転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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俺のターン、ドロー!

俺は啓蒙を1消費して『血族狩りアルフレート』を攻撃表示で召喚!

いくぜ!『血に渇いた獣』にダイレクトアタック!!

ダイレクトアタック!!

ダイレクトアタック!!



【 YOU HUNTED 】




これが結束の力だ!



#10 Mind Dive

「────お前の中にある数多の選択肢(キャラ)からオレ様を選んだことだけは評価してやる。が、それとこれとはまた別だ。さっき纏めた改善点はしっかり頭に叩き込んでおけ」

「アッハイ、アリガトウザイマス……」

 

得点開示で製作者にダメージを与えた後、どこから持ってきたのか学校机に腰を据えたカリオストロはありがたい授業(地獄の補講)を開始する。

 

点数の時点で既に再起不能レベルの心傷を負っていた製作者は逐一どこが悪かったのかを解説しながら、よりにもよって己の創造物に欠点を指摘され続ける拷問を一身に受けた。

時間にしておよそ二時間半にも渡る講義である。

驕ってはいなかった製作者だったが、そこそこあった自己肯定感はカリオストロによって完膚なきまでに破砕されてしまったのだ。

 

「おい、いつまで寝っ転がってるつもりだ」

「もぅマヂ無理」

 

カリオストロから少し離れたところでミミッキュを抱き枕にして床に寝転がる製作者から出涸らしのような声が絞り出された。

その様子に錬金術師は盛大にため息をつきつつ机から飛び降りる。

 

「オレ様は自分が自分であるために、妥協することを許せないタチだ。所謂矜恃──プライドってやつさ」

 

だが、と前置きしてカリオストロは告げる。

 

「そこを抜きにしてこのボディを評価するなら……そうだなぁ。カリオストロはぁ、君に将来性あると思うぞっ☆彡

「……マジ?」

「大マジだ」

 

その言葉に彼は静かに目に涙を湛え、ぽたぽたとそれを零し始めた。

認められていなかったわけではない。彼女は自らの威信にかけて、認めることができないのだ。こと自らの身体に対しては。

 

そういえばぁ、マスターはどれくらいかけてカリオストロを創ったのかな?

 

涙が底を突くのを待ってからカリオストロは思い出したかのように口にする。

鼻をかんだ製作者は日記をパラパラと捲ってから口にした。

 

「2ヶ月半くらい」

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の術式の理解、そして更なる戦力拡充のためにオレ様を創ったわけか。ハッ、いい人選じゃねぇか。だが……」

「だが?」

「この世界に対しての解像度が足りてねぇ。お前から聞いた話だけじゃ、教えるのに無駄な時間を要しちまうだろ」

 

カリオストロは空の世界において森羅万象を読み解き、世界の真理を手中に収めるための学問──錬金術の開祖だ。

しかし空の世界のことを識っていても、この世界に関しての見識がかなり不足している。

術式の解析と言えば聞こえはいいが、その術式が扱うのは『魂』だ。中途半端な知識で挑むことは自殺行為になりかねないし、何より彼女はそれを決して許さない。

 

そういうわけだから、そういうの教えてくれる人とかっていないかな?

「んー……」

 

心労をかけるのが申し訳なかったから頼らないと決めていたが、そういうことならばやむを得まい。『魂』の部分についてだけ濁せば余計な心配はかけずには済むだろう。

製作者はテレビを背負っておばあさんの下に行くことにした。

 

 

 

「おやおや、二人揃ってべっぴんさんだこと。お前さんの趣味かい?」

「趣味です」

 

澱みなくそう答えた彼におばあさんは何か言いたげな表情で鼻を鳴らした。激しく動揺してくれた方が面白かったとでも思っているかもしれない。

 

ちなみにおばあさんがマヨナカテレビの中に来るのは何気にこれが初めてである。「面妖な世界だねぇ」の一言で済ませた辺り、彼女の耆宿さが窺い知れよう。

諸般の事情(とんでもない大きさ)によってお披露目できなかったキングプロテアとも今回初めての顔合わせとなった。

 

は〜い☆ 初めまして、おばあちゃん!私カリオストロって言うの!よろしくね!

「あぁプロテアちゃんの次の。うん、よろしく。で、この嬢ちゃんに呪術の基礎を教えればいいんだね?」

「うん。俺に教えた時より詳しめによろしく。カリオストロの理解が深まれば深まるほど、俺の術式についてわかることも多くなるはずだから」

 

「そうかそうか」と自分のことのように彼女は笑う。

聞けばプロテアは一ヶ月半、カリオストロは2ヶ月半で創ったらしい。これ以上の作品をまだまだ生み出してくれるのであれば、惜しむものなど彼女にはない。

期待と好奇心に胸を膨らませながらおばあさんは意気揚々と授業を開始する。今度はカリオストロが生徒になるターンだ。

 

「ちなみに……カリオストロちゃん?」

なにかなっ?

