大神家の円卓の間では大神シスターズの3名・華楠・境奈・銖理がそれぞれの席に座っていた...
煌炉が敗北したことは円卓の間にある鏡を通して全員がその結果に唖然とした表情を浮かべ、銖理は手に持った銃を撃ち、鏡を破壊し破砕音と地面に落下する鏡の破片の音が沈黙した部屋に響いていた...
side華楠
「うそだ!!煌炉姉が負けるなんて!!」
「...」
銖理がイライラと鏡の破片を踏みつけており、境奈は無言でその光景を眺めているが動揺しているのか顔のメイクは変に崩れている...
彼女たちが動揺しているのも分かる...
まさか母さんに続いて煌炉までやられてしまうとは...
奴は色々と粗いところがあるが戦闘に関しては姉妹の中では上位に入るはず...
あのスキマ妖怪...中々やるじゃないか...
私が溜息をつくと境奈がぽつりとつぶやき始める...
「しかし...潤香を派遣したというのに煌炉の助太刀に現れないとはね...一体どこへ行っているのだろう...」
その言葉に銖理が青筋を額に浮かべる
「未だに帰ってもこない!何やっているんだ!!あいつは!!」
彼女は八つ当たりするものが辺りに無いと分かると自分の席に座る...
確かに境奈が潤香に指示を出していたのは私も聞いているがさっきの戦闘には彼女の姿は出ていない...
「確かに...どこへ行っているのだろうか」
「...只今帰りました」
円卓の間に潤香が現れ銖理が潤香に詰め寄る
「潤香!!お前煌炉姉が戦っている時どこにいた!!?」
「ちょ...銖理!落ち着いて...」
境奈が怒鳴る銖理を押さえるが潤香は表情を変えず返答する
「あの草原にいましたね...距離は数百メートル離れて静観していましたが」
潤香の淡々とした言葉に銖理が潤香の胸倉をつかむ
「お前!!煌炉姉がやられていたのを黙って見てたのか!!」
銖理がすごむが潤香は表情を変えずに静かに答え始める...
「ええ...最初は助けようとしましたが...煌炉お姉様を見ていて傍観に徹することに決めました」
「あ?」
銖理が疑問を投げかけるが潤香は続ける
「戦っている煌炉お姉様は珍しく楽しそうに笑っていましたから...それを邪魔するのは無粋でしょう...」
潤香は銖理の手を引き離し着物の襟を整える...
「...」
銖理はこれ以上追及するのを止める...
銖理だって煌炉の性格は知っている...
煌炉の奴は戦いを快楽とし邪魔させるのを極度に嫌う...
もし...銖理が潤香の立場だったらと彼女は考えたのだろう...
銖理は怒鳴るのを止めて大人しく自分の席に座り私は疑問を潤香に投げかける
「しかし...煌炉がやられた後に満身創痍の妖怪の賢者+aを倒すことはお前でもできたはずだ...」
「ええ...できました...ですが見逃してしまいました...あの妖怪の賢者の努力に免じて見逃しましたよ」
潤香はバツが悪そうに昔の古傷がある左胸の上の個所に手を添える
...努力に免じてか...何かこいつに通じる物があの妖怪にあったというのだろうか?
まぁ...何となく分かるが
だが潤香のしたことは許されるものではない...
実際に煌炉は奴らに捕えられてしまったからな...
「だが...どうする?母さん・煌炉がやられた今...大神家は半壊しているのも同然だ...家族が...貴重な戦力が消えたのをお前は分かっているのか?」
私の問いに潤香は表情を変えない...
「私の私情を挟んでしまったのは申し訳ございません...この失態は私が償いましょう...煌炉お姉様は現在妖怪の賢者に捕えられています...少なくとも殺されはしません...そして取り返すのなら今がチャンスですよ...」
「チャンス?」
「ええ...現在妖怪の賢者は白玉楼というところに潜伏し彼女の友人と一緒にいるらしいですよ?怪我の治療のためにね...つまり現在の彼女たちの戦力は私たちと同じ半壊しているのと同じです...」
「...弱っている奴らが完治する前に叩くということか」
潤香は黙って頷き着物の裾を握る
「...すでに彼女たちの潜伏場所は分かっていますので...私が参ります...」
出口に向かおうとする潤香だがとある人物が彼女の前に現れる...
