by大神境奈
一方その頃の大神神社の大部屋では布団が4式敷いてあり大神煌炉・銖理・潤香の3名が死んだように眠りについている...
その傍らでは母親である大神暦と長女の華楠が心配そうにことの成り行きを見守り暦は自身の能力を使い彼女たちの体を調べていた...
side暦
私は倒れた娘三人の体調を確認するためそれぞれの体に私の鎖を打ち込んでいる...
体は至って健康のようだ...異常を見当たらないがこれはおかしい...娘全員が同時期にこんなことになるなんて...
「...う~ん...特に異常は見当たらないな」
「...しかし...この体の異常は何だろうか...私たちはともかく母さんには異常はないみたいだしな...」
華楠はダルそうに目を瞑りうなだれる...この子も煌炉達と同様に気分が悪いはずなのに気力のみで何とか持っているみたいだ...
「華楠も寝たら?気分が悪いんでしょ?」
「いや...大丈夫...境奈も向こうで何とかやっているみたいだし私も何とかしなくては...」
...そう...境奈も天狗の里でスパイとして行動をしているみたいだし姉妹の中では一番危険なところにいる...
ましてやこの謎の体調不良もあるみたいだし心配だ...
「境奈も心配よね...辛いなら戻ってくればいいのに」
「ああ見えてあいつも責任感はあるようだ...自分で決めたことは最後まで貫き通すだろう...だが...私も心配だ...少し様子を見てくるとしよう」
華楠が立ち上がり部屋を出ようとする...まだ本調子ではないのに
「大丈夫なの?」
「戦わなければ問題はないだろう...とりあえずここは任せたよ」
華楠はそれを言い残し消える...
しかし私としてもこの謎の体調不良は八方ふさがりだ...
「とりあえず...体の力でも見ておこうかしらね...」
私は鎖に全神経を集中させる...
side境奈
鬼がいるという山の中腹...アタシたちは頂上付近にある鬼の住処へ向かうがやはり調子が悪すぎる...元々体力の方は無いのに謎の体調不良でこんなざまになるとは...
「はぁ...はぁ...」
「大丈夫?境奈?」
椛先輩がアタシを立たせて肩を軽く叩く...
「ええ...何とか...」
だが後僅かで鬼の住処だ...とりあえず行かなくては...
確か仕事の内容は...鬼による人間の誘拐を止めさせるように説得することだ...
正直この仕事内容はいくらアタシであっても無理!やれるだけやって早く帰ろう!
「もう少しだからね境奈...顔色悪いけど頑張って!」
「はい...」
椛先輩の言葉が心に染みる...元々アタシら敵対関係なのに優しくされるとアタシの覚悟が...
椛先輩がアタシの前を先導する...
「早く仕事を終わらせましょう!ほら!鬼の住処も後少し...ん?」
椛先輩が鼻をひくひくする
「どうしました?」
「何か...血の臭いがします」
椛先輩はアタシを置いて鬼の住処である洞穴へと走る
「ちょ!先輩!!」
アタシは力を振り絞り洞穴の中に行く...
中は確かに血のような臭いが充満している...
少し奥に進むと椛先輩が端の方でしゃがみこんでいる...
「椛先輩?どうしました?」
「...うぷ」
椛先輩は嘔吐し奥の方を指差す...
アタシは奥へと向かう
「...う」
アタシの目に飛び込んできた光景は血だまりに沈む肉塊と化した鬼たちの姿だった...
ある者は四肢を裂かれ...ある者は首と胴体が泣き別れになっていたりと無残な姿となっている...
腐敗臭がするがそこまで肉体に腐敗が視られないため恐らく死後1日ぐらいといったところか
「...」
アタシは着物の袖で鼻と口を塞ぎ椛先輩の所まで一度戻る...
「完全にやられていますね...あの鬼の方々が」
「...一体だれが?まさか大神が?」
椛先輩がえずきながら答えるがアタシは首を横に振る...
現在の大神家は原因不明の体調不良で全員が戦闘不能だ...鬼の件なぞ知らされてもいないし...誰も着手などしていない
「...椛先輩一度出ましょうか...ここは死臭できつすぎる...」
アタシは椛先輩を抱えて外へと避難する
「げほ!」
椛先輩は力なく木に寄りかかり咳をする...
しばらくは安静にしといたほうがいいわね...
「しばらく休んでいてください...私は生存者を探して来るので」
「けほ...ごめんなさい...」
アタシはまた洞窟の中に戻る...
正直生存は絶望的だけど...やることはやらないとね
「...」
そしてまた死臭が漂う洞窟の中...犠牲になった鬼はざっと20人弱といったところね...
この前行った宴会の時よりは少ないと思うが他の鬼はどうしたのだろうか?逃げた?誰に?
「...あら?」
アタシは鬼の死体の下で光る物体を発見する...
その物体の正体は刀の切っ先...鬼を切ったときに派手に折れたのか刃こぼれをしているのが分かる...
「...まさかこれをやったのって」
「人間のようだな...」
!!!
突然の声に心臓が止まりそうになりアタシは後ろを振り向くと後ろにはアタシの姉である華楠がいた...
「か...華楠!!脅かすな!!」
「っと...すまないな...お前の様子を見に来たんだ...しかし...酷いなこの状況は...」
華楠は辺りを嫌そうに見回す...
