サブタイトルは三輪がメイン二回目なので二文字になってます。
仮に小南の二回目がきたら「桐絵」になります。
デスマーチ中なので次の投稿が何時になるか不明です。
個人ランク戦をしようとロビーに行くと、清志がイスに腰掛けて項垂れていた。また誰かに振られたのだろうか。誰に言われたのか知らないが『女性は容姿を褒められると喜ぶ』という言葉を真に受けて、告白した理由に堂々と顔や胸を挙げるのは止めたほうがいいぞ。
「おい、清志。どうしたんだ、悩み事か?」
「あ、秀次。うん、ちょっとね……」
歯切れが悪い。コイツも大概溜め込むタイプで、その結果は碌なものにならない。さっさと吐かせるべきだろう。
「一人で悩んだところで解決はしないぞ。役に立てるかは分からんが話してみろ。別に相手は俺でなくてもいい」
そう言うと、清志は薄い笑みでコチラを見てきた。以前は常に浮かべていた時期もある微笑だが、乗ってる感情が違うと受ける印象も変わるものだな。
「ありがとう。さっきまで開発部に行ってたんだけど、そこで問題が起きてね」
「開発部? 新型トリガーでなにかトラブルがあったのか?」
清志のサイドエフェクトを活かせる専用トリガーの開発は、以前から進められていたプロジェクトの一つだ。トリオン量も大きいからある程度の無茶も効く。試行錯誤をして時間が掛かっているものの、難航しているとは聞いてなかったが。
「いや、そっちは特に。メテオラとスコーピオンを組み合わせた焙烙玉トリガーが実用化できそうだから問題ないよ」
……あぁ、あれか。メテオラの爆発を目くらましと推進にして、超小型ブレードを射出するトリガー。爆風を防ぐために拡げたシールドを貫通してきて落とされるんだよな。ブレードの本数と貫通力にトリオンを割り振ったら射程が激減したらしいが、コイツは爆心地に居ても自分だけブレードを避けられるから平気という、悪役が使ってくるタイプの爆弾トリガーだ。
「戦場で甘いことは言ってられないが、防衛戦ではあまり使うなよ? 正直、絵面がかなり悪い」
「もちろん。無駄に街を壊しちゃうからね。よほど戦線が厳しい場合か、遠征中に敵陣に突撃して使うことになるんじゃないかな」
俺は近界民は大嫌いだが、そんなトリガーを使われることに多少は同情するぞ。
「改良の目途も付いてさ。弾として発射できなくなる代わりに、設置して遠隔起動が出来そうなんだよね。最終的には俺じゃなくてトラッパーと狙撃手用になるかも」
トラッパーは分かるが、狙撃手?
「いわゆる置き弾だね。生成には左右のトリガー同時使用が必要なんだけど、起動は片手で済みそうなんだ。狙撃手を意図的に発見させて、予め逃走ルートに設置しとくの。追う側には追い詰めてるように思わせつつ、苦し紛れに近距離スナイプすると見せかけて焙烙玉で爆殺だね」
……悪辣すぎないか?
「完成したら、ランク戦がまた酷いことになりそうだな。奈良坂と古寺は上手く使いそうだから俺としては歓迎だが。で、悩んでいることはなんなんだ?」
案外元気そうだし、そこまで大事でないのならよかった。
「実はね、開発部から新しく作った携帯食料のサンプルを貰ったんだけど、食べるのが怖くて……」
話掛けなきゃよかった。
「そうか、人の厚意は無碍にできないな。しっかり味わって食べるんだぞ。じゃあ、俺は個人戦をしてくるから」
ガシッ
「……離せ」
「旅は道連れ世は情け。加古さんの炒飯よりはマシ……たぶんマシだと思うからさ。一緒に食べよ?」
その言葉は使い方間違ってないか。それにあの炒飯と比べて多分という枕詞が付く時点で尋常ではない。心を鬼にして断るべきだろう。
「頼むよ、秀次。俺一人じゃ心細くって……」
…………ちっ。
「分かったから離せ。一緒に食べる。で、何味なんだ?」
どうせ雑草とか虫とか、その辺りだろう。頼みを断らないのをいいことにコイツに余計なものを渡したエンジニアはあとで殴る。
「トリオン味」
とりおん味?
