by大神境奈
月面戦争から1週間経過し白玉楼の居間では八雲紫と西行寺幽々子の2人が談笑をしていた...
幽々子の方は楽しそうに会話をしているが紫の方は笑みこそは浮かべているが心ここにあらずと少しボーっとしているようだ...
しばらくして紫のことに気付いた幽々子は頬を膨らませる
side紫
「紫~!紫ってば!!」
「え?何?」
幽々子に呼ばれて私は我に返る...
しまった...ぼーっとしてたわね
「もう!話を聞いてなかったわね」
「ごめんごめん!少し考え事してたわ~」
「...戦争のことかしら?それとも大神家?」
「...どっちもよ」
そう...今私が考えていたことは月面戦争に大敗したことと突如として消えた大神家の2つで頭がいっぱいになっていた...
月面戦争の大敗は代償が大きすぎたわ...大半の妖怪を戦争で失ってしまったし月の民の被害よりも大神家の被害の方が大きかった気がするわ...
そして気になるのは大神家の謎の撤退ね...戦争の途中で全員が慌てて帰還したようだし何かが起こって撤退したとしか思えない
何よりもここ1週間は全くと言っていいほど彼女たちの情報が入ってこない...
以前はどこかの妖怪が大神に退治されたとかの風の噂を聞く程度だったがそれすらも聞かないとなるとこれは...
「本当にどこへ行ってしまったのかしらね」
私のつぶやきに饅頭を咥えていた幽々子が反応する
「大神家のことかしら?妖忌から聞いたわ~すごいらしいじゃない~私も一回戦ってみたいわ~」
「貴女じゃ無理よ...彼女達には貴女の能力は効かないわよ」
月面戦争の時に知ったが煌炉には火を操る以外に別の能力があるらしい
あの時...彼女の体にスキマが触れただけでスキマが消滅してしまった...
能力を無効化する力...体質というべきだろうか?煌炉がそうなのだから他の大神家の者も恐らくそれを持っているはず...
どっちにしろ幽々子は大神家の者とは相性が悪い...大神家のことは幽々子には任せられないわね...
「もう!私の力が信じられないの?」
幽々子は机から身を乗り出すが駄目なものは駄目ね...
「幽々子には幽々子にしかできないことがあるでしょ?」
「うぐぐぐ...」
肩を落とす彼女の頭に手を置き私は今後のことを考える...
現在藍が血眼になって大神家を探している...
見つかると良いのだけど彼女たちを探すのは骨が折れるわ...
せめて彼女たち一人がこちらについてくれればどれだけ心強いか...
さてと...いつも通り天狗たちに協力してもらいますか...
私はスキマを開き天狗がいる妖怪の山へ向かう...
一方その頃妖怪の山の天狗の里では射命丸文が眠い目をこすりながら後輩である犬走椛・風雲境奈の部屋へと歩みを進めており、いつもと変わらない天狗の生活が始まろうとしていた...
side文
「ふぁぁ...眠いです」
欠伸をしながら私は椛たちがいる部屋を目指す...
連日大変ですよ...妖怪の賢者が月面戦争で大敗して多くの妖怪を失ったことにより、上司からはいなくなった妖怪の生息地域を探れとかの仕事が回ってきますしやることが多すぎます...
うわさによると大神家の者も月面戦争に参加していたようですし月の民・妖怪両陣営にとんでもない被害を出したとか...
「全く...6人でそこまでやるとか化け物ですか...」
しかしながらそれ以降の大神家の足取りは天狗の情報網を使っても全く分かりはしない...
はたてが念写しても映るのは霧ばかり...完全にこちらの対策は打たれてしまったようです
「まぁ...それはさておき!今日は境奈が有給から戻って来る日です!さ~て!久々にスキンシップしましょうかねぇ!」
私はスキップをし境奈のいる部屋のノックする
「境奈~!私ですよ~!扉を開けてくださいな!」
「...はい?」
扉が開くと中から寝癖だらけの境奈が部屋から出てくる...
寝起きなのだろうか、顔色は悪くどこか不機嫌そうだ...
彼女は髪を手櫛をして乱れた着物の襟を整える
「久しぶりです境奈~!休暇はどうでしたか?私は過労で死にかけましたよ~!」
「...ええ...まぁ色々とありましたよ」
境奈は髪飾りをつけて目をそらす...
何かあったのでしょうか?聞かない方が良さそうです...
「さて次は椛の部屋に~!」
「させませんよ...文様...」
椛の部屋に行こうとすると椛が私と対峙する...大きな剣・鎧を装備している
「随分と用意が良いですね...剣とかの重装備とは」
「このまえ寝込みを襲われたので...寝るときはこれが欠かせません...」
椛は不機嫌そうに剣を見る...
そういえばこのまえ椛を可愛がりましたねぇ...軽く3時間ほど...
「あはは...とりあえず全員集合ですね」
「ええ...そのようで」
「眠い...」
「あははは...」
私はローテンションの2人を連れて上司のいる執務室へ向かう...
「何故に執務室へ?」
執務室に行く途中に境奈がぼやいている
そうだ...この子最近まで有給取っていましたね...
今の情勢を知らないわね...
