わぁ、鳥!   作:ゆーり

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皆さんなんとなく気付いてるとは思いますが、清志は二つ目サイドエフェクト『思考漏洩体質(弱)』を持っているため「」のない脳内発言も相手に伝わり会話が成り立ちます。本当はバカなので全部顔にでてるだけです。


第五話「遥」

「おや珍しい」

 

 今日は非番なので少し勉強してから帰るかと図書室に向かっていると、教室に綾辻が残っていた。ボーダー隊員の中でも屈指の多忙さを誇る嵐山隊は本部に詰めていることが多いのだが。ちょっと気になったので近づいてみると、カラフルなペンを使ってなにやら書いているらしい。

 

「それは何を書いてんだ? 美術の課題か?」

 

「あ、清志くん。これはね、ボーダーのマスコットキャラクターを考案してるんだよ」

 

 ほう、マスコットね。ボーダーはその性質上秘密主義だが、あまりに閉鎖的だと外部から余計な干渉を受ける。だから顔の良い嵐山隊に広報をさせたりしてイメージアップを図ったりもするのだが……その一環か?

 

「へー、それで遥ちゃんはどんなキャラクターにしたの?」

 

「じゃじゃーん、これです! どう? 正義の味方っぽいカッコよさの中にも愛嬌があるでしょ!」

 

 うーん眩しい笑顔だ。ボーダーのマドンナとも言われる六頴館イチのモテガールなだけはある。さてマスコットはというと……んー?いやこれはなんだ。全体的に赤い。上の方から角みたいになんか二本飛び出してる。周りには靄のようなものがある。

 

「キャトルミューティレーションされた赤鬼の死骸……か?」

 

「死骸!? 全然違うよ! 戦う赤色のヒーローだよ!」

 

 俺は視覚情報の分析にはそれなりの自信があるが、審美眼についてはぶっちゃけ微妙なんだよな。加賀美さんの作品も良し悪しがどうこうとか判断付かんかったし。どうやらこれも割とコテコテのヒーロー像を描いたようなのだが全く分からんかった。

 

「もー、いけないんだよ? 女の子の描いたものをそんな風に言うなんて。こういうときに求めてる答えをちゃんと返せるのがモテる男の子なんだよ?」

 

 そう言って頬を膨らませてこっちをジト目で見てくる綾辻。おお、これがモテ女のテクニックか。モテない判定を下されたというのに胸はキュンキュンしてる。ま、まぁ?俺クラスのイケメンならニコポナデポとかいう近界の国みたいな名前の才能持ってるだろうし?ちょっと笑顔で頭を撫でれば皆イチコロよ。……期待のスーパールーキーって言われてる木虎にやってみたら一殺されたけど。

 

「悪い。俺あんまり美的センスはなくってな。ちょっと教えてくれると助かる」

 

 綾辻は専攻とか趣味ってほどハイレベルでもないだろうから教えてもらうにはちょうどいいかもしれん。

 

「へぇ、珍しいね。清志くんが素直に謝って頼みごとしてくるなんて」

 

「いや、俺をなんだと思ってんの。近界民以外には優しさと愛しさで溢れてるピュアボーイよ?」

 

 近界民には切なさが溢れて初手旋空三連+バイパーしてしまうかもしれないが、これは仕方のないことだろう。

 

「人を頼るの下手すぎ。よく分からないまま女の子に告白しすぎ。任務中は怖い。あと亜季ちゃんとの喧嘩、学年中で話題になってたよ? それに風間さんとは仲直りできたの?」

 

 え?唐突にダメ出し三連されたんですが。速すぎてシールドが間に合わない。氷見は俺と辻ちゃんの談笑に割り込んできただけで別に喧嘩した訳じゃないし。俺をモテない認定してたことはハラワタ煮えくり返るが。……風間さんとは合同で任務したときの連携には問題でてないからいーんだよ。

 

「またそんなこと言って。あんまり任務で歌歩ちゃんに負担掛けちゃダメだよ? ただでさえ学校でも珍獣の飼育で大変なんだから」

 

「ああ、栞ちゃんに奈良坂に辻ちゃんと三匹もいるもんな。俺もフォローできるように気にしとくよ。あと臨時のオペも他の子に頼むようにするわ」

 

