バレンタイン戦線   作:TAROH

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筆が載った。今日中に書き切りたいけど間に合わなさそうです・・・。


第2波-学校編-

2月14日 5:30――。

 

「諸君、良く集まってくれた」

都内某所、”組織”関東支部の会議室に、数名の隊員が集まっていた。

集まった隊員たちは、いずれも多種多様な学生服を着用しており、いずれも学生と言って差し支えない。

会議室前側の壇上に立つ男―関東支部長が、隊員たちに向けて話す。

「もう間もなく、第2波が到来する。”ルペルカーリアの祝福”の効果が減衰すると同時に、不活性化していた対象が再活性化される」

隊員たちは一様に頷く。

「諸君ら潜入班には、例年特にその影響が大きいと見られる指定されたいくつかの学校に潜入し、接触を阻止してもらいたい。

詳細は新見君から説明する」

「はっ」

呼ばれた俺は、支部長に代わって壇上に立ち、スクリーンを操作する。

「これから君たちに潜入してもらうのは都立第一高校、都立第三小学校、都立第七中学校だ。対象校は現在起動中の”ルペルカーリアの祝福”群の位置から離れている上に、聖ヴァレンティヌズ像にほど近い場所に立地しているため、影響が大きいと判断された」

隊員の中から声が上がる。

「我々は、いわゆる高校生の年齢でありますが、小学校や中学校にはどのようにカバーするのでしょうか」

「各校には既に文科省から通達がされており、教育委員が臨時で授業参観をするというストーリーになっている。入校許可証は既に発行済のため、該当者には後で渡す」

「であれば、小中学校に配置される隊員は制服でなくて良いのではないでしょうか」

「教育委員により、各学校の制服の着心地の調査も行うということになっている。これは決定事項だ」

「・・・・・・承知しました」

隊員同士で顔を見合わせる。戸惑いを隠せない様子だが、それは気にしていられない。

「俺は第一高校の教師として一年前からカバーに入っているため、今回はそこから指揮を執ることになる。各校に配属された隊員は、現地協力者と連携を取り作戦に臨んでもらいたい。協力者リストは後程配布するため、記憶して焼却しろ」

そこまで言い切ると、支部長と目を合わせる。支部長が頷いた。

「第2波を乗り越えるためには諸君らの働きが不可欠である。健闘を祈る」

「「「「了解」」」」

 

 

配置先、協力者リストを受け取った隊員たちがグループに分かれ、解散した。

第一高校の隊長はそのまま俺がやることになる。

俺の元に変装用メイクをされた隊員たちが集まってくる。

「全員そろっているな。現地まで車両で移動する。付いてこい」

 

ゾロゾロと支部地下に降りると、バンが待っていた。俺の愛車だ。

「後部に乗り込め。配席は予め配布してある。指定位置に座れ。全員の着席が完了したら、足元のボックスを開いて中身を確認しろ」

全員が乗り込んだのを確認し、車を発進させる。第一高校までは30分程度の距離だ。

俺は車を走らせながら、後ろの様子を確認する。

「あの~~~、この中身って」

隊員の中でも一際ガタイの良いヤツが声を上げた。スグルだ。

「ボックスの中に、一枚紙が入っているはずだ。それが今回俺達がカバーする相手の情報だ。カバー対象は、校内でも非モテ属に分類されており、バレンタインデーの日は登校拒否することになっている。だから1日成り代わることが出来る。その上、クラスメイトからも比較的遠目に見られているため、不用意な接触をされる危険性も少ない」

「なるほど。鎮圧方法はガスですか?」

別の隊員が聞いてくる。

「学校でも使用可能な装備をいくつかボックスに入れている。ガスは影響範囲が大きくなる懸念があるから今回は麻酔針を使用することになる」

「了解です」

質問は終わったようで、隊員たちは各自に配布された装備を確認している。

「基本的に俺は授業時間以外は社会科準備室に待機している。他の教職員から怪しまれない程度であれば直接接触も可能だ。何かトラブルがあれば、即座に共有するように」

「「「「了解」」」」

 

