千年帝国の幻想   作:ベルリン=モスクワ枢軸

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七月末まで不定期になりそうです
タイトルは財団からです


生き永らえさせてくれ

新型爆弾の開発はアメリカが世界で初めて開発した、それだけは史実と同じ。

 

でも投下する機会がなかった、枢軸の整備し続けた防空網を突破する力は無かった。

 

資源が尽きていった

 

資金が蒸発していった

 

工場は動かなくなっていった

 

研究者は失踪していった

 

残された者にあるのは心に生まれた空洞と、暗闇で盲目になった恐怖感であった。

 

その絶望感漂うアメリカでは、死や貧困、病をテーマとした文学や芸術、ファッションが生まれ大流行した。

 

競争の20年代(金ピカ時代)の栄華からまるで想像ができない時代であった。

 

建国以来の理念は荒廃し、市民の意識は荒れた。

 

彼らは、自国の栄華が永遠に、無限に続くと信じていた。

 

世界恐慌を経験しても彼らは楽観論で動いていた。

 

陰で屈辱と過去に塗れて這いずる敗戦国を食いつくし

 

八方塞がりで頭を抱え続ける極東の国を侮り

 

戦勝したのに、とぼやく半島の国を忘れていた。

 

自分の思う理想を世界に押し付け、自分の事情で簡単に捻じ曲げてい続けた。

 

そんな傲慢さを表すかのような足搔きを続けていた。

 

オーバーロード作戦が完全に失敗に終わり、辛うじてブルターニュ地方を維持し続けるも、これでは埒が明かないと言わんばかりに、1945の夏に入ってから上陸作戦を連続して行うが、

 

スペイン参戦によりジブラルタルを失陥し、

さらには欧州、アフリカ問わず沿岸防衛体制が完成した事。

 

ブリテン島陥落を狙った前段作戦として、第二次バトル・オブ・ブリテンが開始され、英米の空軍が消耗。

 

これらが原因で失敗続きであり、港が確保できずに上陸して全滅、ということも頻発。

 

では大日本帝国攻略は?

 

ハワイすら満足に奪取できず、守りが薄いベーリング海を渡ってアラスカに上陸される失態をさらけ出し、

 

更には第二次バトル・オブ・ブリテンの影響で空母から航空隊が転用される。

 

パイロットの生還確率を出来るだけ上げるために整備されたシステムも、制空権が奪い返せない状況では役に立たず、太平洋で訓練を積んだ猛者も欧州で磨り潰していった。

 

逆にドイツや日本は殆どの自軍のパイロットを救助しており、エリートパイロットがどんどん育成されていく状況であった。

 

辛うじて日本の攻勢限界が迫っていたお陰で日本海軍と決戦することは無かったが、それでもアメリカの消耗は凄まじかった。

 

一寸先は闇、なんて表現が生ぬるい、と思えてしまう程にアメリカは破滅と諦観に支配されていた。

勝ち筋は無い、産業も、人材も、資源も、資金も──

 

──何一つとして残されていない。

 

だからこそアメリカは乾坤一擲の作戦を練り、新型爆弾開発を必死に取り組んだ。

 

奪われる恐怖、虚しさ、怒り、憎さ、それら帝国主義の負の産物を英仏と共に全世界に与えて来た行いが今、真綿で首を締めるように襲い掛かってくる。

 

──────────

 

──新型爆弾をどこでもいいから投下しろ!航空隊が全滅してでもだ!──アメリカ空軍欧州司令部

 

──────────

 

──1945年9月

 

秋の到来を予感させる乾いた風がゲルマニアに吹き抜けていた。

 

そこで車に乗って、大臣の個人宅に向かって駆けていく科学者が居た。

 

食い入るように前を見つめ、冷たくて、不快感がある汗を全身から吹き出し、時折顔を拭っていた。

 

目に入るハーケンクロイツを見るたびに瞳孔が収縮し拡大し、車の速度は乱れた。

 

這いずるように、幽霊のように、大臣の家に入っていく。

 

家に吸い込まれていくような感覚を覚えた、

 

灰色の白熱電球を思い出す度に、嘗てとは違って心の水面に波紋が立った、

 

今日来ることをあらかじめ連絡はしたが、それでも顔をそれまで合わせたくなかった、

 

SSの大将という称号におびえている自分を自覚した、

 

足が笑っている、汗は止まらない、でも話すと決意した、してしまった。

 

科学者は家主が現れるのをじっと待った。

 

──今までのこと、これからのこと、

それらを決断する最初で最後の機会で、

どちらかにとっては最前で最悪、

最小で最大の歴史的意義がある

 

たった二人だけの、非公式の、

 

懐かしい思い出話

 

──────────

 

