わぁ、鳥!   作:ゆーり

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本作初の戦闘描写(?)
鋼さんが今ちゃんを何と呼ぶか知らないのですが『今』呼びだと非常に分かりづらいので『結花』設定を採用。

喧嘩を売りづらい女の子と硬派な年上男性はバカの発言が大人しくなってしまうのが難点。
わたし意外にひゃみさんを喧嘩売りやすいと思ってる人はいない気もしますが。


第七話「鋼」

「フッ!」

 

 視界を覆うよう目の前に突き出された盾モードのレイガストを払いのけるため、右手に持った弧月を左に振るう。盾と競り合いになるかと思えば勢いを殺しきらない程度にレイガストが引かれ予想外に体が前のめりになった。

 

「ッ!」

 

 狙いすましたかのように相手は反対の手に持った弧月を振り下ろしてくるが、手首の返しで自分の弧月とレイガストの衝突に勢いをつけ、反動で半身に体を引いて躱す。……ふぅ。体勢を崩させるためにレイガストを引いたから、開いた構えになって斬撃に勢いが足りなかったな。ちゃんと踏み込んだ斬撃だったら落とされてたかもしれん。

 

「まーた盾の使い方が厭らしくなりましたね。鋼さん」

 

「戦いの場では容赦なく徹底的に相手の嫌がることをしろと、デキる先輩が親身に教えてくれたからな」

 

 ちょっと笑顔に黒さが混じってるように見えるのは『へぇー、強化睡眠記憶? 一日でどれ位詰め込めるか試すか』って五本&十五分休憩ワンセットの摸擬戦を十時間ぶっ続けたことを根に持ってるんだろうか。最後の方は休憩から起きてこないから顔にビンタして無理矢理起こしてたからな……。

 

「で、どうだった? いささか不格好だが、生身と違ってトリオン体は攻撃時に力を込めやすい体勢が必須って訳じゃない。相手を崩せることを考えれば差し引きではプラスだと思うんだが」

 

 俺の基本戦闘スタイルは近接で防御主体のカウンター狙いと、中距離に下がりながらの旋空とバイパーだからなぁ。攻めさせられて、踏み込んで防御に割けるリソース減らされるのが一番対処に困る。よっぽどの攻撃手じゃなければそのまま斬れるんだが鋼さんはほんと対応がはえーわ。

 

「盾でこっちの視界を制限するのはかなり有りですね。透けてるとはいえ普通に邪魔だし行動も阻害できます。今はともかく、あと数か月くらい鋼さんが腕を磨けば大抵の攻撃手は不用意に下がったところから押し切れます。前に出てきた場合は……まぁタイマンだと相手のトリガーにもよるので状況次第ですね」

 

 実際は無理に盾を跳ね除けようとしてきた相手の体勢を崩して来馬さんか別役に取らせるチーム戦用の動きだろうし。

 

「やっぱり一度使えば見抜かれるか。トリオン兵には意味ないが、ランク戦なら見知った相手の動きは読めるようになる。盾の透過率を下げるのも手かもな」

 

 あ、この人、盾でお互いが見えなくなった状態から一方的に次の動作読み切って落とす気だよ。こえー。

 

「もう何本か頼めるか? スラスターを使うタイミングをもっと見極めたいんだ」

 

 ……そうですね。俺は接近戦だと歩幅を小さく振りもコンパクトに連撃するから、押し切られそうになったらスラスターで一気に下がって状況をリセットするのが有効ですもんね。他の相手ならそのまま旋空なんだけど鋼さんコンマ五秒に盾を合わせてパリィしだしたからなぁ。俺も一本で連射じゃなくて二刀流にしようかしら。

 

「お前が何百回と旋空で叩き斬ってくれたおかげで、やっと太刀川さんや生駒さんにも瞬殺されなくなったよ」

 

 まーじかー。あなた、まだ入隊して半年も経ってないですよね?上位の戦闘マニア共とバチバチやってんのに弧月が既に八千点超えそうなのヤバない?どんだけ他の連中からポイント吸い上げてんだよ。

 

「あと、できれば仮想マップでのバイパー使用も頼みたいな。ランク戦ではあれに対応するのが一番苦労しそうだ」

 

