もう一度、貴方に出逢えたのなら……   作:赤いUFO

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ちょっとだけ令を書きたかった。


令編

 昭和から平成が終わり、日本は令和の時代となった。

 古手梨花は病院のベッドの上で目を覚ます。

 

「また、殺されたのね……」

 

 二回目の死に戻りに梨花は自分の手首に填めている数珠を見る。

 時間を戻せるのは二回だけ。次殺されたら完全に終わりだ。

 その事実に梨花は震える。

 昭和五十八年を越え、ようやく未来へと歩き出した。

 それから村を離れた事で成功と失敗を積み重ねて今の古手梨花が居る。

 それが全て無に帰そうとしているのだ。

 もしかしたら自分だけでなく村の皆も。

 帰郷の途中で脚を折り、ここで安楽椅子探偵に徹しなければならない事に歯痒さが抑えきれない。

 自分が死んだ二つの世界を振り返り、情報を頭の中で纏める、

 自分を殺した犯人は近年雛見沢村にやって来たポラリスというDV保護団体か。

 それとも雛見沢村の者なのか。

 しかしいくら考えても思考が良くない方へとループしてしまう。

 ここが限界か、と感じて梨花はスマホを手にした。

 梨花にとって家族とも言える最愛の仲間達に連絡する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて雛見沢分校で過ごした仲間。

 それが梨花の病室集まっていた。

 前原圭一。

 竜宮レナ。

 園崎魅音。

 公由沙都子。

 沙都子は結婚して北条から公由の姓に変わっている。

 そして────。

 

「あうあう梨花〜。大丈夫なのですか?」

 

「綿流しは来れそう? 娘が梨花ちゃんに奉納演舞見てもらうんだって張り切ってるんだけど」

 

 古手羽入と古手陸人。

 陸人は羽入と結婚した時に古手姓に変えて、今は興宮の学校で教鞭を取りながら古手神社を預かりつつ子供三人とで暮らしている。

 ちなみに長女は詩音と悟史の子供と同い年。

 長男は高校生。

 次女は圭太郎らと同じ中学生だ。

 近年の奉納演舞は長女が行っており、演舞の先生である梨花を慕っている。

 久し振りに集まったメンバーとの挨拶もそこそこに梨花も笑顔を向ける。

 

「陸人、また太りましたですか?」

 

「いやー面目ない。入江先生からはそろそろ痩せなさいって言われてるんだけどね」

 

 昔は圭一や悟史と同じくらいの体型だった陸人は結婚して。特にこの十年で太った。

 今は亡き興宮の刑事だった大石くらいに太っている。

 いや、警察官としてきちんと筋肉があった大石と比べるのは失礼だろう。完全にメタボっている。

 

「どうせ子供舌の羽入が甘い味付けの物ばかり食べさせてるせいなのでしょう? こら羽入。妻として夫の健康管理くらいちゃんとしやがれなのです」

 

 そう言って羽入のほっぺを抓る梨花。

 羽入もやられるがままに抓られている。

 

「いひゃいのへす! いひゃいのへす! やへふのへすほひは〜!!」

 

 以前似たようなやり取りをした事があったが、その時に「未だに結婚もしない梨花に言われたくないのです! いつになったら僕に梨花の花嫁姿を見せてくれるのですか!」と口論となった事がある。

 その言葉が梨花の逆鱗に触れたらしく、羽入だけでなく古手一家全員にトラウマを植え付ける出来事があった。

 それ以来、梨花に結婚を急かす台詞は禁句となっている。

 ちなみに羽入は出会った頃から今も姿が変わっていない。

 中学高校に上がっても全然見た目が変わらない羽入に対して、流石に部活メンバーもおかしいと感じ始めて、梨花が高校を卒業するタイミングで羽入の正体を明かしている。

 最初は驚いていた仲間達だが特に態度を変えず、それ以降羽入の見た目に関しては触れてこない。

 不思議がっていた村人達も近年はネットの普及でそういう体質の人間も居ると入江の協力もあり、今では受け入れられている。

 もちろん、全員が全員ではないが。

 

