ゲンソウロンパ   作:こえ

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邂逅
始まりはいつだって突然で忽然で必然


 

 

 

「ん、起きたか。立てるか?」

 目を覚ますと魔法使いのような帽子を被った金髪の少女が私に手を差し伸べていた。私と同じくらいの年齢だろうか。

 どうやら私は眠っていたみたいだ。硬い床で寝ていたせいか、身体が少し痛い。

「大丈夫、一人で立てるわ」

 差し出された手を借りず、私は自力で立った。

「そうか、ならいいんだ」

 金髪の少女は手を引いた。

 立ったついでにふと辺りを見回す。どうやら私がいるのは体育館らしく、ステージもある。ただ、私にこの体育館の見覚えはない。ステージがあるということは学校だろうか。

 そして一番気になることは、私と先ほどの金髪の少女を含め18人の、私と同じくらいの年齢の少女がいる。それも全員同じ服、薄紫色のリボンがあしらわれた半袖の薄い生地の、所謂「夏服」と呼ばれるセーラー服を着ている。先ほどの金髪の少女も、そして私も。私たちの履いているスカートは紺色で、膝にギリギリかかる程度の丈の長さだ。

「なあ、お前も何でここにいるか分からないか?」

 私が見回してる中、先ほどの金髪の少女が話しかけてきた。

「ええ、そもそもここがどこなのかも分からないわ」

 私は思った通り、感じた通りに答えた。

「やっぱりそうか……お前もか。これでここにいる全員が記憶が欠如してることが分かったな。」

 ため息交じりに目の前の金髪の少女はぼやいた。

 いや、私はこの人物を知っている。「金髪の少女」という呼称でなく、私はこの人物の名前を知っている。

「欠如?喪失じゃないの、魔理沙?」

 息を吐くように、自然に目の前の少女の名前が私の口から飛び出した、「魔理沙」と。

 しかし、私には目の前の少女の名前を間違っていない自信があった、「霧雨魔理沙(きりさめまりさ)」であると。

 恐らく「魔理沙」であろう少女は、少し驚愕の表情を見せたがすぐにその表情は消えた。

「やっぱりお前もか……霊夢。合ってるよな?お前の名前は『博麗霊夢(はくれいれいむ)』だろ?」

 驚くことに魔理沙も、私の名前を知っていた。私は驚愕の表情を隠せなかった。

「その反応は正解だな、もう17回目だから分かるぜ」

 魔理沙は当然、といった顔もちで言った。

「ついでに教えてやる。ここにいる全員がお互いの名前を知ってる。だけど、それ以上のことは知らない。私も、そしてお前も。そうだな?」

 ニヤリと笑って私に訊いてきた。

 その言葉を聞いて、私は再び辺りを見回してみる。

 最初は皆全員知らない人だと思っていた、がそう言われるとこの人達を私は全員知っている。

 あのウェーブのかかった黒髪ショートヘアの少女の名前は「村紗水蜜(むらさみなみつ)」だ。妙にセーラー服が似合ってる。この18人の中で一番セーラー服を着ていることに違和感を感じないのは彼女だ。

 ムスっとした表情の青い髪のロングヘアーの少女の名前は確か「比那名居天子(ひななゐてんし)」だ。見たところ、かなり不機嫌な様子だ。ファーストインプレッションでは、彼女はかなり我侭そうだ。

 他の人たちの名前も全員分かる。そして、その名前に自信がある。しかし、やはりそれ以上のことは分からない。相手の人がどのような性格で、どのくらいの年齢で、私とどんな関係だったか、それらのことは全く分からない。

 私自身の心中で全員の名前を確認した後、魔理沙の質問に答えた。

「え、ええ……そうね。全員の名前は記憶にある。魔理沙の言う通り、それ以上のことはさっぱり」

「ちなみに、他のことは何か覚えてるか?例えば、ここから脱出する方法とか」

 記憶を掘り返してみる。しかし、全く思い出せない。頭の中に(もや)がかかっているようだ。

「悪いけど、全然思い出せないわ」

 魔理沙が落胆して言った。

「やっぱりかー。そりゃそうか、お前だけ何か覚えてるってワケないよなぁ」

 ふと、少し遠くを見ると、赤いショートヘアの少女と青いメッシュの入った銀髪のロングヘアーの少女が話しているのが見えた。

 確か、赤いショートヘアの方は「堀川雷鼓(ほりかわらいこ)」、銀髪の方は「上白沢慧音(かみしらさわけいね)」だ。

「あらら。これで手がかりがついに0になったわね」

「確かにな。あの扉も開かない。私たちをここに集めて何をしたいんだろうな?」

 慧音が言っていた「あの扉」を探すのに、私はキョロキョロ体育館を見回す。すぐに、雷鼓と慧音の向こう側に大きな扉が見えた。

 その扉をじっと見つめていると、魔理沙が言ってきた。

「霊夢、あっちの扉じゃないぜ。あれは調べたら用具やら何やらが収納してあった。あいつらが言ってるのはお前の後ろのだぜ。」

 言われて、私は振り返ってみる。すると、先ほどの扉と似たような形状の扉があった。

「あれが多分ここの出口だ。だけど、どう頑張っても開かないんだ。鍵もないみたいだしな」

 歯痒そうに魔理沙が言った。

 それに対して、私はふぅん、と味気のない相槌しか打てなかった。何故なら、それよりも気になることがあったからだ。

 