「待て...私が行く」
潤香の前に現れたのは銖理だ...
彼女は潤香を無理やり席に座らせて向かおうとする
「銖理お姉様!私が!」
「...私情を持ちこんでしまう以上...潤香には務まらないよ...この件は私が行く...誰もついてこないで...そうでもしないとさ...」
銖理は拳を強く握る
「私の怒りが押さえられないし巻き込みかねないからさ!!」
銖理は端末を取り刺し入力をし外へと出ていく...
銖理の心に火がついてしまったか...
私たちは黙って彼女の後ろ姿を見るしかなかった...
そして煌炉との戦闘から3日が経過する...
ここは白玉楼...桜の木が多数咲き誇る庭園を持つ屋敷であり紫の友人である西行寺幽々子がここの主である...
桜が咲き誇る庭を進んでいくと大きな屋敷がありその客間には2つの布団が敷いてあり、1つには幽々子の友人である八雲紫・そしてもう1つの方には大神煌炉がそれぞれ寝ておりその状態の彼女たちを八雲紫の式神である八雲藍が見守っていた...
side藍
「う~!藍~!体中が痛いわ~!」
うわごとのように紫様が先ほどからつぶやいている...
昨日まで爆睡し今朝ようやく意識を取り戻したのは僥倖だ...
まぁ...確かに紫様の怪我は重症だ...
爆発による腹部の損傷・煌炉の火炎弾によるやけどなど...
普通なら死んでもおかしくないのに...うわごとだけで済んでいるとは驚きだ...
「それにしても...」
私は隣の煌炉を見る
こいつも重症だ...
体中の切り傷・妖力が空など...紫様に劣らずこちらも死んでもおかしくない怪我だ...
「すぅ...すぅ」
煌炉は自身の尾を抱いて寝息を立てており紫様が羨ましそうに煌炉を見ている...
「温かそうね...」
「ええ...それよりも御加減は?」
紫様は自身の体を確認する
「...しばらく安静が必要かもね...残りの大神家達の相手が大変よ」
紫様が溜息をつくと廊下から誰かがやってくる
「紫~♪気分はどう?」
廊下からやってきたのはここの主である幽々子様だ...
彼女は持ってきたお茶と煎餅をもって紫様の布団の横に座る
「幽々子~!痛いよ~!」
紫様はふざけ半分で幽々子様に縋りつき彼女は紫様の頭を撫でる
「あらあら~紫も強いのにあの子もやるわねぇ」
幽々子様は隣で寝ている煌炉を興味深々といった感じで見ており紫様は頷く
「ええ...後4人この子と同等の力を持つ子がいると思うと私も命がいくつあっても足りないわ...」
紫様は天を仰ぎ幽々子様はそんな紫様を見て笑みを消す...
「紫...安心して...私も協力するわよ」
「...その気持ちだけ受け取っておくわ」
紫様は布団を深くかぶるが幽々子様は珍しく感情的になり紫様に詰め寄る
「どうして!?もっと私を頼ってよ!!」
「ちょっと~幽々子~私が怪我人だってこと忘れてない?」
紫様は幽々子様を引き離すが幽々子様は引かない
「何で?私だって戦えるわ!月面戦争の時だってのけ者だったし!!」
「...貴女が傷つくところは見たくないのよ」
「~!!...はぁ...」
紫様の言葉に幽々子様は何か言いたげに言葉を詰まらせるが彼女は溜息をつき、その場を後にする...
しばらくして紫様が私に向かいつぶやく...
「藍...」
「何でしょう?」
「幽々子の事頼むわね...」
紫様はそれだけを言いそのまま眠りにつく...
全く...間に挟まれるのも大変だ
私は幽々子様を追うためその場を後にする...
私は幽々子様を探すために白玉楼を探すが一向に見つからない...
「...一体どこへ?」
屋敷の中は探し終えた...
残りはこの広い庭を残すのみとなったが...
ここは広すぎる...本当に広い...
掃除するだけで一日かかるくらい広い...