 二人のやり取りに和んだ後に梨花は小説のアイデアと称して今雛見沢村で起きている事の相談を持ちかけた。

 しかしそれは子供の頃に惨劇を乗り越える為に仲間に相談した方法と同じだった為にすぐにバレた。

 綿流しの日に圭一と魅音が会合に行くと殺される事。

 それを回避した場合は梨花が殺される事を告げる。

 本当なら縁起が悪い冗談だと笑い飛ばすか怒るかしそうな物を、全員が真剣に考えてくれている。

 あの惨劇を経験していない陸人も。

 

「陸人、学校の子供達はどのような様子ですか?」

 

 梨花の質問に少し考えてから、守秘義務に触れない範囲で答える。

 

「お互いに関わりたくないって感じだね。良い感情は持ってないけど、完全に棲み分けることで取り敢えず問題も起きてないってところ。教員もあからさまなイジメや嫌がらせでない限り傍観の姿勢だし」

 

 教師は無力です、と肩を落とす。

 積極的に行動すればそれはそれで角が立つ。

 子供達も昔のように先生の言う事を聞くだけではなく、抵抗する術を知っている。

 下手に動けばこっちが悪者にされるだけだ。

 

「でも、最近は圭太郎君がポラリスの子達とコミュニケーションを取ることが多いかな」

 

「圭太郎が?」

 

「うん。グイグイ行ってる。それで向こうの子達が少しでも心を開いてくれたら良いなって思う反面、ポラリス側の負担になってないかちょっと不安」

 

 元々DVで保護された子供達だ。

 自分達とは違う境遇の者には心を開きづらい。

 それでも一人で良いから心を開き、この村に馴染むきっかけにならないかと期待してしまう。

 

 それから圭一からポラリスは宗教団体ではなくあくまでもDV被害者の保護団体であり、ちゃんと納税をしていると説明する。

 また、ポラリスは代表者である聖母が過去に出版しベストセラーとなった本の印税や過去にポラリスに助けてもらった人の寄付金で活動資金を賄っているとの事。

 その本をレナや陸人も読んだ事があり、良い本だったと称賛する。

 また、ポラリス自体も休耕地だった村の畑を復活させて自給自足の生活をしており、育てた野菜を卸して生活していた。

 魅音が調べたところ、不自然な金の流れは見当たらないクリーンな組織との事。

 他にもいくつかの情報共有を終えて、じゃあ誰が祟りの真似事を起こそうとしているのかという話の流れになる。

 誰が圭一と魅音。そして二人の失敗の場合に梨花を殺すのか。

 それをレナが沙都子の夫とその補佐役が犯人ではないかと当たりを付けた。

 そこで少し話が戻る。

 

「村がポラリスに嫌がらせを受けているという話しだけど、雛見沢の人間がポラリス側に嫌がらせをしているって可能性は?」

 

 梨花の質問に少し考えて沙都子が否定し、圭一も同意する。

 

「その手の活動は御三家が先導するだろ。でも御三家は現状ポラリスとの揉め事を起こすなと大号令をかけてる。それを無視してわざわざ嫌がらせをするってのは、この村じゃちょっと考えられないな」

 

 かつてダム建設の反対運動に真っ向から反発した北条家。

 その後の北条家への村八分は魅音達やそれより上の世代には強く印象に残っている。

 それを恐れて村の人間もポラリスに対して良い感情を持てずとも嫌がらせをして自分達が村八分にされるリスクを負うとは考え難い。

 そこで陸人も意見する。

 

「今は雛見沢の文化遺産保護指定の件もあるからね。尚更トラブルは起こせないよ。となると、外部の人間の可能性があるんじゃないかな?」

 

 そう言って陸人はスマホを見せる。

 

「これ。ここ最近動画サイトにアップされてる雛見沢村に関するいくつかの投稿。職員会議でちょっと話題になってる。雛見沢村にダメーがあると、興宮も他人事じゃないからね」

 

 そこにはポラリスが過去に起こしたと思われる事件や、三十年以上前に雛見沢村で起こった連続怪死事件などが載っている。

 文化遺産保護指定で観光地化に村の命運を賭けている雛見沢からすればありえないことだ。

 

「僕はその時まだこの村に引っ越してなかったからよく知らないけど、かなりショッキングな内容が書かれてる。こういうのが好きなマニアとかが愉快犯的にちょっかいをかけてるかも」

