千年帝国の幻想   作:ベルリン=モスクワ枢軸

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前回題名を決め忘れてました(震え声)
修正しました(キミガシネやりたいなぁ)


1946年~誰がために鐘は鳴る
黒い雨


──素晴らしい、素晴らしい!これ程の売国奴がのうのうと政治家として雄弁をふるい続ける現状を打破しうる方法は他に無いだろう!長いナイフは直ちに実行されるべきだ!直ちに!直ちにだ!

奴ら敗北主義者ではない、我々こそが母国を護る医師団なのだ!──ある親衛隊将校

 

──────────

 

脅迫、贈賄、ハニトラ、煽動、捏造……政権を維持する為なら、政権を確保する為なら。

 

文字通り何でもした。

 

誰かの勇気が、民衆の強固な意志が、我々への憎悪があったとしても、結局我々だけが勝った。

 

巡り巡る絶望が我々を育て上げた。

 

苦しい、恨めしい、憎々しい、そんな国民の切実な願いが我々の背中を強固に押してくれた。

 

だから理不尽にも耐えたし、だから我々はこんな戦争を始めた。

 

だから差別をして団結をさせた、そしてそれに罪悪感は無い。何故なら国家の為だから。

 

だから裏社会を「ユダヤ的」の一言で徹底的に破壊した。

 

官僚も、財界も、政党も、司法界も……──大衆の熱狂的支持と武力で全部手に入れた。

 

この国を護る為に、この国を腐らせる売国奴を叩きのめした。

 

噓だって平気で吐いたし、騙したり、利用するのは当然。

 

他に誰も大衆の憎悪を語らないなら我々が

最早金権政治家に成り下がった保守派ではなく責任と使命を忠実に遂行しうる我々が

 

代弁しただけだ、そして核兵器は私にとって延長線上に他ならない。

 

核兵器の死者を見て、講和条約を見て、それで国民から敗戦を拭えるなら私は喜んでそれをしよう。

 

私の国だ、私の民族だ、私の大切で素敵で愛しいドイツだから。

 

──────────

 

──私たちが如何に悲しかったか分かりますか、お義父さんがナチズムとドイツに忠誠を誓って何処か遠くに行くのが。

死人のような冷たい手が、空洞のような瞳が……戦勝に近付けば近付く程そうなった。

戦災で孤独になった私たち兄弟を笑顔で迎え入れたお父さんが徐々に変わっていく様が!?──ザイフェルトの養子

 

──────────

 

「ロンメル将軍、本国からです」

 

「ありがとう、下がってくれ」

 

そう言って部下が退出するのを確認してから電報を確認する。

 

ザイフェルト大臣が言っていた核兵器使用の事だった。

 

内容は単純明快

 

核兵器使用ヲ許可スル

 

たったのこれだけ。

 

同時に送られてきた放射性物質の危険性についての説明の書類も読みこむ。

 

正直に告白すると、たったこの一発で都市一つを陥落させられる、私には実感が全く湧かなかった。

 

書類に同封されている遺体や被爆者の写真を見ても全く現実味が湧かなかった。

 

「──……齢だからかな」

 

曖昧な気分でそっと呟いたのはらしくない言葉だった。

 

──────────

 

総統命令、この言葉は指揮系統を越えて機能する。

 

大臣から核使用の許可を願う電報が届いたとき、私は気に入らないヤツの手柄にされてたまるか、その心持で動いていた。

 

やったことはただ単にロンメル将軍が電報を発信した、そう改竄しただけだ。

 

ヘスと同じように没落はしたくない、その一心だった。

 

だからこの話は墓場まで持って行こう、これ以上は語るまい。

 

──────────

 

「──なかなか返信来ない」

「フラれたんじゃないのか?」

「おいやめろ」

 

廊下を歩いている時に職員の愚痴が聞こえて思い出した。

 

核兵器の事だ。

 

総統が確認していない筈が無いと思うんだけど。

 

「あ、ロンメル将軍に連絡が行ってるのかもしれない。確認をしたい」

 

自室に着くなり部下にそう告げる。

 

文句の一つ溢さずに連絡をしてくれるのは非常にありがたい。

 

彼が居ない間に今日の職務の確認でも

 

ラジオで懇談、補償費や予算の確認、自治会との協議……

 

 

 

 

「大臣、すぐに返信がきました」

 

「うん、ありがとう」

 

紅茶と一緒に渡されたロンメル将軍からの連絡を読む。

 

