2023年もよろしくお願いします。
……鎌倉殿の13人を見ればよかったッ!(2022年の感想)
皆さん、メリークリスマス(超小声)
──人類全体は農業を手に入れたことで発展し、そして個人単位では不幸になった。
我々はその歴史上、素晴らしく悲劇的な幸運が連綿と続く、歴史に抗う事が出来なかった。
私はそれを後悔していない、何故ならドイツの発展の事が私にとって最優先すべきことだから。
我々が歴史の轍を踏もうとも、歴史だけの存在になっても、ドイツが栄れるのが最優先だろう──ザイフェルト
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「開戦から1週間が経過し、ある程度の情報を把握できました」
ハウサー将軍がこう切り出して、会議は始まった。
現状の陸空戦力は互角であること──
本土に待機していた海軍は中立の姿勢を維持していること──
経済的に発展が進んでいたドイツ本土と生存圏の工業力の比較──
退廃的な裏切り者の本拠地に水素爆弾で小さな太陽を作り上げて終戦させる、というヒムラー長官が出した提案──
生存圏の住民に対する施策を変更しなければならない可能性が急激に高まってきた事──
会議は終始、ヒムラー長官率いる親衛隊やボルマン派など、派閥が互い牽制しあっていた。
──まるでワイマールの時のように。
その有り様は、大臣にとって同僚の腐敗は堪え難い物だった。
大臣にとって、敗戦を確信するに至ったのはこの会議であった。
────どうにかしなければならない。
説得ができるなら望ましいのだろう、だが、そんな悠長な手段は取れないだろう。
──自分の行いがすべて無駄だったなどとは言いたくない、であれば徹底抗戦する為の体制が欲しい。
誰かがやるしかない、誰かが──
あのワイマールに終止符を打った総統と、同じ様に行動するしか無い。
総統の立場や心情としてそれを期待するのは酷でしょう、では?
──では、誰も居ないなら私がやるしかない。
内戦という非常事態下において、第三帝国首脳部は完全に動揺し、分断されていた。
それは総統と言う巨星のような輝きが幾ら照り付けようと、首脳部の荒涼とした大地の様な精神に効果が出るのにかなりの時間を必要した。
自分達の思想の否定を、自分達を支持した国民にされた。──この背後の一突き、と言っても良いような事態が、首脳部に無用な派閥への拘りと、総統への忠誠と連帯感を乱してしまった。
そしてそれは、ある種の理想主義者だった大臣に、途方も無い孤独の決意をさせるには充分だった。
首脳部にとって、陽気で平和な春に満ちていた筈のモスクワには、冷え込んだ雪が舞っている──
──内戦というNSDAPの目を曇らす、灰色の冬がそこには確かに広がりつつあった。
その灰色の雪はあの屈辱の敗戦より、ミュンヘン一揆失敗の時より、遥かに冷たく、刺すような負の感情があった。
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──教えてくれ。オーレンドルフ。
教えてくれ。ミュラー。
我々は一体何処で間違えた?私は何処で間違えた?
