「あれ?」
「あら?」
「は?」
少し強い風が吹いているなか、3人がそれぞれ一言発して沈黙が流れた。
その中で真っ先に口に出したのが
「な、何で紫さんたちがここに」
ミイだった。
ちょっと待ってくれ一体なんでこの2人がいるんだ?まるで意味がわからない。
と内心叫んでいたミイだったが、どうやらそれは目の前の二人組も同じようで。
「それはこっちのセリフよ。あんたなんで戻ってきたりしてるのよ。」
「あ、あれ?じゃあもしかして戻っていたり」
と巫女は口を少しとんがらせながら腕を組んでいる。
そんなバカな事が。まさか失敗したというのか!?
どうやらこの状況下での原因は当の本人でありミイだったようで、そんな本人も状況が飲み込めていない。
そんなミイを見ながら立て続けに
「してるわけないでしょ、あんたもしかしてここに残りたいの?さっきの帰りたい発言は嘘だったのかしら?」
と少し笑みを浮かべながらそのまま近づいてくる博麗の巫女。
ひっ!怖いオーラを出しながら近づかないで!
ミイは少しづつ近づいてくる巫女に対して恐れを抱きながら腕を前に出し
「い、いや嘘じゃないです!確か隙間の奥に進むにつれて、そこからだんだん光が見えてきたと思って中に入ったら」
「ここだったと」
先ほどありのまま起こったことを話す。
いや確かに間違いないはず。あの時お得意の光が流れてきて、それで気がついたらここにいた。
ミイは頭に手を当てながら必死こいて現状説明をし、目の前の巫女に対して弁明をし続けている。
巫女はその場で「はぁ」とため息をつき、そのまま紫の方に体を動かしながら少しばかり声を張って
「ちょっと紫」
それを聞いた紫は「分かってるわ」とゆっくりと歩きながらミイの方に向かっていく。
あたふたしているミイと少し気が立っている巫女とは違い紫は以前変わらなく冷静沈着の紫はそんな巫女を見ながらコクンと頷き
「えぇ、私が直々についていくしかないわね。もしかしたら能力の不具合が起きたのかもしれない、まぁ100%ないとは思うけど」
「全く、何て展開なのよ、騒がしいったらありゃしないわ」
巫女はめんどいと言わんばかりの顔を出しながら「とりあえず早くしなさいよ?」と紫を急かすかのように言う。紫はその言葉を聞き巫女の方に目を向けながらそれにまた静かに頷き、右手を上げる。
しかしそんな横で私は暗い顔を出しながらふとこぼしてしまった。
「こ…これで本当に帰れるんですかね。こんなこと言うのもなんですけど少し不安になってきてしまって」
と。
そんなミイの発言に紫はピクッと反応し、こちらを見てくる。
「あ!ご、ごめんなさい」
しまった、心の不安が言葉にでてしまった。
ミイの発言はただ自身が不安になって出てきてしまった、という理由だけではない。この発言が出るということはこの紫という人物の能力を信じきれていないという証拠でもあるだろう。
しかしこれだけならまだ良い、問題はその後。
この発言を、しかも隣で話されたら私も含め恐らく大半の人が少しばかりムカつきを覚えるだろう。
その証拠に先ほどまでの紫の目が鋭く、こちらを見据えている。
つまる所失言である。
(うっ…)
ミイは胸に棘を当てられてるかのような気分を味わいながら紫の目に視線を合わせる。
すると紫は一言
「不安?」
「………!」
とミイに静かに放った。
その顔は先ほどまでの鋭い目つきは少しばかり残ってはいる、だが寂しそうなそんな気配を感じさせる一面だった。
ミイはその一言に少し手を握りながらまるで子供のように
「はい」
と一言だけ返事をした。
内心半分不安の半分恐怖で埋められたミイの返答に紫は再び正面を向きながら少しだけ声を強くして
「大丈夫よ。今度こそ帰らせてあげる」
そう返事をした。
「……!」
私はそんな言葉に「ありがとう」と声に出したかったが、そんな言葉が出ないほどの異様な空気が私の周りにただよっていた。
ふと紫は先ほどまで動かしていた腕を止める
「っと、さてとこれで良いはずよ、私もついていくから。今度こそお別れね」
……あぁ、そっか
私はなんで紫が手を止めたのかわかった。もう創り終えたんだと、瞬時に理解した。
今自分にしてくれたことをに対して深く感謝をしたい所だが、どうやら紫の方はそこまで気にしてる様子はないようで
「早く入るわよ。あまり長くはかけたくないからね」
と早く入れとミイを急かす
これは恐らく外の扉と繋げているため、私以外の人が入ってきてしまう可能性があるから急かしているのだ。
「は、はい!」
「そ、それじゃあ失礼いたし——」
紫が後ろに立ち、ミイはその隙間の空間に足を踏み入れる。
はずだった。
バチッ!