この庭を掃除している妖忌には尊敬の意すら湧いてくる...
「はぁ...どうしよ...」
私は半分自棄になりながら桜並木を考えもせず進んでいく...
しばらく進んでいくと大きな枯れ木がある場所へ私は誘われる...
「ここは...」
この枯れ木は西行妖...
木の妖怪の一種であり、紫様により封印された化け桜だ...
そしてこの場所は...
幽々子様が自決した場所でもある...
「...」
私は黙って進んでいくと西行妖の近くには幽々子様が何やら物思いにふけたような表情をして西行妖を見ている...
「...」
「...幽々子様?」
「!?...あ!藍じゃない~♪どうかしたのかしら?」
幽々子様は私でも分かるぐらいの作り笑いをする...
私でも無理に笑っていることは分かる...
「幽々子様...」
「いいのよ...私だって紫の気持ちは分かるわよ...」
幽々子様は無理に笑みを浮かべ更に続ける
「でもね...私は彼女の親友だもの...彼女の事は守りたいし...彼女の役にも立ちたい...それって当然のことでしょ?」
「...多分そうだと思います」
私に言われても親友という定義はあまり実感は湧かない...
私は...ずっと孤独だったから...
「...」
「...ごめんね...さぁ...戻りましょうか...今夜は妖忌が振るったご飯をごちそうしてあげるから...」
幽々子様に手を引かれ私達は屋敷に戻る...
胸の中でもやもやしたものを感じながら...
その夜...私・幽々子様・妖忌殿の3人は居間で遅めの夕食をとった...
ちゃぶ台に並べられるのは妖忌殿がつくった和食の数々...
紫様も食べたかっただろうが当人は怪我人であり絶対安静だ...後で持っていこう...
あまりの料理に私は涎を流しそうになったが誰も会話をせず...随分と重々しい空気で黙々と食事を進めている...
「...」
「...」
「...」
唯一沈黙を破る音としたら食器がたてる音とわずかに聞こえる咀嚼音ぐらいだ...
妖忌殿は表情を変えず黙々と食しており、幽々子様はいつもの笑顔ではなく無表情で食事を取っている...
(...居づらいな)
私はその重々しい空気に耐えながら食を進めるが...せっかくの料理も味を感じることが出来なかった...
そして30分後私たちは夕食を終える...
「...今日も美味しかったわ...ご馳走様...」
幽々子様は満足そうな顔をし私たちは夕食の後片付けを始めるが片付けを始めていた妖忌殿がピクリと眉間にしわを寄せ襖の外を見る...
「む...」
「どうかしましたか?」
私が彼に尋ねると彼は腰に刺していた刀に手をかけ外を見るだけだ...
その様子を見て幽々子様も食後のお茶を啜るのをやめて溜息をつく
「...随分と早いお客様の登場のようね...さて行きましょうか」
幽々子様と妖忌殿が立ち上がり庭の方へと進んでいき私もその後へ続く...
私たちが来たのは白玉楼の門...
屋敷の庭は月明かりによって照らされており、少し不気味な雰囲気を醸し出している...
そして門の外に耳を傾けると何やら妙な音が聞こえてくる...
カツン...カツン...
ががが...ががっ
誰かが石段を上がってくるような音が聞こえる...それに混じって何かを引きずるような鈍い音まで...
そして...濃厚な殺気まで感じる...
それを感じ私たちはすくみ上る...
「誰かがここに来る...一体誰が?」
私の独り言に幽々子様は唾を飲み込む...その顔は緊張しているのか冷や汗も見える...
「誰って...分かるわよ...この場所を知り、ここまでの殺気を出せる者なんて...考えなくとも分かるでしょ?ここには紫が連れてきたあの子がいるのよ?」
紫様が連れてきたって...まさか!!
私が門の外へ目をやるとその音を発していた人物が立っていた...
白い着物に身を包み、同色の長い髪を夜風になびかせ、光の籠っていない目で私たちを見据える女性の姿...
大神煌炉の妹の大神銖理がそこにいた!
彼女は手に持った袋に入った何かを引きずりながら辺りを見回し、何かの端末をもう片方の手で弄り確認する...
