ガンダムビルドダイバーズ divers ensemble   作:千葉ネリモン

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だいぶ間が空きましたが、11話です。







第11話 頑張りたい

 保護されたELダイバーはルメと名乗った。

 残念ながら判明した事はそれだけだった。

 

「結局分かったのは名前だけか……」

 

 はあ、とコーヤはため息をつく。

 コーヤとキナ達4人はELバースセンターを後にして、別のディメンションのカフェに移動していた。

 卓に座るコーヤと二トラの表情は晴れているとも曇っているとも言えない微妙な表情だった。

 

「さすがに前進とは、言えないよな」

 

 呟く二トラは特に落胆の色が濃かった。

 ルメと名乗ったELダイバーがまともに口を聞いたのはコーヤだけで、会話の内容もごく限られたものだけ。

 レイドバトルのエリアで倒れていた理由。何故採取ステージに迷い込んでいたのかも、ルメ自身分からないらしい。

 その他にもボックスの依頼でやりたいことや望みの類いをコーヤは質問してみたが、ルメはその全てに黙りを通し、何も話してくれなかった。

 

「今日のことで嫌われたりしてなければいいけど」

 

 遂にルメが何も喋らなくなると、ガドから切り上げを促され、コーヤ達はそれに従った。

 皆の元に戻ると、微妙な空気が漂っていたが、唯一ボックスだけははっきりと喜んでいたのは覚えている。

 

『ありがとうコーヤさん。名前だけでも分かればビルドデカールが作れる。大丈夫、第一段階はこれでクリアできるよ』

 

 両手をがっしり掴まれてぶんぶんと子供みたいな握手をされた。彼に喜んでもらえたというのが、多分今日の一番良かった事だろう。

 

「収穫多くはなかったっすけど、二トラもコーヤちゃんもいい方向に考えた方が良いと思うっすよ。ひとまず、GBNへの悪影響は回避できそうなんすから」

「私もデニアちゃんに賛成。それにGBN中を探し回らなくていいだけでも大前進じゃないかな?」

 

 デニアとキナは朗らかな声音で二人を元気づけるように言う。

 モノは考えよう。そういう事なのだろう。一歩は一歩に違いない。そう考えを切り替えようとコーヤも意識を移しながら、胸の前で小さく手を合わせる。

 

「よし。じゃあみんなミッション行かない? 今日はどこでも付き合うよ」

 

 努めて明るい声でコーヤは提案する。自分でどこと言わず、付き合うというのが彼女らしいところではあるが。

 それは皆も承知の事なので特に言及せず、それぞれ思い思いの案を挙げようと、思案し始めた時だ。

 

「いた! やっと見つけた!」

 

 コーヤ達の前に少年姿のダイバーが駆け寄ってきた。

 燃えるような赤い髪に黒いバンダナを巻き、ダメージの入ったデニムジャケットを羽織る姿はホビー系少年漫画の主人公を思わせる出で立ちだ。

 少年の姿にコーヤは見覚えがあった。服装に違いはあるが見間違えはしない。

 

「ひと……じゃなくてジンガ。あんたどうしたのよ?」

 

 突然現れた弟に、キナは狼耳をピンと立て、呆気に取られた顔で問う。と、ジンガはうんざりした顔で項垂れ、

 

「ELダイバー見に行くなら俺も行くって言ったじゃん! なのにすっぽかすとか有り得ないだろ!」

「ああ~そうだっけ? いやそれより見に行くって、あんた動物園行くんじゃないんだからもう少し言葉選びなさいよ」

「話逸らすなって。ずるいよ姉ちゃんだけ!」

 

 突拍子もなく始まった姉弟の言い合いに呆気に取られならも、二トラは咳ばらいを一つしてキナに問う。

 

「キナ。前に話していた弟って……」

「はい! 申し遅れてすみません。ジンガです。姉がいつもお世話になってます」

 

