魔法少女リリカルなのは これがメイドの歩む道   作:クラッチペダル

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それは事故だったのかもしれないし、もしかしたら人為的なことだったのかもしれない。

 

確かなのは、それは間違いなく、彼女の人生をゆがめてしまうほどには、不運で不幸だったのかもしれない。

 

 

※ ※ ※

 

 

プレシア・テスタロッサは魔法に秀でた大魔導師であり、優れた科学者であった。

そう、少なくとも『次元航行エネルギー駆動炉』、通称『ヒュードラ』の設計主任に抜擢されるほどには。

しかし、彼女一人が優秀だったところで、そのプロジェクトは果たしてうまく行くものだろうか?

……否である。

 

いくら彼女が優秀でも、前任者が残した問題を一人で解決できるわけがない。

いくら彼女が優秀でも、上層部の都合で過密さを増していくスケジュールを何とかすることも出来ない。

いくら彼女が優秀でも、上層部に嫌気がさしたプロジェクトメンバーを引き止めることは出来ない。

そして、いくら彼女が優秀でも……上層部の指示であればたとえ無茶なものであろうと突っぱねることは出来ない。

 

あらゆる問題点が解決していないにもかかわらず、上層部はプレシアたちプロジェクトメンバーに魔力駆動炉の起動実験を命じた。

当然、プレシアは反対する。

しかし、結局上層部は指示を撤回することはなかった。

 

そして起こるべくして起こったヒュードラの暴走事故。

その暴走事故により、プレシアは一人娘を失う。

この件についてプレシアは当然告訴する。

しかし、裁判でプレシアに勝ち目はなく、上層部は告訴を取り下げれば娘についての賠償金を払うという意思を見せる。

このまま裁判を続けても勝てる見込みなどないプレシアは、その上層部の意思を受け入れ、告訴を取り下げるしかなかった。

 

残ったのは、一人娘の命を金額に換算して払われた金と「彼女が違法手段、違法エネルギーを用い、安全よりプロジェクト達成を優先した」と言う事実無根の不名誉な記録、そして一人娘を失ったと言う事実だけだった。

 

 

※ ※ ※

 

 

『何を……? 決まっているじゃない、取り戻そうとしているのよ……たった一人の私の娘、アリシアを』

「……え?」

 

プレシアの言葉に、フェイトが固まった。

母は何を言っている?

取り戻す? 誰を?

一人娘……アリシア?

自分の名前はフェイトだ。

プレシアの一人娘は、フェイトではないのか?

 

『お人形遊びももう限界。だったらせめて役に立ってもらおうと思ったけどジュエルシードは全部を回収することは出来ず……ほんと使えない子』

「え? あ、か、母さん、どういうこと……?」

『あらフェイト、そこに居たのね。まぁ、それはどうでもいいことだけど……私を母と呼ばないでくれる? 人形の分際で』

「にん……ぎょう?」

 

なんだ?

母は何を言っているんだ?

フェイトはまるで幻の中に放り込まれたかのように、足元が安定しない感覚を味わっている。

そんなフェイトの様子を知ってかしらずか、プレシアは言葉を続けた。

 

『まぁ、あなたには言ってなかったから知らなかったでしょうけど、私の娘の名前はアリシア……フェイトなんて名前じゃないわ』

「……二十六年前、プレシアはある事故を起こし、その際一人娘をなくしてるんだ。その名前は、アリシア・テスタロッサ」

「そんな! だったらフェイトちゃんはいったい……!?」

『何度も言ってるじゃない、人形だって。アリシアの遺伝子を使い作り上げた、アリシアのクローン。出来損ないのお人形よ』

 

プレシアの言葉に、エイミィがコンソールをいじり、あるデータを呼び出す。

 

「プレシアは消息不明になる直前まで、ある研究をしていた……人造生命を作り出そうとするそのプロジェクトの名前は……プロジェクトF.A.T.E」

『そういうこと。よく調べてるじゃない管理局も。わかった? フェイト、あなたは私の娘じゃないの。なのに、出来損ないのあなたを、利用するためとはいえ娘扱いしなければならなかった私の苦しみ、あなたにわかる?』

「…………」

 

最早フェイトは言葉もない。

何を言えば良いのか、彼女には分からなかった。

ただ、頭の中は「何故?」が渦巻いている。

 

『そうだ、最後に一つ、貴方に伝えたいことがあったのを忘れてたわ。年をとると忘れっぽくなって嫌ね』

「だめ……それ以上は止めて……やめてあげてよぉ……」

 