そうこうしている間に、今日の現場である都立第一高校が見えてきた。

「どうか無事に終わりますように……」

願わくば何も起こらないことを。いや、本当に。

 

 

2月14日 6:30――。

俺は隊員たちを連れて、校長先生の元へ向かう。予め話は済ませてある。

「校長先生、新見です。よろしいでしょうか」

中から了承の返事が聞こえたのを確認し、扉を開ける。

俺の後ろから隊員たちがついてくる。

隊員たちを見た校長先生は、驚きを隠せない様子だった。

最後の隊員が扉を閉めたところで、説明する。

「右にいる6名が、本日の作戦の為に校内に入ることになります。作戦終了時間は完全下校となる18:00を予定しています」

校長先生が顎をさすりながら言う。髭剃りミスったのか?

「新見先生から予め聞かされてはいたが、本当にそっくりですね……」

「恐縮です」

変装のクオリティに驚かれていたようだ。

「作戦の内容については概要ですが聞いています。学校側としては、チョコレートの受け渡しは校則違反となるため、積極的に行う生徒は少ないと考えています。しかし、何分思春期の若者たちですから、隠し持っている可能性は十分にあります」

俺は頷く。当然だろう。自分が高校生の時も、熱に浮かされたようにチョコレートを隠し持ってきた女子生徒は居た。

「新見先生は確か、風紀委員と共に朝の荷物検査に立ち会われるんでしたな」

「はい、その予定です。風紀委員長の佐々木には先日の委員会の時に伝えています」

「わかりました。校内で今回の作戦を知っているのは、私と養護教諭だけです。ですので、もし何かありましたらどちらかに連絡をもらえれば。勿論、可能な範囲で、ですが……」

気を遣われているようだ。校長としては校内のすべてを把握したい所なのだろうが、そこはある程度制限をかけさせてもらう。

「校長先生、ご協力ありがとうございます。何かあれば連絡させていただきます。彼らはそのままクラスに直行しますが、よろしいですか?」

「ええ、皆さんが変装している生徒たちはいずれも普段登校するのが早い子たちばかりなので、違和感はないと思います」

「わかりました」

そう返して俺は隊員たちのほうに向く。

「各員はカバー対象のクラスに向かい待機。挙動を怪しまれないように注意して作戦を行うこと。作戦開始の合図は無いため、ある程度自主判断に基づき任務を遂行するように」

「「「「了解」」」」

 

 

 

2月14日 7:20――。

ひとり、端末を確認していると、”ルペルカーリアの祝福”効果が減衰し始めている様子が映っていた。

「おはようございます、新見先生」

「……おはよう山崎さん、どうした?今日の荷物検査は佐々木君が担当すると聞いていたが」

社会科準備室にいた俺の所にやってきたのは3年2組の山崎絵梨奈だった。

「佐々木君は、今日体調不良みたいで。朝連絡を貰ったので、荷物検査は私が代理で出ることにしました」

「そうか。よろしく頼む。もう時間か?」

「はい。ほかの風紀委員は正門前に集まって、準備をしてくれています」

「わかった。俺もすぐ行く」

よろしくお願いします、と言い去っていく彼女を尻目に、俺は困惑していた。

「まさか山崎副委員長が代理とは。昨日の佐々木は元気そうだったんだがな……」

山崎絵梨奈は品行方正かつ眉目秀麗な女子生徒だ。既に特別枠で東京大学への合格も果たしており、校内でも大人気の生徒である。

「様子は普通のようだったし、影響は受けていないのか……?」

気になることはあったが、とりあえず荷物検査に行かなければ。

 

正門に向かうと、既に生徒たちの列が出来始めていた。

机を準備している風紀委員の生徒たちに挨拶をしつつ、様子を確認する。

「あ~~~今日荷物検査だったかー!」

「マジかよサイアクじゃん」

悲喜こもごも、というか悲鳴しか聞こえてないような気もするが、勿論抜き打ちではない。

数を確保させることが目的ではないからだ。予め伝えておくことで、チョコレートを持ってこさせない、というのが本来の使命である。

とはいえ。

「山崎さん、ちょっと時間早いけど始めようか。余り生徒たちが溜まりすぎると近所の人達に迷惑になるからね」

「そうですね。みんな普段こんな早くないと思ったんですけど意外でした」

 

