ガンダムビルドダイバーズ divers ensemble   作:千葉ネリモン

9 / 21
一段落してまたまた一山。今回からまたキャラも増えます。

また今回、友人の製作したガンプラをモデルに書かせて頂くという試みをやりました。
実物があると、いろいろとイメージが湧いて非常に楽しかったです。
この場を借りて感謝いたします。






第9話 あるダイバーの拾いモノ

 雪が舞う。白い白い雪に混じりながら、街を燃やす赤い火が、曇天へ向けて舞い上がる。

 ここはGBNに作られた仮想世界の街。ただし土地の名前は、実在の地名から取られていた。

 土地の名はベルリン。有名なドイツの地を模した無人の街を踏み潰しながら、ひとつの巨影が闊歩する。

 ヤドカリの様な巨大な武装ユニットを背負う、40mにも届こうという闇色の巨大な人形だ。

 巨人は歩行するだけで破壊を撒き散らす。しかしそれだけでも飽き足らぬのか、口から、胸から、左右の十指から、破壊の光を放っては街を爆炎で吹き飛ばす。

 巨人の名は、デストロイ。

 GFASーX1 デストロイガンダム。

 そしてここは、ガンダムSEED DESTINY本編でステラ・ルーシュが初めてこの機体を駆った戦闘を模した、レイドバトルミッションの空間だった。

 破壊の名を持つガンダムの足元には、何体もの破壊されたガンプラが残骸となって転がっている。どれも既に倒れたダイバー達のもので、間も無くそれらは光となってフィールドがら消失する。

 その様子を、かろうじて原型を留める建物の影から窺う機体があった。

 HGのZZガンダムをベースとした濃紺色のカスタム機だ。

 メインカメラを覆うバイザー状の追加装甲と、両肩にはダブルライフルの砲身を利用した左右一対のビームキャノン。両腕には固定装備のビームガトリングガンを持ち、キャノン兼用のビームサーベルの柄はふくらはぎの装甲側面に移されて正面への射角を確保している。加えてAGE3等のパーツを使い機体全体の厚みを増した、いかにも重装甲重火力という外見をしていた。

 ZZ版ヘビーガンダムをコンセプトにビルドしたので、ヘヴィーゼータ。

 そう名付けた本人。連邦軍の制服を着た大柄なライオンの姿をした獣人ダイバー、ガドは愛機の中で巨大な敵が過ぎ去るのを期待しながら、息を殺して潜んでいた。

 

「参ったな、甘くみていた。アップデートでここまで凄くなってたかGBN……」

 

 コックピットで一人呟くガドだが、およそ三年ぶりにダイブした彼が驚くのは無理からぬ事だった。

 最新バージョンで嗅覚や味覚といった五感まで再現されたGBNは、彼が最も熱中していた時とは別物と呼んでも過言ではない。

 全く大したものだ。感心し、首を撫でると固くごわついた鬣の手触りがが返ってくる。この感触もガドは今までに経験したことはない。まるで本物の生き物の体毛だ。おそらく、コックピットの外は舞い散る雪の冷たさと、街が焼け焦げる臭いに満ちている事だろう。

 しかし、何より驚異的だったのはデストロイガンダムと対峙した時の強烈なプレッシャーだ。

 動く小山の様な圧倒的大質量を目の当たりにした瞬間、ガドは自分が恐怖していると分かった。頭でゲームと理解していても、あの巨大が放つ威圧感と臨場感はほとんど本物だ。

 知り合いがGBNがさらに良くなったと言っていたのも頷ける。だが、二年以上のブランク明けの、ちょっと勘を取り戻してきた程度の今のガドが挑むには、様々な意味で大きすぎる。

 大人しくリタイアすべきか、そう思った時だ。

 上空。あの圧倒的なデストロイガンダムへ向けて臆することなく接近する機体が見えた。

 青と白の鮮やかな、ガンダムエクシアの改造機。GN粒子の帯をたなびかせながら、背に装備した剣のような翼で曇天を切り裂く様に。エクシアは異形のガンダム目掛けて一直線に飛んでいく。

 

「無謀だろ……どこの怖いもの知らずだ」

 

 確かにデストロイは懐が弱い。飛び込めれば勝機もあるだろうが、それでも強力な弾幕を無傷でかい潜ることが前提だ。

 こうしている今もデストロイは動く。本体から切り離された右腕が遠隔攻撃兵器ドラグーンとして飛翔する。五指の指にあるビーム砲と強力な防御リフレクターを持つ、MS大の腕はエクシアの進路を阻むように現れ、迎撃のビームをエクシアへ向け撃ち放つ。