どうしてNSDAPを!もっと早く変えられなかった!?──ザイフェルト
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敗戦から憎悪と自尊心を取り戻す為の苦難の道を歩み続けているのは、ロシアだけではなく、狂騒の20年代で栄華を謳歌したアメリカ合衆国もだった。
ドイツ内戦の結果、彼らを執念深く妨害してきた謀略は総て終わりを迎えたのだ、たった一夜で。
分断を収拾できる唯一と言って良い好機が突然到来した訳だ。
分断と混乱に疲れ果てていた民意は特別早かった。
──アイゼンハワーを大統領とする新政権を樹立させ、
人事面では、閉鎖的で鬱屈した雰囲気の政界に新しい風としてジョン・F・ケネディ等の若手議員──
南部諸州の人種意識変革の為にキング牧師──
彼らを政権に招き、古き良きアメリカ、ではなく、移民国家アメリカ、としての再スタートを切ろう、そういう運動が激化した。
アメリカ陸軍は当然この動きに抵抗しようとしていて、内戦の可能性すら浮かんできている。
────敗戦からの復興の道のりはまだ遠そうだ。
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──もし枢軸が敗戦したら、よくそう言う仮定の話が出回っている、と。
恐らくそこまで変わらないと思います。冷戦や敗戦国の急速な復興など起きる事は変わらんでしょう──ザイフェルト
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「民意が完全に総統というカリスマを忘れ、ナチズムと言う拠り所を失わない限り。我々は脆弱です」
ヴァルトフォーゲルがそう会議を始めてすぐに言った言葉だ。
「──しかし、経済相の君の政策によって支持率と経済成長率は上昇しつつあると思うが?」
大統領として就任したアデナウアーがそう質問する。
「いいえ、まだ足りません。
それにカイザー帰還を穏健的な右翼に約束したものですから」
──いっそのこと、カイザーを権威にしてしまいましょう。国民統合の象徴として。
そうすればカリスマと帝政という拠り所が生まれる、あの不安定なワイマールと違う、そう国民は思い込むだろう。
きっと経済相はそう言いたいのだ、アデナウアーや他閣僚はそう確信した。
「──閣僚や首相の皆さんのご意見を伺った上でこの話は進めようと思います」
周囲の確信に対して気付く事無く、経済相は淡々と周囲に確認をとる。
異議なし、賛成、素晴らしい──結果は全会一致の賛成であり、経済相やアデナウアーを中心とする会議によって幾つもの法案や憲法草案が提案され、協議され、修正され、そうして定められていった。
世界で最も民主的で、それでいて皇帝を擁し、欧州最大の覇権国家としてのドイツを作り上げようとしていた。
第二帝国の失敗は、第三帝国が取り戻し──
ワイマールとその落とし子たる第三帝国が招いた混乱を、彼ら臨時政府は収拾して──
──そうして、そこまでして、歴史を始めることができる。
どんな身分だろうが、どんな宗教だろうが、どんな人種だろうが、どんな職業だろうが──きっと多くのモノを喪って、きっと多くの血を流して、一次大戦までの総決算をするだろう。
ドイツ・ナショナリズムと資本主義による自立を達成した第二帝国は、英仏と対決し、敗れて。
第二帝国は、民主主義という理念を獲得せん、と死闘したワイマールになって、民主主義理念によって英ソに分断された。
復讐という感情によって、民主主義による帝国を生み出して、英仏、そして米ソに勝利した第三帝国。
自浄能力を誕生した時点で喪失していた第三帝国の失敗を、臨時政府は解消して、1世紀未満の平和を得ようと戦争を続ける。
永遠ならざる平和なら、何度でも政権交代をして平和を獲得し続けよう──そう言っているかの様なうねりだった。
ドイツ全土の人間が体感している、うねりがこの内戦である。
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──我々の旅路が終わる時はただ一つだけだ。我々が死に絶えるその時だ──NSDAP機関紙『フェルッキシャー・ベオバハター』 ドイツ内戦に際して
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一般親衛隊隊員を半ば使い捨てるような指令によって、稼がれた貴重な時間が収容所を代表したナチズムの負の側面を処分する事に成功した。
そうして当初の目標を達成した指令は撤回され、一般親衛隊隊員を東方生存圏に召集する指令が下された。
