転生者はお人形さんを作るようです 作:屋根裏の名無し
ついでに教会のエミなんとかさんもエンチャントライトニングした後こっちも部位破壊で倒しました(初見)
やっぱりレベルを上げて物理で殴ればいいのはどこに行っても同じなんですねぇ。
「んにゃ、んん……」
「起きたか、調子はどうだ」
カリオストロの声に目を覚まし、寝ぼけ眼を擦って寝落ちする前の記憶を確認する。
「それ〜☆」なんて気の抜ける掛け声とともに浴びせられた粉末を吸った直後から意識が途切れていたはずだ。いつの間に眠り粉を錬成していたんだよ……。
「いや善は急げって言うけどさぁ。何事も順序ってものがね?」
「なーに生娘みたいなこと言ってんだよ。早くしないと困るのはお前だろうが」
ぐうの音も出なかった。
施術は上手くいったようだし、まあヨシ!としよう。
「マスター、ホントに大丈夫?」
「うぉ!!?……あぁ、プロテアの手の中にいたのか俺」
ベッドもソファもないマヨナカテレビのどこに寝かしつけられていたのかと思えばキングプロテアの両手のひらだったようだ。
不安げな顔でこちらを覗き込み、長すぎる髪が彼女の手の周りに即席の紫カーテンを作り出している。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」
「えへへー」
おもむろに自分の小さな手を伸ばせば、プロテアはゆっくりと大きなほっぺを近づけて頬擦りしてくる。
……折れないよな?
「折れませんよ!」
「ごめん悪かった!」
「もーっ!天才美少女錬金術師をほっぽってイチャイチャするのは許さないぞっ☆」
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「────と、オレ様がお前の生得領域の中で見たのはこんな感じだった」
「なぁにそれぇ」
いや何……?ホントに何だそれ……?
抽象的ってレベルじゃねぇぞ。俺の頭の中は哲学問題集か何かだった?
「正直抽象的が過ぎるが……どんなに荒唐無稽でもそこは生得領域内部。故に起こることには全て意味があり、必然だ。例えば──」
カリオストロはノートを開き、記された一節にペンで線を引いた。
「『かけますか かけませんか』。この文字の後に心臓みたいなハートが中心部を残して12に分かれるイメージが映った。そしてオレ様とプロテア始め、お前が作った呪骸には魂の一部が入ってるときた。ここから推測できる結論は?」
「俺が創れる呪骸は……後8体?」
ここまでお膳立てすればさすがにわかるよなと彼女は笑った。
「ああそうだ、生得領域の視察ついでにお前の魂の状態も診断してやったんだが」
「ついで!?」
「造作もない」と誇るでもなくそう返す。
カリおっさんが言うには五体満足で命が維持できているのが不思議なくらい魂が不安定な状態らしい。
欠損することがそもそもイレギュラーな事象なので推察を多分に含むが、上限の12体まで創った場合無事でいられる保証はないようだ。
「マスター……いなくなっちゃやだよ……」
「別に今すぐに死ぬわけじゃねぇさ。応急処置は施しておいたが根本的な解決じゃないから過信はするなよ」
「次は『いちですか ぜんですか』だな。突然だがお前は呪力を纏えるか?」
こんなふうに、とカリオストロは自分を包む青い焔のようなオーラを放出した。
呪力を纏うやり方はおばあさんから聞いたことはあったけど現状必要なかったからなぁ。
「コツとかある?」
「そうだな、臍を起点に体内を回っているエネルギーを感じることが基本だ。だがオレ様の予想が当たりなら──」
数時間後、俺はもはやお家芸のようにマヨナカテレビの外で作業をしていたミミッキュを抱きかかえてめそめそしていた。
「単純な呪力放出、『帳』を始めとした結界術、簡易的な式神、その他生得術式に関わらないこと一通り試してみたが──ないな、全くもって才能が。お前は自分の術式『のみ』に特化しているらしい」
そう、俺は生得術式以外の呪力を使った行為を何一つとして成し得ることができなかったのだ。
呪霊が見えること、そして術式が使えること以外はただの人である。
「えぇ……なにじゃあ、俺は役立たず?」
「そうだ。命を糧に仲間を増やす以外お前ができることはない。なにしろお前が選んだのは『全』じゃなく『一』だったからな」
「もしかして天与呪縛?」
「多分な」
『天与呪縛』とは生まれながらに大いなる力を授かるが、その代償に何かを犠牲にしてしまう事を指す。
例えば呪力を犠牲にして超人的な身体能力を得たり、身体の自由を生贄に膨大な呪力を得るなどがある。
俺の場合は呪術全般の才能を失った代わりに一芸に特化したということだろうか。
「あー、そういえばお前は転生者だったな」
