ガンダムビルドダイバーズ divers ensemble   作:千葉ネリモン

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ルメを巡るガドとボックスの決闘の末、よろしくお願いします。



※誤字修整と前回描写との矛盾があった為訂正致しました。




第15話 傷の記憶が疼こうと

 二機の僚機をバイクに乗せ、GNアーチャーがデブリ帯に差し掛かろうとしていた時だった。

 宇宙を駆けるバイクを操りながら、レーダーを注視していたコーヤは、進行方向に強烈な光が瞬いたのを見た。

 光が見えたのはほんの僅かな瞬間だったが、落雷の様な激しい輝きはコーヤ達三人の目にもしっかりと焼き付いている。

 

「今のって、まさか……」

 

 バイクにしがみつくアッシマーの中。コルムは目にした閃光の激しさに息をのみ、不安げに口元を抑える。

 急がなければ。真剣な眼差しでコーヤは彼方の宙域を見据え、コルムとキナの二人に告げる。

 

「飛ばすよ。みんなしっかり掴まってて」

「分かった! 遠慮なくやっちゃって!」

「は、はい!」

 

 同乗者の了承を得て、コーヤは正面コンソールを操作。表示させるのは、トランザムの文字だ。

 GNアーチャーを改良してた時の副産物。バイクの車体にはほとんど手を加えていなかったが、改良により本体のバランスが向上したのか、六秒しか持たなかった効果時間は十数秒まで延長を果たしていた。

 それを使って一気に距離を詰める。そう意を決めて、トランザムを起動しようとした時だ。

 不意に、コックピットに通知を示す電子音が鳴る。GNアーチャーのセンサーが奇妙な反応を拾った音が、コーヤの指を止めさせた。

 

「なに……?」

 

 センサーの目を向けると、そこにはデブリ帯の外周を漂う小さなカプセル。

 その中を示すアイコンには、UNKNOWNと表記されたダイバー名があった。

 

「ごめん、一度止まる!」

 

 コーヤが告げるや否や、GNアーチャーは前方のスラスターを噴かし制動をかける。バイクが十分減速するとGNアーチャーはハンドルを離し、無重力空間へと機体を泳がせる。

 

「コーヤどうしたの!? 今は急がないと!」

「ごめん! けどここに、もしかしたらルメちゃんがいるかもしれないの!」

 

 手を伸ばすシャイにぐガンダムにGNアーチャーが振り向きながら答えてまた正面へ向き直る。目前に目標の物体、カプセル型のオブジェクトを視認し、最大望遠でカプセルの中を確認する。

 コーヤの目に映ったのは、褐色の肌と翡翠色の髪をした少女が、カプセルの内壁に手をついて立っている姿だった。

 

「ルメちゃん!」

 

 GNアーチャーがカプセルを抱えると、すぐに接触回線でルメの声が聞こえてき。

 啜り泣く様な、悲痛な声だった。

 

 

 ///

 

 

 一条の閃光は闇を切り裂き、ハイメガキャノンの咆哮は真空の宇宙に束の間の轟音を轟かせた。

 照射時間は僅か数秒に満たないながら、射線上にあるデブリの悉くを蒸発させ、そして光はデブリ帯にぽっかりとした虚空を作る。

 宇宙に穴が開いたようだ。自身が作った破壊の跡を見ながら、ガドは大きく息を吐き、愛機を動かす。

 朽ち果てた沈没艦に背を預けていたヘヴィゼータが、朽ちた装甲を足場にして虚空に飛ぶ。その右手は喪失していた。

 

「ボックスの野郎、あの状態でよくもやりやがる」

 

 ハイメガキャノンを発射する瞬間、ジャスティマは右手のサーベルを捨て、マニピュレータで直接ガンダムの横っ面をぶん殴ってきた。その一撃で射線が僅かに逸れ、ヘヴィゼータは自身の大出力ビームを浴びたために右手を失いっていた。

