ガンダムビルドダイバーズ divers ensemble   作:千葉ネリモン

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 読んで頂きありがとうございます。

 GBNのどこかで活動しているダイバー達を考えるに辺り、どんなミッションがあるかも一緒に考えるのが楽しくなってます。
 実際どんなミッションなら面白いだろうか、と。本当にGBNみたいなゲームが出来ないかずっとっ待ち望んでおります。


第3話 あぐねる二人

 迷惑系GTUBER撃退から数日。リアルでは5月の連休がもうすぐ終る、そんな時期だった。

 部活動に所属していないコーヤは、今日も今日とてGBNに入り浸っていた。

 

 コーヤは現在、ダイバー達の溢れるロビーの隅のベンチに腰掛けながら、手元のウインドウと睨めっこをしてる最中だった。黒髪の美女と設定された彼女のアバターが真剣な表情で見つめているのは、現在登録されているミッションの一覧表である。

 

 防衛、撃退、採取等々。多種多様なミッションの内容とビルドコインの報酬額を値踏みしながら、羅列される文章をスクロールし、最適条件がないか注視していると、あるミッションに目が止まる。

 内容は運搬。機密となる物資を自機で目的地まで輸送するという内容だ。道中、敵機からの襲撃があるとの事だが成功報酬はまずまず。輸送の護衛ではないため、速度を合わせなくて良いのもありがたい。

 これならいける、とコーヤは思った。成功すれば、欲しいアイテムの為にしている貯金目標額にもぐっと近付ける。

 

「よし」

 

 小さな声で気合いを入れつつ、ミッションの受諾をタップ。ロビーからミッションの舞台となるディメンションに向かおうと立ち上がったその時だった。

 

「あ」

「ああ! 久しぶり!」

 

 コーヤが青髪に狼耳を付けたダイバーがすぐ目の前にいた。クラスメイトという接点を持っていた二人のダイバーが、GBNのロビーでばったりと再会を果たしたのだった。

 先日と同じライダースーツ姿のコーヤを見つけたキナは声をかけるなり、主人を見つけた犬の様に駆け寄ってくる。コーヤと出会えてよほど嬉しいのか、尻尾まで動いていた。

 一方で声を掛けられたコーヤの方は、どこか浮かない顔で彼女を一瞥すると目を伏せる。そして小さく会釈だけして、立ち止まる。

 

「この間はありがとう! 弟もあれで自信付いたみたいで、メキメキ上達しているよ」

「そう、ですか。それは喜ばしいですね」

 

 急に現れ、テンション高めに話すキナにコーヤはやや引き気味で、素っ気の無い声で笑い返す。

 それでも喜ばしい、というのは嘘ではない。キナの弟のジンガが迷惑な連中に絡まれずにGBNを楽しんでいるならば、それはコーヤにも喜ばしいことではあった。

 しかし、それはそれとして。キナと出会った事はコーヤにとって、あまり歓迎できる事ではない。

 確かに前回のバトルで、彼女の人となりは分かった。いい人であることも分かっている。

 けれど、まだリアルの差から来る気後れや、彼女への苦手意識を整理しきれているとは言えなかった。

 

「それも全部タケウチさんのお陰だよ!」

「どういたしまして、です。けど、こちらでは私はコーヤなので……」

「ああ、ゴメン。でさでさ、コーヤさんはあれから結構ダイブしてるの? 連休中は部活で入れなかったから、一番に会えて嬉しくって」

「そういえば空手部でしたね。いいんですか部活は?」

「今日は完全なオフ! さあ楽しもうってところなワケよ! で、これからミッションにいく約束があるんだけど、コーヤさんも一緒に」

「……ごめんない」

 

 拒絶と呼べるほど強くない、小さな声だった。だがその謝罪には、明確に拒否の意味が込められていた。

 にべもない言葉を受けたキナは、本当に分からない、といった戸惑い顔で尋ね返す。

 

「どうしてかな、コーヤさん?」

「だって、一度きりって約束ですし……」

 

 指摘され、キナははっとした顔になる。

 一度きりでいい。

 それは確かにキナの側から出した条件であり、彼女自身がそれをようやく思い出したのだ。

 そうだった、と呟きながら、キナは困った様に笑って見せた。

 