 だが、エクシアは怯まない。

 迫り来る五条のビームに、エクシアは真正面から立ち向かう。速度を落とさず、ビームの隙間を縫う様に見事な回避機動を披露する。

 操縦技術もだが、相当な胆力の成せる技だ。エクシアのダイバーは臆せず前のめりに突っ込んでいく思いきりのいい動きだ。大きさに気圧されたガドは感嘆せずにいられなかった。

 

「すげえ……何者だありゃ」

 

 上空で繰り広げられる壮絶なマニューバにガドは固唾を飲んで見守っていた。あれだけ動けるなら、確かに弾幕を抜けて本体へと切りかかれる事もできるだろう。

 だが違った。エクシアの標的はデストロイ本体への特攻ではなかった。

 ドラグーンの腕がようやく巧みに飛ぶエクシアの背を取った瞬間、エクシアは飛行姿勢をロールさせる。

 頭を地に、足を天に。空中で逆立ち姿勢になったエクシアは若干減速をしながら、潜る様に降下。そして降下した瞬間に元の姿勢へ戻ったエクシアは、下方からドラグーンの腕へと急接近する。

 

「スプリットSだと!」

 

 縦方向に下向きのUターンをする、インメルマンターンの対となる空戦機動を滑らかにきめて、エクシアは急上昇しデストロイの右腕を自身の間合いに捉えた。加速を付け、自身と同じくらい大きな腕とが交錯する瞬間、エクシアがビームサーベルを抜き、一閃。

 五本の内、小指から中指までの三本の砲を切り落とし、エクシアはさらに上昇。ターン。急降下しながら右腕を二撃目を狙う。

 しかし今度はドラグーンの腕が備える盾、陽電子リフレクターを張る方が早い。腕を守るように張られた光の傘を目にしたエクシアは、得物をビームサーベルから日本刀型のGNソードへと持ち換える。エクシアは更なる加速をつけて突っ込み、陽GNソードと電子リフレクターがぶつかり合った。

 衝突の瞬間、目の眩むような電光と激突音が空気を割る。その衝撃は凄まじく、離れたガドの元までビリビリと伝わってくる程だ。

 剣と盾の力比べは、大きさの分盾の方が優勢だ。大出力の光の盾に圧され、突き立った切っ先が徐々に押し返され……ない。

 トランザム! そう叫ぶ声が聞こえた気がした。

 空と雲の様な鮮やかな機体色が一転、灼熱色に染まるエクシアが一気に力を解放。盾を突き破ろうと、全開で斥力場を形成し、剣の切っ先一点へ力を込め続ける。

 しかしここで、デストロイがもう一方のドラグーンを起動させた。高速で飛ぶ左腕が、邪魔になるエクシアを背後から狙おうと迫る。

 潜み隠れ、事態を静観していたガドだったが、たまらず飛び出した。

 

「こうなりゃヤケだ!」

 

 獅子の姿のガドは歯を剥きながらヘヴィーゼータを走らせる。目標は左腕のドラグーン。目的は全火力を持ってドラグーンを妨害し、エクシアを援護。異を決したダイバーの意思を受け、ヘヴィーゼータは肩のキャノンと両腕のビームガトリングを飛翔するデストロイの左腕へ向け一斉に放つ。

 ペレット状のビーム弾と一直線に伸びる二本の光条は、標的違わず左腕ドラグーンへと到達するが、それも展開されたリフレクターで防がれる。だがそれでいいい。

 ヘヴィーゼータの攻撃を防いでいる限り、エクシアへの追い撃ちは出来ない。奮戦するエクシアへの横槍を防げればそれで十分。あとはどこぞの熱血小隊長よろしく、銃身が焼け付くまで撃ち続ける。

 このタイミングで今度はデストロイの本体が動き出した。

 異形の巨体の胸部。スーパースキュラの砲口が輝くと同時。放たれた青白い極太ビームがヘヴィーゼータへ迫る。ヘヴィーゼータはつんのめりながら倒れ込む事でかろうじて回避するが、張っていた弾幕が消えてしまう。

 しまった、と焦るガドだったが、ガドの役割を引き継ぐように至るところから砲撃が始まり、火線は十字砲火となって左腕のドラグーンを空中で釘付けにした。

 

 攻撃を始めたのは、生き残りのダイバー達だ。全員が一丸となり、単機敢闘するエクシアを援護するため火力を集中しているのだ。

 

