東方五行大神伝・過去の章   作:ベネト

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第6章:雲隠れと崩壊
撤退の大神家


月の本陣にて大神家当主である大神暦が倒れ...本陣には重々しい沈黙が流れる...

 

唯一聞こえるのは虫の息の暦が出す吐息のみであり、彼女を倒した依姫は彼女の近くで崩れ落ちる...

 

 

side依姫

 

 

「はぁ...はぁ...」

 

...終わった...何とか勝てたんだ...

 

ついに彼女を倒せたんだ...

 

私は倒れている彼女の傍らで息を整えて笑みを浮かべているが全く勝利の余韻を感じもしていなかった...

 

...お姉様の助太刀がなければやられていたのは私だ

 

暦自身も最後の最後で油断をしていたためこちらに軍配が上がったが少し厳しい戦いになってしまった...

 

「は...はぁ...はぁ...おのれ...」

 

...傍らの暦はまだ息をしている

 

完全に致命傷を与えたがまだ殺気が消えていない...

 

 

 

「少しは頭が冷えたかしら?」

 

「...まだ...まだ...終わっては...」

 

暦は剣を杖がわりにして立ち上がる...

 

出血が酷いのにまだやるの?

 

「...何が貴女をそこまで突き動かすの?」

 

「...何が!?決まっている!!私を捨てた永琳に復讐を!私がっ!私がっ!ずっと探してたのにっ!」

 

暦の目から涙がこぼれる...怒りか悲しみか分からないけど...

 

悲しい子ね...見えていないが故にこんなことをしてしまったのだから...

 

 

 

だが...理由がどうであれ彼女が危険な存在であることには変わらない!

 

 

私は落ちていた試験管の中身を飲んで能力を戻し能力を彼女へ発動する

 

「大神暦!貴女の力!私が貰い受けるわ!!」

 

術陣が彼女を囲み霊力を根こそぎ吸い始める...

 

これで彼女をコントロールできれば大人しくなるはず...

 

彼女が入れば八意先生もいつかは戻って来る...

 

 

 

 

 

「うぐぁぁぁぁ...」

 

術陣の中の彼女は苦しそうに胸を押さえ体がどんどん小さくなり始めてきている...

 

霊力の消費が原因か...

 

傷が痛むだろうが...それも束の間...すぐに元通りになる...

 

「もう少しね...」

 

現在70%...あと僅かね...

 

 

 

 

 

 

「母さん!!」

 

術陣の中に何者かが侵入し暦を抱えて術陣の外へと連れ出す...

 

「なっ!...もう少しだったのに!!」

 

その方向を見ると緑色の長い髪をした女性が子供になった暦を抱えて私の方を睨んでいた...

 

容姿は暦にそっくり...彼女のクローンか...研究者だった頃の彼女はDNA技術が専門だったようだし...

 

暦のクローンは暦を抱えて本陣の外へと走る

 

 

「依姫様!追いますか!?」

 

兵達は意気込むがこれ以上余計に戦力をそぐわけにはいかないわね...

 

「追わなくていいわ...手負いほど危険な物はないわよ」

 

ふと術陣を見ると白い狐が術陣の中で目を回して倒れている...

 

暦の70%の力の欠片...

 

残り30%は逃げてしまったけどこの子が入ればいつかは先生は帰って来るわね...

 

私はその子の傍に行き頭をそっと撫でる...

 

「貴女もそれを望んでいるのでしょ?」

 

大きな戦いが幕を引いてもまだ月面戦争は終わらない...早く終わらせないと...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side華楠

 

 

「...母さん!しっかり!」

 

本陣から逃げる途中私は母さんの様子を確認する...

 

何故か子供の姿になっている!!大きな傷を受けているうえ霊力が空に近い...

 

このままでは存在することも危ういじゃないか!

 

腕の中の母さんは力なく微笑む

 

「...ごめんね...華楠...迷惑かけちゃったね」

 

「大丈夫か!?すぐに神社へ戻した後敵本陣を!」

 

母さんは首を横に振る...

 

 

 

「いや...もういい...もう疲れちゃった...皆を退かせて撤退しよう...」

 

「いいのか?」

 

「...うん...全く無様ね...小さくなっちゃった...」

 

母さんは目を閉じ私は境奈に連絡を入れる

 

 

 

 

 

 

 

(もしもーし!華楠?今こちらはすごいおじいちゃんと戦闘中よ~!)

