月面戦争で重症を負った暦は華楠に運ばれ大神家へ帰還する...
彼女の姿は大人の姿から子供の姿へと変わっており生と死を分ける程に衰弱していた...
華楠は暦を布団の中に寝させて傷の治療から着手し始める...
暦の傷は胸から腰まで袈裟切りされており傷は大きくなっており、華楠は額に汗をかきながら慎重に治癒術をかけていった...
side華楠
「...出血が多いな」
母さんの傷に手を当てながら私は自身の妖力を分け与える...
思ったより傷が深い出血が止まる気配もないし...しかも母さんの妖力が空に近い以上自然治癒も見込めない...
完全に私1人では手に余る...
「華楠!帰ってきたわ!」
「母さん!!」
居間に境奈と銖理が戻って来る...何とか無事のようだな
「2人共手を貸せ!私1人では力が足りんのだ!」
「分かってる!」
「っ!」
境奈も銖理も母さんの傷に手を当てて自身の妖力を分け与える...
これで何とかなればいいが...
「くっ!」
「...どうした銖理?」
しばらくして銖理の顔が青くなり始める...一体どうしたのだろうか?
「...そういえば!この子さっきまで覚醒九尾化してたのよ!銖理!一回やめなさい!」
銖理は首を横に振る...
「まだ大丈夫!いける!!」
...目は本気のようだ
ここで止めるというのも野暮というものか...
だがこいつも貴重な戦力だ...出来る限りの負担はかけないようにしよう...
「分かった...だが無理をするな...」
...しかしながら煌炉と潤香の帰りが遅い
何かあったのではなかろうか?できることなら彼女たちの妖力も分けてもらいたいのに...
そう思っていると廊下を走るような音が聞こえてくる...
「遅れました申し訳ございません!」
「すまない!邪魔が入って...」
血まみれの潤香と足を引きずっている煌炉が到着し、その2人を見て境奈が叫び声をあげる...
「ぎゃああああ!!2人共!大丈夫!?」
「いえ...私の場合は返り血ですし...」
「私は光弾の直撃による打撲...すぐに良くなるよ」
そして煌炉達は布団の上で横になっている母さんを見て驚きの表情を浮かべる
「なっ!まさか重傷って...お母様が?」
潤香の言葉に私が代わりに答える
「ああ...信じたくないだろうが...本当のことだ2人共手を貸してくれ、我々の妖力だけでは足りんのだ...」
2人は黙ってうなづき母さんの傷に妖力を分け与える
「潤香...あと1つお願いがある...神社の周りに濃霧を張り巡らせてくれ...今のままでは我々は戦闘ができんからな」
潤香が黙って頷くと庭の方が霧に包まれて何も見えなくなる...
これで良い...
我々はお尋ね者だ...色々な勢力を敵に回しているが故にこの場所を知られるわけにはいかない!
何としてでも隠し通さなくては...
私たちは母さんに持てる限りの妖力を注ぎ込み、その作業を深夜まで続けた...
「...はぁ...はぁ...まずいな...」
作業の途中で何人かが妖力不足を起こして次々と倒れていく...
全員が半獣の姿になっているのに何てことだ!私特製の薬を使って妖力の重増しまでしたのに妖力が持たんとは...
母さんの傷の治りが遅すぎる!妖力をほとんど持ってかれた所為もあるがその他に特殊な刃物で切られたのか!?
「くそ!」
理由が何であれ...せめて私は倒れられん...母さんが死の危機にさらされているんだ!
死なんて2度とあんな思いはしたくはない!!もう嫌なんだ...
「華楠~悪態つくのやめて~頭にくる~」
残った姉妹は境奈だけだ...
いつも軽い口調だが奴も限界が近く顔を青くしている...
「華楠~!薬はないの~?アタシも限界なんだけど~」
「...すまない...在庫を使い放たしてしまった...戦争の時に配ったのが最後だ...」
「...ったく...在庫管理くらいはしてよぉ~」
本当に私が至らぬばかりだ...
あのアンプルを製造するには特殊な配合をしており私自身も配合表を見ないとうまく調合できない代物だ...
それ故に大量に作り置きもできないため在庫が尽きてしまった...
戦争があるから...いつもの製造数の倍は作らないといけなかったのに...
境奈は溜め息をつき最後のアンプルの中身を飲み干して母さんに妖力を分け与え続ける...
他の姉妹も倒れ本人も限界が近いはずなのに...
「境奈...残りは私が何とかする...お前は休め...妖怪山の件があるだろう?」
「...アレに取った残りの有給はあんまりないのよねぇ...明日はゆっくり一日中寝てようかな~」
境奈の体から妖気があふれ出し彼女の体が変化し始める...
まさか...
「完全態だと?境奈よせ!」
「ば~か...怠け者のアタシでもやるときはやるって」
境奈の姿が完全態になる...まさかこいつがこの姿を使うとは...
「ほら...華楠も...って...室内じゃ華楠の完全態は無理だったか...」
「すまん...」
「謝んなよ!事態が事態だ...今はこの作業に集中!OK?」
「...分かった」
私たちは黙って作業をし続ける...
境奈が完全態になったおかげで明け方には母さんの傷も塞がり安定し始めていった
「...安定してきたねぇ...って!全くもう!私たちが普段起きる時間になっているじゃないの」
「...ああ...特殊なもので切られ妖力をほとんど持って行かれたからな...ここまで苦戦するとは思わなかったな」
「ああ...眠い~...スパイ活動と並行する生活にも疲れるねぇ...完全態になったとはいえ...妖力をほとんど使っちゃったよ...お休み~」
境奈は姿を元に戻し崩れるように眠り始める...
「...お休み」
本当にご苦労様だ...辛いのに完全態の姿まで使ってもらって...
「すぅ....すぅ...」
母さんの体調も安定してきたし峠は越えた...私もそろそろ眠るとしようか...
「...」
私は眠っている潤香の黒い尾を枕代わりにする...
こいつが半獣の姿になっているのは珍しいことだが...彼女を観察するほど今の私には余裕はないな...
「...とりあえず峠は越えた...さてこれからのことを考えなくては...」
私は睡魔に負けじと考えを張り巡らせる...
...まずアンプルの大量製造
今日大量に使用してしまったからな...とりあえずいつもの5倍は作らんと...
それに人間・妖怪からも見つからぬようにしなくては...
奴らに母さんが倒れた情報はすぐに広まってしまうだろう...
この状況も非常にマズイ...何とかして逃げ切らねば...
そして最後に大神家を取り仕切らなければならん...
当主である母さんがいない以上姉妹をまとめるのは長女である私だ...
境奈は諜報活動があるため無理だ...何とかして私が何とかしないと...
「先が思いやられるな...私がしっかり...しな...け...れば...」
思考が回らなくなり私は深い眠りへと誘われる...
課題が山ほどあるが...とりあえず母さんの命が助かっただけで満足だ...
後のことは私が全て仕切ろう...
母さんが帰ってくるまで...この私が...
次回他妖怪のパートに移ります!
ではこれにて