 ハイメガキャノンはエネルギーの大半を消費する大技である事はこのGBNでも変わらない。さらに右手も消失。左腕はビームサーベルを受け止めた時に手首を根本から抉り取られ、固定武装のビームガトリングは相手の武器を接射で破壊した際に壊れていた。さらにジャスティマから受けていたダメージの蓄積もあり、今使える武装は右肩のビームキャノンと、左足に残ったビームサーベル兼用のビーム砲一門。状態は満身創痍の一歩手前といったところだ。

 

 だが、ガドの眼前に漂っている機体の損傷の度合いは、ヘヴィーゼータ以上のものだった。

 

 ハイメガキャノンを至近距離で受けたジャスティマは左半分が完全に消滅していた。頭部の左目を始め、強固なビームバリアを張る肩も跡形もなく消えている。

 そんな状態でありながら、ジャスティマのメインカメラにはまだ闘志を示すように光が残されていた。機能停止同然でありながら、紙一重で健在と判定されているのだ。その証拠にシステムは未だにどちらにも勝利宣言を出していない。

 

「いい根性してるじゃねえか」

「ありがとう、ございますねえ……。じゃあ、続きやりましょうか」

 

 ぎりぎりと残された体を火花を散らし軋ませながら、ジャスティマはヘヴィゼータへと向き直る。

 様々なエラーとアラートで真っ赤に染まるジャスティマこコックピットの中、ボックスはまだ消えない闘志でガドのガンダムを睨みながら、最後に残ったビームサーベルをボロボロの愛機に掴ませる。

 

「まだ、俺もジャスティマもやれるんですよ……。油断してたらバッサリいっちゃいますからね」

 

 何がバッサリだ。

 ジャスティマは丸腰も同然だった。ビームライフルは自ら放棄したため既に無く、手にしているビームサーベルはろくに刀身を作ることも出来ていない。右肩にファンネルミサイルが数発程度残されているが、打撃力不足は否めない。

 ガドも火器のほとんどを消耗しているとはいえ、最早勝負になろうはずもない。にも関わらす、相手からまだプレッシャーに似た戦意が放たれている事を、ガドは肌で感じていた。

 

「もうよせよ。やろうとしてるのは違法だって分かってるだろ? まだ未遂だ。情状酌量だって見込めるんだぞ」

「できませんね。それに理不尽な目にはあってるなら、一個くらいお目こぼしがあってもいいって、思いませんか?」

「悪いが思わん。こればっかりは断言だ」

「ははっ。手厳しい。けどね、やっぱ必要なんですよ。だから」

 

 勝って、通ります。

 

 ボックスの闘志は本当に失われていない。ボロボロのジャスティマからは本気で喉笛を狙う気迫をひしひしと感じる。

 感じて尚、ガドの口を突いたのは、深いため息と、覚悟を確認する様な問いだった。

 

「お前が納得してるのはよく分かった。けど、世間とお前の妹がそれで本当に納得すると思っているのか?」

「そんなもの、俺が黙っていれば」

「お前一人が黙ったところで、漏れるときは漏れるんだ」

 

 半壊したジャスティマへ、へヴィーゼータが接近。しかし攻撃するそぶりは無い。ガンダムは半壊した左腕で相手の残された右肩へと触れる。より近くで言葉を届けようとする様に。

 

「お前がやった事が明るみになって、その金で妹さんが歩ける様になった事が分かった時。世の人間が同情だけすると思ってるのか? この何度も誹謗中傷を繰り返す世間様がよ?」

「大袈裟な! たかがゲームのリアルマネートレードごときで」

「甘くみてんじゃねえぞ小僧。金が絡むって時点で軽い話しで済むか。犯罪者の身内ってだけで、面白おかしい叩きの種だ」

 

 ELダイバーの誘拐。それが今の司法でどんな罪があてがわれるか等、ガドには分からない。

 だがもしそれが明るみになった時。その当事者にボックスと彼の妹の名が挙がった時。このGBNのダイバー達が過激な行動に出ないとは言い切れない。

 愛するものを侮辱された時、人は胸にどんな色の火を燃え上がらせるか。その片鱗を知っているからこそ、ガドはボックスへ言葉を続ける。

 