「うん、そうだった。ごめんうっかりしてた。ダイブしたらすぐに会えたんで、ちょっとテンション間違えちゃった……」

 

 ごめん! とキナは手を合わせて拝むように非礼を詫びるが、今度はコーヤが罪悪感を覚えてしまい、彼女もまたキナへと言う。

 

「いえ、謝って頂く必要なんて……失礼な事をしてるのは、私の方ですし……」

「そんな事ない。それぞれのスタイルがあるなら、それを尊重しない訳にはいかないよ。コーヤさんソロ派だって知ってたのに」

「……まだ、思ってるんですか?」

 

 そう切り出したコーヤの心中で、あの日教室でユキナが言った言葉を反芻しながら、キナへと問う。

 

「私と、その……」

「うん。まだ友達になりたいよ。まだ、というかあの時よりも、もっとそう思ってる」

「……」

 

 何でこの人は恥ずかしい台詞を然も堂々と言えるのか。

 けれど、拒む理由も無いと言えば無い。

 GBNの事をリアルで話せる同性は貴重だ。それに、自分のガンプラも褒めてくれた。

 それでも、ミヒロは容易に頷けない。

 もっと別の理由が、心を竦ませる。

 

「……まあでも、急に変な事を言ってるのには変わりないもんね。またまた変な事言ってゴメン。じゃあ私も約束があるから、この辺で」

「……はい。私も丁度ミッションを入れたところなので」

「わかった。じゃあ今日はありがと。またどこかでね!」

 

 そう言ってユキナはロビーから去る。その後ろ姿をどこか名残惜しそう見つめながら、コーヤは消え入りそうな声で呟いた。

 ミッションの約束がある、と言っていた。そういう友達もちゃんといる、という事だろう。

 

「リアルで上手くやれるなら、こっちでもそうだよね」

 

 私じゃなくても、いいんだよね。

 そう呟く口元は、寂しげに笑っていた。

 

 

 

 

 ///

 

 

 

 

 一度きりって約束ですし。

 コーヤに言われた言葉は、GBNからリアルに戻った後でもユキナの耳の奥に残響していた。

 あんな約束しなければ良かった、とユキナは制服姿のまま寝転がったソファの上でつまらなそうに天井を眺めている。

 

「なんかダメージ大きそうだね、姉ちゃん」

 

 語りかけたのはユキナの弟のヒトシ。GBNでのジンガである。赤い髪のダイバールックと打って変わって、黒髪の眼鏡をした大人しい雰囲気をしており、今も穏やかな表情でペットの世話をしている最中だった。飼っているインコの篭掃除のため、インコのキュースケを肩に乗せながら糞の付いた底網をブラシを使って洗浄している。その作業の最中、ユキナからコーヤと会った時の話を聞かされていたのだ。

 

「……ヒトシはさあ、これどう思う?」

「率直に言うと、痛々しいくらいめんどくさい」

 

 本当に率直すぎる答えに憮然としながら、ユキナはソファの上で居住まいを正す。

 

「男子ってさ、こういう時どうしてるの?」

「どうかな……同じモノが好きって分かったら、ガシッて握手して一緒にウェーイってなる」

「参考にならないのはよく分かったわ……」

 

 男子はシンプルだね、とユキナはため息をつく。

 そんな簡単な話なら良いのだが、気になるあの子は、これまで会ってきたどんな強敵よりもガードが硬い。妙な感じで。

 

「分かんないけどさ、難しく考え過ぎてない? 一緒に遊んだ事があるならもうその時点で友達じゃないの?」

「そうだったら良かったんだけど。イマイチ感触悪いのよ。自分の何が悪かったのか~とか。タケウチさんは何がダメなのか~とか色々考えちゃうわけ」

「ネガティブばっかりじゃん。いっそ、無理に友達にならなくてもいいんじゃないの?」

「どうしてそうなる!?」

「だって、いつも地雷を気にしなきゃならないんじゃ、姉ちゃんの方が持たないよ」

「……」

 

 正論である。生意気にも。

 

「けど、姉ちゃんがコーヤさんと友達になるのは俺としては嬉しいけどね。あの人みたいに尖ったガンプラ使う人とは一緒にミッションやってみたいし」

 

