幾つかの話に関して纏めて触れています。
今まで潜水艦のみの拡大で終わっていたドイツ海軍であったが、オーバーロードをはねのけた現状、英国本土を叩き、北大西洋の連合国拠点を制圧するために中型空母、重巡洋艦、高速戦艦を基幹戦力とした第一機動艦隊を編成することが決まった。
ドイツ初となる機動艦隊では艦載機の指揮権を巡り、空軍と対立したりもしたが、政府側の要望で海軍に指揮権が渡るなど、とんとん拍子で話が進むことになった。
同時期に空軍自体も増強が行われており、対艦攻撃機、重戦闘機、そして……戦略爆撃機、ジェット戦闘機。
更には、連日行われる激しい訓練、レーダー基地、航空基地の整備による英国本土攻略に向けた準備が進んでいた。
陸軍も現代戦車と称される新型装備開発や機甲師団40個体制などが開始された。
さらには英米の現状無視の陸軍急拡大を受け、ドイツ~フランス海岸で完全な防御体制を作り上げることにもなった。
オーバーロード作戦以降から連合国は焦りを覚えたのか、この長大な防衛陣地に散発的な上陸作戦が行われるようになったが、対艦攻撃機によるビスケー湾の輸送船団攻撃が、ドーバー海峡航空戦の前段階として同時期に開始され、英国本土やブルターニュ半島に移動中の師団が被害を被りだすと鎮静化した。
ザイフェルトが提唱した欧州枢軸多国籍軍の第一段階として非アーリア人種で構成されたり、『比較的』ナチズム支持者が少ない武装親衛隊が武装親衛隊から切り離され、多国籍軍という新組織に再編成された。
今後、この組織には枢軸参加諸国から師団が集められ、政変や内乱、テロリズムに外交上や政治上の縛りなく即応が可能になった。
オーレンドルフの回顧録から察するに、肥大化する親衛隊を押さえるために創設されたはずが、欧州全てを跳ね回る新たな親衛隊が出来てしまった、と言うザイフェルト大臣らしくない誤算を生んでしまったようだ。
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──私が思うに、NSDAP、いや総統が絶大な支持を得たのは、やはり、ドイツ国民の飢餓感、欲望に応えたからに他ならない。
ユダヤ人を敵と見ることもその代表だと思うんだ。
英仏を繁栄から引きずり降ろして八つ裂きにする、私もこの事しか訴えて当選した様なものだしね──特集:ナチスはドイツに不自由を課したのか(日本国営放送NKH)より引用
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ソ連が崩壊し、オーバーロードが失敗した1944年、デンマーク、スペインがドイツ側で参戦し、イラクにはイギリス中東植民地のイスラエル・ヨルダン、ヴィシー政府から獲得したシリアを譲渡し、親英的なサウジアラビアやイランに対抗することを求めた。
カレリアをフィンランドに返還する事に代表されるように欧州では少なくなった中立国を懐柔する外交も展開。
また、イタリアがアフリカを完全に掌握したことを受け、一応は独伊による共同占領する事になった。
アフリカ確保後、ドイツはすぐさま、マダガスカルにユダヤ人を移送計画を開始。
元々居住していた住民には文化圏や資産などを徹底的に調べ上げ、彼らが住みやすいであろう地域を選定、または希望に近い地域に移民させ、諸々の保証をして、彼らをマダガスカルから移住させた。
マダガスカルに一人でもユダヤ以外が居る事は認められない、許されない、それだけの圧力が大臣によってこの計画に参加した各部署にのし掛かった。
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「マダガスカルで何が起きるのかを知っていて嫌がっていた、とハイドリヒから聞いていたがザイフェルト……」
眼前の部下の部下らしくない異常ともいえる計画に警戒をするヒムラーがそこに居た。
「ヒムラー長官、何も不思議な事じゃありませんよ。
友人との約束を守る、これだけです。
出世なんて狙ってません。
金髪のモーセと言われ続け、耐え抜いたハイドリヒの為です。
ユダヤ人なんて、ドイツ団結に向いているだけの『ただの人』です。
私は国民と友人との約束を果たすだけです」
劣等人種ではない、とナチズムの根幹を暗に否定しつつ言った言葉には、ドイツ団結の為なら虐殺すら是認する、と言うナチズムの一面すら滲ませていた。
「これからユダヤ共はドイツの、ひいては欧州の差別を一身に浴びて貰います。
マダガスカルは死と飢餓で覆われるべきです」
大臣の正義は、ヒムラーの価値観から共鳴してはいる、がヒムラーの想像からは離れつつあるようにヒムラーは感じた。
──必要ならナチズムすら否定する、そんな結果も有り得るのではないか。
そう思わせる決意であり狂気であった。
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そして、ユーラシアを埋め尽くしたファシズムと言う国家の生存本能は南米に波及しつつあった。
旧大陸の覇者にすべて奪われることへの恐怖や、
国際社会に返り咲く期待、
そして新秩序に参加するための義務感、
色々な立場での目論見が、生存本能が、ある決意を加速させていく。
──枢軸に参加せよ!今こそ祖国に繁栄を!