「うわっ!」
————なに!?一体何が起きて
ミイ自身は何が起きたのか理解ができていなかった。
ミイが少なからず理解していたのは突然雷のような音が流れ、私の前で弾けた。そして弾けた拍子に足を滑らせ尻餅をついた事だけである。
————も、もう一度
と恐る恐る手を入れようとすると。
「うわっ」
また先ほどと同じことが起こったのだ。
「なっ!?」
この光景を見ていた博麗の巫女は何が起きたのかを瞬時に理解することは難しかったが、ある一点だけは理解できていた。
隙間に『ミイが拒絶されていたのだ』
そしてミイが尻餅をついた体をゆっくりと上げる。
そしてその横を紫が通過し、静かに手を隙間の中へ伸ばす。
ミイはこの時”私と同じことが起きる”と思っていたが、その予想は無常にも外れ
「………」
紫の手はまるでお風呂の中に溜まっている水に手を入れるかのようにするりと中に入って行った。
「な、なんでどうして」
どうして紫さんは手を入れることができたの!?と焦りのあまりそんな疑問しか頭の中に浮かばなかった。
そんなミイの後ろから博麗の巫女は慌てながら紫に駆け寄る。
「ちょっと紫!これはどうゆう事なの」
と少し焦りながら目の前にいる紫に聞く。
そんな声を聞きながら紫は隙間の中に入れていた手をゆっくりと取り出し終える。
そしてそのまま隙間の方を見ながら先程の巫女に驚きの返答をする。
そう紫はただ一言
「……無理ね」
「は?今なんて言って」
「だから、私にはどうしようもできないって言ったのよ」
紫は一言「私には無理」と返したのだ。
これには博麗の巫女の顔も少し険しくなっており、そんな様子を見ながら紫は隙間をパタンと閉じる。
しかしこの中で1番焦り、いや動揺していたのが、巫女でもなく、ましてや境界を操る妖怪でもない。
「そ、そんな。」
ミイだった。
ミイは紫が隙間を閉じた瞬間、絶望を感じていた。
それは『帰らせてもらえない』と言うことではなく、『帰せない』からというか事だったから。
ミイはただ不安と絶望だけがMAXになっただけである。
「ちょっといい?」
紫はミイの方を向きながらそう言いながらミイの方に手を伸ばす。
ミイはそれに「え」と一言しか反応できず、紫の手に、頬を触ることを許してしまった。
ひっ!
とすぐさま防御の体制を取ろうとするミイだったが、それを取ろうとしたときにはすでに紫は手を離しており、ミイは(何かされたのか?)とさらに不安が募っていく。
そんなミイを横目に見ながら巫女は一つの疑問を紫に投げかける。
「今その子には何が起きているの?」
『ミイに何が起きているのか』と。今のところ分かっていることは
『ミイが何者かに来させられたこと』
だけであり、これは先程紫と共に把握している。
ならなぜこの質問をしたのか?それは先程の紫の行動にある。
紫は先程ミイの頬触り、その後すぐに離した。
だがその離した後、紫の顔は曇っていたのだ。これこそが巫女が質問を投げるきっかけとなったのである。
「…あくまで憶測に過ぎないけど、恐らく彼女に何かしらの結界が貼られているわ」
「私に…結界?」
紫の口から驚きの一言が出てきた。なんとミイの体に『結界』が貼られていると言うのだ。
なぜそれが分かったのか?それは恐らく先程の行動にある。私はビビっていたが、私に突然手を伸ばし触れてきたのは何かあるのかを調べるためだったのだ。
しかしそんな言葉が飛び交っている状況下でただ動揺するしかなかった。
なんせ結界が自分に貼られているなんて知らなかったからだ。
「ふーん結界か…だから紫の隙間を通れないと」
「でもおかしいと思わないかしら?」
と納得する巫女に紫は一つ疑問点を出す。
巫女はそのまま腕を組みながら
「おかしな点ねぇ」
と少し黙る。
そこに紫はもう一つヒントを与える
「だってここから出れないのよ?」
その言葉を聞いた巫女はピクンと反応する。しかしそれはミイも同じであった。2人とも紫の言葉を聞きすぐさま理解した。
「まさか」
「ここに来た時に貼られた」
ミイはここにきた途端にすぐさま結界を張られたのだ。しかもそれが行き来できない程の。
紫は2人の回答にご満悦になりながら
「つまりそうゆうことね。恐らくここから出させないためにあえて取り付けたのでしょうね。しかもこの結界、並なんてもんじゃないわ」
紫はミイの方を向きながら少しばかり苦悩の表情をする。
その顔を見た巫女は「まあでも紫ならすぐ解けるでしょ?」と何をそんなに苦悩してるんだ?
