寺から12km離れたところには大きな海岸があり、白蓮と潤香はそこで暴れている船幽霊を鎮めるために赴いていた...
白蓮自身は潤香の心変わりに少し驚きを見せたが彼女と心が通じ合い始めているのを実感し心を踊らせている...
side白蓮
「...さぁ...ここですね」
私達の目の前には見渡す限り大きな海が眼前に広がっていた...
きれいな青い水面で安全だったらすぐ近くにある村の子供達の遊び場・よい漁場になっていただろう...
「...きれいな海ですね」
「...ええ...ここはこの近くにある村の漁場にもなっていて、つい最近までは活気ある村として機能していました...」
そう...つい最近までは...
「あら?」
潤香は何かに気づき砂浜まで向かいある物を手に取る...
「これは船の残骸ですかね?」
彼女が手に持つ残骸は船の残骸である木の破片...長い間放置されていたのかところどころ朽ち始めている...
「...そうです...ここにあった村で使われていた船のなれの果てですね」
「...やはりですか...あっ...依頼書の内容は把握しているのでお気になさらず...」
潤香は残骸を砂浜に刺して村の方へ行く...
流石というべきか...すでにここの状況を彼女は判断しているようです...
私は潤香を追い村へ向かう...
海から少し離れた場所には向かうと私たちの目の前には荒れ果てた漁村が目に映る...
すでに人の気配はなく民家もボロボロに朽ちており雑草が地面に伸び放題になっている...長い時の経過の跡が見られている...
そう...ここはかつて活気のある漁村として賑わっていた...今はもうその面影もない...
「...随分と長い間人の出入りがないみたいですね」
「...ここには人はもう来ません...ここの海では漁はできないと見切りをつけて他の場所へ移住しました...」
「漁ができない理由としては船幽霊にあるというわけですね...一応報告では船の転覆が多発するとか...ですがここには人は住んでいませんし...相手は船幽霊で海に入らなければ無害なのに何故私どもに帝は依頼を出したのでしょうか?」
潤香は小屋を調べる...
「...妖怪を悪と決めつけているからでしょう...その船幽霊は苦しんでいるというのに何と無慈悲な...」
私の言葉に潤香は小屋から顔を出す...
「...苦しんでいる?」
「...幽霊というのはこの世に未練があり現世に留まることを余儀なくされた者が大半です...その者達は終わることのない苦しみを味わいながら仲間を増やそうとこのような行為にでてしまうのです」
「...死んでいる者は死ねませんし永遠に苦しむことになりますね」
「そうです...その苦しみから解放してあげるのが私ができる1つのこと...本来なら貴女のその心の中にある苦しみも癒してあげたいのですが...」
潤香の自分の姿へのコンプレックスの原因はその姿を主に見られて別れることになったこと...彼女の精神へのダメージもそうとうなものでしょう...私でどこまでできるか分かりませんが手を尽くすのみです...
潤香は小屋の中でごそごそと物音を立てる
「...私の苦しみですか...お気持ちだけ受け取っておきましょう...これに関しては私でも他の方でもどうにかなる問題ではないので...でも嬉しいです...ありがとう」
潤香は船を引きながら小屋から出てくる...
「...潤香?」
「...これで沖に出ることが出来るでしょう...さぁ...白蓮様...私に見せてください...貴女の慈愛というものを...」
潤香の顔はどこか笑みを浮かべているようで悲しんでいるような感じがした...私の無力さを感じます...絶対いつかは癒してあげたい...
「...ええ...ではその眼に焼き付けて置いてください!行きましょう!」
私と潤香は船を押して沖に出る...
船で沖に出て30分が経過する...
そろそろ船幽霊がいるところに到着するはずです...
私たちは船を漕ぎながらあたりを散策する...
「...見た限り生き物の気配すら感じませんね」
「...船幽霊に近づいている証拠でしょう」
私の言葉に潤香は手帳を取り出し頁を1枚1枚めくっている...
「...お仕事のまとめですか?」
「...いえ...恐らく大神家の仕事は終盤に差し掛かったでしょう...もう引き時です...これが私の最後の仕事になるわけですね」
潤香は手帳を閉じて懐にしまう...
そして辺りを確認するとさっきまで青かった空が曇り始めて波が荒れ始める...
「...来ましたね」
「ええ...海の水面も荒れ始めています」
(久しぶりに生きた人間がきたか...)
辺りに謎の声が響き私たちは辺りを警戒する...恐らくこれが船幽霊の声!
「...出てきなさい」
(...あいよ!)
水面が渦を巻き中から何かが出てくる...私たちの前に現れたのは短い黒い髪に白い死に装束を見にまとった少女だった...彼女は手に持った柄杓を私たちに向ける...
「...僧が1人に一般人か...大方この村紗水蜜を退治しに来たという感じかぁ」
船幽霊こと水蜜は私たちを半笑いで観察している...
「退治ではありません...貴女を救いに来たのです」
「は?」
水蜜はぽかんとした表情を浮かべる...
「...貴女がここで暴れているわけはこの世に未練があり永遠に終わることのない苦しみを味わっているのでしょう?でも幾ら無差別に暴れていても意味はありません...私の所に来なさい...貴女をその苦しみから救ってあげます」
「...ぷぷ...あはははは!!」
水蜜はぽかんとしばらくしていたが急に笑い始める
「!?何がおかしいのです?」
「あははっ!...苦しみなんか元々ないよ!私にあるのは何でもかんでも水のそこに沈めたいという衝動のみ!!苦しみどころか!快楽なんだよ!」
「苦しみではなく...快楽で人を沈めていたのですか...まぁ...私も人の事言えませんが...」
潤香は目を背け罰の悪い顔をする...
苦しみではなく...快楽で人を沈めていたのですか...どうやら教えを説くしかないようですね
「...実に軽率で大逆無道である!いざ南無三!!」
私は船から飛びだし水蜜に向け錫杖を振りかざす!
「おっと!」
水蜜は後ろに下がり私と距離を取り錫杖を避ける...私は法力を発動し水面に立つ...
「...素早いですね」
「...おいおい!?水面に立つとかシャレにならないでしょ?あんた?只の僧ではないみたいね」
「これでも鍛えていますから!」
「鍛えてるって...無理だから!」
私は彼女に猛攻を仕掛け水蜜は私の攻撃を避けながら潤香が乗っている船の方を見つめる...
「あんた...面倒そうだし人質でもとろうかな?」
「!?」
「あら?」
潤香の船の周りに渦ができ始め船が沈み始める...
「しまった!」
私は潤香の方へ急ぐ!今の彼女は能力が使えない!幾ら水の力を扱うことができるとはいえ沈められたら彼女の命が!
「潤香!」
「あ~?白蓮様?私のことは気にせず船幽霊の方に...」
潤香は気まずそうに私に言うが私は船まで駆ける...絶対に死なせない!私がすべてを救って見せる!
「かかった!」
「!?」
水蜜が柄杓を振ると巨大な津波が押し寄せ私たちはそれに巻き込まれ水面の底に沈められる...
というわけでキャプテンムラサでした!
ではこれにて