なのはが、プレシアの言葉を遮ろうと弱弱しい言葉をつむぐ。

しかし、プレシアがそれを聞き入れるはずもない。

プレシアは、実に晴れ晴れとした表情でフェイトに向かって残酷な言葉を放つ。

 

『私ね、あなたの事が……』

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!」

『ずっと大嫌いだったのよ』

「……あ」

 

フェイトの脚が力をなくす。

それにより、フェイトはその場にくずおれた。

慌ててアルフが抱きかかえ、呼びかけるが、フェイトは少しの反応も示さない。

その赤い目は、まるでガラス玉のように虚ろで、なにも映してはいなかった。

その様子を見たアルフが、映像越しにプレシアを睨みつける。

 

「プレシアァァァァァァ……あんたって奴は……っ!」

『そう、そんな失敗作なんてどうでも良いわ。二十一個集め切れなかったのは不安要素だけど、それでも庭園の動力を暴走させれば補えるはず……そして私は目指すのよ……古の都、アルハザードを!!』

 

プレシアが十三個のジュルシードを取り出し、発動させる。

一つでさえ膨大な魔力を放ち、次元振を起こしかけたそれは、十三個が互いに互いと共鳴しあうことにより、より大きな力を放つ。

つまり……

 

「魔力反応増大! このまま行くと……次元振が起こります!」

「時の庭園内に、大小複数の転送反応。庭園の防衛システムを作動させたようです!」

「くっ……考えうる最悪のパターンだ! 提督! 僕が出ます!!」

「分かりました、準備して頂戴……なのはさん達は……」

「私達も行きます!」

 

クロノがリンディにそう言うのを見たなのはは、リンディにそう進言する。

しかし、それはあまりにも受け入れがたい提案だった。

 

確かに彼女が出てくれれば心強いだろう。

しかし、ここまで大事になってしまえば最早でれば危険しかないのだ。

そんな場所に、協力者とはいえ民間人を送り出すことはリンディも躊躇する。

しかし、なのはは頑ななまでに譲らない。

そしてセナも。

 

「まぁぶっちゃけ、フェイト様がクローンだとかどうでもいいでありますよ。ただ単にこのまま放っておいたら人様の次元世界巻き込みそうな雰囲気ですし? 一発ぶん殴らせろと私は声高らかに言いたいのでありますよ」

「だが!」

「それに、突入部隊、先ほど全滅したでありましょう? クロノ様以外に出れる人、今いるでありますか? いるとしたらどのくらい? ……恐らく、いてもかなり少ないでありましょうな。だったら私達も戦力として投入すべきでありますよ。なぁに、最初協力するといったときから覚悟は十分。乗りかかった船を今更おりろとか、平然とそれが出来るほど私達、人間できてないでありますし」

「…………」

 

セナの発言を受けて、リンディか悩む。

言われたとおり、先ほど突入部隊をプレシアに全滅させられたため、現在出れるのはクロノのみ。

だが、庭園内の防衛システムが作動したとなえばクロノ一人では荷が重過ぎる。

ちらりと、なのは達を見る。

 

--……情けないわね、管理局員も。

 

しばらく目を閉じ悩んでいたリンディがその目を開ける。

 

「……分かりました、ただし、現地ではクロノ執務官の指示に従っていただきます。いいですね?」

「分かったであります」

「母さ……っ、提督!?」

「人手が足りていないのもまた事実です。人手は多ければ多いほどいい。その人手が優秀ならなおさら」

「だったら、私も連れてってくれないかい?」

 

リンディの決定に、クロノが驚きで目を見開く。

しかし、既にリンディはこれを決定事項とし、意見を変える気はないようだ。

そんなリンディに、フェイトを抱きかかえたアルフが声をかける。

自分も連れて行ってくれないか、と。

 

「あんなこと聞かされたら……私のご主人様にあんなこと言われちゃ……アイツの面一発二発殴らなきゃ私の気が済まないんだよ! 頼む! 私も連れてってくれ!!」

 

そう叫ぶアルフの目には、涙。

彼女自身でもどうしようもない激情が、彼女の中で荒れ狂う。

アルフがフェイトを抱く力が強まる。

 

「フェイトはさ、がんばったんだよ。あんな糞野郎の為に必死にがんばったんだ。なのに、何だよあれは! あんなことが許されるのかい!? 許していいのかい!? ……良いわけないだろ……? だから、頼む! 私を連れてってくれ! 私にあの糞婆を殴らせてくれ! あんたらの指示には絶対従う! だから!!」