「...この奥か...探すのはそんなに時間はかからなかったな」
「大神家...何でこの場所が?」
彼女は端末を私たちに見せる
「...大神家各構成員の装備品にはどこにいるか明確にするために発信器がつけられている...お前達がとらえた煌炉姉の着物にも仕込んである...」
彼女は端末を懐にしまう
奴の着物に!?しまった!!処分し忘れていた!!
汚れていたからお風呂場にやりっぱなしになっている!!
私は自分の失態に頭を抱えるが幽々子様は銖理に一歩進む...
「大神家の一族ね...白玉楼に何か用かしら?」
幽々子様はいつも通りの笑顔で受け答えするが銖理の表情は一気に怒りの表情へと変貌する
「何か用だと?決まっている!煌炉姉の奪還だ!ここにいることは分かっている!!大人しく返してくれると私も助かるんだよね...」
彼女の言葉に幽々子様は首を横に振る...
「それは無理ね...紫が頑張って捕まえてきたんだもの...」
幽々子様の言葉に銖理は息を強く吐く
「あっそ...なら粛清...だ牙屠燐愚玩...これで全員ここで三途の川へ送ってやる!!」
彼女は袋の紐を解き、中から大きな砲を取り出す...
月の民が使っているのによく似ているが砲が6つもある...
銖理が砲を作動すると6つの砲は回転しバラバラと薬莢をばら撒きながら銃弾を私たちへ放つ!!
しまった!出遅れた!!
どどどどど!!
銃弾の嵐は幾多の凶器の刃と化して私たちの方へまっすぐ正確に放たれる...
「くふ...あははははは!!」
発射音に紛れて銖理の高笑いが響く...
「妖忌...」
「...御意」
弾幕の嵐の中幽々子様は静かに妖忌殿指示をすると彼は私たちの前に立ちふさがり刀を高速で振り銃弾を弾いていく...
あんな物量を良く刀2本で...
妖忌殿が弾を弾いているとそのうち弾丸の物量もおさまり始め、砲も動きを止める
「!?」
銖理は私たちを見て無傷だったことに驚きだったのか首をわずかにかしげる...
「...そんな不意打ち攻撃で私たちを倒せるとでも?妖怪じゃないからって舐めないで頂けるかしら?」
幽々子様は笑顔ですごむ...
その顔は黒い表情を浮かべており、私でも見た事が無い顔だ...
対する銖理は幽々子様を見て不快そうに鼻を鳴らし砲を投げ捨てる...
「妖怪の賢者の関係者だけはあるか...なら私も本気だ...この周辺の全てを破壊しつくしてやる!!」
銖理の体が変化し9本の大きな尾・頭には白い狐耳が生え半獣化する...
そして彼女は小型の砲を出現させ私たちに向ける...
完全に戦闘モードに入ったか...
奴も煌炉の妹とはいえ実力は計り知れない...
奴の目的は屋敷にいる煌炉のようだが...大神家に奴を返すわけにはいかない!
何としてでも奴の企みは阻止しなくては!!
私は幽々子様の前に立つが幽々子様は首を振る
「藍...ここは私たちに任せて貴女は紫を守って...」
「し...しかし!」
私は反論するが妖忌殿が口を開く
「藍殿...ここは我らに任せてもらおう...儂も月面戦争の借りを彼女には返したいのでな」
妖忌殿は刀を銖理に向ける...
私の出番はないか...
「ここは任せます...」
私は銖理に背を向けて屋敷へ走る...
私は...私に出来ることをするだけだ!!
side幽々子
藍が屋敷に走り、残ったのは私と妖忌のみ...
正直大神家相手にどこまで出来るか分からないけど...
私は自分が出来ることをするだけよ...
紫の夢は私が潰させない!!
銖理を見ると彼女は銃を私に向けたままだ...
「もういい?さっさと終わらして奥に行きたいんだけど?」
「...悪いけどそれは無理ね...私たちが貴女を止めるんだもの」
「そう...なら私が直々に終わらしてやるよ!!」
銖理の殺気が高まり私と妖忌は彼女を迎え撃つ...
紫...待っててね...私頑張るから...
次回銖理vs幽々子+妖忌です
ではこれにて