黒犬と白猫は長い間、対立している。この対立が終わる事は来ないのだろうか。僕は決して平和主義な人間とかではいけど・・・自分に被害が及ぶのは勘弁したい。それに白猫を嫌いになれない。
昔の僕が今の僕を見たら確実に幻滅するだろう。あの頃の僕だったら白猫を恨み嫌っていただろうから。だけどこの二年という月日をここで暮らしてきたからこそ考えが変わってしまった。この影響を家族や黒犬の奴らが聞いたら僕の事を軽蔑するに決まっている。黒犬は白猫を嫌わなければならない。恨まなければならないのに僕にはそれが出来なくなってしまったのだから。
藍瑠くんや王姉妹はこんな僕でも受け入れてくれるけど・・・あれは稀な例だと分かっている。だから僕も白猫を嫌わなければならない事も分かっているんだ。心では・・・・・
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僕は決して監督生ではなければ雑用係でもない。なのに何故、僕はこの人たちと共にいるんだろうか。ここまで言えばこの人たちの事を誰を指しているのか分かっているだろうけど・・・それは黒犬の監督生たちだ。
「そろそろ僕を解放してくれないかな・・・」
僕が何でこんな状況に陥ってしまったのだろうか・・・思い当たる事が何一つないんだけどな。
「ダメだ。お前にはこの紙にサインをして貰う」
僕が座っている椅子の前にあるテーブルに藍瑠くんは何かがびっしり書かれた紙を置いた。
「この紙は何?」
「これは契約書だ」
「契約書?」
僕はこの人たちと何かを契約をする気も無ければ何をする気もない。それに藍瑠くんの方を見ると何故かとても怖い目をしているし反対に王姉妹の方を見てみると姉の方は満面の笑み、妹は姉の後ろに隠れているから顔の確認は取れない。
「ああ、お前は自由すぎる。監督生に選ばれてはいないが俺はお前の実力を高く買っている。監督生になっても決しておかしくないほどの実力を保持している男」
「それは嬉しいけど・・・そこまで僕は凄い人じゃないよ。いくら何でも買いかぶりすぎだよ」
藍瑠くんともそれなりに長い付き合いになったけど・・元々僕と藍瑠は仲が良かったわけじゃない。入学したての頃は同じ黒犬であったが争いは絶えなかった。お互いにお互いが気に入らなかったから。そんな僕らも時間が経過してお互いに一歩ずつだが確実に歩みを進めていき今の関係に至る。そこまでには色々とあったしこいつとは絶対に仲良くなれないと思った事も一度や二度じゃないけど最終的にはどうにかなった。
「いや、お前と争いを数えきれないほどにしてきた俺だからこそお前の実力は分かっている。他の誰がお前の実力は劣っていると言っても俺はそれを否定する事が出来る。それにお前の実力を買っている俺だけじゃない。そこにいる王姉妹も分かっている事だろう」
「そうだね。私たちも君には助けられた事もあるからね。君の強さは知っているし君がどんなに優しい人間であるかも知っている。そして人の頼み事を何でも引き受けてしまうほどに優しすぎるということも・・・・・」
王姉妹とも知り合ってからなら藍瑠くんと同じ位の年月が経った。藍瑠くんほどではないけど王姉妹とも関わりがあったりする。最初がいつだったか覚えてはいないけどこっちも色々とあって仲良くなった。
「君らの評価は高すぎるよ。僕はそんな立派な人間ではないよ。それでこの契約書は何なの?」
「これはお前を監督生にするための契約書だ。規則上は絶対に三人しか監督生になれない。これは決まっていることだ。だがそれを変える事は出来ない事ではない」
「普通は出来ないんじゃないないの?だってこの決まりごとに関しては黒犬、白猫両者の話し合いの末に決まった事なんだから」
「確かに変える事は簡単な事ではないよ。でも、それはイコール出来ないという事ではないね」
「出来ないという事ではない?」
何か規則を変える事なんて出来るのかな。それに歴代を見たとしてもそんな事をやり遂げた奴はいないはずだけど。
「ああ、これまでやり遂げた者が居なかったのは出来なかったからだ。いや、出来なかったというより相手側が納得する事が無かったからだ。黒犬が要望を出せば白猫がそれを拒否し、白猫が要望を出せば黒犬がそれを拒否する。その繰り返しをしてきたからこそ長い間、規則が変わる事はなかった。だが白猫を納得させる事が出来ればそれは変わる」
「まさか・・・・・」
「そうだよ。そのまさかが起こったんだよ。白猫が承諾をしたんだよ。これに関しては私も予想外だったよ」
「今まで何度となくあいつらとは対立してきたから今回もそう簡単にいかないと予想はしていたんだが今回の事に関しては二つ返事で了承した」
白猫の監督生たちも一体なにを考えているのだろうか。こんな事を了承してしまう何て・・僕としては拒否してくれる事を望んでいたんだけどな。
「まあ、この際なんで白猫の監督生どもが二つ返事で了承してくれた事に関しては何も言うまい。後はお前がこの書類にサインをしてくれればお前は監督生として迎え入れる事が出来る」
目が本気だ・・・・僕が今まで見てきた藍瑠くんの中でTOPに入るぐらいに目が本気だ。だけどここでサインなんかしてしまったら確実に僕はこの人たちにこき使われるし制限される。だから絶対にサインはしたくないんだけどここで断れば僕は一体どうなってしまうのだろうか。藍瑠くんが簡単に「そうか」と言って返してくれるはずがない。だって目が確実にヤバい。
そして最終的に・・・・・僕はその目に押される感じでサインをしてしまった。