そういいつつ、山崎さんは他の風紀委員に声をかけて準備状況を確認している。

 

 

2月14日 7:30――。

「遅くなりました! これから荷物検査を始めます! 2列に並んで、順番に机の上で鞄を開けて風紀委員に確認してもらってください」

山崎さんの号令と共に、荷物検査が始まった。

組織としてはチョコレートを発見・回収することが目的だが、荷物検査としてはそれ以外の学校に持ち込んではいけない不要物を回収することも目的である。

「あ! マンガは持ち込み禁止です!放課後まで風紀委員で預かります」

「えー!勘弁してくれよーなぁー」

「ダメです」

なので、当然校則でNGになっている他の物品も回収されていく。

「あっ」

山崎さんが声を上げた。

「どうした? これは……」

山崎さんがチェックしていたのは、1年生文芸部の女子生徒の鞄だった。

そして見つかったのは、チョコレートだった。

「中川さん。気持ちはわかるけど、校則違反なの。放課後まで預からせてもらってもいいかしら」

「……はい。すみません」

落ち込んだ生徒を山崎さんが慰めている。

「中川さん。社会科準備室にある冷蔵庫に保管しておくよ。そうすれば、ちゃんと保管できるでしょ」

「先生……」

俯いていた生徒が顔を上げる。どうやら多少のフォローにはなったらしい。

「ありがとうございます。新見先生」

「大したことじゃないよ。山崎さん、他の人達にも同じようにチョコレートを見つけたらうちで預かるって伝えてもらえるかな」

「はい!」

 

検査が終わるまでに、25個のチョコレートが回収された。

「新見先生、それではチョコレートをよろしくお願いします。生徒たちの名前はこの紙に控えているので、放課後に取りに来た生徒に渡してもらえますか」

「了解。荷物検査お疲れ様」

「先生も朝からありがとうございました」

「これも仕事だからね」

山崎さんは会釈をして他の風紀委員たちと校舎に戻っていく。

そう、これも仕事だからな。

 

生徒全員が校舎に入っていくのを確認して、俺は準備室に戻る。

「今日の授業は2時間目と3時間目か」

 

2月14日 9:00――。

学校内は1時間目の授業が始まっている。

俺以外の社会科教師は皆授業の時間で、出払っている。

 

俺は組織から提供されている端末で、連絡を取った。

「こちらHS1。対象物の回収を完了した。復旧班と回収班を要請する。対象物は25個」

「支部了解。復旧班と回収班を出動させます。到着は5分後。ランデブーポイントを指定願います」

「裏門前でお願いします」

 

預かったチョコレートを持って裏門に行く。

俺が着くとほぼ同時に組織の車が裏門前に停車した。

「こちらHS1。対象物を持ってきた」

中から復旧班と回収班の人員が下りてくる。今回は25個もあったため、4人ずつ派遣されているらしい。

全員が敬礼をし、俺も答礼する。

「回収班のH1です。対象物を見せていただけますか」

「これだ」

チョコレートを袋から出して回収班に渡す。回収班は手持ちの機材で確認する。

機材が反応すれば回収対象、そうでなければ回収せずそのままだ。

「ビィーーーーー」

機材が鳴動した。

「回収対象発見。指定混成材料以外の使用が確認された。研究所にて詳細分析を行う」

「復旧班了解。代替品を用意するため、検分結果と外装材料を見せてください」

 

復旧班は、回収対象になってしまったチョコレートをすり替えるのが役目だ。

害のないチョコレートに入れ替えることで、問題なく受け渡しができるようにする。

規定に定められたチョコレートであれば、渡しても問題ないことになっているからだ。

 

結果、19個のチョコレートが回収対象になってしまった。

「復旧班R2です。代替品は1200にはお渡しできる状態になります」

「了解した。生徒が外を出歩いていない13:40にここで受け渡しを行おう」

「承知しました」

 

車を見送り、準備室に戻る。

このまま終わってくれればいいんだが。

 

 




まだ半日終わって無くて泣く
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