()()()()()()?」

 

数秒の硬直の後、美少女錬金術師の表情(ロール)が音を立てて崩れ落ちる。

それを見ながらおばあさんは大きく口を歪めしてやったりと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいねぇ。言ったそばからスポンジみたいに吸収してくじゃないか」

「錬金術は世界を識ることが真理への第一歩だからな。貴重な情報源をぞんざいに扱ったりはしねぇよ」

「カカカ、そうかい。教え甲斐があってこっちも助かるよ」

「お茶とお菓子持ってきたぞ〜。カリオストロ、調子は?」

 

特にやることのなかった製作者はおばあさんとカリオストロが授業をしている間に買い物に出かけていた。

カリオストロはにんまりと笑みを浮かべ、ご満悦のていだった。

 

「原理は十二分に理解した。後は実践を残すのみだな」

「わぉ流石」

も〜っ!褒めても何もでないぞっ☆

 

ぷりぷりと猫なで声で怒るカリオストロ。これだけ切り取ればまったく美少女錬金術師は最高だぜ!で済むのだが、如何せん素の彼女を知っている身としては……。

 

「オイ、余計なこと考えてなかったか?」

「何も」

 

その後おやつタイムを終えて、「やることはやったから」と告げておばあさんは颯爽と帰って行った。

 

「さーて、じゃあお前の術式を紐解くとするか」

 

授業で使っていたホワイトボードを消して新たに何事かを書き始める。

 

「……いや早くない???」

「早い方がいいだろう。オレ様もさっさと済ませてやりたいことがあるからな」

 

 

 

「いいか、お前が使ってる術式は生得術式と呼ばれるもんだ。産まれた時から身についているもので他人には模倣不可。これはいいな?」

「うん」

 

ホワイトボードに『生得術式』と可愛らしい丸文字が書かれた。

 

「じゃあその『生得術式』はどこから発生している?」

「どこ?うーん……身体?」

「それも一理ある。だが──」

 

カリオストロは『生得術式』を囲むように大きな丸を描き、それに『生得領域』と書き足す。

 

「『生得領域』──つまりオレ様は術式が()から生み出されていると結論付けた」

 

カリオストロが講義を受けて目をつけたのは『生得領域』と『領域展開』の関係だ。

前者は術者の心の中を指し、後者は生得領域に術式を付与して現実に具現化する結界術のことを表す。

心の世界の具現化が奥義であるならば、術式と心の中がチグハグであることはまずありえない。両者が繋がっていると考える方が自然である。

 

「だからお前の生得領域を覗いてみれば術式について詳らかにできるだろうなってコトだ。なに、自分の魂を弄ったことくらいはあるから安心しろ」

「安心できる要素がないよぉ!!?」

先っちょ覗くだけだからさ☆そんなに心配しないの!それ〜☆

 

いつの間に作っていたのか、眠り粉のようなものを振りかけられた製作者はまぶたが落ちた瞬間に夢の国へと旅立ってしまった。

 

 




ブラボに熱を込めすぎて投稿頻度が遅くなるSSです。ちょっと駆け足気味。
もう少ししたら面白くなると思うから許してね。


冒頭
獣の夜(闇のゲーム)の始まりだぜ!
実際こんな感じで倒した。

転生者くん
→不憫。だったけどその指導は彼女の矜恃故だったと理解し静かに涙を流す。
この後の展開は『#8』を参照。

カリオストロ
→2ヶ月半で自分を創ったことにはちょっと引いたらしい。
でも彼女は天才美少女錬金術師なのでへこたれたりはしなかった。天才美少女錬金術師だから我慢できたのだ。
貴方もカリおっさん最高と叫びなさい!!
おばあさんから呪術について学んで術式は生得領域から発生しているんじゃねぇかと考察し、生得領域を覗くことで術式を解明しようと画策。
この後の展開は『#8』を参照。

おばあさん
→カリおっさんの素を見抜いて笑った後呪術について教えた。覚えが恐ろしく早くてちょっとびっくりした。


感想欄に狩人ワラワラでワイもビックリや。
ちなみに今は黒獣パールの当たり判定にブチ切れてるところです。放電攻撃はよしてくれないか!

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