東方五行大神伝・過去の章   作:ベネト

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楽しむことは生きること

退屈は私を殺してしまう

by大神煌炉


化けの皮

side煌炉

 

今日も私は宮廷内にて帝の妻である玉藻前の様子を探る...

 

今日も暇だ...いい加減私の我慢も限界に近づいてきている...

 

人間たちは玉藻前の正体には勘づいてはいないようだし分かっているのは私たち大神家の者だけであり私としてもじれったい...早く暴れたいというのに...

 

「ふぅ...」

 

今日も宮廷の中庭で私はキセルを吸い夜空を見上げる...毎日が暇で仕方ない...たまに妹紅の特訓をしているが妹紅が強くなるのもいつの日か...

 

長い時間が要するだろうが...その前に私が退屈に殺されてしまう...

 

「私も銖理のように暴れたいな...引き受けなければよかったかも...」

 

過去の過ちを悔い私は玉藻前の部屋を遠目で眺める...今日も深夜まで見張り...そろそろ体を壊してもおかしくない...

 

 

 

「...ん?」

 

玉藻前の部屋を眺めていると彼女が部屋から出てきて従者らしき者に引き連れられて帝のは部屋まで向かおうとしているのを発見する...

 

何やら物々しい感じだ...当の本人も暗い表情で廊下を歩いている...

 

「...何だろ?」

 

私は気づかれないように彼女たちの後を追う...

 

 

 

 

 

 

 

帝の部屋の前に着き彼女たちが入り長い時間が経過する...

 

話までは外に聞こえないが雰囲気的には重々しい感じが伝わってくる...

 

「...もしかして?ばれたか?」

 

もちろん私たち大神は玉藻前の正体は帝にも伝えていない...

 

私たちがばらしていないことが人間に分かったとすれば人間の中で相当な実力を持った者がいるはず...

 

「...気にはなるけど...人間かぁ...戦っててあまり面白みに欠けるしな...」

 

正直今の人間はあまり強くない...せいぜい妖怪を封印する程度の力はあるらしいが私としてはちまちました戦いは好みではない...技と技がぶつかり合うあの感覚でないとわくわくもしない...

 

「...あ...火種切れた...」

 

懐から火種の草を出そうとするがすでに空...しまった...足しておくの忘れてたわ...

 

 

 

ドゴォ!!

 

 

「はい?」

 

帝の部屋の障子が吹き飛び煙の中から玉藻前が出てきて屋敷の門の外へ逃げ出す...

 

「...ああ逃げたか」

 

帝の部屋を見るとゾロゾロと陰陽師が出てきて彼女の後を追う...そして最後に帝がよろよろと出てくる...

 

「おのれ~!玉藻前め!!朕のことをだまし追って!!大神!追え!奴を仕留めろ!!」

 

「はいはい...」

 

私は門から出て彼女の妖力を辿り走る...

 

正直この展開は嬉しいが何故か私の心の中ではもやもやした感じがある...折角の強敵と戦えるのに...

 

「...何だろ?楽しいと感じられない」

 

心の違和感を感じながら私は彼女が行くであろう場所を予測し先回りする...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side玉藻前

 

「はぁ...はぁ」

 

...とうとう私の正体がばれてしまった

 

出来る限り大神には気を付けていたのに...まさかの関係のない安倍清明が私の正体に気づくとは...

 

これは完全に私のミスだ...大神にだけ気を取られ他のに気を配らなかったせいだ...

 

「ぐす...」

 

私は悪さをしたかったわけではない...只愛されたかっただけだ...

 

大妖怪というのは孤独であり私も例外ではなかった...只私は...独りは嫌だっただけなのに!!

 

「ぐっ!」

 

さっき切られた胸の傷が痛む...そろそろ体力も限界だ...

 

私は近くにある木に手を付けて息を整える...

 

奴らは撒いたはず...このまま東の方へ逃げて新たな幸せを...

 

 

 

ぱき...