──民主主義秩序より国民を考えろ!
国民感情は枢軸に流れた。
誰も世界の自由の為に死ぬことは求めなかった、自国の生存をかけて民主主義を見捨てることを民主主義で決定した。
これから英米の正義は世界から見向きもされない暗黒時代が訪れるだろう、南米不穏という報を聞いた英国議員の誰かがが言った言葉だ。
ザイフェルトが聞いたならこう言うだろう。
母国を散々痛めつけておいてこれで済ますものか、まだ足りない、と。
だが大臣なら更に続けて、こう言うだろう。
──だがまだ参戦するべきではない。
ヤンキー共がやってくる余裕がないその日まで、いや、ブリテンが燃え落ちるその日まで
その時に絶望を、米ドルを紙屑にすることに協力してもらいたい。
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NSDAPが狂気の代弁者か、違う。
ではNSDAPは一体何の代弁者か、当然それはドイツ全体の怨嗟の代弁者である。
ユダヤという異分子を、共産主義という混沌を、英仏米という破壊者を、文字通り根絶やしにするまで止まらない、それを国民に約束し、混迷を極めるドイツを束ねあげる。
粉々に打ち砕かれたプライドを再建し、ドイツを再び勇躍させる、これがNSDAPの存在意義だ。
乱世に暴力で安寧を配給するのが役目である、そう若き日のザイフェルトは群衆に対する緊張で震える足を机で支えつつ演説していた。
ずっと前から大臣はそうだった。
だからこそボリシェヴィキを打ち砕いてからの日増しに揺るが無くなる勝利への確信に彼は歓喜していた。
やっと達成される、敗戦国の汚名を殴り捨てることが出来る。
ようやく報われる、あの時代から、あの屈辱と苦しみから──
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ベルリン 新総統官邸 会議室
「お久しぶりです。シュペーア大臣」
占領地を飛び回る激務から離れ、ベルリンについた大臣は偶然、シュペーアを見かけた。
その時の挨拶はいつもとは違い、幾つかの新鮮な経験をしたような雰囲気であった。
「──まさか、ゲルマニア計画がここまで進展してるとは」
大臣の視界には、建設中とはいえ、余りに巨大なフォルクスハレが圧倒的な存在感を放っていた。
「世界に戦勝したドイツの首都、欧州の象徴……そう言っていたのは他でもないザイフェルト大臣じゃないか。
それはそうとして、よくベルリンに戻っている筈なのに今まで気付かない?」
何でここまで変わっていることに気付いていないのか、と言う至極当然な質問であった。
「ずっと寝てますし、執務も会議も外なんて眺めてられませんよ」
からからと苦笑するほか無いという感じを滲ませながらシュペーアは、ふと思い出すように言った
「ザイフェルト大臣の異民族の忠告はよく聞いているから安心してくれ、君らの部署の信頼は裏切っていない」
「それはよかった」
返事はそれだけで、ただただ呆けているようにゲルマニアを眺めている大臣が居た。