 姿勢を正し、はきはきとした声でジンガはニトラとデニアへ向き直ると一礼する。

 その仕草が妙に畏まっていたせいか、ニトラとデニアも思わず礼を返してしまう。

 

「それで姉ちゃん! もうELダイバーと会ったの? なんなすごい感じだった!?」

「期待してるとこ悪いけど、私は直接会ってないのよ。コーヤは話をしたけどね」

 

 キナに言葉にジンガの視線がコーヤに向く。

 そんな期待されても、と困り顔をするコーヤだったが、一方で丁度いいとも思った。

 

「ELダイバーの話もいいけどさ。ジンガくん、これから皆とミッション行かない? 今もその話をしてたところなの。みんなもいいよね?」

 

 コーヤの呼びかけにはキナは勿論、二トラも静かに頷いて見せる。デニアに至ってはもう既に楽し気な表情をしている。

 

「私、密かに楽しみにしてたんすよ! ファイター使いのステゴロ姉弟揃い踏み!」

 

 うきうきという形容がぴったりな様子でデニアはテーブルに身を乗り出すと、ウインドウを開きミッション名がずらっと並ぶブックマークから手頃なものを探し始める。

 

「ジンガくんって、ガンダムだと何が好きっすか? やっぱGガン系?」

「あ、はい。Gガンも好きですけどSEEDも好きです。ああでも、せっかくなら集団戦のミッションやりたいですね」

「なら一つ、やりたいミッションがある。今回は俺の希望でも構わないか?」

 

 今度は二トラがウインドウを開き、コーヤ達にメッセージにミッション内容を添えて転送する。そして立ち上がりジンガの傍まで歩み寄ると自分のウインドウでミッションを見せる。

 

「AGE系のミッションで、ぞろぞろ湧いてくるヴェイガンを相手に都市を制限時間いっぱい守るって内容だ」

「いいですねそれ! こういうの成功したこと無いんでやりたいです!」

「じゃあそれで決まりっす! キナちゃんもコーヤちゃんもいいっすよね?」

「異議なし!」

 

 キナはビシッとサムズアップで返し、

 

「やります」

 

 コーヤも控えめにサムズアップを見せて応じて見せる。

 

「お、なんかコーヤちゃんも乗り気っすね! そいじゃあいっちょ行ってみまっしょう!」

 

 おー! っとキナとジンガが拳を振り上げ、二トラはミッションを申請する。

 果たして五人のミッションは始まる事となった。

 

 

 ///

 

 

 地球に侵攻してきたヴェイガンから、制限時間まで高層ビルの立ち並ぶ都市を守る防衛ミッション。

 撃破した敵機の数と都市の被害状況からスコアが算出され、より多くの敵を倒しつつ都市への損害を減らす事が目的となるオーソドックスな防衛ステージだ。

 制限時間は10分。都市の規模は五人で守るにはやや広い程度の範囲。だが、このミッションの敵ヴェイガンはとにかく数が多い。

 一体、二体と出てくる機体は徐々に増え、現在開始から3分経過。この時点で四方から複数の敵が同時に攻めてくるようになる。

 

 敵勢力はガフランを中心にバクト、ドラド等の代表的なヴェイガン系量産機。AGE劇中でも蝙蝠戦役等度と喩えられた様に、大きな翼を広げて次々と飛来する異形のMSの姿は、正に蝙蝠の怪物の大群だ。油断をしていると奴らは都市に群がり、作物を食い荒らすように防衛のゲージを削っていく。

 

 まるで畑の害虫駆除みたいなミッションだ。

 そんな感想を抱きながら、コーヤのGNアーチャーは上空のガフランの群れを撃ち落としていく。

 直撃コースにも関わらず、ガフランはろくな回避行動も取らずにビームを正面から受けて爆裂、四散する。以前戦ったザクに比べると拍子抜けする弱さだが、こうでもなければ次々と現れる敵機を捌き切れはしないだろう。

