わぁ、鳥!   作:ゆーり

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清志の嫌いな隊員は風間さんですが、風間隊との仲は別に悪くありません。
前半、菊地原と酷い罵り合いをしているので苦手な方はこの話スルー推奨です。
イメージはポメラニアンのじゃれあい。気の置けないやり取りができる相手です。


第九話「菊」

「あ、やっぱりバカの足音だった」

 

 廊下の角から現れた捻くれた面したやつがいきなり失礼なことを言ってきた。バカの足音ってどんなのだよ。詩的表現か?

 

「は? 常時聞き耳たててる昼ドラの性悪女みたいなやつにバカ呼ばわりされる謂れはないんだが」

 

「……へぇ、"元"A級の分際でデカい口叩くじゃん。なんでランク戦戻ってこないの? もう上がってこれないって限界感じちゃった?」

 

 はぁん?コソコソ隠れてチクチク嫌がらせするしか能のないチキン部隊にしちゃ勇ましいな。どっちが上だったか、思い出させてやろうか?

 

「いい加減ムカついてたんだよね。そろそろ身の程を弁えさせてあげるよ」

 

「ただ勝負するだけじゃつまんねーよな? 何か賭けるか。あぁ、怖いならなしにしてやってもいいぜ?」

 

「安い挑発だね。もうちょっと語彙を身に付けてきたら? ……昼食一週間奢りでどう?」

 

「のった」

 

「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。言葉の応酬に対して賭けの内容が健全すぎるでしょ」

 

なんだ歌川。特に口も出さずに見てるから止める気ないのかと思ってたのに。それに不健全な賭けしたらダメだろ。

 

「おかしいでしょ。もう関係修復不可能なレベルの罵倒してたのにそれでいいんですか!」

 

「昼食一週間なら高いの選んだら一万円近くするじゃねーか。中高生には中々痛い出費だぞ」

 

 バイトだと一日フルタイムでも足りないかもしれん。こいつのためにそんな労働するとか考えたくもない。

 

「この人のためになんて一円も使いたくないからね。数千円なんて精神病むよ」

 

 ほー、気が合うじゃないか菊地原。別に嬉しくねーけどな。

 

「どうせまた、脈もないくせにあっちこっち女の人に告白してんでしょ。猿なの?」

 

「おーおー、風間さんの金魚のフンが吠えるじゃねーか。守ってくれる隊長は今ここにはいねーぞ?」

 

「あんたなんて僕一人で十分……喉乾いてきたから続きは食堂でしない?」

 

 あー、確かに。こっちも戦闘訓練の帰りだったわ。

 

「食堂に期間限定でチョコバナナイチゴミルクシェイクが売ってるらしいんだよな。奢ってやるから一緒に飲もうぜ」

 

「……あの、前から思ってたんですけど、清志さんと菊地原はどういう関係なんですか」

 

 どういう関係。…………どういう関係?

 

「ボーダーの仲間で以前はA級ランク戦のライバル?」

 

「バカな先輩とできた後輩」

 

 俺のことバカって言ってくるやつ多すぎない?男でそれ言っていいの東さんとか蔵内さんくらいのはずなんだが。あと、その自信はどっから来るんだ。

 

「仲悪いんですよね?」

 

 良くはないかな。こいつ口を開けば人を悪く言うからな。こう、先輩に対する尊敬とかないわけ?

 

「冗談でしょ。風間さんならともかくなんであんたなんか。あ、先輩ぼくお腹も空いたんで料理頼んでいい?」

 

「しょうがねぇなー。晩飯食えなくならない程度にしとけよ。歌川、お前も頼めよ。なんにする?」

 

 俺もシェイクだけってのもなんだし、ガッツリ食うか。

 

「菊地原のために労働するなんてあり得ないのでは……?」

 

 売り言葉に買い言葉なとこあるからなー。俺、金使う趣味とかないから気にする必要はないぞ?