何故だか分からないけど総統命令として原爆使用が許可された形なのか。

 

投下予定日は二週間後、ドイツ空軍が指揮を執ってくれるらしい。

 

「ありがとう、核使用の時には私も現地に行くかな」

 

スコットランド周辺も視察したいし、もしかすれば現地の指揮官に講和交渉のきっかけを作れるかもしれない。

 

──────────

 

──私の様な凡人が天才に勝つ方法なんて決まってる、罠に引きずり込むしか無いんだよ。

何時だって、そうやってきた。騎士道なんて知った事か。全部勝者になれば些細な事だから──ザイフェルト

 

──────────

 

 

 

英雄なんて、要らない。

 

工業化と大衆化の果てに大衆と総力戦まで歴史は来た。

 

核兵器を人類で初めて用いる罪悪こそが我々の結果であり、行きついた目的だ。

 

サイレン音がけたたましく鳴り響く。

 

原子爆弾搬入は危険性を伴うからだ。

 

もしかすればV2の技術で月に行けるかもしれない、ふとそんな事を夢想した。

 

核兵器も人々に光を供給できる様な手段になるのかもしれない。

 

複雑な数列が全世界を繋げる新しい手段になるかもしれない。

 

そう思った。

 

ただ私には無関係である。

 

何故なら私は国家さえ在ればそれで良いから。

 

愛も、制度も、憲法も、民族も、

 

国家も、差別も、私も、家族も、

 

何もかもが、

 

国家の道具でしか無いのだ。

 

未来を夢想することなどはどうだっていい事だ。

 

私はそうすべきと思ってる、だからこの眼前の核を見届けるのは私の責務である。

 

「頼むよ、終戦を呼んでくれ」

 

だからこの一言は、核に触れて零れた一言は、

 

紛れもなく、矛盾なく、

 

憎悪も復讐心も無く、

 

ただ思想に、染まり、溢れていた。

 

敗戦後、国家だけを愛せ、政治家になる為に造り上げた〝私〟はそう囁いていた。

 

そして私はそうなった、そうすれば勝てると信じていたから、ここまで来れた。

 

私はもっとそうなるべきだ、私はこの兵器を触れてそう確信した。

 

私のような無才の身には、生半可ではない覚悟と綿密で入念な準備無くして戦えない。

 

破滅する時は、誰も彼もを巻き添えにしよう。

 

恨まれて消えてやろう。

 

今は、勝つ為だけに。

 

もし世界の正義が、誰かの正義が、意味もなく崩れていっても。

 

最期まで続けるだけ、ナチズムの限界と愛国心が燃え尽きるまで。

 

私は闘争を続ける、矛盾と貫徹に挟まれ続けながら。

 

「やはり」

 

だから

 

「素晴らしい」

 

どれだけの若者を死地に追いやってでも

 

「戦勝は、復讐は」

 

叶えよう。

 

私の夢を、私の国家の繁栄を。

 

──────────

 

英国本土が陥落した、その情報が世界を駆け巡った。

 

それは連合国の事実上の敗戦を意味していた。

 

南米のエクアドル、ペルー、ベネズエラの三ヶ国はザイフェルトとの密約を守り、米国に宣戦布告した。

 

自国の裏庭が裏切った、それをアメリカ合衆国は認めなかった。

 

何より、必死に情報統制をしていてもロイヤルネイビーがカナダに移った事を完全に秘匿などできず、世論は揺らいでいた。

 

──支持率を回復せねばなるまい、そしてこれが講和に繋がるかもしれない。

 

その一心で、南米を征服することを決定した。

 

新兵同然のパイロット、時代遅れの戦艦を主体とした攻略部隊を搔き集めた。

 

大急ぎで政界の意見を固めようとした、知日派や講和派を恐喝し、説得するのに時間がかかった。

 

そうして急場の部隊は出撃した。

 

裏切り者を叩きのめしに、支持を回復する為に、講和に繋げる為に──

 

ただ時間がかかり過ぎていた。

敗因はそこにあった。

 

 

 

 

 

枢軸の支援と、連合の鹵獲で技術を強化した日本軍が、

 

空で

 

陸で

 

海で

 

待ち構えていた。

 

 

 

 

 

アメリカ陸軍は入念に準備された要塞陣地で

 

アメリカ海軍は一挙に戦艦や重巡、護衛空母を

 

アメリカ空軍は僅かな機体と稀少なパイロットを

 

悉く失った。

 