「非合法な真似をしてまで治した妹を、くそ下らねえ遊び道具にしたいのか?」

「……そんな事、そうそうある訳が」

「あるんだよ。少なくとも、俺がマスダイバーだった時はそうだった」

「……え?」

 

 マスダイバー。GBNでは久しく聞く事のなくなった、チートプレイヤー達を指す忌まわしい名前。かつてそうであったというガドの告白に、ボックスはただ目を丸くした。

 

「俺も良かれと思って、ブレイクデカールに手を出したんだ。全然勝てなくなって、空気の悪くなったフォースを良くしたかった。どんな事をしても勝てばきっと好転する。そう思ったんだよ。バカな事にな……」

「貴方のフォースは、どうなったんですか?」

「勝ったよ。けど、それが皆とやった最後のバトルになった……」

 

 ガドは無意識の内に、自分の胸を鷲掴みにしていた。掘り起こした辛い記憶に耐えようと、力で自分を制する様に。

 

「終わった後、散々言われたよ。卑怯者、恥知らず、汚い真似までして勝ちたくなかった。お前なんか……出ていけ。それで言われるまま出て行った。それだけで終わればまだマシだった」

 

 胸を抑えるガドの手に、一層力が込められる。

 

「不正をやった奴の仲間だから……そんな理由でみんな一緒くただ。俺の抜けた後もマスダイバーを抱えていたフォースってだけで皆腫れ物扱い。まともなバトルすら受け付けて貰えなくなって、空中分解……笑える話だろ?」

 

 そう言ったガドの顔こそ、悲しげな半笑いを浮かべていた。

 ガドはあのフォースが好きだった。一緒に笑い合い、共に切磋琢磨するのが楽しかった。新作は何を注目している? この改造を見てくれ。次はあのミッションを、みんなで。そんな他愛ないやりとりのために毎日何時間もダイブした。

 あの場所を守りたかった。守りたかったのに、自分の手で粉々に壊してしまった。

 

「たかがゲームでこれなんだ。金の絡んだリアルならもっと酷い事にだってなりかねない。だから分かってくれよ、ボックス」

「ガドさん、でも……俺はもうやっちまった後なんだ! もう突っ切るしか──」

「やり直せる。もう一度立ち上がれる」

 

 ボックスの諦めを否定する様に、ガドは己の言葉を重ねて遮る。

 そしてどういうわけか、ガドの言葉はボックスの耳にもどこか馴染み、覚えのあるフレーズに思えた。

 

「ガドさん、それ……」

「知らないか? 今GBNで一番流行っている動画に出てきた言葉だぜ……」

 

 そう、これはあの時ガドというダイバーを救った言葉だ。

 アヴァロンのフォースネストを舞台にGBNのオールスター共演となった、あのアルスイベント。

 そのライブ配信中で、とあるダイバー達が言っていた言葉だ。

 セラヴィーガンダムシェヘラザードと共に戦った白いSDガンダム。そしてキャプテンジオンと共にアルスの戦闘艦を両断した、イージスガンダムの改造機。それぞれのダイバーが叫んだ言葉だ。

 あのGBN中が熱狂した大イベントを、ガドはリアルから見ていた。

 二人の言葉がガドに一番奥に突き刺さり、塞いでいた情熱が溢れてくるのを止められなかった。

 そして思ってしまったのだ。こんな卑怯者の自分もまたやり直せると、願ってしまったのだ。

 燻ぶっている自分を認め、自分の過ちを思い出す度、心の中でいつも唱えていた。そして、もう一度GBNを始めようとした時。何度この言葉を繰り返して自分を鼓舞したか。

 だからこそこうして、愛機と共にこの場にガドは居る。

 

「さっきも言ったろ。お前さんは、ギリギリ踏み止まれてるじゃねえか。まだ取り返せる。ここで仕舞にして戻ろう……分かってくれ、ボックス」

 

