ガンダムビルドダイバーズ divers ensemble 作:千葉ネリモン
今回、初めての投稿となります。
ビルダイバーズRe:RISEを視聴した時の熱のままに、GBNで活動する様々なダイバー達を思い描き、拙いながら筆を執りました。
基本オリキャラのみの登場となりますが、よろしくお願いします。
また劇中のオリジナル機も実際に組んだりしつつ、続けていければと思います。
※2/15 加筆修正。
二年前のことだ。
「ごめんよお嬢ちゃん。このプラモデルじゃGBNには入れないんだよ」
模型店の店主が困ったようにそう言った時、私は意味を理解できなかった。
GBNとはロボットのプラモを使って遊ぶゲームではなかったのか。だからこうしてバイクに変形するロボットのプラモデルを作り上げて来たのだ。
私はプレイ出来ない理由を店主に聴くと今度は明確な回答が得られた。
どうやらプラモデルにもバイクと同じでメーカーが複数あるらしい。そして私が作ったのは残念だがガンプラではないらしい。
しかし問題さえ分かれば、簡単な話でもあった。
私はパーツを選ぶ。まずはガンプラを買った。バイクそのものなガンプラもあったのでそれも買い、それが少し小さかったので付け足すためのキットも追加購入し、私の財布はすっかり痩せてしまった。
私はバイクが好きだった。現実のバイクのフォルムが好きだった。無骨な大型バイクを颯爽と操る女盗賊がカッコよく見えた。ヒロイックに装飾されたバイクをカッコよく乗り回す特撮ヒーローの姿に憧れた。
私は盗賊ではないし、ヒーローでもない、二輪免許さえ取れないただの中学生だった。それでも彼女らの様に鉄の馬を操りたい。疑似的にとはいえそれが出来ると聞いて、実現したい一心で、自分だけのバイクを組み立てた。
そして数日後、私は完成させたガンプラを再び模型店に持っていく、と。
「君がこのガンプラを作ったの?」
声音ですぐに良い意味での驚きだとわかった。
その時私は、自分で作り上げたモノを手に満足げに笑ったと思う。
鼻を明かしてやれて満足だったのか。
してやったりと思えて、晴れがましかったのだろうか。
違う。自分の作ったモノを褒めて貰えて嬉しかったんだ。
その気持ちが第一歩だった。
私……タケウチ・ミヒロがGBNへと踏み出した第一歩だったんだ。
///
そこは見渡す限りの大平原だった。視界に移る土地の大部分が草原。土地のところどころには、池や露出した岩肌が点在しているが、池は澄み切り岩も自然のままといった姿を残しており荒涼とした雰囲気はない。むしろ吹き抜ける風と共に牧歌的な空気が醸し出すのに一役買っているとも言えるだろう。
絵に描いたようなあまりにも美しい自然風景だが、ここは地球のどこかにある風景ではない。すべてGBNという世界が作る電脳の自然、という意味では文字通り絵に描いた世界ではあろうが。
機動戦士ガンダムに出てくるモビルスーツという兵器を模したプラモデル達をデータとして読み取り、戦い合わせるVRMMO。ここはその数知れず存在するディメンションの一つ。
そして今。草原の風を切り裂く様に、一台のバイクが駆け抜けていく。
人間用のバイクではない。MSが──ガンプラが騎乗できるほどの巨大なバイクだ。
縦にすればHGクラスの全長を凌ぐ車体は、様々なガンプラから集めたミキシングビルドのバイクだった。マシンライダーをベースにしているのは窺えるが、その面影が残るのはシートとハンドル部分のみ。バトルを念頭に作られているため、フロントから正面に突き出る角の様に、ビーム砲が備えられている。車体の後方にはSFSのパーツやブースターを組み合わせており、推進機としての機能が付加されており、時折ノズルから光を噴き出して機体の加速を助けている。
そんな趣味の塊とでも言うべき二輪の特機を操るのは、HGの中でも取り分け小柄な機体、GNアーチャーだった。背にあった大型GNコンデンサはバイクに股がるために接続部ごと取り外されている。特に目立つ装備を外したことで体格は一層小さく見えるが、大型のバイクを巧みに操る姿からは、原作とはまた違う力強さを醸し出していた。
「追加したパーツは特に干渉してない。スピードもいつも通り出ている、と」
GNアーチャーのコックピット内で、深紅のライダースーツを着た女がひとりごちる。アバターの年齢設定は二十歳前後といった見た目だ。170センチを越えるスレンダーな長身と、短く切り揃えたさらさらの黒髪がコンソールのうっすらとした光を浴びている。
彼女は目元にかかる黒髪をかきあげながら。リアタイヤ周りの装甲に追加した装備の具合に手応えを感じているところに、アラートが鳴る。NPDリーオーが出現し、砲火がバイクに向けて放たれる。