 ヒトシは気楽に言いながら、底網を鳥かごに戻す。そして肩に乗っていたキュースケを手に乗せ変えると、綺麗になった鳥かごの中へと戻す。

 弟にとっては掃除の片手間の様な話かもしれないが、自分にとってはそれなりに深刻なのだ。

 ただなんとなく、何もせずに色々してもらえて、今は止まり木で呑気に欠伸をしているインコの事が少しだけ怨めしかった。

 

 

 

 ///

 

 

 

 

 その日は結局、全然集中できなかった。

 GBNでいつも通りにバイクを走らせたが、いつもの様な高揚感も、スピードを感じる爽快感も感じる事は出来なかった。

 ミッションも成功はしたが、感触は芳しくない。なので今日は調子が悪い。と早々に切り上げ、ミヒロは馴染みの模型店を後にし、帰路へと着いた。

 帰り道の途中、今晩の食材を買うと買い物袋と一緒にもやもやしたものを抱えまま、ミヒロが家の戸を開けた。

 

「ただいま」

「お帰りミヒロ。今日は早かったね」

 

 家の中からミヒロを出迎えた声は、ミヒロの祖母のキヨだ。

 御年七十二歳の小さな体躯の祖母は、居間の座椅子から立ち上がると玄関のミヒロの元までやってくる。

 訳あって、ミヒロは祖母と二人で暮らしているのだ。

 

「ゲームはしてこなかったのかい?」

「したんだけど、ちょっと今日は早く切り上げたの。晩御飯私も作るから待ってて」

「じゃあ一緒に作ろうか。たまには孫の腕前を確かめてあげないとね」

「お手柔らかにね」

 

 ミヒロに料理を教えたのはキヨだった。

 齢も七十をとうに過ぎているが、体もしっかりしているので、たまにこうして一緒に台所に並んで料理を作っている。

 

「今日はカレーでいいかな? お野菜私が剥くから、切るのお願いね」

「はいよ。そうだ、小玉の玉ねぎが古いからそれを使って」

「わかった」

 

 冷蔵庫や戸棚の中から材料を取り出し、ミヒロはてきぱきと作業を進めていく。玉ねぎ、じゃがいも、ニンジン、それぞれの皮を剥きキヨのまな板に並べる。野菜を受け取ったキヨは慣れた手つきでそれらを細かく刻んでいく。

 具を小さくして作るのがタケウチ家のカレーだ。何でも好き嫌いの激しかったミヒロに野菜を食べさせるために、キヨがどのくらい細かければ食べてくれるか試行錯誤したのが始まりらしい。

 今では定番となった工程の途中、キヨがミヒロへと尋ねた。

 

「何かあったのかい?」

「……なんで?」

「好きなゲームを切り上げて、当番でもないのに料理をしたいなんて言い出したら、そりゃ何かあったって思うでしょ?」

「別に。大した事じゃないよ」

 

 にべも無く会話を切るミヒロだったが、キヨはそれが真実でないとすぐに分かったようだ。

 

「同じゲームをしてる同級生の事だね?」

 

 物の見事に言い当てられた。びっくりしてミヒロは祖母をまじまじと見てしまう。

 

「……お婆ちゃんって実はニュータイプだった?」

 

 ミヒロは驚きのあまり、ガンダムで例えてしまう。キヨはその意味は分からなかったが、意味深に微笑んで見せた。

 

「別に新しいも古いも無いよ。人付き合いの苦手なミヒロが珍しく同級生の話をしたばかりなんだ。そりゃあお婆ちゃんも気にもなるし、そうじゃないかって思うよ」

 

「ニュータイプというより年の功か……」

「それで、友達になったのかい?」

 

 答えにくい問いだった。しかしきっと祖母に下手なその場しのぎは通じないと観念してミヒロは言う。

 

「……なっていいのかな」

「んん?」

 

 歯切れの悪いミヒロの声にキヨは包丁を止めた。ミヒロも手にしているジャガイモを剥くでもなく手の中で転がしいてる。

 

「ミヒロはその子と友達になれない理由があるのかい?」

「無い……ううん、ある。その子明るくて他にもちゃんと友達がいて……私クラスにあんまり馴染めてないし、カースト下位だし。そんなのが急に仲良くし出したら周りが変な風に思わないかとか」

 

