転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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2017年の中学生って学校でのスマホの持ち歩きは許可されていたんでしょうか。
このSSでは許可されていたこととします。

ここで出した特級呪物が千人の虎杖編で出てきそうなのがめっちゃ怖いんすよね。
絶対ネームバリューデカいのが本編に出るやろ。



#13 酒!取らずにはいられないッ!

新幹線の窓の外に移ろいゆく景色を何も考えずに眺める。

思慮を巡らすことは良い事だ。しかし、その坩堝に陥ってはならない。

その先で得られるものは、大抵ろくなものではない。

 

故に、景色を前にした時は無念無想であるべきだ。

 

 

「ん……?」

 

ポケットで暴れるスマホのバイブレーションを感じ、彼は画面を立ち上げる。せっかくの瞑想タイムに水を差されたのか、その面持ちは少々腹立たしげだ。

 

通知に表示されたニックネームは【おばあさん】。

通知欄からメッセージに飛んでみると、呪物を安置している場所の書き起こしと簡単な資料がPDFで貼られている。

そういえば地図作ってやるから待ってなよ、とか言われたような気がすると彼は考える。

 

おばあさんが最後に京都を訪れたのは数年前だが、呪霊による被害が出ない限りは場所を移すことは珍しいようだ。

 

京都校の忌庫に入っているもの以外で、配置されている場所と特級呪物のラインナップは以下の通りとなる。

 

 


 

 

一条戻橋(いちじょうもどりばし)

京都の堀川に架けられた一条通の橋。

頼光四天王筆頭・渡辺綱が宇治の橋姫もしくは茨木童子の腕を切り落とした伝説があり、稀代の陰陽師・安倍晴明が十二神将を待機させていた場所としても有名。

 

周辺に安置されている特級呪物は『茨木童子の腕』だ。

 

説話には切り落とされた茨木の片腕は安倍晴明によって封印が施され渡辺綱が保管していたが、茨木が綱の伯母に化けて腕を奪取したという記述がある。

当時を語る詳細な資料は紛失しているため、この腕が本当に茨木童子のものか判別する術はない。

しかし、仮にそうでなくとも、この腕に宿る呪力がそれ相応のものだということは忘れてはならない。

 

 

【大江山】

京都北部に位置する連山。連峰なので頂上と呼べる峰はない。

土蜘蛛陸耳御笠や酒呑童子の伝説があるが、ニッケル鉱山としても有名。

 

山中に安置されている特級呪物は『神便鬼毒』だ。

 

酒呑童子を殺害するために八幡大菩薩から源頼光に与えられた毒酒である。

保管形態は一升瓶だとか、大五郎(4L)形式だとか、酒呑が呑んだ杯に入ったままだとか、瓢箪に保存されているとか……ともかく定かではない。

 

菩薩産故に、生産量がごく少ない希少な物。

酒は鬼に似合う。しかし彼らが酔ったのは本当に酒だけなのだろうか。

 

 

【本能寺】

京都にある法華宗本門流の大本山。織田信長の最期の場、本能寺の変の舞台として有名。

 

境内に安置されている特級呪物は『信長の火縄銃』だ。

 

 

【五条大橋】

京都の鴨川に架けられた橋。

牛若丸と武蔵坊弁慶が出会った場所とされている。

 

この近辺に安置されている特級呪物は『薄緑』だ。

 

『膝丸』とも呼ばれることもあるこの刀だが、実は同じ刀が各地に複数本存在することが確認されている。

刀剣に宿る術式が自己の複製に特化したものなのだろうか。

 

……真実は呪術界の深淵に閉ざされたままのようだ。

 

 


 

 

「この中なら……そうだな」

 

『茨木童子の腕』と少し迷ったが、大江山の『神便鬼毒』を彼は頂戴することにした。

酒ぶっかけた粘土でコネコネすれば傑作ができるんじゃねぇかな、等というかなり浅はかな考えからである。

 

火縄銃・薄緑は組み込むものでなく持たせるものになってしまう。人形の地力を上げたい彼からすると、今回は選択肢から泣く泣く外すしかなかった。

残った茨木童子の腕は本人産であることを考慮するとこちらの『茨木童子』が受肉してしまう危険性がある。

 

となれば、残るは神便鬼毒しかない。

液体ということもあり、素材として使うにはかなり汎用性の高い逸品だ。

 

……呪術界のお歴々がこれを聞けば即座に止めにかかるのは言うまでもないことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いよっし、こっちのテレビでも問題なくできたな。これ通してワープができたら楽なんだが」

「原作だとできなくもないんだけどね。マガツイザナギの力が不足してるのか、そもそもできないのか、今のところ工房兼エンダーチェストみたいな使い方しかできてないけど」

 

深夜、京都某所のホテルの一室にて彼はマヨナカテレビを起動し、カリオストロとミミッキュを部屋に入れた。

同室の同級生は既に眠り粉によってレムレム睡眠*1に突入している。

 

ちなみにマガツイザナギはマヨナカテレビ起動キーのような存在なので、最初から製作者のバッグに潜んでいた。

 

「手筈は?」

「呪力を遮断する礼装は用意完了、オレ様の素材の分布地も把握。呪物の大まかな位置は頭に入れた。後は……」

 

カリオストロが両手に持ったひびの入った石のような物体を見やった。

 

「こいつが正常に機能してくれるかどうかだな」

「正直俺の言葉だけでここまで正確に創り出すとは思わなかったけども」

「……お前の術式みたいにはいかねぇさ。似たような機能を取り付けたに過ぎないからなこれは。ああそうだ。一応これを渡しておく」

 

カリオストロはテレビの中に腕を突っ込むと黒いコートのようなものを取り出した。NARUTOの暁が着用していた外套に墨汁を塗りたくったような見てくれだ。つまり黒地である。

 

そのコートの中に仕込んだものを説明し、「結構大変だったんだよ☆」とキラキラ笑顔で彼女は語る。

 

「いつの間に?」

「お前が三週間〜とか日記に書いてた辺りから準備はしてた。使わないに越したことはないけどな」

 

じゃ行ってくる、そう言ってカリオストロはミミッキュを背負いホテルの窓から京の闇の中へと駆けて行った。

 

*1
浅いかもしれないし、場合によっては深淵に近いかもしれない睡眠。某未来を取り戻す物語の主人公がよく陥る症状。




前置き長ぇんだよ!!(自責)
多分次からバトゥスタートですわ。


ビルゲンワースの湖にダイビングしたら蜘蛛がキモすぎてダメ。
ピクミンのクイーンチャッピー思い出してさらにダメ。

作者君はさぁ……集合体恐怖症の人?

後ロッキングチェアで(ふるべ)ゆらゆらしてるあのご老人は何なんでしょうか。
体力ゲージがないからエネミーではなさそうですが。


アンケートの結果【大江山】の呪物『神便鬼毒』を掠めとることにしました。

え?盗むのは犯罪?
秘匿死刑を横行させて一般人は毛ほども気にしてなさそうな奴らのことなんて知ったこっちゃないです。

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