ゲンソウロンパ   作:こえ

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四人寄れば最高の知恵

 私は、部屋を出た後から心の中にある感情が渦巻いていた。

 

 

 怒り。八雲紫に対しての、沸々と込みあがってくる怒り。

 天子が目の前で叩きのめされている時には、情けない話だが恐怖が私の心を支配していた。

 しかし、今は違う。仲間が目の前で蹂躙されたのに怒らない訳にはいかない。もしかしたら、この怒りは自発的ではなく義務的な怒りなのかもしれない。

 

 だけど……これは私自身の弱さと卑怯さを意味している。八雲紫が私の目の前にいないから、今現在私の近くにいないから、恐怖が消え失せて憤怒しているだけなのだ。

 私は、非力だ。あの女にそれを植え付けられた。それが策だったのか、はたまた私が勝手にそう思い込んでいるだけなのか。

 一矢報いてやる。私が非力だろうが卑怯者だろうが関係ない。

 ウラギリモノを殺して、あの女に勝つ。そして、天子の言っていた通り『この茶番』を終わらせてやるんだ。

 

「霊夢ー? なんでそんなに怖い顔してるの?」メディスンが無邪気な声で話しかけていた。

「え……ああ、ごめん。考え事」

「そお?でも、ほんとに怖い顔してたよ。大丈夫?」そんなに私は強面だったんだろうか。

 私は無理やり笑顔を作った。

「うん、大丈夫。探索を続けましょう。」

「もしかして、天子のこと? 大丈夫だよ、元気出して」

 それに対して、メディスンはごく自然な笑顔で私を元気づけてくれた。成り行きとはいえ、疑ってしまったことが非常に申し訳なく思われるほど、純粋無垢な笑顔だった。

「ありがとね。貴方の言った通り、天子のためにも探索を続けましょう」

 廊下の奥に向かおうとしたその時、後ろから覇気のない声がした。

「おや、霊夢さんにメディスンさん。……あら?天子さんは?」

 声の主はさとりだった。その隣には星がいた。

「天子はちょっと体調不良で寝込んでるわ。それより2人はなんでここに?」

 メディスンが訊ねると星が丁寧に答えた。

「メディスンさん達以外全員があの不思議な冷蔵庫を含めたキッチンを調べていたんですが、さすがに人が多すぎると思いまして私とさとりさんとで個室を確認しに行こう、というわけです」

「星さんの仰った通りです。私、どうも人混みというのが苦手なので、無理にお願いして付いて来て頂いた次第です」

 と、ここまで2人の会話を聴いていて一番最初に思ったことは堅苦しい2人だな。ということだ。

 お互いに「さん」付けで呼び合っているし、敬語を使って話している。はっきり言って、今の印象だけで言えばこの2人のウラギリモノの可能性は考えにくい。

 冷蔵庫の報告の時に疑いの眼差しを向けたさとりも案外ウラギリモノじゃないのかもしれない。

 反面、このタイプ、つまり星やさとりがウラギリモノだった場合は非常に厄介だ。

 こういうタイプは大抵の場合が口八丁で、例え詭弁を話していたとしても説得力を持つために話の流れを掴まれてしまう。印象操作だってお手の物のはずだ。油断せずにあの2人を分析していかなくてはならない。

 

「もし差支えがなければですが、私とさとりさんも一緒に探索に行ってもよろしいですか?」

 星の提案に、私はほんの少し思案する。この提案は乗るべきか?

 4人で探索した時、もしこの中にウラギリモノがいたらどうなる?――おそらくだが、影響をきたすことはないだろう。3人の場合より監視の目が増えたことによって、より強固なお互いの見張り合いが可能なはずだ。

 星とさとりは怪しい人物か?――今のところは何とも言えない。だけど、念のために行動を共にして目を光らせておく必要性は十分にある。

 つまり、同行はすべきだ。

 はっきり言って、こんなこと考えなくても断るという選択肢はなかった。なぜなら、断ってしまえば一気にメディスン、星、さとりの3人から怪しまれることに疑いようがないからだ。

「ええ、いいわよ。じゃあ4人で行きましょうか」

 私はできるだけ快諾した。考えていることを悟られないように。

 突拍子もなく、星が何か思い出したような顔をした。

「あ、ちなみに私の部屋は一番手前側にありました。皆さん気付いていらっしゃったかもしれませんが」

 そう言われて、この部屋だらけの廊下に来た時を思い出す。

 確かにあった。「TORAMARU」とローマ字でドアノブに彫ってあったのも、向かいの部屋が布都だったのも思い出せる。

 しかし、気になる点が1つある。なので、取り敢えず訊いてみることにした。

「星、貴方の部屋におかしなモノなかった?例えば、触ると記憶の一部が甦るような」

「それってもう答え言ってるようなものですよね。結論から言うとありました。槍です。あの槍を持つと、私の頭の中に『毘沙門天』という言葉が浮かび上がってきました。霊夢さん、あの不思議な物体の正体を知ってるんですか?」

 八雲紫から聞いた情報を星に話した。

 

 私が話し終えると、星は珍妙な顔をしていた。

「記憶の一部……ですか。何故そんな物が?」

 ため息交じりに私は答えた。

「分かってたら教えてるわよ。本当に何考えてるか分からないわね、八雲紫は」

 対してさとりは全く動じていなかった。

「恐らくですが、私たちの均衡を揺るがすためじゃないでしょうか。断片的な記憶、武器としての価値、それぞれが違います。この不平等によって、各々にアクションを起こすキッカケを与えた……と言ったところじゃないでしょうか」

 淡々と言ってのけた。納得させられてしまった。

 頼りなさそうな顔つきをしているのに、鋭い。人は見かけによらないとはよく言ったものだ、と痛感した瞬間だった。

「なるほどねぇ。八雲紫も色んなこと考えてるのね」メディスンは感心したように言った。

 さとりは目を閉じて静かに答えた。

「ただの私の憶測に過ぎません。ですので、一概に私の言っていることが正しいとは限りません」

 それを聞いた星が少し考え込んだ。

「うーん……これ以上、ここで考えてもしょうがないですよ。さとりさんと霊夢さんの部屋に行ってみましょう」

 私は「そうしましょ」と軽く同意して廊下の奥に歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様です。
やっぱり字数の足りなさを痛感します。
なら今投稿するなよ、という話になってしまうのですが2週間で1話というのが私自身のモットーなのです。モットーというよりか自己満足です。
ただでさえ投稿ペースが遅いのです。出来るだけペースを保ちたいと思ってます。
次回からもっと字数を増やす所存です。目標はとりあえず4000字。慣れてきたら6000~8000字くらいにしたいなと思います。
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