 

 雛見沢村に来れば、ポラリスとの対立は嫌でも目に付くしね。と付け加える。

 一通り情報交換を終えると各々が自分の役割を口にした。

 

「俺はポラリスの方にタカ派が居ないか探ろう。聖母様には会ったことがあるし、接触しやすいと思う」

 

「それじゃああたしは園崎家の内情を探るよ。公由家の方は沙都子、頼めるかい?」

 

「もちろんですわ。お任せくださいまし」

 

「レナも自分なりに調べてみるね。気になることもあるし」

 

「僕は学校で子供達にそれとなく聞いてみるよ。これでもポラリスの子達を担当してるしね。羽入は入院中の梨花ちゃんのサポートしてあげて」

 

「わかりましたです」

 

 それから入院していて落ち込んでいる梨花を皆で励まして病室を出た。

 羽入だけは梨花と二人で話したいと残って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 病室を出た圭一達は自販機の近くで一休みしつつ雛見沢村の現状を話す。

 魅音はポラリス側がもうちょっと友好的ならやりやすいのに、とぼやく。

 しかしレナはポラリス側の気持ちに理解を示す。

 心も身体も傷付いた時に誰とも関わらなくて良いと言われるのはとても楽だろう、と。

 そうして心を癒やす時間の必要性を知っているが故に。

 だけど村を仕切る立場にある魅音はそれでも頭を悩ませる。

 せめて、挨拶や先住民に対する敬意の一つも見せてくれればお年寄りを説得しやすいのに、と。

 魅音が圭一に意見を求める。

 

「そもそも郷に入りてはなんて考えは大多数による思想の押し付けに過ぎない。ポラリスが雛見沢村の住民と同等数居る現状でその理論は通用しないだろうな」

 

 てっきり同意してくれると思っていた魅音は圭一の発言に驚く。

 圭一は議員秘書の立場から雛見沢村の現状を説明した。

 今の雛見沢村の問題は世界中で起こってる移民問題の雛見沢バージョンに過ぎないと。

 

「若者が便利な都会に移住して数を減らし、雛見沢に残っているのは昔の生活を良しとして残っている年寄りばかりだ。ポラリスを受け入れてなければ雛見沢村はとっくに限界集落を迎えて滅んでいただろうぜ」

 

「耳が痛いね。うちの息子も大学進学を期に街への引っ越しを考えてる。最終的には都会の方に定住するかも」

 

 高校生の陸人の息子は大学進学を希望しており、就職も向こうでするつもりらしい。

 そうして雛見沢村の住民は少しずつ数を減らしている。

 だからこそ陸人は自分の意見を口にする

 

「今が同数なら十年二十年後はポラリス側の方が数が多くなってる可能性が高いと思う」

 

 年々数を減らす雛見沢の住民と助けを求めてやって来るDV被害者。

 もちろんポラリスを脱退する者も居るだろうが増える数の方が多いと見るべきだ。

 

「だからそれまでにお互い尊重し合える隣人として融和出来るのがベストだと僕は思うよ」

 

 インフラ整備にはそれ相応の住民の数が要る。

 未だに雛見沢村が存続出来ているのはポラリスがちゃんと自治体に納税しているからだ。

 今の雛見沢はポラリスが支えていると行ってもいい。

 

「今の日本じゃ数百人単位の人間が引っ越して定住なんてありえないもんね。精々趣味の土いじりで個人の別荘が関の山かぁ……」

 

「私達ももう少しポラリスに感謝した方が良さそうだね」

 

「そうですわね」

 

 それで感謝出来るのならここまで拗れた事態にはなっていない。

 ポラリスの受け入れは園崎茜の英断だが、それがきちんと評価されるのはもっと先だろう。

 酒を酌み交わして仲良くなれるなら良いが、それだけで全てが解決出来る訳でもない。

 

「仲良くなれない相手との共存は、ひょっとしたら令和新時代の新しい課題なのかもしれねぇな」

 

 そう言って圭一は飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今後この作品で書きたいエピソード。
1:陸人と羽入のデート回。(陸人側にその自覚なし)
2:梨花がふざけて陸人を誘惑。
3:梨花が言祝し編を夢で見る。
4:この話(令)の続き。
とかですかね
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