 それに改造後の試運転も兼ねているので、丁度いい難易度だ。

 そう考えた時、上空から一体。撃ち漏らした敵がコーヤの近くへと降り立った。

 敵はガフラン。ドラゴンの様なシルエットを持つ異形のMSが、四つん這いの姿勢で降着する。

 ガフランはGNアーチャーを見ると、直立姿勢へと変形。どうやら、コーヤを標的と認識したらしい。

 

「試して、みるか」

 

 深呼吸を一つ。コーヤはGNアーチャーをバイクから降車させ、自らの意思で地へと立たせた。

 数あるガンプラの中でもGNアーチャー本体は特に華奢な部類だ。コーヤの場合武装ユニットも兼ねる背部の大型GNコンデンサも外しているため、特に細さが際立っていた。

 固定武装も無く、それ故に前回の熱砂の戦線では一方的な敗北を喫してしまう。

 その苦い経験からコーヤが愛機に施した改造は、四肢と背面に集中。白と赤の原典と変わらぬカラーリングで分かりにくいが、形状は全体的に太くなり、鍛えて帰ってきたとでも言わんばかりの容貌に変化している。

 女性的な細い脚部には脛から膝を覆う装甲の追加。さらに脚部側面にはアリオスガンダムの大腿部にあったGN粒子噴射ユニットを装備し、機動力の底上げが窺えた。

 腕部もまたアリオスの腕に交換されており、力強さを増した腕が背中へと伸ばされる。

 背中にはフィン状ノズルの大型ブースターポッドを挟むように左右一対の可動バインダーが配置され、GNアーチャーの右手がバインダーからせり出す柄を掴み、引き抜く。

 ビームサーベルが伸びる。光り輝くビームの剣というガンダムで最も有名な武装を、コーヤは今初めて使用した。

 相手は大したことは無い。そう自分に言い聞かせる手は、緊張で震えていた。

 正面から接近戦をした事は一度もない。というより、バイクから降りてまともに戦えた試しがない。

 だがそれでもと、コーヤはGNアーチャーに剣を構えさせる。半身を引き、剣を水平に、突きを仕掛ける姿勢を取る。

 

「恐れず、迷わず、思い切りよく……」

 

 ミッション開始前にキナからもらったアドバイスを唱えながら。コーヤは目の前の敵を見る。あとは、勢いに任せる! 

 

「が、GNアーチャー! 目標を! 駆逐する!」

 

 アクセル全開。GNアーチャーが突進する。

 初めてのセミスクラッチで作ったフィン状ブースターは作り手の想いに応える様に大出力を発揮し、小柄なGNアーチャーを弾丸の様に加速させる。

 一気に詰まる間合いに、近くなる敵がぐんと大きく見えるが臆するほどではない。バイクのトップスピード時に比べればこんなもの序の口だ。

 いける。相手は棒立ち、捉えられる。確信と強烈な加速をビームサーベルに乗せて繰り出された高速の突き。

 それは見事、ガフランにひらりと躱された。

 

「あ、あれぇぇぇ!?」

 

 素っ頓狂な声を上げながらも、加速の勢いにつんのめりそうな機体をコーヤは一杯にレバーを引いてなんとか保たせる。そして制御が回復するなり、再度アタックを掛けようと振り返れば。

 ガフランが自分の尻尾──ビームキャノンを担いでこちらを狙っているのが見えた。

 

「ウソでしょ!?」

 

 強引に脚を出して地を蹴り踏ん張らせて、GNアーチャーは方向転換。直後、ガフランのビームがGNアーチャーの頭部を紙一重のところで通り過ぎる。

 ジュ、という装甲を焼く音に冷や汗をかくコーヤだったが、すぐさま来るビームの連射にそれどころでは無くなった。

 異形のMSが放つ破壊の光の応酬に、GNアーチャーはブースターと両足の粒子噴射ユニットを駆使して巧みに逃げ回った。

 滑るように地を低く飛び、脱兎の様に跳躍するGNアーチャーにガフランのビームは一度も当たりはしない。改造による足回りの具合は上々。バイクとは違う小回りの効き方が小気味良いが、逃げる程に流れ弾のビームが建築物に命中してゲージが削られていく。そして当たりこそしないが、狙いは妙に正確だった。

