わぁ、鳥!   作:ゆーり

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B級ランク戦解説のお話ですが、ランク戦の描写はありません。


第二十五話「夏」

「まもなくB級ランク戦、ROUND3昼の部が開始します! 本日はB級上位の生駒隊、弓場隊。そして弓場隊から独立し、B級中位を駆け上がってきた王子隊の対戦です」

 

 そういえば俺ってランク戦解説に呼ばれたの初めてだなぁ。

 

「ええと、本日のランク戦解説は少々変則的になっております。実況はわたくし武富桜子ですが、解説には元A級の竹尾隊員とオペレーターの結束先輩をお呼びしています!」

 

「よろしくどうぞ」

「みなさんこんにちは。片桐隊の結束です」

 

 初解説の俺になぜオペレーターの結束を組み合わせたんだ?俺も上手くやれる自信がある訳じゃないし、放送事故あるんじゃないかこれ。

 

「竹尾先輩は今回が初めての解説役ですね。引き受けていただき、ありがとうございます」

 

 桜子ちゃんがこちらに頭を下げてくる。礼儀正しい娘は高評価ですよ。

 

「気にしなくていいよ。いつも楽しそうだなと思って見てたから。こちらこそ誘ってくれてありがとう。でも、この組み合わせはなんで?」

 

「実は以前からお願いしたいとは考えていたんですが、諸先輩方から『面倒を見る相方がいないと話が脱線する』と言われまして。防衛隊員だと三輪先輩か烏丸先輩をオススメされたんですが、日程が合わず終いで。結束先輩は、その、代役というかお目付け役ということらしく」

 

「いえ、お目付け役ではなく折檻役です」

 

 おい、なにを素面で言ってんだコイツは。漫才しにきたわけじゃないんだから、ツッコミはいらないんだよ。

 

「ツッコミなんて生易しい対応で済むと思ってるなんてお気楽ね。余計なことしたら即強制ベイルアウトよ」

 

 C級の子たちがすげぇざわついてる。そうだよな、意味分かんねぇよな。

 

「あのぅ、強制ベイルアウトというのはトリガーの新機能かなにかでしょうか?」

 

「桜子ちゃん、君は気にしなくていいんだよ。夏凛ちゃんの妄言だかうぉっ!」

 

 いきなり裏拳してくんな!席が狭くて避けづらいんだから!

 

「新機能ではなく、竹尾隊員が不適切な発言をした際に、このように物理で退場させる措置のことです」

 

 なにをさも当たり前のことのように語ってるんだ?脳味噌が筋肉に浸食されたのか?暴力はいけないことなんだぞ。

 

「私は筋肉ではなく、数字で殴る理論派よ。ランク戦のメンバーより先にベイルアウトした解説役なんて不名誉な称号を付けられたくなかったら、口は慎むことね」

 

 数字で殴るってなんだよ。やっぱり脳筋じゃないか。

 

「えっと、さすがにオペレーターが上位の戦闘員に勝つのは無理では?」

 

 ……そう思うよね。でもね、負けるんだよ。A級一位部隊で個人ランク一位のヒゲがいるだろ?彼ね、きな粉餅を食べてるときにくしゃみして、国近さんの顔面をきな粉まみれにしたことがあるんだ。即アイアンクローから顔面を床に叩き付けられてベイルアウトしたよ。

 

 ……そのまま強制土下座させられる一位なんて見たくなかったな。

 

「B級ランク戦なんて所詮は表の戦いさ。裏は既に狂暴なアマゾネスたちに支配されている。それが"ボーダー"防衛部隊の実態だよ」

 

 この問題は風間隊、二宮隊、嵐山隊の踏ん張りに期待するしかない。他のA級部隊はダメだ。普通に男側が負ける。

 

「A級ってオペレーターも強くないとダメなんですか!? 私、自信ないですよ」

 

「大丈夫よ、桜子ちゃん。トリオンという法則は拳で越えられる。それを今日証明してあげるから」

 

 そんな根底から覆りそうなこと証明しなくていいから。それに今日の俺は初のお誘いでテンションが上がってるからな。不適切な発言もベイルアウトもないぞ。

 

「そんなことより、各隊が最終打ち合わせしてんだから、ほらほら得意の数字でいい感じのこと語って?」

 

「ちなみに、オペレーターにトリオン体を破壊された回数ランキングは、竹尾隊員が二十四回。二位にトリプルスコアを付けて不動の一位です。二位は太刀川さん七回、三位は当間先輩の五回です」

 

 誰がそんな数字を語れって言ったよ。というかあの二人、いつの間にそんなに破壊されたんだ。あんまりオペレーターを怒らせちゃダメだぞ。

 

「ポジション別の一位は、オペレーターにトリオン体を破壊されなきゃいけない決まりでもあるんですか?」

 

 その説が間違っていることを立証できるかは射手と銃手に懸かってるな。……里見はそのうち草壁に壊されそうだけど。

 

「えー、そうこう言ってるうちにランク戦スタートしました。マップは『平野B』ですね」

 

「数あるなかでも最大級のクソマップがきましたね」

 

「え? 確かに平野マップは戦術の介入する余地が少なく、隊員の実力差が顕著に出るので盤狂わせがあまり起きませんが、ステージの選出率は割りと高いというデータがありますが?」