 

「!!!」

 

急になった物音の方向に私は振り向く...

 

その方向には長い赤い髪に狐の仮面をつけ巫女装束に身を包んだ大神家の者がいた...

 

 

「あ...あ...」

 

正直絶望しかない...私の妖力も傷を直すだけに大半を失ってしまった...こいつを撒くまでの策も余力も残ってはいない...

 

大神家の者はキセルをふかしながら私の姿をまじまじと見る...

 

「...手負いか」

 

彼女は残念そうに溜息をつき私の横に座る...

 

「!?」

 

何でだ?こいつら大神は妖怪の退治を専門に扱っているはず...今のこいつには殺気もやる気すら感じられない!!

 

 

「何で?」

 

「...弱っている者を亡き者にしても面白くない...ほら!行け...この先に川がある...その傷でも川の流れに身を任せれば追ってを撒くことぐらいはできるだろ...」

 

彼女はつまらなそうにキセルを吸う...見張りの時はガンガンにやる気だったのに...

 

 

「いいのか?私はお前の獲物だぞ?」

 

「いいから!!大神のことよりも今は私の事が優先なんだ!はぁ...つまらない...私の見張りの時間を返してよ...」

 

...どうやら彼女にはやる気はないようだ...

 

 

私は彼女から離れ川の方へ行こうとする...

 

 

「つまらないなら私が相手してあげましょうか?」

 

急に私の目の前に目ばかりの不気味な空間が開き彼女の方へ光の球が発射される...

 

 

「...ちっ!」

 

彼女はそのままの体勢で燃え盛る赤い爪を伸ばし軽く薙ぎ払うように光弾を払いキセルの残りカスを地面に落とす...

 

 

「何?今の私機嫌悪いんだけど?出てきたら?」

 

「...ではそのように」

 

不気味な空間から金色の長い髪をした女性が出てくる...紫色の導師服のような前掛けをしそのしたのヒラヒラした着物の埃をはたいている...

 

「...何か用?」

 

「ええ...そこにいる九尾を私の式にしたい+貴女たち大神家にちょっとした怨みがあってここに来たのよ...火行の大神煌炉...」

 

煌炉と呼ばれた彼女はキセルをふかして夜空を見上げ思い出したようにつぶやき始める...

 

「...その恰好...ああ...母さんが言っていた八雲紫とかいう妖怪かな...確か大狒々とかいう雑魚を自分の式にしようとしたらしいな...徒労もいいところだ...子供食べておいてクソみたいな妖力しかなかったみたいだし私でもどうにかなったかな?いいじゃん?そこの玉藻前は見た限り相当の実力者だ...式にするなり何とかすれば?」

 

煌炉はどうでもいいようにつぶやき紫と呼ばれた女性は笑みを崩す...

 

 

「軽く馬鹿にされた気がするんだけど?」

 

「知らん...私は聞いた通りの事を話しただけだよ...何?その眼は?あまり私にそのような殺気じみた目を向けると...」

 

 

 

 

 

「殺るよ?」

 

煌炉の姿が一瞬消え紫の後ろに現れる...そして紫の肩から血が滲み始める...

 

「ぐっ!?」

 

紫は何が起こったのか分からずに肩を押さえ彼女を見る...

 

彼女は長い赤い爪についた血を舌で舐める...

 

「ちょっと狙いが逸れたか...きれいに首を刎ねてあげようと思ったのにさ...これでわかった?貴様では私には勝てない...さっさと式連れて帰れ...」

 

紫は肩の傷に妖力を当て回復させたあと不敵に笑う...

 

 

 

 

 

「私も逸れちゃったわね...貴女のその顔面を潰してあげようと思ったのに...」

 

 

ピシ!

 

 

煌炉のつけている狐の仮面の頬ににひびが入り彼女は驚くように仮面に手を付ける...