 コーヤは考えを改める。こいつは撃ち漏らしたのではない。攻撃から生き延びたのだ。

 

「たまに強いのが混じってるってデニアさんが言ってたけど、これか」

「大丈夫、そのために私もいるんだから!」

 

 回避行動を続けるGNアーチャーの横をすり抜け、交代に現れたキナのシャイニングガンダムがガフランへと飛び込んでいく。

 ガフランは狙いをシャイニングガンダムに切り替えてビームキャノンで弾幕を張るが、キナはビームを何度浴びようと構わず果敢に前進する。

 無茶な攻め方だが、相手の狙いが正確な分流れ弾は減らすことができる。そして何より、最短で間合いを詰めてこそのMF。

 間近まで接近し、そしてステップに砲撃の切れ間が重なった瞬間。シャイニングガンダムがブースターを全開にした。

 

 ヴェイガン機は腕自体が武器だから携行火器の持ち替えが無い。その分接近戦への切り替えが早い。

 

 ニトラが話した通り、ガフランは既に掌からビームサーベルを発振させ接近戦を準備している。

 確か迅速な切替だ。一対一ならばこの特性は強みになるだろう。

 完全な一対一ならば。

 

「コーヤ今だよ!」

「わかった!」

 

 シャイニングガンダムの背後からGNアーチャーが飛び出した。突き出された両腕の装甲がスライドし、内から短い砲身が現れる。

 アリオスガンダムの腕の固定装備、GNサブマシンガンだ。

 

「いけぇ!」

 

 左右計四門の砲口が大量のビームを噴き出す様に発射し、ガフランへ光の雨が殺到する。防御も間に合わず無防備にビームの豪雨を浴びて、全身を射抜かれたガフランはそれでも踏みとどまったが、最接近したシャイニングガンダムの正拳が、とどめの一撃となった。

 

 爆散するのを見届け、コーヤは安堵の息をこぼす。

 どうにか退けた。そして悪くない動きもできた。改めて追加武装の手応えを噛み締めていると、駆け寄ってきたシャイニングガンダムがサムズアップを送ってみせた。

 

「ナイス。いい仕上がりみたいじゃん、新しいGNアーチャー」

「ありがとう。でもごめんね、盾になってもらっちゃって。シャイニングは大丈夫?」

「このくらい平気。何だかんだで攻撃軽かったし、唾でもつけておけば治るわよ」

「え……? ガンプラに唾って、ちょっと汚くない? 舐めるの?」

「いや冗談だよ! しないよそんなこと!」

 

 声を張り上げるキナに、コーヤは意地の悪い苦笑を返すと二人のもとにニトラから通信が届いた。

 

『そっちはどうだお二人さん?』

「さっきちょっと強いの倒したところ。コーヤのGNアーチャー結構いい感じだよ」

『そいつは重畳。じゃあ好調ついでに頼まれてくれるか?』

 

 レーダーを見てくれ、とニトラの言葉に促されコーヤ達はレーダーを見る。と、コーヤ達の現在地と真反対の北西側から小型の反応に混じって、目立つ大きな反応が向かってくる。一番近くで戦っているのはジンガ一人だけだ。

 

『デカイ反応は多分ダナジン。それかギラーガだ。ジンガ君の腕は分からんが、一人では恐らく荷が重い』

 

 ダナジンはヴェイガン系最後期の怪獣のような重MS。見た目通りの火力とパワーを誇るため、注意が必要とコーヤもレクチャーを受けていた。ギラーガは高性能指揮官機でこのミッションではボーナスユニットの役割を持つ。ミッションのレア演出の部類であるため、前回のザクと同じく非常識な高性能である可能性も捨てきれない。いかに大半が有象無象といえ、強力な相手が混じり込んではジンガには厳しいだろう。