『いりますか いりませんか?』に線を引きながらカリオストロは神妙な顔をする。
あれ話したっけ?と聞くとカリオストロのありがたい授業を受けていた時に俺がポロッと口にしていたらしい。
転生者──意識と記憶の連続性がある存在は彼女にとって特段珍しくないそうだ。
ホムンクルスに記憶と人格を転写したり、魂を別な媒体に収めることで天に召されることを防いだりと、永きに渡って世界を識るため一部の錬金術師は試行錯誤を繰り返していたという。
そもそも空の世界は星晶獣という人知を逸した存在が跋扈する世界である。異なる次元を繋げたり、死と生を自在に操ったり、歴史を改竄したり……そんな星の獣に比べれば不死者転生者などありふれたものなのかもしれない。
「なるほど、転生者って自覚はあれど大方の記憶は欠落、ねぇ」
そうだ。アニメとかゲームとか自分が楽しんでたものについては事細かに覚えてるけど、名前だとかどんな人生を送っていたのかは点でわからない。
そう伝えるとカリオストロは視線を宙に漂わせて頭に浮んだ考えを整理するかのように何事かを呟き続け、最後にぼそりと口にした。
「記憶を
「縛り?記憶を縛ることってできるのか?」
「できるできないで言えばできるが…………う〜んよし、この話はナシ!」
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「よし総まとめいくぞ。今回お前についてわかったことはだいたい3つだ」
①呪骸の作成上限は後8体。
②マスターは今のところ呪骸作ること以外は何もできない(恐らく天与呪縛)
③記憶を縛った代わりに様々な知識を得た可能性がある(要調査)
「この話ナシ!ってさっき言わなかった?」
「掘り返すな。確信どころか仮定に仮定を重ねた推論をホイホイ話せるかってんだ」
ピースが揃ったら話すからと言ってカリオストロは取り合ってくれなかった。
むう、歯痒いな。確かに今まで俺の人生に関しての記憶がまるでないのは気にしてなかったが、そう言われるとちょっと思い出したい気もする。
「って、そうだそうだ。マガツイザナギとミミッキュ貸してくれって言われたから貸したけど何させてたんだ?」
基本的に呪骸たちは用事があるとき以外は各々自由に過ごしている。貸出申請されたのはプロテアが誰かに髪をとかしてもらいたいと言った時以来だ。
彼らもカリオストロへの協力に異存はなく了承の意を示したため、彼女に預けていたが……。
「あぁ、あのばあさんがお前がそろそろ修学旅行なんじゃないかって言ってたからな。ちょっと下調べをな」
「確かにそうだけど……」
そういえばもうそんな時期か。
学校は息抜きしに行ってるようなもんだったし、正直忘れてたな。
「いや待て、何しようとしてるんだ!?」
「オレ様がずっと43点ボディで満足するわけないだろ?それに、お前の戦力拡充もしなきゃだからな」
「あっもう嫌な予感」
「マスター、京都で色々素材集め!しようねっ☆」
(術式以外はただの人なんて)「嘘だッ!」
「ところがどっこ〜い……夢じゃないんだよ☆ 現実なの……!こ れ が 現 実……☆」
馬鹿みたいに駆け足だったけど許して。
今回は術式について少し知れたくらいに思っておくれ。
粗には目をつぶってくれると助かるよ……。
次回にさっさと進みたいのよ……(本性)
あと今回はアンケートを設けたので回答してくれると嬉しいわよ。
転生者くん
→術式についてちょろっとだけ理解した。
自分が実戦においてはクソザコナメクジってことも理解して枕を濡らした。カリオストロ診断によると後4体くらいまでなら作っても支障はないらしい。
現在中学三年生。作中時間は2017年。修学旅行先が京都。
カリオストロ
→神or上位者的な存在がマスターが転生した時に関わってるのではないかと予想したが、決定打となる確たる証拠がなかったのでお茶を濁す。
マスターの修学旅行先で自分のパーフェクトボディ(人形ではなく生身)を錬成するための素材集め、そして呪骸に使う呪物を獲得するためにマガツイザナギとミミッキュにネットで情報を集めさせていた。
京都
→二次創作の紅魔館か比叡山延暦寺みたいになってしまうかもしれない。
次回、京都採集決戦開幕!
京都観光だ!ついでに呪物を採集していこう!どこ行こうかな〜♪
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本能寺
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大江山
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五条大橋