 

通信機から呑気な境奈の声が響く...

 

「撤退だ...引け!」

 

(は?それはどういうこと?)

 

「いいから引け!!母さんが重症だ!!私はこのまま神社へと戻る!お前は残った妹たちに撤退命令を出せ!!」

 

(!!...分かったわ)

 

通信が切れ私は術陣を展開し地上への道を作り神社へと帰還する...

 

母さんの命が優先だ...

 

私の妖力が足りるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃境奈+銖理のコンビと戦っている妖忌は息を切らしながら周りを見ていた...

 

すでに味方も月の兵も死亡し残ったのは境奈・銖理・妖忌の3人のようだ

 

激しく砲を乱射していた巨大妖狐となった銖理は血走った目で妖忌を狙い

 

銖理の上で指示している境奈は通信機片手に余裕の表情で彼を眺めていた...

 

 

 

 

 

side妖忌

 

「ほらほら~!銖理~?あのおじいちゃんを狙いなさぁい!」

 

「ぐるるる!!」

 

巨大な妖狐の肩についている砲が火を噴き辺りを火の海へとしていく...

 

すでに見方は全滅...これが大神家の実力か

 

 

「万事急須か」

 

...せめて指示をしている者を倒すことが出来れば楽なのじゃが...

 

あの者の周りにいる土器のような狐が邪魔でこちらの攻撃が全く当たらん...

 

 

「しぶといねぇ...他の奴らとは違うみたいね...あれ?」

 

巨大狐の上の者は通信機を手に取り会話を始める

 

「もしもーし!華楠?今こちらはすごいおじいちゃんと戦闘中よ~!」

 

呑気に会話を楽しんでいると思いきや彼女の顔がどんどんと曇り始める

 

「は?それどういうこと?」

 

「!!...分かったわ...銖理退くよ」

 

彼女は通信機を切り巨大妖狐に指示を送る...

 

「ぐるる?」

 

「何?」

 

...いきなりの撤退?

 

大神が優勢だというのにどうしてじゃ?

 

巨大妖狐も言っていることが理解できなかったようだ

 

 

「いいから!帰ってから話す...おじいちゃん?アタシ達帰るから妖怪賢者に宜しくね...」

 

術陣が現れ巨大妖狐たちの姿が消える...

 

急な大神家の撤退...

 

何やら戦況が変わり始めている気がするわい...

 

 

 

「いかん...他のところの救援にいかなくては!」

 

儂は紫殿の所を目指して戦場を走る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side潤香

 

 

 

「...」

 

辺りは私が殺めてしまった者たちの亡骸が転がる血の池地獄...

 

使わないと心に決めていたこの姿を使う羽目になるとは...

 

「もう...合わす顔がありませんね...」

 

元の姿に戻り私は近くの岩に腰掛ける...

 

やはり器への疲労が凄いですね...戦争だというのに何て事です...

 

私は華楠お姉様から頂いたアンプルの中身を飲み一息つく...

 

 

「ふぅ...さて...もうひと踏ん張り...」

 

ピロン♪

 

...通信機から着信が?

 

「はい...もしもし」

 

(もしもし~潤香~お姉ちゃんですよ~)

 

...この声境奈お姉様でしょうか?随分とトーンが低いですが...

 

「はい...どうかしましたか?何か作戦の変更でも?」

 

(撤退命令~神社に帰って!)

 

「...え?撤退ですか?」

 

(うん!詳しいことは後々話すよ...では後でね...)

 

通信が切れ私は呆然とする...

 

まだ戦争が途中なのに何故撤退命令が?

 

疲労で回らない頭で考えていると1つ考えが頭によぎる

 

 

 

「まさか...誰かが大怪我ですか?」

 

こうしてはいられません!早く戻って妖力を分け与えないと!

 

怪我をしたのは銖理お姉様ですか?煌炉お姉様ですか?

 

私は術陣を展開その場を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして本陣手前の平野にて大爆発が起こる...

 

そこは大神煌炉が八雲紫・藍を相手に暴れまわっている場所である...

 

煌炉の爆発で集まった妖怪・月の兵は全滅しており、彼女達3人のみとなっていた...

 

しかしながら彼女たちも満身創痍であり負った傷をかばいながら戦いを続行している

 

 

 

 

 

side紫

 

 

「はぁ...はぁ...痛っ!」

 

私は煌炉の放った爆発で受けた腕の傷を抱えながら彼女に光弾を放つ

 

流石にも...大神家の相手は無傷では行かなかったようね...