 

 それはある時期に異常に選出されてた名残ですね。

 

「クソマップ認定は竹尾隊員が個人的に毛嫌いしているだけなので気にしないでください。……ここ半年ほどで集計すると、平野マップの選出率は低いです。ですが、竹尾隊が現役だったころ、対戦相手から五割を越える確率で選ばれていました」

 

 バカの一つ覚えやめてほしいよね。

 

「五割!? それはまたなんで? 竹尾先輩はそんなに平野が苦手だったんですか」

 

 いやべつに。選出率が五割越えだからって、俺たちの勝率が悪かったわけじゃないし。

 

「苦手だったからではなく、サイドエフェクトの優位性をできるだけ消すための苦肉の策ですね。悔しいですが、障害物の多いマップで竹尾隊に勝ちの目があったのは、極少数の部隊だけです」

 

 結束たちからも沢山ポイント貰えて美味しかったです。

 

「ぐっ。いつもいつも私たちの隊ばかり狙って。あれ八つ当たりでしょ、みっともない」

 

 負け犬の遠吠えは耳に心地いいなぁ。

 

「片桐隊が竹尾隊に負け越していた、ということでしょうか?」

 

「いや、片桐も居たけどこれは第二期東隊の話だね。一期の東隊に苛められてから、どうしても優先的に倒す癖が付いちゃって」

 

 残しておくと、太刀川隊とやってるときに漁夫の利狙ってきて邪魔だったし。

 

「で、そろそろ新しい隊は組まないの? リベンジしたいんだけど」

 

 隊どころかオペレーターの当てもないんですが。

 

「宇佐美に玉狛来ないかって誘われたなぁ。最近はA級の順位も変わり映えしないし、ノーマルトリガー装備にした玉狛と一緒にランキング荒らすか?」

 

「絶対にやめなさい!」

 

 そんなに嫌がるなよ。仲間外れにしたら玉狛が可哀想だろ?

 

「やっと片桐隊のA級入りが見えてきた大事な時期なのよ! そんなチート部隊の相手して調子崩れたらどうするのよ!」

 

「あのー、海老名隊も順位落ちそうなので止めてほしいんですけど」

 

 むぅ、確かにB級下位だといい経験云々以前の問題になるか。

 

「この前、オペレーター見つけようと本部配属の子たちを青田買いしに行ったけど成果は芳しくなかったし、いっそスカウト旅に付いていって俺のこと好いてくれそうな子を探そうかな」

 

 どうも俺に対して誤った認識が広がっているのか、話しかけようとしても避けられて遠巻きに見られているだけだった。

 

「その条件はトリオンモンスター見つけるより困難でほぼゼロだから諦めなさい」

 

 一人くらいはいるかもしれないだろ!?失礼だなぁ、おい!

 

「……あ、ランク戦終了です。五対二対二で生駒隊の勝利。開始からわずか六分三十秒のスピード決着です」

 

……やべぇ、適当にダベってたら対戦終わっちゃったよ。

 

「……生駒旋空で最初に弓場隊長が落ちたのが勝負の分かれ目でしたね。初期の転送位置が各隊共に合流しやすかったのも大きい。どの隊も待ちの作戦ができないわけではないですが、攻めが本領です。積極的にポイントを奪いにいった結果、早期決着になりました。王子隊は手の内が知られてるからか、弓場隊長が落ちたあとの弓場隊から点を取りきれなかったのが痛かったですね」

 

「……生駒隊はポイントを先取した場合、そのまま勝ちきる率が非常に高いです。四人部隊という数の利がより大きく作用するからでしょう。その分、オペレーターには普段から負担が掛かり、高い技量が要求されます。細井さんの丁寧な仕事がこの結果に繋がりましたね。生駒旋空は弓場隊長対策に編み出された絶技ですが、結果的に多くの攻撃手が苦戦を強いられており、今後は各隊が戦術の転換を強いられていくことになるかもしれません」

 

 ……ぎ、ギリギリ最後に解説っぽいこと言ったからセーフ、か?

 

「お二人とも、本日は解説ありがとうございました。解説役として呼ぶことはもうないと思いますが、いちおう礼儀としてお礼は言っておきます」

 

 ですよねー。




結束ちゃん:
清志のトリオン体破壊数を律儀に数えている数字フェチ。計測期間は約半年なので、上位ランカー三人は月に一回くらい壊されている。清志の臨時オペレーター赴任率が高いランキング第四位。元々はそんなに仲が良いわけでもなかったが、ランク戦リベンジのデータ集めに役立つと思って引き受けていた。が、臨時オペ中に清志のSEの情報処理をしようとしてしまい、かなりエグい光景を視ていることを知ってしまった。それ以来、態度が軟化しておりなんだかんだ優しくて付き合いがいい。

ぶふふ……って鳴く変態:
お目付け役の先輩オペレーターがまさかバカと漫才をはじめて解説放棄するとは思わず、最後まで指摘できなかった。ちょっと先輩たちの人格が心配になった。その後、年上か年下と組ませると清志が大人しくなる法則に気付いたので、解説役として上手く使っている。
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