と言わんばかりにこちらを見る巫女に対して紫は少し目を瞑りながら
「この結界を創った本人は、間違いなく『私』と同じ、いやそれ以上よ」
私には分からなかった。分からなかったが、その重大性が巫女の行動を見て瞬時に理解した。
ミイは巫女の方に目を向けると、その言葉を聞いた巫女は今までとは違う同様の仕方をしていたのだ。
そして苦笑いをしながら
「な、冗談でしょ!?それはあくまで結界の腕前ってことよね?」
その言葉には先程の動揺が隠しきれてないというほど声が強かった。
しかし無常にも紫はそのまま喋り
「いや、それすらも怪しいわ。結界は己の強さで決まってくるものよ。」
まるで現実を突きつけるかのように、鋭い目を巫女の方に向けた。
その眼差しを巫女は十分に受けながら少しばかり黙り、口を動かす。
「……紫でも解けないの?」
この言葉は相手の強さを認めている証拠。つまり自分より強いということである。
巫女が現状見たことある中で1番結界を扱える人物、それが紫なのである。
そんな紫も今回ばかりはお手上げ。
「えぇ、最高でも1000年頑張るしかないわね」
1000年。紫がどれだけ頑張っても、1000年。
それを聞いたミイは少し声を震えながら
「そ、それじゃあ私は、もう2度と元の世界に帰れないってことですか……?」
1000年は紫さんにとっては短いのかもしれない、けど私にとっては……2度と帰れないのと同じだ。
そんなミイの言葉に紫はうんともすんとも言わなかった。
そして隣にいる巫女も黙りながら何も言わなかった。
「……」
……!
———そんな…!
ミイは顔を俯き、だがその表情は隠された。だがその顔は怒りに満ちている。その証拠にミイの手は力強い握り拳でき、そして低く力強い声で
「いきなり来させられて、ふざけないでよ…」
もう一度言う。私はこの世界に来たかったわけじゃなかった。確かにあっちでは将来不安なことばかりあったかもしれない。
だが、友人や、家族がいた。みんな優しく、とてもより沿ってくれていた。
だからこそ帰りたかった。
なのに…!なのになのに!!
ミイは俯きながら怒っていると、ふとこちらにくる影が見えてきて。
「顔をあげなさい」
とミイは正面から声をかけられた。
ミイはそのまま黙って俯いていた顔をあげると、 声をかけた人物、巫女が声をかけてきていたのだ。
巫女はやっとこっちを見てくれたか、と少し声をためて
「たしかに現状の貴方は最悪の状態よ」
とミイにありのまま突きつける。
……っ!
ミイはその言葉を突きつけた巫女に対して反感を抱く。当初助けてくれたことも忘れたその姿は少しばかり怒りに満ちており。
「なら!」
「えい」
「いっつ!」
巫女は絶望と不安が爆発したミイにデコピンを1発
与えた。そのデコピン先程のミイを宥めさせる程度には効果がてきめんであったが、思った以上に痛く、重いデコピンにミイは額をさすっている。
それを見た巫女は続け様に
「じゃあ怒るのが正解なのかしら?さっきの話をよく聞いてなかったの?」
ミイは額をさするのをやめ、その言葉に納得する。そりゃそうだ、怒るだけなら解決はしない。しかしミイの気がかりだったのは後者の方。
さっきの、話?
