──あの大臣は果たしてドイツを愛していたのだろうか。
アイツはアイツ以外を愛さないと思っている。
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ロイヤルネイビーはアジア・アフリカ圏喪失後、本土防衛に全力を割いた。
史実ではUボートに撃沈された主力艦も残存しているとは言え、第二次バトル・オブ・ブリテンの劣勢や、欧州各国の枢軸参加と言う無視できない状況になっていた。
特に一次バトル・オブ・ブリテン時以来、役目が無かった戦略爆撃機や嘗ての屈辱を報復として投入される報復兵器がイングランドを襲い出すと、第二次バトル・オブ・ブリテンは第二段階を迎えた。
ドーバー海峡の制空権の喪失、イングランド上空での五分五分の空戦。
ドイツは港という港を、インフラすべてを、工場らしき物すべてに打撃を加え続け、海洋国家を壊死させようとしていた。
ドーバー海峡を護衛機無しで守備せざるを得ないロイヤルネイビー
も格好の的になった。
輸送船団を食い破り、主力艦隊を滅多打ちにして痛めつけた。
それでも主力艦船を身を挺してでも、一隻たりとも失わずに護衛し
きったロイヤルネイビーはまさしく獅子奮迅の戦いぶりであったが、如何せん劣勢であった。
旧式の複葉機や機関砲を付けただけの民間機にマニュアルを叩き込んだだけの新兵を押し込んで、ベテラン搭乗員の肉壁にしたりもした。
国民には使い捨ての武器を配布し、熟練の職工、整備兵をも動員し、英国王室を無理矢理にでもカナダへ亡命させ、国民的支柱と兵員補充を完了させていた。
──まだスコットランド方面の制海権、制空権は無事だ。
──まだ米軍も居る、何より我が大英帝国の国民諸君が居る!
新聞も大人も子供も、誰も彼もが半狂乱になって喚き立て、そして恐ろしいまでの辛抱強さで本土決戦に備えた。
今でもイギリス国民はこう語る、あの恐怖こそ我々の誇るべき恐怖だった、と。
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──部下にも、恩人にも、同僚にも、上司にも、あの大臣はニコニコ、ケラケラ笑って下手な冗談を言っていた。
どれだけゆとりが無くて、心の水底ではカリカリしていても大臣は強がっていた。
あの人は、苦しさや悲しさなんて無縁の人に見えた。
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「ポーランドでのパルチザンはどうしてこれだけしぶといんだ。
旧ソ連圏の
──ディルレヴァンガーの連中は仕事を欲しがっているそうですが
あの連中は碌でも無い、リガで満足できないならマダガスカルに送れば良い
──ですが、これ以上放っておくと碌でも無いのは確かですよね
そう、このままじゃ旧ソ連圏との連絡を絶たれかねない
──総督府でも未だに鎮圧が出来ていないようです
取り合えず、総督府ではポーランドの官僚の採用とかをやってみるか
──わかりました、ではパルチザンはどうしましょうか
武装親衛隊の部隊でまだ真っ当な連中を貰うのと、連合国の武器密輸があり得るから捜査を厳しくしていこう。
現状確認と今後の大枠を決める会議を行っている、最近の頭痛の種のポーランドであり、各部署からも改善を強く求められるところだ。
優秀な部下ほど持っていて安心できる者は無い、大臣はよくそう言う。「優秀な部下のお陰で私は自分のわがままを叶えることができるんだ」部下の前でも彼はそう言い続けている。
「人一人には限度がある、一人が百万の人になれないが百万人を魅了する人には人はなれる」
「極論言えば、百万を魅了できる人を魅了すれば良い」
「その点、立場と言うのは制約こそ付くが、一応人はそれに従うものだ、どれだけ反骨精神があっても組織に属しない限り、人は人では無いから」
大臣を研究する文書に必ずと言って良いほど見る発言だが、これらの発言はこの宣伝省取材の各資料が裏付けている。
良く大臣のリガ大虐殺のみを誇張して言う評価として、生粋の戦争狂、殺戮者、性的異常者、精神疾患者などと言われるが、そのような記録は無く、彼の事は新植民地主義、特定の敵を設定した共存共栄を推進したことから見て、ナチズムと現実性を兼ね合わせた人物と言った方が良いのかもしれない。
また彼の評価はネオナチからも低く、ナチズムを歪曲した敗北主義者という評価を下されている。
他方で、ドイツの外交に積極的に関与しており、終戦が見え始めた1945年時点では、大臣であったリッペントロップをお飾りにして自身が事実上の外交大臣として枢軸諸国や、中立国・連合国の交渉を一手に担っていた。