「勘弁してください。俺が那須隊に怒られちゃう」

 

 鋼さんが求めてきてるのは完全にB級中位~上位を狙いうつための対策だ。旋空に加えて、俺は那須や弾バカほどではないがバイパーの弾道を引くことが多い。サイドエフェクトで相手が攻め気を持った瞬間に場所が分かるから、先手で当てるために効率の良い弾道を研究しまくった。当然、ボーダー最高峰のバイパー使いが好む弾道や傾向も研究済みだ。

 

「そうか、残念だ。今日は鈴鳴支部で結花がご馳走を作るって言ってたから、お前も誘おうかと思っていたんだが」

 

「王子隊、生駒隊、東隊、諏訪隊、荒船隊、ここは戦闘員が野郎だけなんで全員の弱点売りますよ。それで手打ちにしませんか?」

 

 武人肌な鋼さんがこんなダーティーな手段を取ってくるなんて。やっぱり人は競争の中でキレイなままはいられないんやな……。

 

「清々しいほどあっさりと五倍の情報を漏らそうとするやつに清濁の話をされるのは釈然としないんだが」

 

「いえ、対策されたとしてどう迎え撃つかを即時判断するのもランク戦の意義なので、全く問題ありません」

 

「お前、それ何いっても『ランク戦の意義なので』で通すつもりだろ。やれやれ、まだメニューのリクエストも間に合うかもしれない。何か好物はあるか?」

 

 ……おいおいおい、これじゃ俺バイパーも使いたくなっちまうよ。一個上の攻撃手たちはイケメンが多くて困っちゃう。ごめんな那須。今度、出水から聞き出した合成弾のコツ横流しするから許してくれ。

 

「あと、まさかとは思うが結花にも告白するつもりなのか? 節操がないのはあまり感心できないぞ」

 

 むむ、鋼さんにはそう見えてしまうか。まぁ、恋に恋してる状態なのは否定できないんだけど。

 

「でも鋼さん、結花さんみたいな美人で気立てのいい料理上手な女性が居たら控えめに言って惚れても仕方ないのでは?」

 

「結花の魅力は否定しないがな。それ以前の女性に告白したのは何だったんだってなるだろ」

 

 普通ならそうなんだけど、ことボーダーの女性陣はレベルが高いからなぁ。今さんでも明確に勝ちと言えない魔境なのだ。でも、そう言われてしまっては改めざるを得ない。

 

「分かりました。これからは結花さん一筋で『竹尾隊員、竹尾隊員。鬼怒田室長より開発室への招集命令です。至急、開発室までお越し下さい。繰り返します』……呼び出し?」

 

「何も心当たりはないのか?」

 

 どうだろう。色々と新型トリガーの意見とか出したりはしてるけど、鬼怒田さんが事前に連絡もなく呼び出すとは思えないけど。

 

「よく分かりませんが急ぎの用なんだと思います。すみません、手合わせはまた今度。鈴鳴支部へのお呼ばれも無理かもですね」

 

「夕食まではまだ時間がある。途中からでも来てくれればいいさ。ダメでもまた機会はある」

 

 うーん、この男前に仏と大和撫子だろ?ちょっと人間性が善に振り切れてないかあの支部。

 

「ありがとうございます。それじゃあまた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いやー、ギリギリセーフ。あいつ変なところで思い切りが良すぎるでしょ」

 

 惚れた娘に一筋ってのは大いに結構だが、相手をその日話題に出た娘にするってのはどうなのよ。最近はだいぶマシになってきたけど、やっぱまだ見境がないな。……ま、俺も同じ状況ならどうなったか分からんし、選んだ責任は取らなきゃな。

 

「まったく、実力派エリートは大忙しだ」




竹尾 清志PROFILE7
好きなもの:家族、広い空間、散策、ハンバーグ

・実力派エリートのインターセプトがなければ今ちゃんルートが確定し、清志が鈴鳴に入ってラブコメになってました。あぶない。

コメディにシリアスの伏線なんていらんでしょ、とは思ってるんですが主人公四人が誰も出ないのもどうなのかと考えた結果、暗躍してもらいました。

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