同時に生存圏全域で絶滅戦争綱領が宣伝され、たちまち生存圏の住民は戦渦に巻き込まれる事が運命付けられた。
──その内戦はドイツ人によるドイツの脱皮であり、第二次世界大戦の延長線上であった。
物量と執念と人々をぶつけ合う絶滅戦争は、やっと始まった。
人類史が新しい段階に突き進む為の、帝国主義時代の総決算──
その意義がこの戦争にはあった。
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──ザイフェルトという人間は真面目と言うべきだろう。私はそう思っている──ヴァルトフォーゲル
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大臣という人間は、ドイツ本土を全て失った結果、彼我の国力差が開き続けるのを抑える為に、そのためだけに致命的なミスを犯したのだ。
絶滅戦争を完遂する為に生存圏に下された綱領──
──それは最低限の自治を取り上げる物。
──それは計画された工業と農業を強制させる物。
──それはささやかな自由すら認めない物。
これは閣議によって各派閥の圧力に抗しきれなかった失策だった。
大臣自身の弱さともいえる失策だった。
彼は同僚の圧力を、同僚の楽観論を、同僚の僅かな思想的差異を、甘く見てしまった。
本土で財閥や官僚としのぎを削りあっていた反動、そう見る動きもある程に彼は、大臣という男は衰えていた。
どことなく雰囲気や風貌も、低身長で、瘦せてはいるが、目つきは鋭く、何処か活き活きとしていた内戦前とは異なり、頬はこけ、目元には隈が出来て
──髪も整えられておらず、無精髭すら出来て、眉間には皺が寄っていた。
周囲への失望と内戦による自身のストレスコントロールの破綻が主だった要因としてあげられる。
──精神が衰え、それにつられ体も弱る負の連鎖の只中に大臣はクーデター計画を思い至った、至ってしまった。
もともと大臣という人間は、政治家にまるで向いていない人格と能力を持っていた、それは多くの人々の証言で確定的であり、大臣が大臣たる所以はそれを努力で補った事だった。
その能力は周囲へのある程度の信頼が土台だったが──周囲も、大臣も権力を手にして変わってしまった。
大臣は変わった──保身をせずに消されれば、全て水泡に帰す、そう考えるようになった。
今までは、自分が潰れようとも代わりが居たし、自分は部下の立場だった。
彼は責任によって、革命家じみた精神を諦め、放棄した。
──ザイフェルトは軟弱になった。
昔からの知人はそう言った。
革命家を革命家たらしめる破滅的野心こそが、大臣が求める改革に必要だった。
そのある種の冒険主義を失ったが故に、大臣は第三帝国の完全な浄化装置とはなれず、だから政治的な立ち回りに一定の自制心を働かせてしまった。
その組織を守る、という正しさによって、大臣は半端な立ち位置となってしまい、その半端さによって内戦は齎された。
大臣は、保守派であり、革新的だった。
そのどちらも見れる姿勢が、彼の栄達と破滅の原因だった。
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──ナチズムは自浄能力と経済観念をかなぐり捨てて誕生した歪な政治思想である──チャーチル 回顧録より
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内戦が始まって、すぐにモスクワを臨時首都と定めた第三帝国政府は、敵臨時政府が核発射施設の一部保有を宣言し、この内戦における外国勢力介入を封じられた事を否応なく悟らされた。
ただそれでも、周辺諸国は多国籍軍に帰還命令を出さなかった。
何故か?
理由は単純で、内戦後に報復──それこそ核使用による絶滅政策の餌食になるのはどうしても避けたかった。
民主主義を掲げた臨時政府は侮られていた、そう言えた。
──スロバキア。彼の国は戦前に第三帝国の属国となっていた。
大戦初期に嘗ての同胞のチェコが、第三帝国に反抗して、悪魔のような統治者を打ち倒した
──確かにそこまでは自主独立の美談で終わったかもしれないが、現実はそうではなかった。
話には続きがあった。
その統治者の親友と言って良い人間によって、
──小さな抵抗の芽は、徹底して踏みにじられた。
彼らスロバキア政府は、その事件を今でも忘れていなかった。
第三帝国と言う勢力が、裏切り行為をただの一度も忘れず、反逆を見逃さず、許さないという事を、スロバキア政府は兄弟のような国を通して疑似体験していた。
だから、臨時政府の警告を真っ向から無視した。
そして、その末路は、多国籍軍に参加していた各国にこれ以上の支援を躊躇わせるのに十二分の効果を発揮した。