忠誠心激高魏延の北斗南斗転生   作:tamino

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正史演技妄想全部ごちゃまぜなので、この話ではこんな感じなのふーんくらいで読んでください。(逃げ道確保)


孤狼 魏延文長

「何度言ったら分かるんだ丞相!! このままだとウチはジリ貧だぞ!!

安全策なんて考え捨てちまえ! これまで何度それで食いモンが足らなくなって撤退したと思ってるんだ!!」

 

 

 俺は激高に任せ、勢いよく机をブッ叩く。

 余りに勢いが良すぎて机にヒビが入っちまったが、そんなことはどうでもいい。ビビッて縮こまってる胆力の無ェ奴らもどうでもいい。

 

 

「魏延将軍……貴方の言は尤もですが、その考えはあまりに博打要素が強すぎる」

 

「ンな事は百も承知だ!! 魏国は安全に戦って倒せるほどみみっちぃ国だってのか!? 違ェだろ!!

国力で敵わねぇ俺たちがアイツらをブチ破るのなんて、正攻法じゃできるわけねぇだろうが!!

勝率がほんの少ししかなかろうが、それに命賭けて突き進むしかねぇだろうがァ!!」

 

「……魏延将軍、少し落ち着きなさい」

 

「これが落ち着いていられるか!!

頭でっかちの登山バカがやらかした辺りじゃ、まだこっちにも余裕があった!!

だが今はどうだ!? せっせと田畑を耕して、それで兵站が整うのはいつになる!?

こっちが長期戦するつもりだと魏国が気ィ抜いてるうちに、俺たち精鋭が涼州に進軍して後顧の憂いを絶ち、その後東征する!! 丞相率いる本隊がその間に陳倉経由で長安に進軍する!!

今回の北伐で決めきるには、それ以外に案なんかねぇだろうが!!」

 

「その案を採用するわけにはいきません。成功する確率が低く、失敗すれば蜀漢が滅亡するほどの打撃を受けるのは明白。

となれば、大王よりこの国を託された我らが、その愚を犯すことなどできないのです」

 

「……クソがっ!! そんなんじゃいつまで経っても大王の志を果たすなんて出来ねぇ……やる気あんのか!! 丞相、アンタは臆病モンだァ!!」

 

 

 怒りがこの身を焦がす。頭の血管がブチ切れそうだ。

 軍議の途中で退出することになるが、知ったことじゃねぇ。ビクビクしてるだけのその他大勢もどうでもいい。俺は今殴る相手がいねぇ怒りで頭がいっぱいなんだ。

 

 ……確かに丞相の言うことはわかる。分からないはずがねぇ。だが、そんな弱腰で突き崩せる相手じゃないんだよ。

 

 返しても返しきれねぇ大恩ある大王……劉備玄徳殿が、

 その義兄弟である武の化身、関羽雲長殿が、

 同じく義兄弟で豪放磊落を絵にかいたような一騎当千、張飛益徳殿が、

 義の化身とも言わんばかりの忠誠心、折れない猛将、趙雲子龍殿が、

 

 あんなにすげぇ人たちが生涯かけて戦い続けて、それでも届かなかった相手なんだ。安全策なんかで突き崩せる相手かよ。バカな俺だってそのくらいわかる。

 

 あんだけ頭のいい丞相、諸葛孔明殿なら、ンな事は百も承知だろう。

 それでもあんな目的と手順が入れ替わったような阿呆な方針しか採用出来ねぇのは、『蜀漢を滅ぼすことなく』『今ある手札で』『北伐を成功させる』とかいう無理しかねぇ条件背負って戦い続けてるからだ。

 

 ああ、腹が立つ。本当に腹が立つ。

 丞相の寿命は尽きようとしている。日に日に弱っていく丞相を見れば、時間が無いことくらい俺にだってわかる。

 

 丞相が死んじまったらどうなる。俺程度の気迫に怯むような、保身と現状維持しか考えていない軟弱者共が、北伐なんて無理難題をやり遂げられるはずがねぇ。

 俺が無理やりにハッパかけたって無駄だろう。だからと言ってやらん選択肢はないが。

 

 大王の志を本気で解ってて、それを本気で実現させようと思ってるのは、俺と丞相だけになっちまった……!!