 

狙いが安定していないこの爆発攻撃も数撃てばここまで脅威になるとは

 

 

 

「...げほ...げほ!!」

 

藍は特に傷は無いが消耗しきっている...これ以上の戦いは彼女にとってもこれ以上は危険すぎるわね...

 

 

 

「くぅっ!中々...」

 

そして煌炉は煌炉で足に受けた傷が効いているのか動きが鈍くなり私の攻撃が何回も直撃しているのにまだ動き回っている...

 

やはり一筋縄ではいかないようね...

 

彼女は藍の攻撃を振り切った後特大の火炎弾を私たちに放つ

 

 

「二重結界!」

 

火炎弾を弾き、それと同時に藍が煌炉へと拳を叩き込み彼女は大きく後退する

 

 

 

 

 

「!!?」

 

「...どうだ?...そろそろ余裕がないんじゃないか?」

 

藍は額に汗をかきながらせせら笑うが煌炉は薄笑いをするだけだ

 

「まだ...終わらない...やっとエンジンがかかってきた頃だ!本気で行くぞ!!」

 

更に煌炉の妖力が高まる...

 

まだ彼女は覚醒の姿にもなってないのに、これではこちらがジリ貧になってしまうわ...

 

彼女は辺りを無差別に爆破し私たちとの距離を詰め高速移動でこちらへ来る!

 

先ほどより速い!

 

 

「紫様!」

 

「スピードが更に上がっている?」

 

 

 

 

一瞬目を離し煌炉が私の背後に!?

 

しまった!

 

 

「ふふふ!!トドメだ!!」

 

彼女は炎の爪を振り下ろす...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぴぴぴぴ♪

 

 

「っ!?」

 

何かの電子音が聞こえ煌炉は攻撃を中止し私たちから距離を取り懐をまさぐる...

 

あの電子音...もしかして通信機の音かしら?

 

大神家はそれで連絡を取っていたみたいだし

 

 

「紫様...今なら...」

 

「待ちなさい藍...こちらも攻撃は中止よ」

 

ふいうちを企む藍を止め私たちは通信機を見つけ連絡をする煌炉を見る

 

彼女の表情は仮面ごしでもゲンナリしたような表情をしている

 

 

 

「はい...うん...え!?」

 

彼女は通信機に向かって驚きの声を上げブツブツとつぶやいている...

 

「...そんな...分かっている...ちっ!」

 

煌炉は舌打ちをしながら通信機を切り私たちの方を見て溜息をつく...

 

 

 

 

 

「どうしたのかしら?」

 

「...どうやら悉く私の戦闘は邪魔が入るみたいだ名残惜しいが大神家撤退命令が出てしまったんでな...今日はここまでだ」

 

大神家の撤退?

 

こんなに優位に立っているのに?

 

 

「何故?」

 

「...少し問題がな残念だがまた今度だ」

 

 

...今彼女たちを逃がすとマズイ!

 

ここはスキマを使って別の所に隔離しないと!

 

「逃がさないわ!」

 

彼女に向かいスキマを開く

 

「ふん...」

 

スキマを開き彼女の体がスキマの淵に当たると同時にスキマは跡形もなく消滅してしまった...

 

何で?何でスキマが消えた?

 

 

 

「え!?」

 

 

「ほう...それがスキマか...だが私たち血族にはその類の術は効かん...ではまた会おう」

 

煌炉の足場に術陣が出現し彼女の姿が見えなくなる...

 

 

 

 

 

「また逃げられたわね...」

 

「っ!」

 

藍は悔しそうに歯噛みするがスキマが効かない以上どうすることもできないわね...

 

しかし...大神が撤退したとなると月面戦争は一からやり直しになってしまったわけだ...

 

だが...大神の急な撤退には気になるが今はそれどころではないわ...

 

 

 

 

戦況はイマイチ...月の民の戦力と五分五分となってしまったこれ以上の無理はこちらとしても今後に響くわね...

 

「藍...私たちも出来る限りの手をつくすわよ...」

 

藍に指示を送り私たちは先へ進む...

 

 

 

 

 

結局その2時間後月面戦争は終息し、私たち妖怪は大敗退を歴史に刻んでしまうのであった...




過去の章もあと僅か...

頑張ります!

ではこれにて
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