 

 

「なっ!?私に攻撃を当てた?」

 

「ええ...貴女の速さには驚いたけど...当てるのには苦労はしなかったわ...私と戦ってみる?」

 

紫が言うと煌炉の口が三日月のように歪み彼女は笑い始める...

 

 

「ははははははは!!私の顔に攻撃を当てるのは貴様が初めてだ...いいよ!私も見張りばかりの生活でイライラしていたんだ...命の保証はできないけど戦ってやるよ!」

 

煌炉の姿が変わり彼女の頭に狐耳尻に1本の大きな赤い尻尾が生える...

 

こいつ妖獣だったのか!?

 

 

「...なるほどね...これが大神の正体ね...」

 

「行くぞ...私を楽しませてくれよ!」

 

煌炉は笑いながら紫の方へ向かい爪を振る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が...彼女の動きは紫の方へ行く中ほどで止まり狐耳をぴくぴくと動かす...

 

「...ジャマが入りそうだ」

 

彼女はそれを言い残しさっさと森の奥へ消える...

 

私も耳を澄ましてみる...

 

(いたか!?)

 

(いや!いない!!こっちの方へ向かったんじゃないか?)

 

...これは都の陰陽師の声!!あいつら私の所まで追いつき始めている!!

 

「マズイ!!」

 

「大丈夫よ...私に任せなさい...」

 

紫が私を不気味な空間に押し込み私は真っ逆さまにその空間に落ちていく...

 

だが悪い気はしない...ただ助かったという安堵だけが私の心に残っていた...

 

 

しかし式とは何だ?何やら面倒なことに巻き込まれた気がする...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side煌炉

 

「...」

 

私は誰もいない森の奥で切れた頬から垂れる血を指でなぞり舐める...

 

あいつ...全速力の私の動きを見切って私に攻撃を当てるとは...一歩間違えば...私の命はなかったのかもしれない...

 

血の気が失せ始め胃の中が何やらごろごろし始めるがこれで良い...

 

私が求めていたのはこういう生死を分けた戦いの感覚...長い間忘れていたがこれこそ私が望んでいたものだ!!

 

 

「...ふふ」

 

今日は邪魔が入ったが良い収穫ができた...あいつなら私の飢えを満たしてくれるかもしれないな...

 

 

「あ~あ...玉藻前逃がしちゃったじゃない~!」

 

声の方向を見上げると天狗装束を身にまとった茶髪の女性が私の近くに降り立つ...

 

「...その声境奈姉さん?」

 

「当たり~!」

 

境奈姉さんは顔のメイクを剥がして髪の色をもとの黄色に戻して笑う...

 

 

「悪いね...逃がしちゃったよ」

 

「いいじゃん!別にバレやしないよ...とりあえず証拠隠滅ぐらいはしないとね!」

 

境奈姉さんが呪詛を唱えると空から妖力を発する巨大な岩が地面に落ちる...

 

 

「これは?」

 

「只のフェイクよ...大神家がこの中に玉藻前を封印しました~!とでも言っておけばいいじゃん?どうせ中身なんか見やしないでしょ?んじゃ!ここは任せた!まだ任務中だから失礼♪」

 

境奈姉さんはさっきの姿に戻り妖怪の山の方面へ向かう...

 

「...」

 

 

しばらくすると都の陰陽師が来て私を発見する...

 

「貴様は大神の!...玉藻前がこちらに来なかったか?」

 

「すでに手は打った...」

 

私は目の前の大きな岩を指差す

 

「くそ!この役立たずが!!我々の獲物を横取りしおって!!」

 

「これは申し訳ない...手を出すなという指令は受けていないのでな...おっと!それには近づくな...濃厚な妖気にあてられるぞ...」

 

「ちっ!」

 

私はここから去る陰陽師を見送り笑みを我慢する...

 

 

 

とりあえずこれで何とかなるか...今日は久しぶりにいい夢を見れそうだ...

 

 

 




というわけで玉藻前の正体がばれました...

しかしながら黒く染まる大神家大丈夫かな?

ではこれにて
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