その後、ドイツ空軍も参加し、アメリカ海軍は多くの艦艇を喪失。

カリブ海南部の制海権を失った。

 

正規空母を戦前に投入せず、護衛空母を派遣した事は数少ない幸運だろう。

 

だが戦局は変わらない。

 

むしろ悪化した、してしまった。

 

南米は枢軸側につき、準備の遅れで主力艦の多数を損失し、パナマ運河は二度と使えなくなった。

 

超短期訓練で空母発着艦がやっと出来るようになったパイロットも失った。

 

 

 

アメリカ政府は大きな誤りをしていた。

 

南米を攻略した所で維持出来る筈も無いのに急襲し、

現実不可能な一撃講和論が南米攻略計画によって達成可能だと誤認した。

 

 

つまるところ、

 

 

とどのつまり、

 

 

全くの無駄だった。

 

戦局に何ら影響も及ぼせず、無駄に戦力を消耗した。

 

ただの悲劇だった。

 

この時点でアメリカ政府はマトモな判断力が無かった。

滅びゆく恐怖で思考が破綻していた。

 

この敗戦以降、一次大戦時代の旧式兵器すらアメリカは導入した。

 

リバプール救出は困難になった。

 

対艦戦法として体当たりが採用され始めた。

 

政党は解体され、単一政党による総力戦体制が敷かれた。

 

資本家の自殺が相次いだ。

 

軍部のクーデター未遂が多発した、テロや犯罪は急増した。

 

それでも市民は終戦を叫ばなかった。

 

ずっと耐える気でいた、何時か誰かが我々を救出してくれる、と都合の良い夢を見て。

 

そんな現実逃避の意思はすぐに打ち砕かれた。

 

──────────

 

──強固な意志だけが私を動かす──ザイフェルト

 

──────────

 

全軍にガスマスクとレインコートを配布が下された。

 

グーゼンバウアー博士の論文は分かり易く危険性と対策を纏められており、専門外のロンメル将軍にとって非常に有益な情報だった。

 

「本当に助かった」

 

安堵の息を吐きながら核兵器について思考を巡らせる。

 

アンタナナリボでは時間がかかったからか健康上の報告なんて聞かなかった。

 

核の管理はどうなるのか。

 

放射性物質の実験はどうなってるのか。

 

思考は巡り巡ってアメリカ軍の愛国心溢れる、

 

そして絶望感にも覆われた、

 

決死の戦法にまで巡っていった。

 

正気の沙汰じゃない、そうとしか結論が出せなかった。

 

だが、愛国心と絶望感がそこまで駆り立てているということに一定の理解は可能だった。

 

──────────

 

──愛とか友情等と言う物は直ぐに壊れるが、恐怖は長続きする──スターリン

 

──────────

 

ザイフェルトはぼうっ、と車外を眺め、終戦への筋書きを再確認している。

 

南米を味方にした、ただそれでは降伏しないだろう。

 

今リバプールで必死の抵抗をする30万が可能な限り、放射能の恐ろしさを実体験し、国民に広めて貰わねばならない。

 

そうした上で恐喝すれば、虚構の世論は破綻するだろう。

 

たったこれだけ。

 

アンタナナリボを知らないとは言わせない。

 

握り潰したホワイトハウス自身の浅ましい思考を破壊できる。

 

黒いオーケストラなんかに邪魔はさせない。

 

赤色戦線残党狩りも強化しないと。

 

そんなことを考えていると、突然車が停車した。

 

道路が砲撃跡で進めないことになっているらしかった。

ここからは徒歩で進んだ。

 

ぬかるんだ地面やクレーターが小さな池になっている。

 

戦闘が無くなったと察知した鳥が空を進む。

 

カエルが鳴いている、蝶は蜜を探している。

 

確かに平和だ。

 

部下が呼んでいる、戦場の名残を見るのは後で良い。

 

まだ間に合う、歩きでも間に合う筈。

 

──────────

 

予定より時間を早めて原子爆弾は、リバプールの敵司令部からあえて離れた場所に投下された。

 

大臣はリバプールで小さい太陽が炸裂したことを移動中に知った。

 

投下が予定より早められた理由として、急速な天候の悪化が予想されたから、と言われている。

 

実際、投下後すぐに天候が悪化。

 

放射性物質を含んだ雨が、リバプールの東側に降り注いだ。

 

ロンメル将軍の居た司令部もリバプール東側に位置していた為、雨雲が流れ込んでいた。

 

──────────

 

──死ぬのは今日では無い、まだその時では無い──ザイフェルト

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