ようこそ、『わぁ、鳥!』ハウスへ。
このトリオンはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このみかみかを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この番外編を作ったんだ。
じゃあ、注文を聞こうか。
彼を探していたのだが、聞き込みをしたところ、太刀川隊の隊室に居るらしい。
「柚宇ちゃんをゲームで負かして大泣きさせてからは行くのを避けてたのに、仲直りしたのかな。……せっかく強敵が一人いなくなったと思ったのに」
ののさんに対して、胸と会話してるのかと言いたくなるような凝視も相当に失礼だが、柚宇ちゃんの胸からも中々視線が外れない。二人とも、もっと強く拒否してくれればいいのに。まさか見せつけてるの?はしたないよ。
「そんなわけないよね。きっと二人も動物か何かだと思って対処しているだけだよ。うん、きっとそうに違いない」
まさか胸に視線が固定されて顔を見ようとしない男を好きになるはずもない。むしろ胸がなければこちらを向いてくれるのだから、小さいのはメリットなのだ。ウィークポイントなんかじゃないから。
それにしても何の用で訪ねているのだろうか。また太刀川さんと模擬戦百本先取なんておバカな真似はしてないと思いたい。そのときは忍田さんが乱入して二人を鎮圧するまで、何時間も戦いっぱなしだったのだ。バカ同士が科学反応を起こすと恐ろしいことになる。
それとも出水くんに合成弾のコツを聞きにいっているのか。頑なに経緯を話さないが、玲ちゃんに教えてあげる約束をしているらしい。なにやら色々と借りがあるらしく、もうちょっと情報が必要だと言っていた。怪しい。玲ちゃんと友子ちゃんは告白を一度断っているが、時期的に彼とはほとんど親交がないときのことだ。随分と仲良くなっている現在、前回と答えが同じという確証が持てない。
「どういうことなの……。味方ばかりだったはずなのに、最近は敵がどんどん増えてる。しかもみんな戦力が高い」
頭では分かっているのだ。みんな友人として仲良くなっているだけ。男女の仲になるつもりなんて毛頭ないって。でも、心はそうはいかない。もし万が一にでも誰かに先を越されたら、素直に祝福なんて絶対にできない。
それが嫌なら攻めるしかない。私から彼に告白すればいい。でも、もしも断られたら。そう考えると足が竦んでどうしていいか分からなくなる。相変わらず自分は臆病者だ。
「だ、大丈夫よ歌歩。顔がいいだけの男に靡くような女は"ボーダー"にはいない。そうよ、こんな物好きは私だけよ」
自分を無理矢理鼓舞する。引くも進むもできない自分に嫌気がさすが、それでもまだ怖いのだ。
「と、とにかく一度清志くんに会って気持ちを落ち着けよう」
そう考えながら歩いていると、太刀川隊の部屋に着いていた。呼吸を整えて、ドアに手を掛け……
「柚宇さん、俺と結婚してください」
「えぇ~、うーん仕方ないなぁ。特別だよ?」
自分の足元の感覚が消え失せて、体が崩れていくのを感じた。
「……………………はっ! 私はいったい何を」
気が付くと太刀川隊の部屋の前で壁に寄り掛かっていた。なぜか記憶があやふやだが、時間を確認すると三十分も経過している。
なにかとても嫌なことが起こっていたような気もするが、恐らく気のせいだろう。疲れているのかもしれない。早く彼に会って、用事を済ませたら休むようにしよう。
「また子供ができちゃったね。これで四人目だよ」
「任せてください。しっかり全員養いますから。苦労はさせません」
……もしかして私は三年くらい寝ていたのだろうか。完全に時間の流れに取り残されている。
「お、おおおおおお落ち着くのよ歌歩。いくらなんでもおかしい。きっと何かの勘違いよ。だって変じゃない。遥ちゃんならともかく、なんでいきなり柚宇ちゃんなの? 胸か? やっぱり胸なのか? 私より持ってるやつは全員もぎ取っておくべきだったの?」
「それにしてもお前ら二人が結婚とはなー。まぁ、案外お似合いだし、子沢山で幸せそうでよかったな、ははは」
なにがお似合いでよかったのかな太刀川さん。適当なことほざいてるとボコボコにするわよ。
「あーあー、俺も柚宇さんと結婚したかったんだけどなぁ。先を越されちゃしょうがない。おめでとう二人とも」
なにもしょうがなくないよ。そこで強引に奪えないから、No.1射手になれないんだよ出水くん。略奪愛するくらいのガッツ見せてよ。応援するから。
「いやぁ、そうやって周りから祝福されると、結婚も悪くないもんだね~」
これで悪いなんて思われてたら、それ以下の私の人生はどうなるのよ。ゴミ溜めだとでも言うつもり?