 

涙ながらに、アルフが頭を下げる。

恥も外聞もなく、涙を流しながら、声を震わせながら頭を下げる。

 

「……分かりました。ただし、少しでも不審な動きをした場合、どうなるか分かってますね?」

「ああ! もちろんさ! ……今の私は、かなり鶏冠に来てるからね……あの糞婆にはせいぜい覚悟してもらおうかねぇ……!」

「おーこわ。トンでもねぇ奴敵にしたでありますな、プレシア・テスタロッサは」

 

アルフがフェイトを抱えてブリッジを出る。

なのは達はそんなアルフを追うようにブリッジを出た。

彼女たちの背中を見送りながら、リンディは呟く。

 

「情けないわね、本来なら一から十まで私たちが解決しなければならないと言うのに、ほとんど彼女たちにおんぶ抱っこみたいなことになっちゃって」

「そうですね……なら、今の僕達に出来ることは事件を無事解決させることだけです……彼女達を犠牲にせずに」

「……お願いね、クロノ」

「分かってます……母さん」

 

二人の、親子の会話に口を挟む者は、誰もいなかった。

 

 

※ ※ ※

 

 

「これでよし……っと。じゃ、フェイト、私はプレシアをぶん殴ってくる。今回ばかりはフェイトに止められても行くよ」

 

アルフが自分達にあてがわれた部屋のベッドにフェイトをおろし、フェイトの目にかかった髪を払いながらそう呟く。

フェイトからの返答は……ない。

そんな主従の様子に心を痛めながらも、なのははアルフに続きフェイトに声をかける。

 

「私も行くよ。フェイトちゃんがあそこまで言われて、今まで戦ってきた間柄としては気分良くないし、それにこのままだと私達の世界が大変だから」

 

なのはの言葉にも、フェイトは何も答えない。

ただ、ガラス玉のような瞳で天井を見上げているだけ……いや、ただ目がその方向に向いているというだけで、実際はその目は何も映していないのだろう。

 

「……これだけは言っておきたいんだ。あの人はフェイトちゃんを人形だ人形だ言ってたけど……フェイトちゃんが私と戦ってたのは……戦ってでもジュエルシードを集めてたのは、本当にあの人の命令だってだけだったの?」

 

フェイトは……答えない。

 

「もしそうだったなら、見当違いな事言ってるのかもしれないけど、もしそうじゃないなら……フェイトちゃんはフェイトちゃんだよ。人形なんかじゃない……人形は自分の考えとか持たないもん」

 

その言葉にも、やはりフェイトは答えなかった。

その様子を見て、なのはは悲しそうに俯き、フェイトから離れ、部屋から出た。

これ以上、何を言っても彼女には届かないと察したからだ。

 

「……それじゃ、行って来るね? フェイト」

 

アルフもフェイトにそう言うと、部屋を立ち去る。

部屋に残されたのは、何ごとにも反応を示さないフェイトだけだった。

 

 

※ ※ ※

 

なのは達が部屋を出ると、そこにはクロノが壁に寄りかかった状態で立っていた。

どうやらなのは達を待っていたらしい。

 

「……もういいのかい?」

「うん。あとはフェイトちゃんしだいだから」

 

なのはの返答に「そうか」と返したクロノは、そのままなのは達を先導する。

たどり着いたのは、ブリッジに備え付けられているものよりやや大型の転送装置。

 

「……最終確認だ。これに入れば時の庭園に転送される。プレシアを確保するまで帰ってはこれない……止めるなら今のうちだ。誰も責めはしない」

 

クロノの言葉に、誰もが無言で返す。

つまり、今更降りる気はさらさらない、と言う意思表示だった。

クロノはその様子にため息を付くと、転送装置へと足を踏み入れた。

それに続き、なのは、セナ、ユーノ、アルフも転送装置へ足を踏み入れる。

 

「……エイミィ! 転送してくれ!!」

 

クロノの指示と同時に転送装置が起動。

なのは達の視界が光に包まれる。

そして光が消え、見えるようになった景色は……

 

「何と言うか……サイケデリックと言うか混沌的というか……とにかく表現に困る景色でありますな」

 

そこは、通常ではありえないような景色。

赤や青や緑、さまざまな色がまるでうねるかのように混ざり合い、そして離れる。

じっと見つめていると、吐き気を催しそうなそんな光景だった。

それは次元の海。

この混沌とした空間に数々の世界が存在しているのだ。

 