「……?」
と頭にハテナが浮いている巫女に「ったく」と一言放った。
とその巫女の後ろから歩いてきた紫は「失礼」と一言かけ、ミイの方を向く。
「もう一度言うわね。貴方に結界をかけた術者がいるって。要は探せば良いのよ」
「その本人をね」
紫は薄く笑いながらミイに先程までの話を理解させる。
ミイはその瞬間希望が見えてきていた。そうつまるところ、そいつに解除して貰えれば元の世界に帰れるのだ。
ミイは先程までの表情と打って違い、元に戻っていた。
「それじゃあ、そいつを探せば」
「その結界は解かれて、恐らく元の世界に帰れるわ」
「じゃあそいつの」
と本人は気づいてはいなかったが、その希望が見えてきたあまり急かすように話す。
しかしそれに対して紫はミイの言葉に被せながら
「でも、楽ではないわ。この術者は恐らく私たちの敵対関係にある。もしかしたら2度と帰れないし元の世界に帰れない可能性もあるでしょう」
と現実を突きつける。
そう今ミイが行おうとしているのはそのぐらい難しいレベルなのだ。
こちら側にとって敵対関係にある相手が結界をかけ、それを解除してと頼まれても解除するのだろうか?良いやしない。
そんなことするのならば最初からするわけがなかろうそんな話。
「貴方もこの先その戦いで命を落とすかもしれない。だから貴方に選択肢を与えるわ」
そう言うと紫はミイの方に指を刺しながら
「ここでうじうじしながら生きるか、術者を見つけるか」
そう問いかけた。
究極の選択肢。
『このまま帰ることを諦め、この世界で暮らすか』
『帰ることを諦めず、その自身にかけられている結界を取り外すか』
つまるところ簡単に言えば
「逃げるか、戦うか、ですか」
「まぁ私としてはここで生きていて欲しいのだけれどね、そっちの方が楽だから」
と紫は笑いながら逃げの選択肢を勧める。
楽というのは関わらずに済むからということであろう。
そしてその笑い顔から表情を変え鋭い目つきになりながら
「さっ、お好きな方を選びなさいな」
と再びミイに選択肢を与える。
そんな紫を見た巫女は
(バカね、本当は選択肢にもなってないくせに、何のためにやってるんだか。この子の選択肢は一つよ)
と口に出さずとも紫の考えが分かっていた。
そんな巫女はふとミイの方に視線が寄る。ミイは腕を前にしてこう考えていた。
このまま生きるか、見つけるか。
少しの沈黙が流れる。
ミイは少しばかり目を瞑り考えたあと一息呼吸を入れ、再び目を開ける。
「そ、そんなの決まってるじゃないですか」
ミイが下した判断は、その言葉を聞く前に紫や巫女達にも分かっていた。
そしてミイは勢いよく声を出す。
「私は後者です!元の世界に帰るためにも!」
巫女達はその言葉を聞き納得していた。
巫女は紫に
「ほらね」
と紫がこう思っていたとのは分かっていたと。そう答えるかのように。
「えぇ、そうね。わかってはいたわ」
2人が確信したのはミイの手にあった。
それはミイの手が握り拳になっていたから。そうただそれだけの理由。それが確信に持っていった理由だった。
それを聞いた巫女は紫の方を向き『やっぱりね』とそう呟きながら言葉を続ける。
「ここで生きるためにも『私たちの名前』を知っておかなくちゃだめね。少し遅めだけど、自己紹介タイムと行きましょうか」
———んあ!そっか!まだだったのか!
と少し驚愕するミイ。そうまだ重要なイベントである自己紹介がミイのせいで事故ショータイムになっていたのだ。
巫女はそんなミイに『どうしたの?』と声をかける。
ミイはそれに「あ!いやなんでもないです!」と返答した。それに対して巫女は「まぁいっか」と返し、横腹に手を当て自分の名前を話す。
「私の名前は『博麗霊夢』。見ての通りこの神社の巫女よ。呼び名は好きな感じでいいわ」
そう話すと霊夢は紫に「ほら」と視線を向ける。紫はそれに対して『分かった』と応じると
「先ほどから名前が出てきたから知ってると思うけど改めてするわね。私は『八雲紫』。気兼ねなく、紫さん。って呼んで構わないわ」
と自己紹介が終わったあと、紫は霊夢の方を向き「こんな感じでいいの?」と聞く。霊夢はそれに対して「それで良いのよ」と返答した。
そしてラスト。本日の主役であるミイに霊夢はその自己紹介のバトンを渡す。
「それじゃあ貴方の番ね?」
笑いながらそう聞く霊夢。
「私は」
あぁ、自己紹介か。なんて久しぶりなんだろう。最近は外にも出てなかったし、学校でもそんな機会がなかったからなぁ
そうだな、なんて言おう。
うん決めた!
「鈴原ミイと申します!特に何も力を持っていない普通の女子高校生ですが、よろしくお願いします」
久方ぶりの自己紹介にミイは笑顔になり少しご満悦になっていた。
そんな顔を見た霊夢は笑い返し
「鈴原ミイ、良い名前じゃない。そうねぇ」
「これから苦労が沢山降るとは思うけど。これから宜しくね、『ミイ』」
「えぇ、私からも宜しくね『ミイ』」
「はい!これから宜しくお願いします『霊夢』さん『紫』さん!」
こうして波瀾万丈な2時間が起こった3人の自己紹介はなんなく終えた。
そして紫は隣の霊夢の顔を見ながら
「さてと、これで目標が決まったわね」
と投げかける。
この目標というのは霊夢にも既に分かっており、その投げかけに対して
「この子を元の世界に帰す、でしょ?」
と返答した。
それを聞いた紫は薄く笑う。
そしてそのまま言葉を続け、
「ようこそ。『幻想郷』へ。」
そう言ったのだった。
こうして涼しい風が吹く中。ミイの幻想生活が始まったのだ。
遅くなって申し訳ないです。
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