side煌炉
...体中を矢や槍などで貫かれて私の体は冷たい海の底へと沈んでいく
「っ~!!」
塩水が傷口に触れ激痛がはしる...
もう力すら出すことが出来なくなってきた...
だが安らかな気持ちだ...ここまで楽しい戦いは久しぶりだ...
命を懸けた力と力のぶつかり合い...
私はその戦っている感覚が好きだった...
だけど...私が満足する前に戦いが終わり最近は退屈な毎日...
その感覚も忘れかけていた...
だがあの妖怪は私をここまで追い詰め倒した...
口惜しい感じもあるがあの感覚が蘇ってきた...
やっと楽しい戦いが出来たんだ...後悔はないよ...
「げほ...」
体が元の半獣の姿に戻ってしまった...
完全に私の敗北...
母さん...皆...ごめん私はここまで...
後のことは任せたよ...
「感謝するよ...八雲紫...これで退屈に殺されずにあの世へいける...」
私は目を閉じ海の底へと沈んでいく...
くぱぁ
「!?...ぎゃっ!?」
謎の音と共に私は急に地面に落下する?
何故?海の中だというのに?
「ぐぐぐ...何が?」
目を開けるとさっきの戦闘により荒れ果てている草原に私はいた...
おかしい...海の中にいたのに何が起こっている?
「不思議そうな顔をしているわね...煌炉」
傷口の痛みをこらえながら辺りを見回すと声の方向には瀕死の八雲紫が藍に支えられながら私の方へと近づいていた...
まさかこいつ...能力で私を海の底から移動させたのか?
「...何故助けた?」
私の問いに紫は薄ら笑いを浮かべる...
「何故って...約束を果たしてもらわないとね♪」
「約束?」
確か戦う前に何か言ったような...興奮していたから覚えていないが...
「何だったけ?」
「...もう...私の式神になる約束でしょうが...」
...そうだった...負けたらなってやると言ってたな...
全く取り返しのつかない約束をしてしまったわ...
「変わっているな...敵を式神にするとは...」
「ふふ...貴女程ではないわ」
「...」(じとー)
藍の方から鋭い視線が痛いほど浴びているがとりあえずは保留だ...
私の方も限界に差し掛かっている...
そろそろ...覚醒九尾の副作用が出始める頃だ...
長い昏睡が待っているのか...
正直億劫だ...
「いいだろう...約束は約束だ...私の命は好きに使え...わ...私の目が...覚めたらな...」
睡魔に襲われそのまま私の意識は暗転する...
side藍
「...」
煌炉はその言葉を言い残しそのままその場で眠ってしまった...
こいつが私と同じ式神か...
何故紫様はこいつを助けたりしたのだろうか...
紫様は煌炉の頭を撫でて...そのまま地面にへたり込む...
「...ふぅ...流石にも疲れたわ...大神一人を相手しただけなのにね」
「紫様...お体はいかがでしょうか?」
紫様は傷口の様子を確認しながら頷く
「しばらくは戦えそうにないわね...藍...白玉楼に行くわよ...」
「白玉楼にですか?」
何故幽々子様の所に?
早く八雲家に帰れば良い話しなのに...
「何故に?」
「...大神の追手が来たら今の私達だけでは戦えないわ...もしもの時の保険よ幽々子も妖忌もいるし」
...確かに煌炉一人相手にここまで苦戦したんだ
この状態で新たな刺客が現れでもしたら今度は確実にやられる...
「承知しました....では参りましょう...白玉楼に」
「ええ...私も少し休まないと」
紫様は煌炉をスキマの中にしまい私は肩を貸して白玉楼へと向かう...
大神家の一人である煌炉との壮絶な戦いにより荒れ果てた草原から八雲紫・藍が白玉楼へと向かう中...
草原に大神家の一人である潤香が現れ、彼女は戦場から去る紫達の後ろ姿を只見送っていた...
「煌炉お姉様が負けてしまいましたか...」
潤香は辺りを見回し去っていく紫たちを見た後目を閉じる...
(確かに相いれない存在が共存するのは難しいわ...でも私が聞きたいのは貴女は人間と暮らしたいか、暮らしたくないかなのよ)
潤香は紫から言われたことを思い出し眉をひそめて溜息をつく
「叶うはずのない幻想を追うか...貴女の頑張りに私も目を瞑りましょうか...足掻きなさい...スキマ妖怪...」
潤香はそのまま霧の中に入り消えていく...
しかし新たな争いの火種が燃え始めていることを彼女たちは知る由もなかった...
次回大神家
新たな火種
ではこれにて