私を殺せるのは母さんのみだ...
by大神華楠
side幽香
「...これで終わりね」
私は足下に倒れている華楠を見る...
退治屋の中で最強と呼ばれている大神家のナンバー2がこのザマとは...あっけなく終わってしまったわね...
しかし彼女の噂は...大神家ナンバー2と呼ばれていたわりには大したことがなかった...動きは鈍く殺傷性の低い攻撃など...
これじゃあ他の大神家の者もたかが知れるわ...
「大口叩いていたわりにはあっさりとしていたわね...他の陰陽師と同じだったわ」
彼女を一瞥し私は家へと戻る...死体は明日処理すれば良いだろう...
「中々の手なみだ...」
「!?」
振り向くと地に臥していたはずの華楠が起き上がっていた...
心臓を一突き致命傷のはずなのに...只の人間が起き上がれるはずがない!!
「...軽く三途の川が見えた...初めてだよ...私に致命傷を負わせるものがいるなんてな...」
華楠は胸を軽くさする...
胸の部分が破れた巫女装束の穴を見ると傷らしいものは全くなかった...完全に治っている...
「な...何で只の人間が?」
「...人でもあり妖怪でもある...それが大神家の者の秘密だ」
華楠が言うと体に体に変化が起き妖気が流れ始める...頭には緑色の狐耳・尻には巨大な緑色の尾が1本現れ人とは違う姿になる...
「狐...まさか妖怪なの?」
「正しくは人間・妖怪の姿を持つ存在だ...私の家系は少々特殊でな...」
華楠は口に垂れている血を舐めとり不敵に笑う...
回復が早い...妖怪の姿を持っていたとしてもそこまでの再生能力はない...ということは...
「...何かの能力かしら?」
「ああ...私の能力だ...木行の力を使う程度の能力...自然・生命エネルギーを使うから体の傷なぞすぐに治癒してしまう...首を刎ねようが心臓を潰そうが私にとってはすぐに治る」
「...一種の不死の能力ね」
「...そう思ってもらったほうが説明しなくて済む」
華楠は涼しい顔で答える...不死...流石は大神家のナンバー2だけはあるわね...フフ
「...でも!その分潰しがいがあるってものよね!!」
私が華楠に攻撃するが彼女は私の腕を掴み止める...
「...中々妖力がありそうだ」
「まだ!終わりじゃないわ!」
私は華楠のもう片方の手で首に刺突を食らわせる...彼女は首から大量の出血をするが全く表情を変えない...
「...ケホ」
「全く...頑丈ね」
私が更に力を込めようとすると華楠は笑う...
「...これで!能力発動だ!」
「何を言っているの?な...」
私の体に急に脱力感が起き始める...体中の力が抜けて私はその場に崩れる...彼女の顔を見ると満足そうに笑みを浮かべている...
「...美味しい妖力だ...ご馳走様」
「貴女...何を?」
「君の能力を吸い尽くしただけさ...これが本来の私の戦闘スタイルでね...相手を衰弱させるのも楽ではないな...しかしまだ意識があるのは驚きだ」
華楠は私の埋めたところを掘り返し陰陽師の骨を取り出している...
「これが目標の骸か...」
彼女はそれを風呂敷の中に包み着物についた埃を落としている...
「...くそ!」
体が思うように動かない...これは今までで一番マズイ状況かもしれない...
華楠は私の方へ首の傷を治しながらゆっくりと近づいてくる...
「...さて早く終わらせるか」
華楠の片腕に雷が走りそれを私に向ける
「...くっ!」
「安心しろ...一撃で楽にしてやる」
華楠が私に刺突を繰り出す...応戦しようにも体に力が入らないっ!
プシュン...
「ん?」
華楠の腕から雷が止まり彼女は攻撃を止めて空を見る...
空は夕日が沈み始めており辺りは薄暗くなってくる...
彼女は軽く舌打ちをする...
「...時間か」
攻撃を止めた?一体どういう事?
「...何よ」
華楠は溜息をつき私に近づき私を抱えて私の家へと向かう!?
「ちょっ!貴女!何のつもりよ!!」
「...このままほっておくのも危ないだろう?すでに私の仕事は終わった」
「貴女退治屋でしょ!?」
家の中に入り彼女は私をソファーに寝かせる...
「...こんなっ!屈辱っ!!」
「生きていればそのくらいのことはいくらでもあるさ...では失礼」
華楠は風呂敷を持って外へ出る...
「っ~!」
私は弱々しくソファーを殴る...
負けたばかりか...こんな屈辱...
大神華楠...覚えていなさい!!
side潤香
「...暇ですね」
欠伸をしながら私は山奥に沈んでいく夕日を見る...情報の伝達のためとはいえ一日中宮廷で時間を潰そうとなると退屈なものがあります...
銖理お姉様は琵琶を奏でていますがそれが逆に眠気の素になりますね...
とりあえず華楠お姉様が帰ってきたら今日は引き揚げましょう...
「...お母様達も本日は遅くなりそうですし...今晩の夕食は何にしましょうか?」
「...軽い...ものでいいと思う」
「軽いものですか...あら?」
「ただいま...銖理に潤香」
廊下の向こうから華楠お姉様が現れる...
本日の仕事は無事に済んだ...
と...この時は思っていましたが華楠お姉様のボロボロの格好を見て私たちは固まる...
「華楠お姉様!?一体どうされました?」
「軽く2回死んだだけだ...気にするな」
華楠お姉様は何事もなく答えるがいつもの巫女装束はボロボロで胸のあたりは血で染まり黒ずんでいる...それに2回も死んだって?
「いやいや!大丈夫なんですか?」
「...私は不死だ...なぁ潤香?依頼の陰陽師の骸はどこに提出するんだ?」
お姉様は風呂敷を私たちに見せる...
「私が...やる」
銖理お姉様が風呂敷を持ち屋敷の中に進む...
「...随分と無茶をしましたね」
「ああ...思ったより強くてな...初めてだよ...私に致命傷を与えるものが現れるとな」
...致命傷って
...まぁ華楠お姉様は私たちの中では一番死ににくいしあまり心配はしませんがお姉様が重症を負うなんて驚きです
「...骸の回収でしたよね?」
「ああ...その陰陽師を骸にした奴と戦ってきた...中々強かったな...私のハートを貫くとは...」
華楠お姉様は笑みを浮かべる...どこか満足したような感じがありますが
「そうとう強かったみたいですね...で?ちゃんと始末はしてきたんですよね?」
華楠お姉様は空を指差す...
「...時間外だ半殺しにして帰って来たばかりだ」
「...は?」
「...そんな顔ををするな書状には陰陽師の回収のみと書かれていたんだ...契約違反ではないだろう」
...書状通りに仕事をしてきたんですか...私達姉妹の頂点に立つというのに何という余裕でしょうか?
「...私がとやかく言うとでもありませんが」
「...まぁ次の戦いが楽しみだ...久々に面白かったよ」
...楽しみ?私には理解できそうにない...戦いなど1回で終わらせた方がいいのに
何故でしょう?頭が痛くなってきた...
side華楠
「...うう」
潤香は頭痛でもしたのか頭を抱える...どうしたのだろうか?
まぁいい...少々時間が足りなかったため戦闘を中断したが中々の戦いができた...
「生きていれば何かが起きるか...少し楽しみになってきた」
いつか...私も...
幽香vs華楠の戦いでした
ではこれにて