 

「分かりました。急行します」

『助かる。他は俺とデニアでどうにか抑えるからよろしく頼む』

「了解です。キナ、行こう!」

「はいはーい!」

 

 GNアーチャーは留置していたバイクに乗り、キナのシャイニンガンダムもリアへと陣取る。GNアーチャーにバックパックが付いた分、シャイニングガンダムは少し乗りにくそうだったが、器用に安定させる。

 

「飛ばすよ」

 

 コーヤは短く告げると二体のガンプラを乗せたバイクが発進する。

 都市ステージの舗装道路はバイクの走らせるには抜群の相性だ。操縦桿越しに感じる滑らかな路面の感触を確かめながら、コーヤは目標地点を目指す。反応はまだ都市部には至っていない。これならば、十分に間に合う。居並ぶ建造物の間ではあるが、道幅も広いため、ストレスを感じること無くコーナーリングができるのも嬉しい。ミッション中でなければ、窓ガラスに映り込む自機の姿を眺めながら、軽く流してみたいだ、とコーヤは思った。そんな時に、キナからの通信がきた。

 

「なんか、意外だね」

「どうしたの急に?」

「大した事じゃないよ。バトル用にはしないって言ってたコーヤが、しっかり戦えそうな改造してるから、なんかね」

 

 通信ウインドウに映るキナが珍しく神妙な顔でぽつぽつと語る。

 確かに、路線の切替はコーヤ自身も意外なほどだ。

 

「……なんか嘘ついちゃったみたいで、ゴメン」

「いやいや、逆に嬉しくて。こうやって皆で戦うの私は大好きだから、コーヤも入ってくれて本当に嬉しいんだ」

 

 いつもの朗らかさに戻るキナに、コーヤも僅かに表情を綻ばせた。キナと出会う以前なら絶対に考えられないと断言できる。キナがそう思うのも無理はないが、コーヤの中には理由がはっきりと存在していた。

 

「……この前のミッション。初めて悔しいって思ったんだ」

「悔しい?」

「悔しかったよ。結果的には勝てたけど、私なんにもしてなかったし」

 

 本格的なバトルミッションは苦手だった。向いていないと納得していたし、こんなものかで済ませていた。戦闘向きではないのだ、当たり前だと完結し、ため息一つで忘れていた。

 だが前回のミッションの記憶は後悔となって固まって、今もコーヤの中にある。

 こんな事は初めてだった。一つのバトルの結果が小さな棘の様に残るなんて思わなかった。

 

「こういうゲームでパーティーを組むとさ、頑張って役に立たないとメンバーから邪険にされるって思ってたから、最低限の集団ミッション以外誰かと組むの避けてた。弱いの分かってても、頭の中ハッピーセットなんて言われたくないし」

「あはは……さすがにハッピーセットは勘弁だよね」

「うん……フォースって、どこもそういうモノと思ってたから怖かったし。でもこの前キナやデニアさんが助けてくれた時に思ったんだ。頑張りたいって」

 

 頑張らなくては、でなく頑張りたい。強制じみたチームへの貢献ではなく、受けた分を返したい。返せるだけのモノを仕上げたい。

 そんな想いでコーヤは今のGNアーチャーを作り上げた。

 そしてもしかしたら、今はその想いがルメという少女にも向いているのかもしれない。

 いつまでも頑なになっていないで、外と向き合ってみたら意外と面白くやっていける。それを彼女にも伝えたい。

 本当にこんなことを考えるなんて、とコーヤは無意識に微笑んでいた。

 

「でも腕前はご覧の通り。頑張るのが遅すぎた感はあるけど……って何その顔?」

 

 仏頂面になって問うコーヤの視線が見ているのは、ウインドウの向こうでニマニマした気味の悪い笑顔のキナが、ピコピコと狼耳を動かしている。

 

「べっつに〜。あの話掛けんなオーラをプンプンさせてたコーヤがねぇ〜。いやぁ人って変われば変わるもんだね〜」

 

 いひひ、と笑うキナに連動してか、後ろに座るシャイニングガンダムも訳知り顔を気取る様にうんうんと、頷いている。

 もしかして、恥ずかしい事を言ったのでは? 

