東方五行大神伝・過去の章   作:ベネト

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境奈の完全態の姿が明らかに...


疑心暗鬼

「境奈ー!」

 

妖怪の山で響く文の叫び声が響き、矢で胸を射抜かれた境奈は血まみれの姿で地面に臥す...

 

「境奈!境奈!!」

 

文と椛は彼女を抱き寄せ彼女の容体を確認する...

 

 

「...し...られ...い」

 

彼女はうわ言を発しており、目の焦点は定まっていなかった...

 

大神家の血が流れているとはいえ境奈も人間であり妖怪でもある存在...

 

強力な力を持っていても所詮器は人であり、妖怪なみの再生力は持ってはおらず胸の一撃は彼女に致命傷を与えていた...

 

 

 

 

 

 

「大天狗様...大神家を討ちました...」

 

 

しばらくすると辺りの草むらから弓を持った天狗達が現れ、肩に乗った烏に話しかけた後、烏は大空を飛び大天狗の方へ向かう...

 

「あ...貴女たち!この子はもう戦えないのに何てこと!」

 

「裏切り者に慈悲などないだろう?」

 

椛は叫ぶが天狗達は椛の言葉を一蹴するが文はゆらりと立ち上がると全員言葉を詰まらせる

 

「...」

 

文の無言のプレッシャーによりしばらく重い沈黙が流れるが伝令烏の報告を受けた大天狗・八雲が現場に現れ空気の空気の重さは緩和される...

 

 

「大神を討ったというのは本当か?」

 

「...なんてこと」

 

大天狗は歓喜に満ちた表情をするがそれと対照的に紫の方は事態の状況に焦りの表情をしている

 

紫が文たちに近づくと文が身構える

 

 

 

「境奈は!殺させません!」

 

文の言葉に大天狗は頭をひねる

 

「...どういうことだ?ここまで大神を追いつめたのだぞ?」

 

「この子は!只妹達を返してもらいたくてこのようなことをしたんです!話せば分かり合えます!」

 

文の言葉に紫はなだめる

 

 

「分かったわ...分かったからその子から離れなさい...良いわね?」

 

「嫌です!」

 

「させません!」

 

境奈の前に立ちふさがり梃子でも動こうとしない文と椛に紫はしびれを切らしてスキマを開く!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ないから離れてと言ってるの!!」

 

スキマにより文と椛は強引に空間移動で境奈から離される...

 

「な...何をするんですか!!」

 

「良く見なさい!彼女の状態を!」

 

文の抗議は紫の一喝により中断されて文は頭が冷えたのか境奈の方をゆっくりと確認する...

 

 

 

 

「に...から...し...られないの...」

 

そこにはゆらりと立ち上がり光の籠っていない目をした大神境奈がいた...

 

受けた傷は回復しており、彼女の足元にはアンプルが転がっている...

 

少しずつ禍々しい妖気があふれ出し、ぶつぶつと独り言をつぶやいている...

 

「境奈?」

 

「...だから信じられないの...他人なんて...期待するだけ無駄だったのよ...」

 

境奈が腕を上げると大天狗の叫び声が響く

 

 

 

 

「放て!トドメをさせ!」

 

天狗たちは大天狗の号令通り弓を放つ

 

「だ...駄目!境奈!!」

 

文の叫びが境奈の耳に届いていないのか彼女は反応も示さずに土狐を出現させ矢を防ぐ...

 

 

「...大神相手にこの程度?なら...見せてやる...アタシの本気をね...」

 

境奈が妖気を暴走させると地面から山のように巨大な土狐が現れ、その金色の双眼は天狗を見下ろす

 

(おおおーん!!)

 

「な...」

 

「放て!所詮は大きいだけの式神じゃ!」

 

大天狗の指示て矢が放たれるが土狐の装甲に弾かれるだけだった...

 

境奈は巨大土狐の口に近づく

 

「...その程度じゃ壊れもしない...だが本当の絶望はこれからだ!!首領土狐!時間を稼げ!」

 

境奈は土狐に飲み込まれて体内へと消えていく...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side境奈

 

「...」

 

首領土狐の体内に入ったアタシは自身の体の妖気を放出する...

 

もう...どうでもよくなってしまった...理性関係なく暴れまわるのもいいかもしれないわ...

 

そして...放出している最中山での生活を思い出す...

 

初めてできた仲間...紆余曲折した毎日...大変だったけど...楽しかったな...

 

「...全く羨ましいな...アタシが持っていないものを持っているんだもの...」

 

アタシの体が変化し首領土狐の中は大爆発を起こす

 

 

 

 

 

 

 

 

side文

 

ピシッ!

 

大きな土狐のお腹にヒビが入り全員がそのヒビを見つめる...

 

「何だ?」

 

「何か来るわ...気を付けて!」

 

ヒビが割れ穴が開き中から濃厚な妖気が滲みだしてくる...

 

境奈の本気ですか...うわさによると大神家の者は人の姿ともう一つ妖獣の姿があるとか...

 

紫の方も苦戦したみたいですし、今回の境奈は紫が相手をした大神家の者とは格が違う...

 

どのような姿をしているのでしょうか?

 

私たちが戦闘態勢を整えると穴の中から境奈の完全態が現れる...

 

 

「これが...アタシの姿...今から絶望を見せてやるよ...」

 

「...」

 

穴から出てきた境奈の完全態の姿は...