 ボックスにも伝わっている。ガドは真摯に、自分のやろうとする事を止めようとしている。だが頭で分かっても、それでも脳裏に過るのは、あの日の妹の表情だ。もう歩けないかもしれないと言われた日の、縋る様に笑う妹の姿がボックスの呼吸を苛む。

 毟るように喉を抑え、ジレンマと息苦しさで心がどうにかなりそうなその時だった。

 辛うじて生きていたジャスティマのレーダーが、彼方から矢のように飛来する緑色の光と三体のガンプラを補足する。そして三機の内の一体が、本来ならば宇宙での行動を想定していないアッシマーだと分かった瞬間、ボックスは目を見開き、到来した機体を見る。

 

「そんな、まさか」

 

 驚愕しながらも、ボックスは頭に浮かぶ想像を否定しようとする。が、それを否定する様に便乗していたバイクから飛び出して、アッシマーのダイバーはボックスへ向けて叫ぶ。

 

「兄さん!」

 

 慣れない宇宙空間に飛び出し、不格好に手足をばたつかせるアッシマーは、組み合ったままのボックスとガドの元を目指した。

 アッシマーのマニューバは赤子の様に覚束なく、亀の様に遅い。いつまで待っても、こっちには届かないと見かねたのだろう。

 

「行ってこいよ」

 

 へヴィーゼータがジャスティマをアッシマーのいる方角へ向けて、壊れた腕で突き上げる様に押した。発生した慣性に流されるままジャスティマはアッシマーの元へと漂着し、その腕に抱かれる。

 接触回線が開き、ウィンドウに見知らぬ少女の姿をしたダイバーが表示される。それが妹のダイバールックだと気付くのには、数瞬の時を要した。

 

「お前、こっちだとそんな姿なんだな」

「全部聞いた、ルメちゃんって子に。私、兄さんにそんな事して欲しくないよ」

 

 話したんだ、ルメちゃん。最近まで一言も言葉を話さなかったELダイバーの少女がお喋りになった事に少なからず嬉しさを覚えてしまった。そんな筋合いなどもうないというのに。

 

「まだ、かもしれない、の段階だから。絶対に歩けないじゃないから。リハビリ頑張るから。まだ無理しなくていいし、これからもバカな真似だけはしなくていいから」

「……だけど」

「手は動くんだし、ちゃんとガンプラ教えてよ。このアッシマー可愛く塗りたいんだから。なんなら塗ってくれてもいいんだからね」

「そこは、自分でやれよ」

「じゃあ尚更。ちゃんと教えるためにも、いてよね」

「……分かったよ」

 

 メニューを操作し、ウインドウをポップアップ。表示にはこうある。

 

『surrender? Yes or No』

 

 ボックスの指は迷わずに、Yes をタップした。

 間を置かず、システムがガドの勝利を告げるのを聞き届けると、ガドはため息で髭を揺らし胸を撫で下ろした。

 

「間に合ったみたい、かな」

「うん。お手柄だよコーヤ。今日の君はGBNとダイバーの平和を守ってくれたヒーローだ。後で金メダルを進呈してしんぜよう」

 

 ふふん、と。通信ウインドウで得意げに笑って見せるキナ。コーヤも調子を合わせて微苦笑をする。

 

「ならもうちょっと色付けてよ。お手製のメダルよりポイントちょうだい?」

「調子にのんないのー」

 

 そしてコーヤとキナの二人は笑い合うと、改めてキナのシャイニングガンダムが手にするカプセル内のルメへと通信を開く。

 

「もう大丈夫。二人の喧嘩は終わった。心配しないでいいよ」

「あ、ありがとうございます。コーヤ、さん」

「コーヤでいいよ。ルメちゃん」

 

 はい、とルメは短く少し恥ずかしそうに答えた。

 コーヤがデブリ帯の傍でカプセルに接触した時、ルメは泣きながらカプセルの壁を何度も叩いていた。二人を止めてと叫び続けながら。

 ガンプラの声が聞こえる彼女には、ジャスティマの悲鳴が痛いほどに届いていたらしい。そして声の中には、ボックスが行動を起こした動機も含まれていたため、三人が事態を理解する助けにもなったのだという。