 雪上を高速で移動するバクゥやAGE3フォートレスが弧を描きながらビームを放ち、サーペントとズサが連携し合って高密度の弾幕を放つ。そして遠方からゴッゾーとガンタンクの長距離砲が吠え、ダイバー達の一斉砲撃がリフレクターを食い破らん勢いで、ベルリンの空を猛火の花で染め上げる。

 さらに、いつの間にかドラグーンの真下にまで来ていたゲルググキャノンが左腕を飛ばす推進機の主機目掛け、直下からのビームを何発も撃ち込む。

 推進機を損傷した左腕は、徐々に高度を下げ始め、ダメ押しに四方からミサイルの雨が叩きつける様に降り注ぐ。けたたましい炸裂音と爆風に殴り付けられた異形の腕は、飛ぶ力を奪われて燃えるベルリンへと轟沈する。

 そしてほぼ同時、エクシアの剣も遂にリフレクターを破る。エクシアは自機と同じ大きさはある腕に組付くと、トランザムを継続した灼熱色のビームサーベルで幾重にも切りつけまくる。

 光の剣が翻る度、巨大な腕はこま切れになり、爆散。噴き上げる炎の中から飛び出したエクシアは振り返らず、トランザムを解除して本丸、デストロイへと狙いを定め飛び込む。

 

 そして先陣を切るエクシアに続いて、生き残ったダイバー達は攻勢へ転じ、闇色のガンダムへ雪崩れ込んだ。

 

 両腕と盾を失ったデストロイは背の大砲と胸部のビーム砲で迎撃するが、どれほど威力があろうと、射角の限られた直線的な攻撃だ。先行するダイバー達は砲撃を容易に見切り、目標への間合いを詰める。

 一番槍はやはりエクシアだ。挨拶代わりとばかりに顔面まで急接近し、ビームサーベルで口のビーム砲を切り付けて封じる。

 次いで砲撃手らの火力支援を受けながら、黒の部隊カラーのF91が抜け出し、MEPEを発生。質量のある残像がデストロイを取り囲むように現れては消え、撹乱する。残像を追った弾幕が方々へ分散し、敵の迎撃能力が薄まった瞬間、完全に好機は到来した。SDサイズのZガンダムが小型ならではの敏捷さで背後を取り、鉄壁の威容を誇るトトゥガが体当たりしてデストロイの姿勢を崩す。その後もダイバーたちは次々と前線へと合流。ガドのヘヴィーゼータも戦列に加わって砲撃し、総攻撃を受けるデストロイのゲージはみるみる内に削られていく。

 そして上空からウイングガンダムの改造機が放った一撃。バスターライフルの光がデストロイを貫いた瞬間、勝負は決した。

 デストロイは音を立てて倒れ込み、ベルリンの街に巨大な爆炎を咲かせ消滅した。

 

《BATTLE ENDED》

 

 システムが終幕を告げた直後、電脳世界のベルリンに勝鬨が上がった。

 健闘を讃え合うダイバー達の声が聞こえる。互いの手を重ね合わせガンプラが見える。

 そう、これだ。これなのだ。これがGBNだ。

 シリーズも何もかもを越えたMS達の共演と、原作ではありえない組み合わせ達のらんちき騒ぎ。それをダイバー達の化学反応が作り上げ、どこまでも熱を押し上げる。

 

「戻ってきたんだな本当に……戻ってこれたんだ」

 

 緊張のほぐれから来る心地良い解放感と感傷に浸りながら、ガドは満足げにため息をついた、その時。

 視界の端に奇妙なモノが見えた。

 それは愛機の足元にあった。端的に言ってしまえば、雪の中に埋もれる、ゴミのようなボロボロの布切れだ。

 それだけなら、先の戦闘で吹き飛んだ家屋のテクスチャか何かと思えたが、違う。ボロ布の周囲の雪は不自然に盛り上がっている。まるで、何かが雪に覆われて落ちているかのようだ。

 その大きさは、ちょうど子供の背丈ほどのものだった。

 

「まさか、な」

 

 ガドはヘヴィーゼータのコックピットから消えると、ベルリンの街に降り立った。予想通り、熱気と街の焼ける匂いを感じたが、思っていたより不快感はない。その辺りはさすがにゲームという事か。

 ガドは積もった雪にブーツを埋めながら、違和感の元へと向かい、盛り上がった積雪を恐る恐る撫でる様に雪をどかしてみる、と。

 柔らかく、そして仄かに温い感触が伝わった。

 

「……冗談だろ!」

 

