わぁ、鳥!   作:ゆーり

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第十八話「充」の翌日くらいの話。
『走れメロス』のパロディなので内容覚えてねぇ!って人は先に読んでみようね!面白いよ!
だいたい王と謁見する辺りまでの内容です。


番外編「走れみかみか」

 みかみかは激怒した。必ず、かの無知蒙昧のバカをしばくと決意した。みかみかにはバカがわからぬ。みかみかの感性はごく一般的である。防衛隊員を支え、オペレーターをしながら暮らして来た。けれどもバカの奇行に対しては、人一倍敏感であった。

 

 きょう未明、みかみかは家を出発し、街を越え警戒区域を越え、数キロ離れた"ボーダー"本部にやってきた。バカには親も、兄弟もない。家もない。簡素な基地の一室で一人暮らしだ。このバカは、"ボーダー"の或るマドンナに近々告白をすることになっていた。決行日も間近なのである。

 

 みかみかはそれゆえ、告白を阻止するべく、はるばる基地にやってきたのだ。先ず方々で情報を集め、それから告白予定場所をぶらぶら歩いた。みかみかには竹馬の友がいた。綾辻遥である。今は此の"ボーダー"で、マドンナをしている。その怨敵を、これから訪ねてみるつもりなのだ。

 

 歩いているうちにみかみかは、バカの様子を怪しく思った。最近、奇行がひっそりしている。もう日も登って、基地が明るいのは当たり前だが、けれども、なんだか普段よりバカが大人しい。落ち着きのあるみかみかも、だんだん不安になってきた。朝も早よから隊室で仕事をしていた綾辻をつかまえて、どんな告白をするのか、バカはなにか言っていたかと質問した。綾辻は、辺りをはばかる低声で、わずかに答えた。

 

「『夜に俺の部屋に来てほしい。二人きりで話したいことがある』って誘われたんだけど、これどうなんだろうね」

 

「おどろいた、バカは乱心か」

 

「考えなしなわけじゃないみたいだよ。自分なりに良いと思ったことを実践して、ダメなところを直していって出した結論みたい。次は絶対に成功する自信があるって言ってたよ」

 

 聞いて、みかみかは激怒した。

 

「呆れたバカだ。生かして置けぬ」

 

 みかみかは、嫉妬深い女であった。憤怒を背負ったままで、のしのし部屋から出ていこうとした。たちまち彼女は、綾辻に捕縛され、ソファに座らされた。みかみかが感情的になっていたので、このままではいけないと、嵐山隊の前に引き出された。

 

「そんな状態で清志に会って、どうするつもりだったんだ? 俺たちに話してほしい」

 

 ヒーロー嵐山は静かに、けれども慈愛を以って問い詰めた。

 

 その隣にいる木虎の顔は渋面で、眉間に刻まれた皺が『この人、男の趣味が悪いな』と言っていた。

 

「監禁して、一から調教します」と、みかみかは悪びれずに答えた。

 

「犯罪ですよ?」木虎は、ドン引きした。

 

「仕方のないやつだな。清志の想いも尊重してあげたらどうだ?」

 

「言わないでください!」と、みかみかはいきり立って反駁した。

 

「敵は強大で既に四回告白されている。なのにこっちはゼロ回です。こんなのコールド負けじゃないですか」

 

「そんなことはないさ。清志は三上のことを大切に思っている。今は自分の気持ちをしっかりと理解できていないだけだ。信じてあげてほしい」

 

 嵐山は落ち着いて呟き、ほっと溜息をついた。

 

「きっと清志だって、君と一緒にいたいと思っている」

 

「そんな保証がどこにあるんですか」

 

 みかみかが、己の不甲斐なさを嘲笑した。

 

「隣りの泥棒猫に盗られてからじゃ、遅いんです」

 

「いや、泥棒猫扱いされるのはちょっと……」

 

 綾辻は、さっと顔を逸らしながら呟いた。

 

「口では、いくらでも好意を振り撒ける。俺には、清志の腹綿の奥底が見え透いている。三上だって、いまに清志から告白されて、喜んで受けることになるぞ」

 

「ああ、嵐山さんはモテ男ですもんね。自惚れているといいです。私は、ちゃんと自力で彼をものにする覚悟で居るのに。諦めたりなんて決してしない。ただ、――」と言いかけて、みかみかは、足もとに視線を落とし……。

 

「ただ、私も本当は彼のほうから告白してきてほしいです。たった一度でいいんです。その日のうちに、街で結婚式を挙げて、二人で家に帰ります」

 

「ばかな」と、木虎は乱れた思考で白目を剝いた。

 

「とんでもないスピード婚ですね。帰るって三上先輩の家にですか?」

 

「そうよ。二人の愛の巣に帰るの」みかみかは必死で言い張った。

 

「私は束縛が強いです。私に、一度だけ告白をしてほしい。私、ずっと待ってるんです。そんなに私の覚悟が信じられないならば、いいでしょう、"ボーダー"のマドンナとここで決着を付けます。私の無二の友人です。あれを、打ち倒します。私が勝ったら、あのマドンナの代わりに告白を受けさせてください。たのみます、そうして下さい」

 

 そう言ってみかみかは、ステルス暗殺上等だという顔で、そっとほくそ笑んだ。

 

 なに言ってんだコイツは。そんなので恋人になれても嬉しくないに決まってる。木虎は戦慄した。

 

「落ち着きましょう、三上先輩。結婚式は気が早すぎるし、綾辻先輩は敵じゃありません。あの人は大してモテないし、どうせ失敗するんだから、大人しく待ってればいいんですよ」

 

「なに悠長なことを言っているの?」

 

「いや、どうせ失敗するんですから、気にせず待ってればいいのにって……」

 

 みかみかは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなかった。自分はともかく、他人に清志をバカにされるのは、あまり好きではないのだ。私の惚れた男なんだぞモテないわけがないだろう。いや、モテちゃダメだ。私が困る。

 

 木虎は、あー早く家に帰ってお風呂入りたいなーと、どこか遠い目をしていた。

 

 竹馬の友にして怨敵、綾辻遥は、さてどう清志に返事をするかと考えを巡らせていた。

 

 ヒーロー嵐山は、青春だな、と優しい目でみかみかを見ていた。

 

 ずっと黙っていた時枝は、三上先輩ってこんなに楽しい人だったんだなと、認識を改めた後、城戸指令が清志になんと説明したのか確認することを決めた。




パーフェクトコミュニケーションに失敗した指令。
番外編としてもあまりにアレなので、ひっそり消えてても気にしないでください。
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