side暦
昼食を食べ終えファミレスを後にした私たちは銖理について行く...
「銖理?境奈の話だけど?」
「それは車の中で話すッス...乗って...」
駐車場へ辿りつき、銖理は止めてあった黒いSUVの戸を開けて私たちを中へ乗せた後エンジンを始動させ車を発進させる...
「中々良い車だな...」
華楠は車の椅子に深く腰掛け感想を述べ、銖理はわずかながらに笑みを浮かべる...
「まぁ...銖理特製の車ッスから」
「へぇ...」
まぁ...彼女の金行の力を使う程度の能力なら、これくらい朝飯前か...
音楽の職に就いていても元の力は健在みたいね...
私たちを乗せた車はそのまま町を離れて、どんどん山の方へと向かっていく...
「境奈の居場所は遠いのか?」
「...うん...境奈姉の現在は山奥の工房で暮らしているッス」
「山奥の工房?」
私の言葉に銖理は溜め息をつく...
「そう...現在は能力を活かして陶芸家としてひっそりと活動してるッス」
あの派手好きな境奈が山奥で暮らしているとは少し意外ね...
しかし...少し不安が出てきたかも...
「何となく嫌な予感がするかも...」
「ついてみれば分かるッス...」
「...」
私たちは不安で心を一杯にしながら目的地につくのを待つことにした...
2時間後...
私たちを乗せた車は山奥まで進んでいく...
辺りは木々で生い茂っており、日がさしていないため薄暗い...
私の予想以上な場所に住んでいるみたい...
「すごい山奥だね...」
「...うん...誰も入ってこないと思うッス」
「まだ夜には早いぞ?真っ暗になってきたな...」
車の時計を見ると15:00過ぎたくらいだが辺りは暗い...
時間間隔が分からなくなるな...
しばらく車を進めていくと目の前に小屋のようなものが見え始め、車はその前で止まる...
「ここッス...」
私たちは車を降り小屋を観察する...
煉瓦づくりの小さな小屋だ...
奥の庭には作業場のようなスペースがあり、彼女がここで陶芸の作業をしていることが伺える...
「ここで頑張っているんだね...」
「...」
「おーい!境奈姉ー!」
銖理が呼びかけると扉が勝手に開く...
「...何よ...そんなに大声出さなくても分かるっての...」
中から出てきたのは黄色の長い髪をサイドテールにし白のベアトップに黒のミニスカートを身に着けた女性こと大神境奈...
彼女は眠そうな表情をしながらしばらく、ぼーっとしているが私と華楠の存在に気づき目を見開く...
「母さんに華楠?何でアンタたちが!?」
「お久しぶり~!境奈~!」
「久しぶりだな...」
彼女は私たちを驚きの表情で交互に見た後、ひとつ溜息をついた後私たちを見据える
「久しぶりね...家族そろってなんの用よ?」
境奈は両手を腰につけて昔と同じような雰囲気を醸すが...どこか暗い気がする...
「ちょっとお話があってね...」
「...そう...とりあえず入りなさいよ...立ち話もなんだし...」
境奈はそのまま小屋の中へと入っていく...
とりあえず私たちはお言葉に甘えて中へと入ることにした...
小屋の中は案外広く、リビングの他に部屋が3つといったところか...
リビングの棚には壺と皿が大量に置いてある...
境奈の作品だろうか?
「ほう...これは中々...」
華楠が壺の1つを手に取り境奈はどうでもよいかのように頭を掻く...
「あ~華楠?それ1つ500万だから...気を付けてよ~」
「500万!?」
華楠は壺を持ったままその場に硬直する...
500万とは...
中々の値付けだこと...
「売れてるの?」
境奈は華楠の手から壺をとり、私に見せる
「一応ね...金持ちには分かる人が多いのよ...アタシの能力で土を最高にまで引き上げて、それを構築して作品にする感じね...」
私は良くは知らないが壺を良く見ると独特の光沢があり、見る者を引き付けるような力を感じる...
「見事な御手前で...」
「ありがと...」
壺を元の場所に戻して境奈はソファーに座る...
「で?本題だけど...3人そろって何の用なの?」
境奈は短刀直入に私たちに疑問を述べる...
この子の性格上...変に話を伸ばすことは止めておいた方がいいわね...
私たちは真向いのソファーに座り境奈と対峙する...
「う~んとね...すごい言いづらいんだけどさ...今後の大神家のことについて話しに来たんだけど...」
「...何となく分かってたけどさ...何で急に?アタシらは900年ぐらい前に解散したじゃない!?何?また再結成でもするってわけ?」
「...半分はその感じよ」
「はっ?全く何を今更...何の心変わりがあったんだか...」
境奈は不機嫌そうに鼻を鳴らす...
やはり銖理の言うとおり、境奈は一筋縄ではいかないか...
表情を見る限り乗る気ではないみたいだ...
だが今後の大神の未来を話さなくてはいけない...
この子達の幸福のためにね...
「もう半分の用件は...大神家の幻想郷入りについてよ...」
「なっ!?」
境奈は呆気にとられたような表情をする...
幻想入りの事までは予想はついていなかったみたいだ...
だがこの焦りようは他にも何かあるような感じがする...
「な...何で?何で幻想入りの必要があるのよ!!」
境奈は机をヒステリックに叩き喚く...
「...外の世界は私たちにとって住みづらい世界になったのよ...これは私たちの未来のためでもあるってわけ」
「住みづらいって...そんなこと...は...」
「頭の良い貴女なら気づいているはずよ...華楠も銖理も潤香も...この案に賛成してくれたわ...」
「...嘘でしょ」
境奈は信じられないといった表情を浮かべて華楠・銖理を見つめる...
「お前も分かるっているんだろ?母さんの言った通り我々が住みづらい世の中になってきていることが...」
「境奈姉...」
「アンタたちまで...」
境奈は頭を抱えて机に突っ伏す...
境奈はしばらくその状態で唸っていたが急に立ち上がり、ふらふらと他の部屋へと歩みを進める...
「境奈?」
「少し考えさせて...他の部屋使っていいから泊まっていって...」
境奈はそれを言うと部屋の中へと入る...
この感じを見る限り境奈にも思うところがあるみたいね...
「母さんどうする?」
華楠は心配そうに私を見つめるがこれは境奈自身の問題だからね...
「とりあえず泊まっていい許可は下りたんだし今日は泊まっていくしかないみたいね...ゆっくり彼女の決断を聞いていこうよ...」
ソファーに座り私は彼女のことについて深く思案を巡らすことにした...
娘の迷いを聞くのも私も役目なのだから...
時間がなかなかとれない...
ではこれにて