「俺、柚宇さんと結婚できて子供も産まれて、いますごく幸せです」
…………もういい、このバカを殺して私も死のう。
「あれ? 歌歩、どうしたんだそんなところで」
どうしたもこうしたもないよ。私はいま、かつてないほど自分に絶望してるの。ビビッて踏み出さなかった結果がこれだよ。
「……うぅ、もうやだぁ」
彼の前でだけは泣かないって決めてたのに、涙が抑えられない。もうなにもかもダメだ。みかみかじゃなくてダメダメに改名しようかな。
「え、えぇぇーーーーー!!?? ちょっと待って歌歩! なんで泣いてるの、どっか痛いの? なにか嫌なことでもあったの!?」
心が痛いし、人生でワーストスリーを争う嫌なことが現在進行形で起きてるよ。
「あれ、これ俺たちが悪いやつか?」
「柚宇さん!? 顔が真っ青ですよ! 大丈夫です、誤解を解けばまだ間に合います! 最悪戦ってでも守りますから! 落ち着いてください!」
「あ、あああ歌歩ちゃん違うの、これはね愛とかじゃないの。ただの形式上の話なの!」
子供まで産んどいてなに言ってんだ。世間への体裁と肉体だけの関係とでも言うつもりか、ぶっコロすぞ。
「柚宇さんそれ墓穴掘ってます! 人生ゲーム! これ全部人生ゲームの話だから!」
「…………ほぇ?」
人生ゲーム?人生はゲームじゃないよ、真剣に生きるべきだよ?
「そうだよ歌歩ちゃん! みんなで人生ゲームやってたら私と清志くんが結婚マスに止まっただけなの。いくらなんでも生涯の伴侶に清志くんは選ばないよ~」
「あ、そうなんだ……。そうだよね。そんな奇特な趣味の変な女がこの世にいるわけないよね! あはは」
「三上、それはお前にブーメランが刺さるやつだと思うぞ」
……え、あれ?もしかして私、とんでもない勘違いで暴走してた?……やだ、どうしよう恥ずかしい。
「ご、ごめんなさい! お邪魔しましたーー!!」
「…………私、これちゃんと生きてるよね? 歌歩ちゃんにやられてないよね?」
「大丈夫ですよ、柚宇さん。いやぁ、流石に焦ったわ。ん? おい清志、どうしたんだ?」
「どうせ俺なんて誰とも結ばれるわけないよな。そんな奇特な趣味の変な女の子なんているわけないし、これが現実なんだ」
「おいおい、こっちもこっちで随分と沈んでるな」
「将来の夢は素敵な奥さんもらって子供に囲まれた生活を送ることって言ってたもんね~。歌歩ちゃんに言えばすぐ叶いそうなのに」
「取りあえず今後は人生ゲーム禁止っすね。清志、気を落すなって。お前と結ばれたい奇特な趣味の変な女はちゃんといるから」
サブタイトルの意味は『ゲームがないと生きていけない』ではなく『やってはいけないゲームをした結果、国近さんのライフが失われた(未遂)』です。
この最後のストックを放出するタイミングが分からなかったので、もう今日でいいやと思考放棄。次の投稿はワートリ3rdシーズンまでを目標にしていきます。