをぶちかます最高に頭のいい戦法だ。俺はこの戦法で油断して接近を許したニノさんと鋼さんをシールドごと粉砕し、弓場さんと里見に中距離から蜂の巣にされた。

 

「古寺の育成について悩んでいてな。あいつは真面目でしっかりと思考できるタイプで俺と似ている」

 

 似てるなら育てるのに問題ないのでは。当真さんと古寺の感性が合うとは思えないし、現時点ではまだまだ奈良坂のほうが腕前は上だろ。

 

「古寺の成長が行き詰っている訳じゃないんだ。ただ結局は俺と同じところに行きつく。そのときに他の道を示してやることができそうになくてな。俺じゃ無理でもお前の自由な発想なら、とな」

 

 なるほど。奈良坂に追いついたとして待ってるのは当真さんて壁か。奈良坂自身に今はそれを超えるアイディアがないってことか。こいつも表情には出さないけど二位に甘んじてることに思うところがあるんだな。

 

「別にそのままでいいんじゃねぇの? 古寺本人が何か希望してるってならともかく」

 

 こういうとき攻撃手の脳筋共はシンプルに割り切るやつが多いから原始的な競争になるんだが、射手や狙撃手の理屈屋は考え込むからなぁ。

 

「俺に言わせれば当真さんとお前は一位と二位じゃなくて赤と青だ。優劣じゃない個性があるだけだよ。もっと言うなら古寺は赤でも青でもない。お前に似ていても行きつく先は別だよ、きっと」

 

 狙撃手は的に当てるという仕事が分かりやすいから余計だが、攻撃手だって極論すれば近づいて当てるだけだ。そこに至る過程は自身の経験と個性に因る。奇天烈なら良いってもんでもない。

 

「俺は奈良坂のほうが後ろに居て安心するけどな。当たらないなら撃たないなんて個人的には論外だ。当たるまで試行するんだよ。万でも億でも」

 

「ほう……。なるほど億でも、か」

 

 ……適当こいてただけなのに、今のどこに感じ入るところがあったんだろうか。まさか古寺に億本ノックでもさせるつもりか。そうなったらごめんよ古寺。

 

「ま、まぁあれだな! 女の胸は大きいほど男が夢詰め込めるけど、狙撃手のタイプは複数揃ってたほうが有用だろ!」

 

「あ」

 

 あ?

 

「へぇ、そう。じゃあ私には大した夢は詰め込めそうにないね?」

 

そんなバカな。つい先日、黒トリガークラスの冷気を乗り越えた俺が指一本動かせない、だと? まさか冠トリガーか……?

 

「現実逃避してないでさっさと後ろを向いたほうがいいぞ。あと俺は小さいのと大きいのどっちもいいと思います」

 

「奈良坂ァ! お前の悩みを晴らすために言った小粋なジョークだろうが! ちょっとは」

 

「いいからこっちを向け」

 

「……あの、俺も夢云々はともかく大小に貴賤はないと思ってますよ?」

 

「ふふ、竹尾くん、つまんないウソつくね?」

 

 やっべぇ。苗字呼びになってるよ。メガネ事変のときですら名前呼びは変わらなかったのに。これは激怒してますね。なまはげって釈明して飲み物渡せば帰ってくれるんだっけ?ジュースで許してくれるかな……。

 




竹尾 清志PROFILE2
ポジションは万能手。
女性の見た目は全体的なシルエットのバランスが重要と思っているので胸単体の大小に拘りはない。

・古寺に億本ノックは問題視されなかったが、宇佐美プロデュース(と思われている)のメガネをかけていることが伝わったため、後日摸擬戦中にゼロ距離アイビスで粉々にされた。

・後ろを振り向いた際に死を覚悟したが、ミデン六頴館高等学校所属のなまはげにはメガネ耐性がなかったためフリーズしてしまい事なきを得た。
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