 

 

 あぁ、腹が立つ! 何もかもにだ!!

 

 大儀なく皇帝を名乗るクソ野郎にも! それを持ち上げる魏国のゴミ共にも!! 丞相に集るハエのような小物どもにも!! 俺ごときしか大王の意思を背負える人間が残っていないこの国にも!!!

 

 

 

 ……今日の酒は酔えそうにない

 

 

 

・・・

 

 

 

 丞相が死んだ。

 

 

 驚きはなかった。当然だ。あんなボロボロのカラダで最前線で指揮してたんだからな。

 覚悟はしていたが喪失感は思った以上だった。俺が知る中で大王のことを理解できてたのはアイツだけだったからな。

 残るは俺だけってワケだ。本当にクソみてぇな話だ。全部投げ出しちまいたくなるくらい、クソみてぇな話だ。

 

 ……だが、やるしない。今ここで撤退すれば、二度と北伐は成功しねぇ。そもそも腑抜けの腰巾着共が幅を利かせりゃ、二度と北伐は行われねぇかもしれねぇ。

 だから俺は丞相の遺言を全部無視して、楊儀のゴミ野郎から実力行使で全権を奪おうとした。

 

 丞相の遺言で『俺のことは無視しろ』なんてのが無けりゃ、本来は軍権を預かる俺が全軍の指揮を握るのは当然だ。なにも問題はねぇ。

 あんな俺のことをナメきった遺言を残されたことに思うところがないワケが無かったが、丞相の性格なら理解できることでもあった。アイツは最期までアイツらしかった。気が短い俺だが、不思議と受け入れることができた。

 

 だが……楊儀のクソゴミ野郎がやったことは別だ!! 腸が煮えくり返る! 八つ裂きにしてやってもこの怒りは晴れることはねぇ!!

 あのゴミは、事もあろうに俺を孤立させるための流言を流していやがった。それも丞相が生きているうちに。

 大王のことどころか、丞相の想いすら理解してねぇ。完全に自分のことしか考えてねぇ。畜生にも劣るゴミ野郎だ。生きていていい存在じゃねぇ!

 

 

 ……絶対にブッ殺してやる!!!!

 

 

 

・・・

 

 

 

 ……怒りに任せて行動し、気がついたら俺は馬岱の野郎に斬られていた。

 

 あのゴミクズ野郎を唐竹割りにしてやろうと追撃をかけただが、王平の野郎に防がれているうちに、兵どもが流言のせいで離散しちまった。あの野郎は地味だがいい仕事をしやがる。そこは俺も認めている。あのゴミ野郎に従ったのは許す気はねぇが。

 

 そして古巣の漢中に少数で退却したんだが、このザマだ。

 俺に付き従った精鋭はいい戦いをしたが、数の差は埋めきれなかった。自軍は悉く無力化され、俺は全身に矢を受けながら馬岱と切り結び、結果敗北した。

 

 あァ……本当にクソみてぇな最期だ。

 大王にひとつも受けた恩を返せなかった。丞相に長安の景色を見せてやれなかった。自分の武を雲長殿、益徳殿、子龍殿の足元にすら届かせられなかった。

 

 流れていく血は勢いを増すばかり。意識が徐々に薄れていく。

 ……これが死ぬってことか。何百人も斬ってきたのに、死ぬのは初めてだな……

 

 

「……申し訳ありません、魏延殿。こうすることでしか、今の蜀漢をまとめられないのです……」

 

「……いい……もう、俺には……関係……ねぇ……」

 

「貴方の遺体は……謀反者として扱われます。決して良い扱いは受けないでしょう。

……ですが、将軍のお心を知る者は私以外にも居ます。将軍の妻子の命は必ずお守りします」

 

「いい……っつったろ……好きに、しろ……」

 