「ええ...これって人間の仕業よね?よく鬼をこんなに...」
華楠は落ちていた瓢箪を拾い臭いを嗅ぐ...
「...神便鬼毒酒...鬼の力を封じ人間には力を湧かせるという特殊な酒だ...人間も頭を使ったな」
華楠はその瓢箪を投げ着物で鼻を塞ぐ...
「姑息な手を使ったみたいね...何となく想像つくわ...ざっと酒盛りと称してその酒を盛った感じね」
「ああ...とりあえず我々には関係のないことだ...引くぞ」
ごと...
アタシ達が洞窟を去ろうとすると奥の方で物音が響く...
「何だ?」
「...」
アタシはその方向へ向かう...まだ生存者がいるの?
音を頼りにその方向へ向かうとそこには...
「...けほ」
「...あんたは」
アタシの目の前には左腕がない...茨木華扇の姿だった...
アタシは彼女の横にしゃがみ彼女の腕の先からあふれる血を手で塞ぐ...
「大丈夫!?まだ意識あるよね!!」
「...あ...貴女は...この前の宴会の時の...」
華扇は弱々しく答え苦悶の表情を浮かべる...出血がひどい!!時間が経過している以上どうすることも!!
「華楠!!こっちに来て!!」
「どうした?...生存者か」
華楠は華扇を見た後辺りを見回す...
「...その子の腕が見当たらないな...人間に持って行かれでもしたか?」
「止血ぐらいはできるでしょ!!早くしろよ!ボケ!!!!」
アタシが怒鳴ると華楠が驚くようにアタシを見る...
「あ...ああ...一応止血薬は持っている...だがこれだけでは厳しいな...神便鬼毒酒の効果もあるが特殊な刃物で切られたようだな...回復が遅い...」
「...もう...私には構わないで...みんなと一緒にここで...」
「しゃべるな!!ボケ!!黙ってろ!!」
「...鬼である私にその態度...それにそこにいる半獣の方となると...貴女は天狗ではないようですね...」
ち!...こいつ...鬼の割には勘が鋭いと思ってたけど!!!
アタシはメイクを解除し素顔を彼女に見せる...
「はい!これで満足?これがアタシの素顔!!アンタただの鬼ではないようね...」
華扇は諦めるように目をそらす...
「...私は鬼の四天王である茨木華扇...そうか...貴女は...大神の者だったのですね...うわさには聞いています」
...やはりそんな感じのポジションだったか...鬼にしては珍しいと思ってたんだよな...
アタシは華楠にアイコンタクトをする
華楠は懐からアンプルと針を取り出し華扇の腕の先にそれを注入する...
「...あ」
「しばらく寝てなさい...仲間の所に戻してあげるから」
華扇は眠りに落ちアタシは術を発動する...
「アートサージェリー・ドッコ」
アタシの背後に9本の尾をした土狐が現れる...尾の先には医療用のメスやら鉗子・針といったものが装備されている特殊な子だ...
主に担当はアタシが殺したものを綺麗にするために使用する子だ...まさかこんなことに使うとは思ってもみなかったけど...
「オペ開始!」
30分後華扇の腕の傷口を塞ぎ終えアタシは土狐を戻し一息つく...
思ったより苦戦したわ...元々体の調子が悪かったし...
「ふぅ...終了ね」
「ご苦労だったな境奈...これを飲め疲れが取れるぞ」
華楠はアタシにアンプルを渡す
「さんきゅ...」
アタシが薬に口をつけると華楠は首をかしげる...
「しかしお前が珍しく感情的になったな...メイクも取るとか...」
「げ!」
アタシは急いで天狗の方の顔に戻る...しまったなぁ...やってしまった
「...アタシとて感情的になるときはあるわ」
そんなアタシを華楠はにやにや見る...
「まるで大切な人を看病している健気な感じだったぞ?」
「うるさい...情が移っただけよ!ほら!華扇を連れて行きな...アタシはまだ任務中なのよ~」
「分かった...その代わり安全なところに寝かせておこう...我々もお尋ね者だからな...」
華楠は華扇を抱えて消える...
一人残ったアタシはすぐ近くの岩に座り溜息をつく...
アタシらしくもない...他人相手に慌てるとか...アタシは大神家の者!本来あいつらとは敵なのに!!
(可愛い後輩が出来て私は幸せ者です!)
(もう少しだからね境奈...顔色悪いけど頑張って!)
(むふふ~♪しかし可愛い子ですね!天狗にしておくのももったいないな♪)
決心が揺らいでしまう...
この生活は色々大変だがアタシの心が満たされるのも確か...
しかしアタシがこうやって天狗の里にいるのもあと僅かな時間だし...
「何だろうね...この心に引っ掛かるものは...」
アタシは椛先輩の所へ行くためこの洞窟を後にする...
その頃の暦は娘たちの力を調べ上げ体調不良の原因を見つけ微笑んでいた...
彼女は鎖についたガラス瓶の中の光を揺らして眺める...
「なるほどね~!長く生きていれば当然か...私は経験しなかったなぁ...」
彼女は娘達の頭を撫でて今後の対策を考える...
次回大神家の体調不良が明らかに!
ではこれにて