 

「ボックスのガンプラ、お礼言ってる。間に合ってくれて、ありがとうって……」

「そう、なんだ。なら、私も嬉しいな」

「うん。そうだね……」

 

 一件落着。コーヤとキナがアッシマーと、抱き止められるジャスティマを目を細くしながら眺めていると。

 

 穏やかな空気を引き裂く様に、全機のコックピットにアラートが鳴り響いた。

 

「なに!? どこ!?」

「キナ後ろ!」

 

 コーヤの声と背後から強襲する存在に、キナは反応できなかった。

 バイクに掴まっていたシャイニングガンダムの背中に衝撃が走った。

 弾き飛ばされ、真空をぐるぐる回りだした機体の腕の中から、ルメの入ったカプセルがこぼれ落ちる。

 その瞬間をめざとく、まるで獲物をかっさらうトンビの様にそれは現れ、カプセルをルメを奪い飛び去っていく。

 青い機体色とエイを思わせる独特なシルエット。そんな機体は多種多様なガンプラの中でも一つしかない。

 

「ハンブラビだと!? ボックスお前! 最初からこのつもりだったのか!」

「違う! これだけは本当に分からない!」

「ごめ、コーヤごめん! とにかく、お願い!!」

 

 苛立つガド、困惑するボックス、悲鳴を上げるキナ。

 暖かだった空気がぶち壊され、混乱し散らばろうとする心を奮い立たせる様に、コーヤは叫ぶ。

 

「トランザム!」

 

 瞬間、GNアーチャーは赤く輝く風になった。

 残像を伴いながら全速力でアクセルを吹かし、GNアーチャーは無粋な乱入者であるハンブラビを追撃。

 ひどい気分だ。それを律しようと込めた力に操縦桿を掴む手がびりびりと震えている。すべてが丸く収まるはずの場面を台無しにされた。絶対にやってはいけない事をあの機体はやった。

 許せるはずなんてない。

 コーヤの怒りに呼応するが如く、GNアーチャーはこれまで出したことも無い速度を発揮し、一迅の彗星の様な勢いで宇宙を駆け抜けていく。

 ハンブラビもかなりの速度で飛んでいるが、追い縋るGNアーチャーの速度と加速は次元が違う。青いMSとの距離は見る間に縮まり、コーヤは射程圏にハンブラビを捉えた。バイクの両ハンドルを外し、二丁のビームライフルとして構えながらバイクに立乗りの姿勢となって逃げるハンブラビをロックする。

 

「このバカヤロオォー!」

 

 感情を爆発させた叫びと共に、コーヤは引き金を引いた。

 高濃度圧縮粒子がライフルの銃口から解放され、二条の閃光が走る。一本は閃光はハンブラビの翼に直撃。もう一本は、カプセルを掴む右腕を撃ち抜いた。

 

「ルメちゃん!」

 

 損傷して飛び去るハンブラビを無視し、コーヤは限界寸前のトランザムを解除する。そのままバイクを足場にGNアーチャーをカプセルへ向かって飛び出させる。

 飛びつく様に回収したカプセルの中身は、空っぽだった。この狭い空間の中にルメの姿が確認できない。

 一瞬宇宙に放り出されたかと焦ったが、カプセル本体には損傷は見られない。

 

「前にもあったエリア移動……? それともさっきのハンブラビ?」

 

 コーヤは周囲を見るが、既にハンブラビの機影は消えていた。エリア内にも居ないようだ。

 自分のガンプラに他人を乗せることは出来るが、逃走するハンブラビがそんな素振りを見せてはいない。カプセルに外傷が無いことからも、ハンブラビのダイバーが接触したとも思えない。

 だとすれば、ルメ自らエリア外に移動したとも考えられる。最初に出会った時の前例もある。希望的な話ではあるが、そうと願わずにはいられなかった。

 

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