ガンダムビルドダイバーズ divers ensemble 作:千葉ネリモン
前回の話の続きとなります。
ガンプラ作りつつ書いていると、実物を確認しながら作業できているみたいで中々楽しく書けてます。ガンプラは素晴らしい!
要約すると、ミヒロは誉めごろされて押し切られ、思わず了承してしまった。
ミヒロのガンプラに対してユキナの食い付きは凄まじかった。ミヒロもそれなりに写真を保存していた事もあって、凄い凄いと興奮するユキナに言われるまま、ほとんどの写真を見せる事になった。
こんなに自分の作ったモノを褒められるのは、小学校の夏休みの工作で賞を取った時以来だった。最初は少なからず嬉しかったが、次第にむず痒さが込み上げて来て最後は顔を伏せながら懇願するようにして場を収めた。
その時うっかり、手伝うから、と言ってしまったのが運の尽きだった。
こうして、現在。ミヒロはアバターの姿でフィールドへと降り立ち、ユキナとその弟のアバターの前に立っている。
(私って、チョロいのかな……)
心の中でため息をつく。そんな彼女の心内も知らぬ青い髪の少女がミヒロのアバターの手を握り、感謝とともに自己紹介を始める。
「今日は本当にありがとう。こっちの方ではキナって名前になってるから、よろしくね。それでこっちは弟の、えっと……」
「いい加減俺のダイバー名覚えてよ姉ちゃん」
苦笑を浮かべつつ、赤い髪の少年は背筋を伸ばしてコーヤへと向き直り、
「ジンガです。よろしくお願いします!」
赤い髪の少年は礼儀正しく一礼をする。ユキナに聞いた話ではまだ中学に入学したばかりとの事だったが、思っていた以上に出来た弟さんの様だ。
「ええ、よろしく。私はコーヤです」
簡単な自己紹介を済ませると、キナとジンガは自分の機体を呼び出す。
キナの機体はシャイニングガンダム。写真でユキナが持っていたガンプラだ。
ジンガの背後にはガンダムマックスターが姿を現した。初心者との事だったが、丁寧な仕上げが確認できる。頑張ったのが分かる良い機体に見えた。たぶんだが、彼は姉よりも製作が上手いとも思う。
「それじゃあ、手筈通りに」
頷き合い、三人は行動を開始する。
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フィールドを探索し、遭遇したNPDを倒しながら時間をつぶしていると、やがてあの三機は現れた。
(うわぁ本当に来ちゃったよ。呼び出したとはいえ、本当に来ちゃうのか……)
内心、果たし状を無視して来ないことを期待していたのだが、その思いは脆くも崩れ去った。表には出さずにコーヤががっくりとしていると、相手側から通信が入ってきた。
「わざわざ呼び出してくれるとは、ありがたい話だね」
バスターの乗り手、顎髭を蓄えた男が愉快気に言った。
「今日はサンドロックの友達はいないのか? もしかして、あの程度の事で嫌になっちまたのか?」
カラミティを使う、細面の美男は酷薄な笑みを浮かべて笑う。
「あれくらいよくある洗礼だろ。あれで辞めちまうくらいなら、GBN向いてなかったんだよ」
ブリッツの禿頭の厳めしい顔をした男が忌々し気に言い捨てると、他の二人は同調し、
「そうそう。時間を無駄に使わずに済んで良かったじゃないか」
好き勝手に言うと、三人はゲラゲラと笑い出す。
その様子が腹に据えかねたのであろう。キナは自機を一歩前に出させると、声を張り上げる。
「あんた達ね、ウチの弟をボコってくれたのは! 今日という今日は本気で怒ったからね、覚悟なさい!」
びっとシャイニングガンダムで指をさし、ユキナは毅然と怒りをぶつけるが、相手の三人はまた笑い声を上げるばかりだった。
「何だよ助っ人って姉ちゃんかよ!」
「うわーん姉ちゃん助けてよ~ってか? 男の風上にも置けねえな。やっぱガキはガキか」
「この、言わせておけば……!」
今にも殴りかかりそうになるキナ。そんな彼女のシャイニングガンダムの肩を叩き、ミヒロ──コーヤは彼女に告げる。
「言わせておきなよ。寄ってたかって初心者狩りするのがカッコいいと思ってるダサい連中相手に怒るだけ無駄だよ」
口調は穏やかそのもの。だが、早口の中に露骨な棘の含む言葉を、コーヤはオープンラインのまま全員に聞こえる様に言った。
突然のコーヤの言葉に凍り付いたのは敵方の三人だけでは無かった。ジンガは勿論、キナもまた青い顔になってコーヤに驚きの視線を向けていた。
「ああ? テメエなんつったコラ?」
低くドスを聞かせた声で、バスターの乗り手が威嚇の声を上げて、コーヤに噛みつく。それもコーヤにとっては当然想定の反応だったらしく、涼しい顔をしたまま追い打ちの言葉を言い放った。