「将軍の後を継ぎ、必ず先帝の大願を果たします。……どうか安らかに」

 

「……」

 

 

 

 『お前たちじゃ無理だ。俺なんぞよりも弱いお前たちじゃ』

 

 

 その言葉は冷たくなりゆくカラダから発せられることはなく、肉体から離れゆく意識はその事実さえ認識できなかった。

 

 

 

 ーーー建興12年。西暦にして234年。魏延文長はその苛烈な生を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はずだった。

 

 

 

「……あぁン? どこだ此処は……?」

 

 

 目を覚ますとそこは見事な庭園だった。

 桃の実がたわわに木々に実り、梅の花が一面に咲き乱れる。……無学な俺だがかなり出来がいい庭だってくらいはわかる。

 

 ていうか何が起こった? 俺は楊儀のゴミ野郎にハメられて、馬岱に斬られて死んだはずじゃ……?

 

 

 なんだかよく分かんねぇが、出来ることをやるしかねぇ。先ずは状況確認、この庭園をを歩き回ってみるか……

 

 

 

・・・

 

 

 

 暫く歩き回っていると、なかなか立派な造りの亭(中国の東屋)が目に入ってきた。

 よく見ると中心には囲碁らしき盤遊びに興じる老人と若者の姿が見える。

 

 この庭園の主人かなんかか……? とりあえずここが何処か聞いてみるか……

 

 

「……おい。取り込み中済まんな、兄ちゃんと爺さん。ここがどこか教えてくれねぇか?」

 

「おや、やっと到着したのですね」

 

「ほっほっほ。最後のひとりじゃ。お主、ついておるのう」

 

「あァン……? 質問に答えろよ」

 

「ここは死後の世界……と現世の狭間にある庭園です」

 

「ハァ……?」

 

「要はお主は魂だけの状態ということじゃ。死んだことは覚えておろう?」

 

「あー……あー? タマシイだけ……?

確かに俺は殺された覚えがあるが、現にこうして歩いてるじゃねぇか。理屈はまるでわからんが、生きてるってことじゃねぇのか?」

 

「足元をごらんなさい」

 

「足元……うおっ!?」

 

 

 なんだァこりゃ……足が、俺の足が……!!

 

 

「膝から下が無いでしょう? それは貴方が今、魂の状態にあるからです」

 

「ど、どういうことなんだよこいつは……!!」

 

「ほっほ。儂、北斗と、こやつ南斗でちょっとした催しをするんじゃ。お主はその配役のひとりになってもらうぞ」

 

「な、何言ってやがる……!?」

 

「貴方達が生きた時代は後世で『三国志時代』と呼ばれています。そこで活躍した綺羅星たちを一堂に会させ、もう一度覇を競い合ってもらおうというのが、今回の催しの内容です」

 

「他の者たちはすでに転生が終わっておる。さきほども言ったがお主で最後じゃ」

 

「ワケわかんねぇ……」

 

 

 死んだと思ったら魂だけの状態で、南斗とかいう優男と北斗とかいうジジイの遊びに付き合わされるとか……ぜんっぜんワケが解らねぇ。

 

 だが、この優男は『後世で三国志と呼ばれている』とかなんとか言ってたな。

 ……ってことはだ、コイツらはあの後のこと、蜀漢がどうなったかについても知ってるってことか……?

 

 

「ほっほ。蜀なら滅んだよ。魏の鄧艾という武将に攻め込まれ、降伏した」

 

「……オイ、俺の心が読めるのかよ」

 

「神様じゃからな」

 

「クソッタレが……この状況だし、その戯言も信じるしかねぇか……

……そうか、やはり蜀漢は滅んだ、か」

 

「貴方の悲願、やり直したいですか?」

 

「……いや、いい。いくら神様っつってもホントにやり直しなんざできるとも思えねぇし、俺はやれることはやった。

悔いは大いにあるが、もう知ったこっちゃねぇ。終わったことだ」

 