 満点の回答をしたつもりなんだが綾辻の顔がなんか怖い。口元は笑みなのに眼光が鋭すぎるんですが。

 

「はぁ。当人たちがそれでいいなら、外野があれこれ言う事じゃないんだけどね。あと、臨時オペは今のスタンスから変えちゃダメだから」

 

 負担減らさなきゃなのに変えちゃダメなの?……なんか綾辻って腹黒い訳じゃないけど、才色兼備の優しい女性ってだけでもなさそうなんだよなー。まったく人間てのは奥が深いぜ。

 

「遥ちゃん、俺、君のことをもっとよく知りたいんだ。俺と付き合ってくれないかな?」

 

 思い立ったが吉日。セカンドトライだが、どこぞの弾バカも『百の弾丸で当たらぬなら千発撃つべし』と言っていた。数撃ちゃ当たるのである。流石はA級一位部隊の射手。発言が含蓄に富んでいる。

 

「……放課後に二人っきりの教室で告白。前よりは情緒について考えられるようになったと思うべきなのかな? でもダメです。いきなりすぎるし告白に至った経緯に何か不快なものを感じました」

 

「そんなぁ」

 

 とても残念だが、まだ九九八回のチャンスがある。気持ちを切り替えて明日サードトライしよう。

 

「なんだか大きな勘違いをしてそうだけど、今のままじゃ何回きてもOKしないよ?」

 

「まかせて。ちゃんと何がダメだったか考えて直してくるから」

 

 トライアル&エラーで自分を高めていくのはボーダー戦闘員にとって基本であり最奥の心得なのだ。

 

「……大丈夫だと思いたいけど、いつか本当に直しきってこっちが陥落させられそうなんだよねぇ。私も気をつけないと」

 

 綾辻がなにか呟いている。やはり振ったことを後悔しているのだろうか。もしやここでサードトライすべきか?弐撃決殺という言葉もあるらしいし。

 

「あ、なんか結構時間経っちゃってるな。すまん、忙しい合間を縫ってやってたんだろうに」

 

「それは気にしなくていいよ。正式にマスコットを作るって決まった訳でもない試案なの。息抜きついでに考えてただけだし。一応、いい案が出るかもしれないから嵐山隊と広報部でプレコンペはするんだけどね」

 

ほー、嵐山さんや時枝にそっち方面のセンスがあるのかは知らないけど、二人ならどんなの作るかは気になるな。俺もコンペ覗かせてもらおうかしら。

 

「あ、こんど嵐山隊に藍ちゃんが入るのが決まったんだけど、スコーピオンとハンドガンの同時使用に苦戦してるみたいなの。清志くん、弧月とバイパーでスタイル近いし何かアドバイスしてあげてくれない?」

 

 ……別にいいけど、俺あいつに一殺されたあと『あなたみたいな浮ついた人、どうせ他の部隊メンバーにぶら下がってA級になったんでしょう?』って摸擬戦挑まれたから、華麗に十タテしたら目の敵にされちゃったんだよなぁ。言う事聞かないと思うよ?

 

「表面だけ見て実力をちゃんと測ろうとしなかったことは裏で反省してたよ。それに、清志くんの任務モードなら五分も経てばすぐ言う事聞くようになるから大丈夫」

 

 任務モードって人をまるで二重人格みたいに……。あとあれ、初見だと半泣きになる子が続出したから訓練で女子には遠慮したいんだが。

 

「ふふ、お願い」

 

「まかせろ。一か月でマスター級にしてやる。」

 

手を合わせてウィンクしながら頼まれちゃあしょうがない。テンション上がってきたわ。こうしちゃいられねぇ、本部に木虎捕まえにいこう。土日はあいつと朝までコースだな。




竹尾 清志PROFILE5
右手に弧月(旋空)、左手にバイパーの器用万能攻撃偏重型オールラウンダー。
サイドエフェクトがあるためタイマンでシールドを使わされることがほぼない。
向かい合ってよーいドンの場合は一旦逃げるか、イコさんや弓場ちゃん並の攻撃速度・威力で即死させないとバイパーの時間差全方位攻撃と旋空連射してくる。

・綾辻さんの案はこのあとコンペで無事落選となりました。
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