 仮にユキナの友達となったとして、何食わぬ顔でグループに入れるはずもない。ミヒロはまずそれに不安を感じた。

 ユキナとは共通の話題が通じるが、彼女の前からの友達がそれを快く受け入れてくれるだろうか。何しろ、プラモデルを使ったゲームという一般の目線からすれば、無縁のサブカルもいいところだ。

 どう考えてもNO。ネガティブに考えてしまうのは仕方のない事だった。

 

「カーストねえ。わざわざ他所の国の宗教を当て擦らなくてもいいのに。お婆ちゃんの時やお母さんの時も、仲の良い悪いはあったけど上か下かなんて目に見えてはなかったと思うけどねぇ」

「昔と今は違うんだよ。それにガンプラが好きな女子もちゃんといるけど、私のクラスほとんどいないし……それだけで変な風に思う人は思うし」

 

 俯いて完全に手が止まってしまう。そんなミヒロに向き合う様に、キヨは真っ直ぐにミヒロを見る。

 

「ミヒロ。諦めるのはいいけど、諦める事と友達になろうとする事と、どっちの方が自分にとって得かはよく考えてから選びなさい」

「得って、そんな損得勘定で」

「いいんだよ、自分の得くらい考えて。ミヒロは何かにつけてどれが悪いかばかり考えて、やっちゃいけない理由を欲しがるから、尚更得については考えた方がいいよ」

「……はい」

 

「それじゃカレーの続きをしようか」

 

 

 

 

 

 ///

 

 

 

 

 夕飯を終え、ミヒロは自室へと戻りベッドへ腰かけた。ご飯の時、祖母はそれ以上の事は言わずいつもの調子でテレビを見ながら談笑していた。

 しかしミヒロの頭には、何が得かという疑問符が貼り付いて離れない。

 

「お得ではある事は間違いないんだけどね……」

 

 ため息と共に机を見ると、自分のガンプラが見える。

 パーツをミキシングしたバイクが本体で、乗っているGNアーチャーはオマケ。GNアーチャーを選んだ理由は、顔がバイクのヘルメットみたいだったから。

 継ぎ接ぎで形にはなっているバイクの方も、正直まだ不恰好だ。それでも最初に持っていった時はもっと酷かった。

 それを凄いと店長に言ってもらえたのは、初めてにしては上出来だ、という意味だったと今なら分かる。

 けれど彼女はそんな不恰好な私のガンプラをあんなにも褒めてくれた。

 

「褒めてくれたから気になるなんて、本当に安いな私……」

 

 何が彼女の琴線に触れたのかは分からない。

 それでも熱っぽく語る彼女の顔は今も鮮明に焼き付いている。

 半ばそれに報いるために協力したのが先日の決闘だ。それで十分だと思えた。貸し借りゼロのはずだった。

 本音を言えば、ミスギ・ユキナへの苦手意識は依然として存在している。急になれなれしく距離を詰めてき時は、正直怖かった。

 自分が周囲と折り合いを付けるため、保っていた領域を飛び越えて来るのが怖かった。

 

「前よりも友達になりたいと思ってる」

 

 どうして彼女は、私をこうも買ってくれたのだろう。

 

「だって、一度きりって約束ですし……」

 

 何であんな事を言ってしまったんだろう。

 

 後悔の中、ミヒロは祖母の言葉を反芻していた。

 キヨは自分の得を考えろと言った。

 ならば、彼女にとっての得とは何なのだろう。自分などが彼女に与えられるモノなの何もないのに。

 

 幾重にも疑問符は連なり続ける。

 得とは何か、それは分からないまま一日が終わった。

 




登場人物・機体紹介


〇 ミスギ・ヒトシ // ダイバーネーム:ジンガ
性別:男
年齢:12歳
身長:155cm // アバター時:160cm
ユキナの弟の中学1年生。GBNには中学に上がってからデビューした。
姉同様Gガンダム好きで、影響をもろに受けているが、実際に格闘技に興味は向かなかった。
ダイバールックは、少年漫画の主人公イメージとのこと。
好きなシリーズはGガンダムとガンダムSEED。

○ ガンダムマックスター
姉同様ストレートに組んでいるが、仕上げなどはジンガの方が上手い。
Gガンではチボデー推しだったので、自然とチョイスした。
パンチだけでなく、ボードや銃等使えるモノは全部使いながら戦うスタイルを好む。

作者の個人的願望ですが、現実でもGガンシリーズのHGが充実するのを待っています。
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