 そう思ったが最後、コーヤの顔はみるみる赤くなっていった。おまけに操縦桿を握る手まで変にぷるぷるし始める。

 ヤバい。よく分からないけどダメなやつだ……。

 つまらない事で乱れたというのに、焦りは情けないほど簡単に全身へ伝播していく。それでもどうにか持ち直そうとするが、冷静さを欠いたコーヤは、闇雲に強引な急ハンドルを切るのだった。

 

「ちょ、ちょっと、コーヤ! 危ないよ! 安全運転!」

「ゴメン手が滑ったまた滑るかもしれないから気を付けて」

 

 一息でまくしたてるコーヤの声には全く余裕が無い。どうやら、本当に暴走しかけているらしい。

 

「じょ、冗談じゃないわよ! って近、近いよビルビルビル近いから近いってビルああ角掠った! ツノ私の角ォー! コーヤぁぁぁぁ!」

「あ、アテンションプリーズ!」

 

 半べそで上ずった声を上げるコーヤと顔面蒼白になったキナの悲鳴を引摺りながら、バイクは都市を駆け抜けていく。

 途中、エンジンであるGNドライヴが篭もったような奇妙な音を上げていたが、それは不調というよりと乗ってる二人へのため息だったのかもしれない。

 

 

 / / /

 

 

 こんなにも早く目処が立った。この誤算に喜びを覚えながら、端末を手元に依頼主の回答を待ち続けている。

 ……いや。それは正しくない。

 今自分は回答が来ないことを心のどこかで願っている。誤算に対して無理に喜ぼうとしている。

 伝えるしかなかった情報を、吉報と思い込もうとしている。

 そしてそんな心情など知る由もなく、端末が震えた。

 送付したメッセージに既読の文字が浮かび、返信の文章が表示される。

 

『確保したELダイバーの転送はいつ行う?』




○GNアーチャー改
熱砂の戦線のミッション後、コーヤことタケウチ・ミヒロがGNアーチャーに改良を加えた機体。主にアリオスガンダムのパーツを使いカスタマイズされている。
ミヒロはこの機体に特別な名を与えていないため、便宜上GNアーチャー改としているが、実際そう呼ばれることはほとんど無い。
本体のみというプレーンな構成を見直し、バイクに頼らないバトルを可能とすべく、装甲と機動力、火力等を全体的に向上させているのが特徴。
脚部に増加装甲と機動力向上用の粒子噴射ユニットを追加。腕部はアリオスのものをそのまま移植され、固定武装のGNサブマシンガンを獲得している。
背面に追加されたブースターポッドには、所謂シイタケモールドで作られたフィン状ノズルが付けられている。初のセミスクラッチということもあり、ミヒロもお気に入りである。


○都市防衛ミッション『オリバーノーツ防衛戦』
ガンダムAGE第29話、30話、をベースとした防衛ミッション。
四方から都市を目指し侵攻してくる多数のヴェイガン機を相手に戦うミッションだが、原典に存在した艦艇クラスは登場しない。
数は多いが一体一体は非常に弱く、動きも単調なものが多い為撃破スコアを稼ぐのは容易。だが、劇中で遭遇したようなやや強い機体も混じっているため、油断して痛手を受けることもしばしば。
また撃破されると復活はできないため、防衛網に穴を開けずに戦い抜くことが最も重要。
中ボスとしてダナジン、ボーナスでギラーガが出現するがギラーガの性能は未知数。また援軍としてAGE3が乱入することもあるが、ブラスティアキャノンに巻き込まれないように注意。
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