千年帝国の幻想   作:ベルリン=モスクワ枢軸

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悪足掻き

──国家の為なら笑って死ねる。そうじゃなきゃ国家主義者失格だ。

 

──私がNSDAPや親衛隊を素晴らしい、と言いきれる理由はだな。あれほど綺麗に、例えるなら麦畑が風で同じ方向に揺れる、、、この表現が適切だとは思わないが、とにかく徹底した統一感ある所が理由だ。

 

──ザイフェルト

 

───────

 

1943年2月

 

悪化し続ける戦局にソビエトは呻いていた。

そして人間とは、追い詰められると既に途切れた希望の光を、さも成功するものと信じて猛進する。

 

戦線の圧力軽減の為の枢軸加盟国での共産主義勢力一斉蜂起。

別名、クリスマス作戦。

 

──結論から言えば、

彼らがやったのは同類を潰滅させただけだった。

 

彼らがやったのは悪足掻きだった。

 

彼らがやったのは神頼みの博打だった。

 

彼らは流血に何も意味を見いだせず、増やしただけだった。

 

当時既に伊、独、ハンガリー、ルーマニア、旧ベネルクス・フランスでの共産主義勢力は掃討・解体させており、

 

黒いオーケストラもこの要請を沈黙をもって無視していた。

この時、もし参加していたら歴史にすら名前が残らない結果になるのは分かりきっていたからだ。

 

それでも例外はいた、

──旧スウェーデン共産党

ブルガリア領に結集したバルカン半島の共産主義の残党

オストラントに潜入した政治将校──

 

これらが、ボリシェヴィキの大博打の掛け金となった者達だった。

 

────────────

 

1943年4月

 

空中分解直前のソビエト連邦はクリスマス作戦を発令。

 

手始めにオストラント全土で、

次いでブルガリア、スウェデア・リーケの極一部で蜂起が発生。

 

計画としては上手く行った、戦線の圧力軽減という目標は成功した。

だがあとが無い。

 

現地駐屯の軍と民兵集団が衝突したところで結果は分かりきっている。

 

武装SSや機甲化師団が差し向けられたオストラントは特に悲惨であった。

 

重戦車や重自走砲を装備した大隊を追加した歩兵師団の投入、

既に本国との連絡、補給が遮断されていたこと、

元々のインフラが弱いのもあり、

兵力に比べて大した抵抗が出来ずに終わった。

 

降伏勧告に従わない市民や兵士ごと家屋を爆撃、

降伏した反乱を主導した市民は一家全員が毒ガスで殺され、

参加した民兵は強制労働、人体実験に投入された。

 

親衛隊大将のザイフェルトは反乱軍最後の都市、リガの補給を遮断し、慢性的に爆撃をし、包囲から数ヵ月後の飢餓と病と絶望感で満たされた都市にアインザッツグルッペンを投入、大虐殺を行い、リガを死の都市にした。

現在でもこの反乱の死者数は判明していない。

 

またこの反乱の時にあまりに反乱側の情報網が脆弱であったことが幸いし、反乱発生地での足並みの乱れや斥候を使った無謀極まる情報伝達が確認された。

だが、それでも事前に準備した作戦が綿密であったからか、初期の頃は統率が取れていた。

 

次いでに言うと情報網が脆弱だった為に、この情報を知っていた連合軍は大規模反抗作戦の時期を誤った、彼らの得意な情報戦で彼らは悲劇を演じた。

 

──────────

 

褐色館

 

「大臣!あんな命令を下して良いんですか!?」

私を信頼してくれる数少ない部下が走り寄ってきた。

 

「オーレンドルフか、あの命令は別に問題ない」

 

「ですが、あれでは大臣を大臣自身が否定することになります。

 

貴方はNSDAPであってアインザッツグルッペンじゃない。

 

大臣は虐殺なんてしてならない、市民の尊敬を集めるべき人物です、尊敬する上司に殺しなんてして欲しく無いです。

 

大臣はハイドリヒの代わりじゃなくて大臣として居るべきです。

 

私には大臣が暴走している車のように見えてならない」

 

どうしてこの部下は気が利くのか、

ずいぶん部下に尊敬されるようになった、そんなことを考えつつ、考え付いたことを羅列していく。

 

「なぁ、オーレンドルフ。

 

人体実験にサインした私が、

 

この大戦を指導した私が、

 

突撃隊も政敵も暗殺した私が、

 

先の大戦で笑顔で国旗を振りながら兵士を見送った私が、

───今更引き返すわけにはいかないんだ。

 

友人の敵討ちでたくさん市民を殺した。

 

二十万か、三十万かは覚えていないが、私はそれだけの人生を潰した。

 

だからもう遅いんだよ、

いくらナチズムを曲解して奴隷なんて発生しないようにしても、

いくら国家の為と言って市民を殺しても、

───きっと手遅れだ。

ハイドリヒの代わりになるなんて建前に近い、いや建前だ」

 

部下の顔が無念という言葉に制圧されていくのを見た。

きっとオーレンドルフの心は無力感に侵略されている最中だ。

だけど続ける、言葉を紡いでいく。

 

「それに、私だけ逃げる訳にはいかない。

 

今大戦を勝ち抜いて、復讐を果たし、世界大国に母国を成り上がらせる、こんな壮大な夢がある。

 

部下も、総統も、上司も、家族も、同胞も、ドイツ全てが私の大事な大事な物だ、守るためならなんだってする。

 

だから私を止めないでくれ、勝利の先に栄光がある、と信じて進むために私を止めずにいてくれ。ゴールはすぐそこなんだ。

 

───私から目標を取り上げないでくれ」

 

壊れつつあるナチズムを、大臣を駆り立てるのは唯一つしかなかった。

 

1934年の政権獲得時まで誰もが誇大妄想だと言い切った世界を支配するという無謀にも等しい目標であった。

 

これさえ果たせば、ドイツはよくなる筈だ。

 

きっと世界が我々を見直すだろう、と。

 

オーレンドルフは矜持と思想と野望に挟まれながらも進む上司を見た。

それは正しく暴走した車であり、未来を見失いつつある政治家だった。

 

──────────────

 

──反乱を完全に粉砕した大臣は、ハイドリヒ長官以上に恐ろしかった。

たぶん、その頃からです。政治の舞台の影で演者を消す脚本家に成ったのは。──オーレンドルフ

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