「意外じゃのう。劉備玄徳に執心のお主なら『なんとしてでもやり直したい』くらい言うとでも思ったが」

 

「勝手に人の心境を予想してんじゃねぇよ」

 

「さっきも言ったが、今からお主を生前とはほんの少しだけ違う中華に転生させる。そこには劉備玄徳もその義兄弟の関羽雲長、張飛益徳、そして忠臣の趙雲子龍に諸葛孔明もおるぞ? もう転生は済ませておるからな。

また蜀軍の一員となって、劉備玄徳の下で活躍したいとは思わんのか?」

 

「クソみてぇな話だな。神様だかなんだか知らねぇが、大王達を蘇らせるとか勝手なことしやがって……

いいか、なら猶更だ。あの人たちがもう一度立ち上がるってんなら、俺みたいな腕っぷしだけの奴がでしゃばる余裕なんてねぇよ。

それに俺が尊敬してるのは、俺が死ぬ前に一緒だった大王だけだ。生まれ変わった大王はそれはそれだ」

 

「なんとなんと。不安定な魂の状態でそこまでハッキリと意思表明できるとは。お主の忠誠心を甘く見ていたようじゃ」

 

「これはなかなか……北斗、彼なら新しくも懐かしい中華で、輝いてくれるのではないですか?」

 

「最後の最後にうまいことはまったもんじゃ」

 

「なんだテメェら、ふたりして納得し合ってよ」

 

 

 うんうんとうなづき合う……北斗と南斗と言ったか。とにかく自称神とやらをどこか遠い視点から眺めている。

 死ぬ前の俺だったら、こんな人をくったような態度されたら斬り捨てるくらいしてたはずだが、どうも今はそんな気が起こらねぇ。

 

 これも魂だけになった影響か……?

 つっても魂の状態とかいうのも、このふたりの戯言かもしれんしな。本当のところは分からんが……

 

 

「よし。お主には新たな世界で頑張ってもらううえで役に立つ能力をひとつ授けよう」

 

「……ハァ?」

 

「失礼しますよ。……はい」

 

「な、なんだテメェ人の顔に指を向け……ウオォ!?」

 

 

 な、なんだこりゃぁ……!? 頭の中に、中華の……これは、上からの視点か!?

 蜀のあった益州があんなに小さく……あの遥かどこまでも流れる長江が、あんな線のような……!?

 

 

「貴方はこれで『千里眼』の能力を得ました。

中華の地図だけでなく、意識すれば都市を治める武将たちの情報、都市の発展度、進軍中の軍の詳細な情報など、知りたいことはなんでも知ることができます。

 

 

「すげぇ! すげぇ!! なんだァこりゃあ!!??」

 

「すごいじゃろ? 儂ら神じゃから」

 

「こんな能力があれば、戦争に負けるはずがねぇ……!!」

 

「その能力をどう活かすかは貴方に任せます。では、良い旅を」

 

「ほっほう。お主の活躍、遥か高いところから見物させてもらうからの」

 

「こりゃすげぇ!! ……大王も本当に!! 雲長殿、益徳殿に、子龍殿、丞相も本当に……」

 

 

「「 それでは、行ってきなさい 」」

 

 

「ん……? ウオオオォォォ!?」

 

 

 カ、カラダがなにかに引っ張られ……空に落ちる!?

 き、気持ち悪……ウオオオアアアアア!?

 

 

 

 

 

「……さて、これで全員ですね。果たして新たな生を受けた彼らはどのような生き様を見せてくれるんでしょうか?」

 

「どうなるかのう。楽しみじゃのう。老衰が無いというのは味気ないことじゃが……それでも彼らなら充実した生を見せてくれるじゃろうて」

 

「そうですね。ではゆるりと鑑賞といきましょう」

 

「しばらくは退屈せずに済みそうじゃて」

 

 

 

 ……こうして魏延文長は新たな生を受け、創られた乱世に再度身を投じることになる。

 彼を待つのは忠誠か、覇道か、それともまた別の道なのか……それは神であるふたりにもわからないことであった。

 

 

 

 

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