低難易度ステージらしい単調な射撃を、ライダースーツの女は鼻歌混じりに操縦しながら、悉くをかわして見せる。
「この調子なら何とかなりそうかな」
ウェポンスロットを操作し、ビームライフルを選択。バイクのハンドルグリップが分離し、固定ビーム砲は大振りなビームライフルとして機能を変える。
バイクを走らせたままGNアーチャーは慣れた様子でビームを射撃。放たれた光線はリーオーの頭を撃ち抜き無力化。光に包まれ霧散するのを確認すると、彼女はバイクを止める。
ウォーミングアップはこんなものだろう。あとは約束相手を待つのみ、だ。
そう思った丁度その時。約束の相手から連絡が入った。通信用のウインドウが開き相手の姿が映し出される。
相手は二人のプレイヤー。
一人は青い髪にオオカミの耳を付けた少女の姿をしている。本人曰くドモン・カッシュをリスペクトしての真っ赤なマントを羽織り、こちらに向けて細い腕を大きく振り回している。
そして傍らに立つのは真っ赤な髪に黒いハチマキを締めた少年のアバターだった。どこか緊張した面持ちでこちらを見ているのが分かった。
「本当に来ちゃったんだね……」
約束の相手を確認した彼女──ミヒロのアバターの表情は控え目に言っても、歓迎や喜色といったものでは無かった。
///
三日前。4月の終わりの放課後の教室での事だ。
「タケウチ・ミヒロさん! 折り入ってお願いしたいことがあります!」
掃除当番を終え帰り支度をしていたミヒロの前に、同じく当番だったスギミ・ユキナという、ろくに話したこともないクラスメイトが突如として両手を合わせて拝み込んできた。
まずミヒロはクラス内では紛う方なき地味のグループだ。伸ばした髪を一束に結っただけの三つ編みに、特徴の少ない顔立ち。身長こそ少し高い方だが、未だ身に着けるブレザーの制服には慣れず、着られている感が強い。そんな模範的に地味な15歳の少女だ。
片やスギミ・ユキナは明るく社交的でついでにミヒロの目から見ても可愛いと来ている。ポニーテールにした髪型は彼女の活発さを表してよく似合っており、整った顔立ちもだがクラスの女子が羨むほどに顔が理想的に小さい。部活で鍛えているので、ところどころ太ましいのが本人の悩みだが、それを言えば周りが笑っていじり、そしてそれを笑って許す。そんな朗らかさの見本のような子だ。
はっきり言って日陰者の側にいるミヒロとは縁の無い相手でもある。何よりこんな事をする意図が分からず、ミヒロは目をしばたたかせた。
「ごめんなさい、スギミさん。人違いではないですか?」
「いいえ! 貴女にしか頼めないことなのです!」
やんわり否定するつもりが、力強い断言が返ってくる。
ミヒロは尚の事戸惑うが、ユキナはおもむろにスマホを取り出すと一枚の写真を見せた。
写真には満面の笑顔のユキナ。その手にはガンプラが抱かれている。画像を見せると、ユキナはどこか気恥ずかしそうにはにかみながら笑い、
「私もやってるんだよね、GBN。タケウチさんもやってるでしょ?」
「どうしてそれを?」
「前にウチの男子が模型屋でダイブしてるのを見たって言ってたよ」
明瞭に返ってきた答えに、ミヒロはため息と共に項垂れる。ミヒロがダイブで利用しているのは近所にある馴染みの模型屋だ。そこにある家庭筐体を厚意で貸してもらってる。個人経営のため、ガンダムベース等で知った顔とばったり出会う事はないと思っていたが、どうやら甘かったようだ。
「見られてたんだ……」
「分かる。女子だけだとなんか肩身狭いもんね……」
腕を組みしみじみとした様子でユキナはうんうんと頷く。
それは心の底から同感なのだが、どういう意図なのかはまだ分からない。
「……頼みって、フォースとかへの勧誘ですか? それならごめんなさい。私は一人でやりたいから……」
「そうじゃない、そうじゃないの。力を借りたいのはあってるけど、今回だけ一度だけでいいの」
「……ミッションの協力、という事ですか?」
ミヒロが尋ねると、ユキナは口ごもる。そのままどこか言いにくそうに、スマホを差し出して見せた。
「えっとその……ちょっとこれを見てもらっていいかな」
そう言ってユキナはスマホを操作し動画を再生する。
再生されたのはGBNでのバトルの様子だ。五体のガンプラの戦闘が映し出されている。
それだけなら、ごくありふれたGBNでの一幕だが、ミヒロはすぐに違和感を覚えた。
「プレイヤー同士ですよね? でもこれ何だか変……? 片方の組、全然反撃してないですよね?」