日本で言うなら反東条派閥形成推進や戦後改革政策に多大な影響力を持っていたとされる。
また軍需省では積極的にシュペーア大臣の支持、協力をしており、交友関係としても良好であった。
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──私はどれ程非難されても愛国心だけは放棄しない。すべて失ってでも、だ。
家族は私を愛してくれる、私は家族を愛している。国家も全く同じだ。
国家という私の恩人、私を保証してくれる最高権力の為なら大虐殺も辞さない。鬼でも悪魔でも何にでもなろう。
前線の同胞に死ねと言えるだろう、他民族を平気で迫害するだろう、それがドイツの為になるのなら喜んでしよう。
差別と閣外の暴力が自分自身に向いた時でも甘んじてそれを受け入れよう、ドイツの為なら。
家族に無償の奉仕をするのと同じだ、だから私はドイツを、ドイツ民族を愛している。
それ以外は愛せない、全てを愛すのは全てを無視しているのと同義だから。
だからこそ私は正しい、絶対にそこだけは譲らない──ザイフェルト
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「ドイツ太平洋機動艦隊構想、ねぇ。海軍省もなかなか一気に踏み込んだことをされる。
30ノット以上の戦艦、
連合国の防空巡洋艦を真似た艦艇、
最低70機搭載可能な空母、
最新鋭の防空・対潜・艦隊直衛に設計された駆逐艦、
日本側に頭下げ倒してやっと通った技術もある」
レーダー、ソナー、航空機のエンジン、優秀な工作機械、建造した艦艇のうち一部を譲渡……
大雑把に言ってしまえば日本にとって不足気味の技術などの支援を積極的に行う、という代償が大きい交渉に大臣は乗った。
日本に敗戦されては困るし、日本国内の政治地図書き換えに協力した側の義務感でもあった。
当時日本では既に陽炎型駆逐艦の損耗が激しく、簡易型の松型駆逐艦を建造するなどの有様であり、ハワイ攻略後はキッツ島とハワイ島に大空軍基地を整備することで無理矢理戦線を維持していた。
アメリカの開発する戦闘機にも技術的に常に劣勢であり、産業・技術両面の劣勢はアジア地域の占領政策とともに大きな課題になっていた。
そこで産業や技術的な支援をドイツ、イタリアから獲得しようとしたのだ。
同時期、旧ソ連圏の安定化が済んだドイツは資源や軍需産業で大きく飛躍し、結果として造船所などへの余裕が生まれ、それによって今まで制限されていた建艦も盛んになった。
ここで連合国との建艦のノウハウを巻き返せれば、一挙に戦局は優勢になる。
だったら手段は惜しんでいられない。このようなドイツ海軍側の主張もあった。
この空母機動艦隊構想自体は最終的に達成され、ドイツ政府の威信を大いに高めることにもつながった。
またV1ロケットを発射可能な艦艇もあったり、東方生存圏達成後のドイツ側のある種の余裕を感じさせる個性的な試みも見られた。
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──先生、同級生にお前は早死にしそう、だなんて言われるんですが、どういうことだと思います?
──多分だけど強烈なまでに我を貫こうとするからだろう。
暖炉に例えるなら、人生って薪を大量にくべている様に見えるんだ。
つまり、生き急いでいる、そう思われたってこと。
──よく…分かりませんけれど、何かに一心不乱に打ち込めているなら良いじゃないですか。
──まぁ私もその同級生と同じ思いだ、生き急ぐ必要は何もないんだから偶には肩の力を抜きなさい。
──僕が我慢できるうちはそうします、恐らくは無理でしょうけど
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──マダガスカル アンタナナリボ上空
夜間の空を悠々と飛び回るのは一機の複座式偵察機。
誰にも気付かれず、誰にも攻撃されない平和な空を羽ばたいていた。
『ウンターメシュ共め、先住者の家に寄生するのは何処でも一緒なのか』
『すでに武装親衛隊や鉄衛団義勇軍、そして欧州枢軸多国籍軍などがアフリカに各地から集結している事も知らずに暢気な物ですね』
『核兵器を最も発展しているこのアンタナナリボに投下後、アフリカの対岸に集結した軍によって全土を浄化する。これで欧州に住んでいたユダヤは絶滅だ』
『ですねぇ……』
そう言って、後部座席の搭乗員は司令部に打電する。
<アンタナナリボは核投下に最適である>
ただただ短く、情緒も無く、淡々と、当然かの様に、死刑宣告文は打電された