「そろそろ妖怪の賢者が来るころです...大神家の動向を探りに来ますよ」
「懲りませんね...どうせ...分かりっこないのに」
境奈は不機嫌そうにそっぽを向く
最近になってこの子の言葉に棘が見え始めてきました...
研修の時は可愛いかったのに...
「...多分そろそろ分かりますよ境奈...はたても馬鹿じゃありませんから」
「は?」
「今まで大神家ばかり念写して失敗していたので近しい人物を念写することにしたようです...今度こそ何とかなります」
「...」
境奈と話をしている間に執務室に到着し私たちは部屋へと入る
「遅かったな...」
「これで全員揃ったわね...」
「...」
執務室に入ると上司である天魔と八雲紫・姫海棠はたてがすでに中にいた...
はたては掛け軸の前で精神を集中しており、不思議な力が辺りに漂っている...
「何ですかね?」
「しっ!はたてが集中してるから静かに!」
椛の口を塞ぎ私たちははたてを見る...
しばらくするとはたての前の掛け軸が変化し始める...
「...見えた」
はたてが目を見開くと掛け軸の変化が速さを増し掛け軸は白い長い髪の少女を映し出す...
前に見た大神家の者の絵ではない...全くの他人のようだ...
「これは?」
「人間のようじゃな...じゃがしかし...」
上司と妖怪の賢者はしげしげと掛け軸を見る...
パッと見...只の人間が映っているだけじゃないですか...これに大神家のヒントが隠されているわけでもなさそうです
「これに何が?」
「さぁ...只人間が映っているしか見えませんが?」
椛からの質問を私は掛け軸を凝視しながら答える...
全く分からない...これに大神家のヒントがあるというの?
「はたて...これには一体?」
「知らないわよ...私は自室で寝るわ...後は任せたわ」
はたては欠伸をして筆をもって執務室を去る...
彼女の能力は確かに便利だけれども...これが意味していることは彼女ですらわかってはいない...
もう徒労でしか思えません...
「境奈は分かりますか?」
「いえ...全く」
彼女は掛け軸から目を背けて指で髪を巻く...
何でしょう?先ほどよりイライラしている気がします
妖怪の賢者の方を見ると烏の式を飛ばして何かの指示を行っている...
「...覚えたわね?この子を見つけて」
(カァ~)
烏の式神たちは空へとあちこちへと飛ぶ...
なるほど人海戦術というわけですか...我々天狗もそれは得意ですよ...
妖怪の賢者はそれを見送った後スキマを開いて私たちを見る...
「大神家の者は私にお任せください...貴方達にはご迷惑はかけませんわ」
妖怪の賢者の言葉に上司は鼻を鳴らす
「ふん...貴様一人で大神家全員を相手できるというのか?」
「...ええ必ず...頼もしい仲間がいますので」
妖怪の賢者はそう返答をしてスキマを閉じる
「何を考えているか分からん奴だ...」
「ええ...確かに」
人と妖怪の存続でしたっけ?
正直...無理な難題と思いますが私は少し興味がありますね...
退屈な天狗社会にも飽きてきた感じもありますが...
でも私は可愛い後輩がいる限りこの生活も悪くないと思います...
「ねぇ!境奈!椛!」
彼女たちの方を向くと椛しかいない...
あれ?境奈は?
「...あや?境奈は?」
「先ほど用を足しに行くと...」
...つれませんね
せっかくこの後お昼を一緒にしようとしたのに...
「っ!戻ってからも厄介ごとかよ」
風雲境奈こと大神境奈は里の厠の中に入り通信機の電源を入れる...
「...きりきり」
いつもの彼女らしくなく爪を噛みながら通信機に誰かが出るのを彼女は待っていた...
しばらくすると通信機に彼女の妹である大神潤香が通信を取る...
(はい...どうかしましたか?煌炉お姉様に変わり私がですけど...)
「何で潤香がでるの~?ちょいと問題が起きたんだけど?煌炉の奴いる?」
(いえ?いつもの訓練に向かっていますが?ちなみにお姉様は通信機を忘れたみたいで連絡の取りようが...)
「こんな時に限って...煌炉のあの弟子のことが妖怪たちにバレタわ...ちょいと...手助けをお願いできるかしら?」
(...畏まりました)
通信が切れ境奈は個室で一人溜息をつく...
頭の良い彼女は事態が宜しくないことが分かっている。当主が倒れ大神家が崩れかけていることを予知している以上彼女にも焦燥を隠せないでいた...
「ふぅ...使わないと思ってた保険を使う時が来ようとは」
彼女は首にかけた首飾りを握ると戸を叩く音が響き彼女は体を震わせる...
「?」
「境奈~!大丈夫ですか?」
文の声を聴き彼女は安堵の表情を浮かべて壁に寄りかかる...
「ええ...何とか」
「そうですか?この後お昼に行きますよ~外で待ってるので来てくださいね~」
「...はい!」
境奈は内心ほくそ笑んでいたが...心に引っ掛かる物を感じて表情を曇らせる...
彼女が自分の心に気付くのはまだ先の話である...
彼女は息を整えて文がいる場所へと急ぐ...
久々の投稿
少し長くしました
ではこれにて