 

何と!

 

小さな子狐の姿をしていました!!

 

子犬のような体格に黄色の煌びやかな体毛!

 

頭には王冠のようなものを乗せている!

 

小さな体格とは真逆に蜂の巣みたいに纏まった大きな9本の尾を持っている...

 

尾が重いのかずるずると地面に引きずっているけどそれが良い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「...か...可愛い!!」

 

場の空気を読まず私は叫び声をあげてしまった...

 

境奈は私を見て呆れたような目をするが目線を大天狗へ向ける

 

 

「...アタシをここまで本気にさせたのはアンタらが初めてだ...死なないように気をつけな!!」

 

境奈が尾をこちらに向けると蜂の巣になっている9本の尾の穴の中から銀色の土狐がひょっこりと顔を出す...

 

先ほどの物と形状は違く随分とすらっとしている

 

 

「奴に式神を使わせるな!!やれ!!」

 

大天狗は天狗部隊に指示をし天狗たちは弓を引き絞るが境奈はせせら笑う

 

 

 

 

 

 

「遅い...未鎖射流土狐!発射!!」

 

境奈が言葉を発するとともに尾の中にいた土狐は天狗部隊目がけて発射される...

 

そして...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォン!!

 

「ぎゃああああ!!」

 

 

天狗部隊が大爆発を起こす...

 

 

 

 

「!?」

 

今の攻撃...見えなかった...

 

先ほどの土狐と比べて桁違いです!

 

 

「...ば...馬鹿な...儂の優秀な天狗部隊が...全滅じゃと?」

 

大天狗は狼狽えている

 

大神の本気の力をまじかに見たのだから当たり前...

 

私ですら今の境奈は体が震えるほど怖いです...

 

八雲紫は一歩前に出る

 

「ここは私に任せなさい...貴女は負傷した者を...」

 

「...でも」

 

この人だってまだ本調子ではないです...

 

大神との戦いの傷が癒えていないのですから...

 

それに境奈は前の2人とは格が違う...

 

境奈の方を見ると心なしかぼっーとしている気がします...

 

 

何故か分かりませんが...私の心にあるのは恐怖ではなく彼女を救いたいという心のみが浮き出ています...

 

私が...私に出来ることは!!

 

私は紫の前に出る

 

 

 

 

 

「私が言ったこと...聞こえなかったかしら?」

 

「残念ですが...彼女は私の可愛い後輩です...後輩の失態は先輩である私が拭いますよ...椛...怪我人のことは任せましたよ?」

 

「...はい...文様...ご武運を...」

 

椛はそう言い大天狗とその他の部下を下げさせる...

 

そして沈黙していた紫の式...藍が紫に耳打ちする

 

 

「紫様...私は?」

 

「貴女は別の仕事をお願いするわ...」

 

紫は藍の耳に口を近づける...

 

そして何かを言った後藍は頭を下げて森の中に消える

 

 

 

 

「何かの作戦会議ですか?」

 

「ええ...あの子なら出来る簡単なお仕事をね...」

 

紫が扇を向けると境奈は私達に尾を向ける...

 

 

「2人だけ?全く...このアタシを相手にね...なめられたものだ...」

 

バシュ...

 

「ふん」

 

境奈の尾から銀色の土狐が発射されるが紫はそれを弾いて左右の空間が爆発する...

 

まさかアレを見切ったというの?

 

「何!?」

 

「煌炉を倒した私の実力を侮らないでもらえるかしら?」

 

紫の言葉に境奈は口を堅く結びギリギリと歯ぎしりする...

 

「あっそ...だけど煌炉から受けた傷は完治してないんでしょ?なら...時間をゆっくりとかけてジワジワやってやるよ...」

 

境奈の周りに通常の土狐・黒い土狐・銅色の土狐が多数現れる...

 

新しく銅色の奴が出たけど...あれもまた特殊な物のはず...

 

 

 

「さっきより多いわね...完全態の力の所為かしら?」

 

紫は額に冷や汗をかき境奈は笑みも浮かべず無表情のまま宙に浮かぶだけだ...

 

 

「土狐百花繚乱...これでこの山全てを消し去ってやるよ...忌々しい思い出と共にね!」

 

境奈から禍々しい妖気が更に溢れてくる...

 

忌々しい思い出か...

 

私たちの生活が全て否定されてしまいました...

 

でも楽しかったことはあったはずです...

 

境奈だってその思い出があったから、はたて・椛に止めを刺さなかった...

 

それにさっきの時だって私の話を信じてくれました...忌々しい思い出というのは多分だけど彼女の本心ではない...

 

今の彼女の心は疑心暗鬼に捕えられている...

 

色々と自棄になっているだけ...話し合えるように彼女の頭を冷やさないと駄目みたいですね...

 

 

高度な戦闘になりそうですが...この妖怪の賢者と協力して彼女を止めないと...

 

私は紫の横に立つ...

 

 

「戦えるわね?」

 

「ええ...出来るだけのことはします...彼女を止めるためなら」

 

「そう...私の方でも何とか策を用意したわ...出来るだけ時間を稼ぐわよ...」

 

私たちは境奈の方へ駆ける...

 

本当の彼女の気持ちを確かめるために...

 

 

 

 




まだまだ続く境奈との戦い...

次回へ続く

ではこれにて
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