 ステージ。

 用具の収納されているという部屋の扉の近くにあるステージは、私は怪しいと睨んでいた。何がどう怪しいというわけではない。ただ、本能的に怪しいと感じているだけだ。というより、「怪しい」というより「妖しい」のだ。あそこから何か気味の悪いモノを感じるのだ。

 まじまじとステージばかり見ている私に疑問を抱いたのか、魔理沙が心配してきた。

「おい、霊夢。ずっとステージなんか見てどうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがね。やっぱり一味違うわね、霊夢」

魔理沙が私に問った直後、気味の悪い裂け目が急にステージに出現して、そこから「妖しく」、「怪しい」声が聞こえた。

 

 

 

 

 突然、ステージ上から聞こえた声に体育館にいた全員が反応して、声の方向に視線を向ける。

 気味の悪い裂け目から再び声が聞こえる。

「全員起きたみたいね。……うん、いい面子を揃えたわね、藍は」

「な……何だあれ!? なんであそこから声が聞こえるんだ!?」

 魔理沙はその異常な光景に驚くしかなかったようだ。私も驚いていなかったわけではない。しかし、魔理沙ほどは驚かなかった。何故なら、私にはあの裂け目には既視感を感じていたからだ。もしかしたら、欠如している記憶の中にあの裂け目が関係しているのかもしれない、と直感した。

 私たち全員が声に驚いて動けなくなっていると、裂け目から金髪の女の人が出現した。一つの物音立てずに、気味が悪くなるほどスムーズに裂け目から現れたのだ。

 

 そのあまりの異様な状況に、全員の驚きはより深くなった。

 

 私が魔理沙の方をちらりと見ると、魔理沙は驚きのあまり、目を見開き、口を半開きにしていた。

 

 裂け目から出てきた女の人は、一度私たち全員の顔色を窺った後、静かにステージ上のマイクスタンドのマイクに向かって口を開いた。

 

「皆良い顔ねぇ。どうなるか楽しみだわ」

 

 すると、その言葉に水色の髪に青色のリボンをした小さな身長の少女、「チルノ」が反応した。

 

「お前、あたいたちをこんな所に閉じ込めて何をするつもりだ! 早くここから出せ!」

「威勢が良いわね。そういう奴こそ、一番最初に死んじゃったりするのよねぇ。」

「……死ぬ?死ぬってどういうことだ! あたいたちに何するつもりだよ!!」

 チルノの激昂を見ながら、ステージ上の女の人は気味悪くにやにやしながら

「このゲームが終わった後にその声が聞くことが出来るでしょうか。ふふ、楽しみねぇ」と皮肉らしく呟いた。

 あまりに命を軽視している発言に、チルノは言葉を返せなかった。それどころか、私もあまりの非人道的な発言に驚きを深めざるを得なかった。

 魔理沙の様子が気になったので、横を見ると魔理沙がこちらを見ていた。すると、私に心配そうに問いかけてきた。

「なあ、どういうことなんだ? 一体、私たちこれからどうなるんだ?」

「それは私にも分からないわ。あの女の話を聞くしか、今出来ることは無いと思うわ」

「そうか……そうだな。よくお前そんな冷静でいられるな」

「あの女の口ぶりから察するに、私たち全員の命はあの女の手中にあるらしいわ。だからこそ、ここで変な気を起こさずに冷静になるべきよ」

 私の答えを聞いて、魔理沙は少し考え込んだ。そしてその後、笑顔を浮かべた。

「確かにな。お前は頼りがいがありそうなヤツだぜ」

「褒めるのはここを脱出してからにしてよね」

「さて、横槍を入れるようで悪いけど、そろそろ貴方たちに状況を説明させてもらえる?」

 ステージ上の女がニコニコと笑顔を崩さずに、私たちに聞いてきた。それに対して、魔理沙が「いいぜ、聞いてやるよ。話次第じゃあ、怒るけどな」と調子良く答えた。

 魔理沙の軽快な返答を見て、私はひとまず安心した。しかし、ステージ上の女はこれまで以上に妖しく、奇妙に、微笑んだ。

「その威勢の良さ、保っていられるかしら?」

 

 

 

 

 

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