「違いました? てっきりそうだと思ったんですけど……他に深い理由がおありで?」
「ははは、姉ちゃん威勢いいな? けどあんましナマ言ってるともうログインできないくらい怖い目ちあっちまうぞ?」
「それは御免被りたいですね。ああ、そうだじゃあ用意周到という事にしておきましょう。ルーキー相手といえ相性と数を考えるなんてライオンも真っ青の全力ぶりですね!」
言葉尻に近づくに連れ、コーヤの声のトーンが上がる。敵の三人は頭に血を上らせ、コーヤとジンガは冷や冷やしながら見守っていると、コーヤはトドメとばかりにニヤリと笑い、
「そんなに負けるのが怖いの?」
キナは、生唾を飲み込んだ。
「姉ちゃん、コーヤさんて結構怖い人なの?」
「ゴメン。これ正直想定外」
勝敗とは別の不安がキナの胸に去来するが、どうやらそんな事を気にしている場合では無さそうだ。
コーヤの煽りを引き金に、敵方の三名は完全に臨戦態勢になっている。
そして、デュエルの申請は既に終えたあとだ。
「おし確定。テメエら全員ボコるぅ! テメエら行くぞ!」
号令に応じ、バスター、カラミティ、ブリッツの一斉射が始まる。
ビームと実弾の入り混じる火線が降りかかると、すぐさまコーヤたち三人は手筈通り二手に別れて砲火を避ける。
分散するコーヤ達を追う様に、バスターたちの砲撃も分散する。ミヒロとジンガの二人をカラミティとブリッツが追い、ユキナのシャイニングガンダムをバスターが二種の砲撃で攻め立てる。
ここまでは作戦通り。ビギナーのジンガを孤立させず、且つ敵の砲火をなるべく分散させられた。
だが、コーヤは思う。
やってしまった、と。
(何を煽っているんだ私は。無駄に怒らせたのは良かったかもだけど、アレはひどい。確かに頭に来たからってアレはひどい、せめて心の中で謝ろうゴメ……いや謝らなくていいか)
下らない事を考えながらも、コーヤの機体は巧みにビームの雨を避ける。ジンガのマックスターもホバーボードにしたシールドに乗り、コーヤの後を着いてきている。
「ジンガくんいくよ」
「は、はい!」
合図と共に、バイクのリア装甲に追加した装備、ミサイルポッドから弾頭を投射。放たれたミサイルは敵の真上で炸裂し、真っ黒な煙幕がまとまっていた三機を包み込んだ。
「くそ、なんなんだよ!」
カラミティは遮二無二になって煙幕に向けて砲撃を続ける。その内の一発が何かに命中し、爆発が生まれる。コーヤが捨てた空のポッドとは気付かなかった。
「や、やった!」
カラミティを操る男は細い顔に歓喜の表情を浮かべた直後、
「失礼しまーす」
煙幕を突き破り、バイクの車輪がカラミティの顔面に飛び込んできた。
頭とほぼ同じ幅の後輪タイヤがカラミティの頭をギャリギャリと撫で回し、すぐに跳ねる様に飛び退く。不意打ちに視界を塞がれ、砲撃に間が開いたならば、すかさず肉薄したマックスターのパンチがカラミティのボディを強かに捉えた。
「くそが、PS装甲に打撃が効くか!」
悪態を付きつつ、カラミティは胸部のビーム砲スキュラに火を灯す、だが、マックスターが腰の銃を抜く方が早い。
「お返しだあ!!」
一発、二発、三発……。キガンティックマグナムが矢継ぎ早の叫びを上げ、弾丸をスキュラの砲口へと連続でぶち込む。そしてカートリッジが空になった時、胸に大穴を開けたカラミティの目から光が消え、完全に沈黙した。
「ヘマしやがって! テメエもいつまで遊んでやがる!」
ブリッツが煙幕から抜け出した。相手の術中に嵌ったのが頭にきたらしく、怒気の籠めた声で残った僚機に檄を飛ばす。
だが、奇妙な事に応答も何もない。まさか、と思ったその時、自機の足に何かが当たる感触があった。
足元を見ると、バスターガンダムの首が転がっている。焼け焦げたその顔面には、くっきりと、五本の指痕が残されていた。
驚愕するブリッツの使い手の向こうで、首と両腕を失ったバスターが地面に崩れ落ち、爆発。
吹き上がる炎を背に立っているのは、鬼の様な怒気を纏うシャイニングガンダム。全身の装甲を開き、次なる獲物目掛けて全力で走り出した。
「次はオマエだぁ!!」
「怒りのスーパーモードかよ!」
シャイニングガンダムの突進に、ブリッツはミラージュコロイドを展開。電磁迷彩により視界から消えるが、シャイニングガンダムは構わずに拳を振るう。
「ふん!」
力強い踏み込みと共にシャイニングガンダムが正拳突きを放つ。が、ブン! と勢いよく空を切るに留まる。
「ふん!」
空振り。
「フン! フン! フンッ!!」
空振り。
「ムキィィィィィ!!」
空振りを何度も繰り返し、仕舞いには手応えの無さに焦れたユキナは遂に理性を手放した様な叫びを上げて、頭部のバルカン砲をバラ撒き始めた。