──僕は医者になりたい──両親に

──俺は政治家になりたい──同級生に向けて

──私はドイツで一等偉くなりたい──ハイドリヒの日記から引用

 

──私たちが、私たちこそが、世界を作り替えるべきだ──各国指導者との会談時に

 

──私だけが真にドイツを愛しているナショナリストだ──ザイフェルト

 

──────────

 

1945年12月

 

「──新型爆弾、いえ原子爆弾の研究が完了したとの報告が入りました」

 

総統が不在で行われている政府、国防軍の両首脳部会議中に扉が開け放たれ、そう報告される。

 

報告した者の目は笑っていた。

 

政府側も、SSの関係者でもある大臣も、笑っていた。

 

国防軍は安堵した。

 

そしてすでに幾人もいる『裏切り者』は、心の奥深くで焦りを抱いていた。

 

 

「先ずは親衛隊が提案したユダヤの収容が完了したマダガスカルで実験しましょう」

 

誰よりも先に口を開いたのはザイフェルトだった。

 

すぐに総統の個人秘書で党官房長官のボルマンが、口を開く。

 

─お言葉ですが、大臣。

 

そう切り出したボルマンの舌が徐々に回転率を上げていく。

 

舌が回れば回るほど、周囲の放つ圧力はボルマン一人に集中する。

 

大臣は黙ってそれを聞く。

 

原子爆弾を巡る各政治家や軍人の狙いは全く違うが、ボルマンが口を開くこの瞬間だけは、機械がボタン一つで動作が変わるように、押し黙り、串刺しにするような視線を叩き付ける。

 

ずっと、そんな調子で。

 

ずっと、決まらない。

 

──国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)

 

──親衛隊(SS)

 

──国防軍が

 

核を使用する名誉を欲している。

 

党官房長官だってそうだ、今誰かに出し抜かれてしまえば自分の派閥は弱まる、そう思っているのだ。

 

史実戦勝国での戦後の政治を巡る功績の奪い合いが比較的余裕のあるドイツでは行われた。

 

親衛隊の、NSDAPの、各省庁の、軍人の

 

──後継者争いは始まっている。

 

一発大逆転の功績こそが、核爆弾の使用にどれだけ関われるか。

 

それがアドルフ・ヒトラー総統亡き後のドイツに修復不可能な政治的軋轢になろうとも、

 

それがナショナリズムを犠牲にしても、

 

誰もチキンレースからは降りない。

 

階級闘争をするボリシェヴィキを許容し、挙げ句には堕落し、腐敗した衆愚政治の様になっていった。

 

肥溜めのような、腐った死骸の様な強烈な悪臭をナチズムは放ち始めた。

 

大衆を裏切るかのような舵取りをしかねない、そしてそれは歴史では当たり前──同じ轍を踏んでしまった。

 

──────────

 

──私達が悪?

ふざけるなよ、我々は勝ち続けて来た。

それでも狂気だの悪だの否定したいならな、我々を叩き潰せば良い、皆殺しにすれば良い。

戦争をすれば良い、謀略で引き摺り降ろせば良い。

何か間違った事を私が言ったか?裏切りの敗北主義共(脳無しの反体制派)──ザイフェルト

 

──────────

 

ザイフェルトと言うドイツ人は、

平均的な体格も、

天性の才能も、

人身掌握に長けている訳でも無かった。

 

両親に恩返しがしたい、両親の跡を継ぎたい──こんなことを言う孝行息子であった、それこそ世界史に載りもしないような人間だった。

 

彼が他人と違ったのは権力欲と愛国心、そして図太すぎる神経くらいだった。

 

彼は平均より劣る体格など、自分の能力についてかなりの劣等感があった。

 

あまりに記録や証言が残っていない幼少期を纏めると、

普通、この一言にかなり拘っていた。

 

彼が権力を求めだしたのは第一次世界大戦が勃発してからで、

当時、児童の希望はとにかく国家に奉仕する事、そう教育された環境の中で、周囲と違い体格で劣っていても問題の無い職業でドイツに奉仕したがった、とも考えられる。

 

彼の政界への参加がさらに明確な色彩を帯びるのは、第一大戦敗戦後である。

この時から大臣は周囲に連合国への復讐、母国を世界有数の大国にしたい旨を語っている。

 

その当時から、

彼の指導者として足りなさすぎる問題を自学自習で補うようになった

彼は過激なナショナリズムによる大多数(ドイツ民族)大多数以外を差別することで団結を可能にするという結論に至った

 

そして1945年、大臣は自分が散々非難し、利用していた、腐り果てた衆愚政治のようにナチズムが零落れていったことを核開発官僚の時に察した。

 

水清くして魚棲まず、この言葉が政治でも通じると思ってる大臣からも看過しきれないほどの腐敗だった。

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