動画の中では五体のガンプラは三対二の組に分かれ、戦闘をしている。だが二体の組──マックスターとサンドロックの組は攻撃に対してまるで反撃をしていない。そして無抵抗のままバスター、カラミティ、ブリッツの三機の一方的な攻撃を受け、そのまま敗退している。
「この動画を配信してるの、所謂ところの迷惑系GTUBERなんだ。初心者を誘って一緒にミッションをやって、終了間際に後ろから撃って、泡食ってるところを撮って……とにかくそんな奴ら。それで狩られてるマックスターとサンドロックは、私の弟とその友達」
運悪くターゲットにされたって事、とユキナはため息交じりにそう言った。
なんという事だろう。正面からの接近戦主体の機体の組み合わせに対し、砲撃戦型のバスターとカラミティ、そして迷彩を装備したブリッツ。相性が悪いにもほどがある。しかもそれを動画として残す悪趣味ぶりに、ミヒロは辟易した顔になってため息をついた。
「聞いてるだけでムナクソものですね……」
「そう。弟の友達もそれでGBNが嫌になっちゃったみたいでさ。弟も怒ってこの胸糞の悪い連中にリベンジ申し込んだのよ」
「はあ……それはまた思い切りましたね」
「だからお願い! 弟と友達の楽しいGBNライフのためにも、どうか力を貸してほしいの!」
パン! と手を合わて拝みこむユキナだったが、頼まれるミヒロはまだ胡乱とした顔で、気のない声を返すだけだった。
「……はあ」
話は分かる。気持ちも汲める。でも無茶な注文だ。あらゆる面で。
こういう事に身内が突っ込んで拗れたりしないのか。マナーの見本であるキャプテンジオン的な相手に相談すべきでないのか。
疑問符はいくらでも溢れてきた。しかしその中でミヒロの口から出たのは、一番気になった疑問だった。
「どうして、私なんですか? こういうの頼むなら他に強い男子とかがいるんじゃないですか?」
ミヒロはガンプラバトルがさほど強いわけではない。ランキングには興味も向けず気ままにバイクのガンプラでGBNを駆け回っていただけなので、対人戦の回数は数えるほどしかない。半端者の自分がそんな因縁のある戦いに加わってしまっていいものか。
質問を受けたユキナはまた言葉に詰まる。が、さっきとは少し様子が違う。頬に指を添えどこか気恥ずかし気に目を泳がせながら、彼女は少しだけ声量を下げながら答えた。
「タケウチさんに断られたらそうするつもりだった。けど、女子同士で相談が出来るならそれが一番だと思ったし」
それに、とユキナは一度言葉を区切り、
「……友達になりたいなって」
「え?」
予想もしなかった言葉にミヒロは目を丸くする。
二人だけの教室が急に静かになった。予期せず見つめ合うこととなったミヒロとユキナだったが、沈黙に耐えられなくなったユキナは顔を赤くして言葉をまくしたてた。
「ゴメン今の無し。困ってる弟をダシにして何言ってるんだろ。本当にゴメン。急に変なこと相談してゴメンなさい」
「いえ、そんな……」
「話を聞いてくれただけでもありがとう。今日はこれで……ああでも、もし良ければタケウチさんの作ったガンプラ見せてもらってもいいかな? ほら、他にもGBN好きな女子いるとなんか嬉しいし安心するし」
ユキナは早口で言った提案が照れ隠しであろうことはミヒロにも分かった。ミヒロもユキナの作品を見た手前、隠すのもフェアでない。そう思い、
「……見るだけなら」
ミヒロは自分のスマホから写真を選択してユキナに見せる。
途端、ミヒロは既視感を覚えた。写真を見たユキナの表情がみるみる変わっていく。
あ、これなんか前にもあった。
そう思った後に起きた事は、ミヒロにとって未知の経験だった。
そして結果的に三日後GBN内。ミヒロはユキナとその弟と合流する事となった。
登場人物・機体紹介
〇タケウチ・ミヒロ // ダイバーネーム:コーヤ
性別:女
年齢:15歳
身長:165cm // アバター時:172cm
本作主人公。バイクに乗る事に憧れる女子高生。
リアルでは大人しく地味な少女だが、GBNでは自分の憧れる大人びたカッコいいイメージでダイバールックを設定している。
中学時代、バイクの免許を取るまでの遊びのつもりでGBNに触れ、その世界に圧倒されてどっぷり浸かる事になる。
好きなシリーズはガンダムOO。
〇GNアーチャー&バイク
コーヤが駆るガンプラ。MSとバイクがセットで登録されている。
GNアーチャーは塗装以外はストレート。
バイクはマシンライダーをベースに様々なキットのパーツを組み合わせた、ミキシング製のサブフライトシステムの一種として扱われる。
ハンドルと一体になったビームライフルが主武装。また各ハードポイントジョイントに装備を追加可能になっている。