 ガドは血相を変えて雪をかき始める。両腕をワイパー代わりにして、積もった雪を払い除けるとやがてボロ布の本体、布を巻き付け横たわる少女の姿が現れた。

 翠色の髪は乱れ、褐色の肌にいくつも煤を落とした少女の姿は戦闘から逃げてきた体そのものだ。しかも低い気温と雪にくるまっていたせいで、体温がかなり低い。

 

「病院……ってあるのか!? まずどうなってんだこの状況は? ダメージアウトしたにしてもこうはならねえだろ!」

 

 ゲームをしていたら遭難者を発見した。あまりに突拍子もない事態にガドは取り乱そうとする心を、悪態を叫びながらもどうにか落ち着ける。これも最新アップデートによるものとも考えたが、とてもそうは見えない。

 

「とにかく! 運営に相談だ」

 

 警察も病院も119番も無い以上、頼れるのはゲームの運営しかいない。

 初めて使う問い合わせメニューと格闘する事数分。ガドはどうにか文面を整えメッセージを送付する。

 だが、これで一件落着ではない。凍えている少女を暖めるためにガドは行動を再開した。

 幸い火種はそこら中にあり、再度搭乗した愛機を使って、周囲の木造建材を集めると、即席の焚き火櫓を作る。さらに火を覆うようにヘヴィーゼータに四つん這いの姿勢を取らせ、雪から少女を守るための屋根を設ける。そしてガドが着ている連邦軍の制服を少女に被せてひとまずは息をついた。

 

「あとは、早いとこ運営が来てくれりゃいいけどな」

 

 焚いた火が消えないように番をしながらガドは呟き、ぶるりと半裸の体躯を震わせた。

 

「獣人タイプは毛皮着てる扱いにはならんのか……ついでにこれも要望で挙げてみるか」

 

 鬣を首に寄せながら、ガドは火の前で踞って待つ。

 やがて、運営のガードフレームがガド達の元へと訪れる。

 そしてガドが助けた少女の素性と、その確認のためニトラの元へと運営からメッセージが届けられたのは、この後数時間後の事だった。

 

 




登場人物・機体・ミッション紹介

○ダイバーネーム:ガド
性別:男
年齢:推定20代後半~30代前半
身長:190cm

ライオンタイプの大柄な獣人ダイバー。連邦軍の制服を着ている。
GPD時代からガンプラバトルを嗜んでいたベテランだったが作品時間で約三年前、第一次有志連合戦が始まる前に一度GBNを引退し、最近になり復帰してきた。
ダイレクトにダメージを受けるGPD経験者故か、慎重にバトルを進めるきらいがあり、最新バージョンのGBNの勝手に戸惑いながらも、徐々にGBNの楽しみ方を思いだし始めている。
古いガンダムネタにも精通している一方で、最新のネタには若干疎いのでおっさん扱いされがち。
好きなシリーズはガンダムZZ。ZZ好き。ガンプも好き。FAZZも好きだが、フルアーマーZZと同じと言われると少し機嫌が悪くなる。


○ヘヴィーゼータ
ガドの使用するZZガンダムベースのカスタムガンプラ。
ZZ版ヘビーガンダムをコンセプトに、意外と細身なHGZZをプラ板とパテを使って全体的に分厚く重装甲化させているのが一番の特徴。プラ材の他にはコンセプトの似通っているAGE3のパーツを使用。特に脚部脛装甲にはAGE3オービタルのビームサーベルの発振できるシールドを使用し、膝蹴りの威力を向上させている。
主武装はダブルビームライフルの2門の砲身を左右一対のキャノンに変えた肩部ビームキャノン、両腕ウイングシールドの代わりに装備されたセミスクラッチのビームガトリング。脚部に移動されたダブルキャノン、そして頭部のハイメガキャノン。
バックパックは原典のものを使っているが、メガライドランチャー等のオプションも存在する。



○討伐ミッション:デストロイガンダム撃滅戦
ベルリンの戦場を舞台に、その名の通りデストロイガンダムを撃破するレイドミッション。
最大参加可能人数は20人。
戦闘での貢献度合いによってポイントが加算され、ポイントが上がるほどに良質なアイテムのドロップが望めるオーソドックスなレイド戦。
目標はデストロイ本体だが、ドラグーンの腕を先に攻略するのがポイント。
最大の特徴は巨大な敵とのバトルを肌で感じる事のできる臨場感と言っても過言ではない。
余談だが、香港シティでのサイコガンダムやモトラッド艦隊との戦いもスリリングという点では同じく高い人気がある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。