 

「寂しい部屋だったもんね。なんの面白みもなかった」

 

 そりゃボーダーから貸してもらってる部屋なんて大して広くもないからな。家具とか買っても搬入面倒だし。

 

「え? 菊地原お前、清志さんの部屋に行ったことあるのか? 俺はないぞ」

 

「そういや歌川は来たことなかったな。菊地原は月に一、二回くらい菓子を食べにくるぞ」

 

「常連じゃないですか! というかお前、先輩の部屋に菓子食いにだけ行くとか失礼だろ!」

 

 もっと言ってやれ。こいつ『これスーパーの特売品じゃないですか高いのないんですか』とか何様なんだほんとに。

 

「小動物とか一匹だといつの間にか死んでることあるでしょ? 生存確認だよ」

 

 俺はゲージに入れられてるわけでも外に出ないわけでもないけどな。

 

「そういえばバカ先輩。最近、三上先輩の機嫌が悪いんだけど、ちゃんとしてよ」

 

「あ、それは俺も思ってました。何かあったんですか?」

 

 えー、なんだろ。

 

「朝方に訓練室から足ガクガク状態の木虎を支えながら出てきたって噂流れてるよ。根付さんが必死に消火作業してるから目立ってないけど」

 

「噂もなにもそれ事実だけどな」

 

「「……うわぁ」」

 

 何だよその顔は。木虎もスコーピオンで七千点超えたらしいし、かなりステップアップできたんだから成功だろ。最後に歌歩に見られたのは失敗だったが。

 

「頭おかしいんじゃないの。いやおかしかったか。それでよく無事でいられたね」

 

「無事じゃねーよ。そのあと逃げたんだが、トリオン体破壊されて部屋にベイルアウトしたら出入り口が強制ロックされてたからな。めっちゃ怒られた」

 

「それが普通では? いや非戦闘用トリガーのはずのオペレーターがトリオン体破壊できるのは異常ですけど」

 

 でもさ、もう俺へのお仕置きは済んだから怒る理由ないんじゃねーの?

 

「お仕置きというか憂さ晴らしですけどね。三上先輩にはなんて弁解したんですか?」

 

「なんだっけ。『木虎のことを考えず激しくしすぎた。これからはちゃんと様子を見ながら優しくする』とかそんな感じ」

 

「バカじゃないの」

 

 バカじゃないって言ってんだろ。実際そこが問題なんだからそう言うしかないだろうが。

 

「ちょっと待ってください。清志さん、なんで三上先輩が怒ってるのか言ってみてくれませんか」

 

「なんでって、まだ入って日の浅いやつに無茶な訓練させて体調崩させたからだろ」

 

 女性なんだから鋼さんと比べるべきじゃなかったな。配慮が足りなかった。

 

「全然分かってないじゃん。ここで女性ってことを配慮すべきは体力の話じゃなくて公序良俗のことだからね?」

 

 菊地原おまえ難しいこと知ってんな。

 

「ぶっとばすよ?」

 

 お前じゃ無理だけどな。

 

「なんでもいいから早くご機嫌取ってよ。こっちは迷惑してるんだから」

 

 機嫌ってどうやって取ればいいんだっけ。かなりのモテ男らしい歌川ァ、なんか案だせ。

 

「急に高圧的になりましたね」

 

「俺よりモテる男なんて邪魔なだけだからな」

 

「じゃあ人類の半分は邪魔ってことじゃん」

 

 やっぱコイツとはいっぺん立場をはっきりさせたほうがいいよなぁ、おい。

 

「話ぶれぶれですね。露骨すぎる気もしますがプレゼントとか、お二人は以前から知り合いなんですから一緒に出かけようって誘うとかが良いのでは?」

 

 ……風間隊ってこのあと任務だよな。じゃあ通信端末に連絡入れておくか。

 

「お願いします。これで今日の任務は胃が痛まずに済みそうです」

 

「えー、連絡入れるの任務終わってからにしてもらわない? 任務中に鼻歌聞かされると集中できないんだけど」

 

 さーてと、出かけるってどこに行けばいいんだ?詳しそうなやつ探さないとな。




デート回とかは特にないです。

誤字報告をしてくれた方、ありがとうございました。
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