「たまねぎ味か? 生だと辛いだろうが、食べられないことはなさそうだな」
「それはオニオンでしょ。トリオン味だよ。いや、理解が追いつかないのは俺も分かるよ。だから悩んでたんだし」
「トリオンに味はあるのか?」
「その答えがここにある……かは分からないけど、近界ではあらゆるエネルギーをトリオンで賄ってるんでしょ? 食物の元になったりするなら、味もあったりするのかもね。フレーバーとして採用する理由は分かんないけど」
フレーバーといってもそのままトリオンをぶち込んだのではなく、味の再現のはずだ。知らない味を再現することはできない。開発部の連中はトリオンの味を知っているということなのか?
「ちなみに、自分のトリオン体は舐めてみたけど無味だったよ。これも無味だと嬉しいんだけど」
そう言ってポケットから取りだされた携帯食料のパッケージには『これであなたもトリオンモンスター! 二十四時間戦えます!』というポップな字体と淡い緑色の固形バーがプリントされていた。このムカつく煽り文は必要なのか?
「それ、何本入りなんだ」
「四本」
流石に二本ずつは体調も考えて避けたい。あと二人、仲間が必要だな。米屋と古寺が居れば隊長権限で巻き込んだんだが。誰か適任者は……。
「…………」
辺りを見回すと迅と目が合った。本部に来ているのは珍しいな。って、おい顔を伏せるな!目を逸らして早歩きで去ろうとするな、何を視た!
「迅のやつ、逃げやがった!」
「マジで? 未来視でもヤバいのか。俺にはこれ真っ赤に視えてるんだけど」
そういうことは先に言え!くそっ!誰か他に犠牲にしても良心が痛まなさそうやつはいないのか!
「ん? どないしてん、清志」
「イコさん! ちょうどいいところに! トリオン味のお菓子があるんですけど、一緒に食べません?」
「ほうほう、ふんふん、……マジで? 相当なゲテモノやろ。俺も食べたいわ」
よし、愚かなを生贄一人確保だな。オペレーターとC級ならいるが……さすがに巻き込むのは可哀想だな。
「なんだなんだ? 楽しそうなことやってんな」
「太刀川さん!」
……太刀川さんなら、ちょうどいいか。
「やったな秀次! "ボーダー"でも数少ない一万点越えの攻撃手が二人だ。これは勝っただろ」
どちらかの味覚に異常があって全部美味しく食べてくれたらな。別に俺たちの担当分が無くなるわけじゃないぞ。
「よっしゃー! 太刀川さんのカッコいいとこ見せてください。一気でお願いします!」
「おう、任せろ。どれ…………ぐふぉっ」
ドサッ
「……秀次、こいつ強いな。太刀川さんを一本で取ったぞ」
頭はアレなのに味覚は正常だったか。相変わらず戦闘以外では使い物にならないな。
「今日からこの固形バーがNo.1攻撃手でいいんじゃね? 一応、近接物理だろ」
近接物理というよりは内部破壊とか感覚干渉系のような気もするがな。それに自分も食われるから相打ちじゃないか。
「え? これ俺も食べなアカンの? 安請け合いしたの後悔しとるんやけど」
「なに言ってるんですかイコさん。こんな美味しい状況から逃げるなんて二度と大阪人を名乗れなくなりますよ?」
「……俺、京都出身やから厳密にはちゃうから」
生駒さんが自分は大阪人ではないです宣言をするとはな。攻撃手の勘で、あの固形バーには勝てないということを感じ取っているのだろうか。
「どうせなら城戸さんとかニノさんに食べさせたかったなー。はい、イコさんどーぞ」
「……恨むで、清志」
結局、生駒さんは失神こそしなかったものの、口元を押さえてトイレに駆け込んだ。俺達も食べてみたが、単純にくそマズいだけで思ったほどのものではなかった。清志も『マズッ』って言ったあと普通に食べてた辺り、慣れというのは怖いな。
開発部:原作では有能トリガーを開発している頼れる裏方だが、本作では変な味の栄養食品ばかり登場する。バカと遊んでいるつもりでぶっ飛んだものをよく味見させているが、やりすぎると怖い保護者たちが殴りこんでくるので最近は抑え気味にしている。トリオン味は開発部が思い付く限りの緑色の食品を混ぜた味。
三輪:バカへの対応が激甘3号。普通に戦っても強いが、対バカの技術を積み上げていった結果、原作よりもデバフ特化型万能手になっている。原作よりも表情や雰囲気が穏やかになっているが、摸擬戦で三輪に負けるときは相手が鉛弾で這い蹲ってることが多く、冷たい目で見降ろしながら首を刎ねるため、付き合いの薄い隊員からはドSだと思われている。
前半、バカがしおらしいですが、激甘1~4号と二人でいるときはこんな感じです。