そして、彼女たちが立っている場所はそんな次元の海に浮かぶ、時の庭園。

真正面には、まるで衛兵の如く、大小さまざまな大きさの鎧が待ち構えていた。

そのどれもが、手に槍やハルバード、剣を持って侵入者を待ち構えている。

 

「あれは……ロボット?」

「いや、傀儡兵。魔力で動く人形さ。防衛システムが作動して転送されてきたのはこいつらだろう」

「人形って事は、中に人が入ってたりしないんだよね? だったら全力で行っても問題ないんだよね?」

 

クロノの説明に、なのはが一歩足を踏み出す。

しかし、そんななのはの動きは二本の腕で止められた。

一本はクロノの腕、もう一本はセナの腕。

 

「クロノ君? セナさん?」

「君が出る幕でもない。ここは僕に任せて欲しい」

「お嬢様のあの砲撃は此方の切り札。むやみやたらにひけらかすものではないでありましょう? ここは忠実な従者である私めにお任せあれ」

 

そう言うと、二人は前へ進む。

それを見た傀儡兵は、各々の獲物を振り上げ、二人へと襲い掛かった。

 

「僕一人でも問題ないですよ?」

「やかましいであります。主の道を開くは従者の役目。こればかりは譲れねぇでありますよ」

 

二人は今まさに襲い掛かられていると言うのに軽口を叩き合うほどの余裕を見せている。

そして、ハルバードを持った傀儡兵がセナへ向かって得物を振り下ろす……

 

「ぬるい」

 

セナはそれを避けようとせず、むしろ傀儡兵へと踏み込んだ。

そして、ハルバードの柄、傀儡兵の手がある部分へと両手をぶつける。

重いものが衝突したような、腹に響く音が響き、セナの脚がやや地面に埋まる。

が、それだけ。

セナの手はしっかりとハルバードを受け止めており、傀儡兵はハルバードを押せども引けども動かせない。

 

「……なんででありましょうかね? なんだか、ここに足を踏み入れてから……やけに力が有り余るっ!!」

 

台詞と同時に、腕に力を込め、ハルバードを自身の右へとそらす。

強引に持っていた得物をそらされたせいで、傀儡兵はバランスを崩し、その場に無様に倒れこんでしまった。

そしてクロノが倒れた傀儡兵を踏み台に、傀儡兵の群れの中心へと飛び込む。

 

「スティンガースナイプ!!」

 

クロノの詠唱と同時に、青い魔力弾が次々と傀儡兵を貫いていく。

やがてその勢いは徐々になくなっていくが、それでも魔力弾は消えず、空中で螺旋を描いている。

 

「……スナイプショット!」

 

螺旋を描いていた魔力弾が、そのキーワードに再び加速し、傀儡兵を屠って行く。

それを感心したように見つめながら、セナは自身が横倒しにした傀儡兵を見下ろす。

 

「これはこれは……こちらも負けていられません……な!!」

 

見下ろしていた傀儡兵の腕に、足を思い切り振り下ろす。

それにより、傀儡兵の腕は砕かれ、セナの足が地面を踏みしめた衝撃で、傀儡兵のハルバードが若干宙に浮く。

その際に発生した僅かな隙間に振り下ろした足をもぐりこませたセナは、そのままハルバードを蹴り上げ自身の胸辺りまで浮かび上がったそれを掴み取ると、そのまま傀儡兵へ振り下ろし、止めを刺した。

 

「……なかなかいい物ひろったであります」

 

傀儡兵から奪ったハルバードをしっかりと握ると、セナはクロノの元へと向かう。

その際にも、セナは手にしたハルバードで傀儡兵を次々と破壊していく。

そしてクロノの元へとたどり着くと、彼の背後から近寄ってた傀儡兵をハルバードで切り払った。

 

「後ろがお留守であります」

「そういう貴方も……ね!」

 

今度はお返しとばかりに、クロノがセナの顔の脇へ杖を突き出し、射撃魔法で傀儡兵を打ち落とす。

二人の視線がぶつかり合う。

そして……笑いあった。

 

「やるでありますな」

「この程度なら」

 

「「……すっご」」

 

目の前の光景に、なのはもアルフも驚くしかなかった。




と言うわけで庭園突入&セナさんが武器ゲット。
ようやくセナさんに武器もたせれた……正直、この場面でしか武器手に入りませんよね。

悩んだ挙句、セナさんに持たせたのはハルバード。
おっきい剣でも良かったんですが、こう、リーゼリットのインパクトは大きかったですねと言うことで。

前二話で出番それほどなかったんで、これからセナさんがはっちゃける……はず。
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