「ジンガくん。君のお姉さん結構怖い人なの?」
「お見苦しいところすみません!」
これじゃ作戦も無いな……と思っていると、乱射されたバルカンで飛び散った泥が空中に不自然に付着した。そのままじりじりとユキナのシャイニングガンダムににじり寄っていくのを、ミヒロとジンガは同時に発見する。
「ジンガくん、いいよ。締めちゃって」
「わっかりました!」
マックスターの胸部装甲が外れ、赤い肩装甲が両腕に装備される。
装甲を落とし、さらに機敏になったマックスターがシャイニングガンダムに迫る敵機に肉薄。
豪熱の右ストレートが不可視の機体を貫いた。
ミラージュコロイドが解除され、灰色のブリッツガンダムが姿を現す。胴体にはマックスターの拳が深々と突き刺さっている。
致命打だ。ジンガの勝ちだ。はっきりそう分かった。
悔しげに、現実を否定するように、ブリッツのダイバーは声を絞り出すように呻く。
「ブレイクデカールさえ、あれば……」
ああ、とミヒロは彼等が初心者相手にこんな真似をしたのか少しだけ分かってしまう。
けれど、それを分かったところで同情もできない。彼らがやってきた事はモラルに反した到底許されざる行いなのだから。
そしてブリッツは沈黙し、システムはミヒロたち三人の勝利を宣言した。
///
雪辱を果たした三人がロビーに戻ってくる。
晴れ晴れとした顔をしたジンガを先頭にコーヤとキナが並んで、ダイバー達の溢れるロビーを歩いていく。
「良かったねジンガ。これから気兼ねなく遊べるね」
「ありがとう姉ちゃん。コーヤさんも、本当にありがとうございました」
「うん。どういたしまして」
満面の笑みを浮かべるキナとジンガの姉弟にミヒロは軽く微笑み返す。
最初はどうなるか不安しか無かったが、解決した事はコーヤも素直に嬉しかった。
「そういえば、最後にあいつが言ってたブレイクデカールってなんですか? なんか強くなれるアイテムだったら、俺も欲しいんですけど」
邪気の無い言葉だったが、コーヤとキナは顔を見合わせる。
GBNに最近参入したジンガがそれを知らないにも無理はない。それを伝えるのも一応先輩としての義務の様にも思えて、コーヤはジンガへと言い聞かせるように話し出す。
「そんな良いものじゃないよ。ブレイクデカールは結構前に流行ったチート。ただのインチキだよ」
「そういうチーターをマスダイバーなんて呼んでたんだ。けど、それにもう使えなくなってるから。気にしないでいいから」
キナも一緒になって念を押すが、ジンガはまだ不服そうに眉根を寄せる。
「……でも、強くなれるんですよね? そうすれば、あんな変な連中なんかに負けたりしないじゃないですか。強ければあいつだって……」
コーヤは僅かに眉をひそめる。味わった理不尽な敗北と一緒に始めた友達を思っての言葉だったのだろうが、あまり関心できない反応だった。
「強さとか勝ちばかりを優先しちゃうと、あの三人みたいになっちゃうよ」
「……え?」
先程の三人はおそらくマスダイバー崩れだ。大方、ブレイクデカールが禁止されてからまともに勝ち星が稼がず、せめてもの勝利に浸ろうとあの様な真似を始めたのだろう。
きっとあの三人だけではない。他にも似たような思いで勝利という結果を求めすぎて褒めらない戦いをしている者はいるかもしれない。
「GBNは勝ちばかりを追求するばかりが遊び方じゃないよ。あんまり根を詰めると逆に辛くなるから、ほどほどにね」
「じゃあ、コーヤさんは何を楽しみにGBNで遊んでるんですか?」
「私? 私はそうだね……」
不意に神妙な表情になりながら、コーヤは言う。
「自分で組んだバイクを走らせて、どんな風に動いてくれるか確かめて。そうやって世界を走り回って、ELダイバーと会えたらなって、思ってる」
登場人物・機体紹介
〇 スギミ・ユキナ // ダイバーネーム:キナ
性別:女
年齢:15歳
身長:158cm // アバター時:リアルとほぼ同じ
元気で社交的な女子高生。空手部所属。
Gガンダム好きの父の影響で、弟共々Gガンダムのファンになる。空手を始める切欠も、Gガンが動機。
GBNでリアルガンダムファイトが体験できると知り、不器用ながら頑張ってガンプラを組んで参入した。ダイバールックは青髪の狼モデルの獣人にした理由は、好きな色が青で、狼が好きだからという至ってシンプル。
好きなシリーズはもちろんGガンダム。ドモン・カッシュ大好き。
〇 シャイニングガンダム
キナの使用ガンプラ。特に大きな改造も無いストレートな作りだが、格闘技経験者のキナのスタイルにはよく馴染み、十分に力を発揮している。
キナの性分を反映してか、剣を使うより拳で殴る方が多い。