転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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シンエヴァ観るまでネット断ちしたり、某同人格ゲーやったり、ウマ娘育成に精を出したり、狩人の悪夢に囚われたりしたので遅くなりました。

ミホノブルボン可愛いね。
狩人の悪夢はスイッチマシンガンに見事にハマって殺されたよ。

マシンガンに殺された腹いせにエンチャントライトニング&部位破壊で再誕者をムッコロしてきました。
あんなん見たら即SAN値直葬だお。



#16 ぅゎょぅι゛ょっょぃ

「……手応えがない。油断するなよメカ丸」

「わかってル」

 

京都市内某ホテル四階、和装に身を包んだ優男と明らかに現代の先端技術すら凌駕するオーバーテクノロジーの産物が、とある客室の扉を睨んでいた。

 

優男──加茂憲紀が内部の異質な呪力へ向けて寸分の狂いなく放った赤血操術 穿血。百歛を臨界までチャージした、並の呪霊なら即座に祓える一撃。

しかし、仕留めた感触がない。

その上穿血直後にドアが砲弾が直撃したように歪んでいる。

衝突直前に弾かれたのだろうと憲紀は推測した。

 

県外任務を終えた憲紀とメカ丸は窓の運転する帰りの車にうつらうつらと揺られていたのだが、立ち上る濃密な呪力に弾かれるようにして飛び起きた。

そしてその袂へ現着、逃れられぬよう帳を降ろした次第である。

 

窓からの情報によればここは府外からの修学旅行生が宿泊先にしたホテルである。呪霊や呪詛師が人質を取るのならば格好の場所だろう。

故に警戒して非常階段からこのドアの前まで彼らはやってきたのだが……特に罠が仕掛けられていることもなく、呪霊の一つも湧かず、そして呪詛師がいるわけでもなかった。

しかし何も無かったからといって警戒を解く理由にはならない。

呪霊もしくは呪詛師だった場合、事態は一刻を争うのだ。事が起きるまで静観を決め込んだ結果被害者が出たとなれば、それは呪術師の名折れである。

 

 

「合図で突入、私が赤縛で対象に簡易監獄を作りつつ生徒を回収。範囲を絞った大祓砲(ウルトラキャノン)はいけるか?」

「問題なイ」

「よし。では……開始ッ!」

 

メカ丸が繰り出したヤクザキックで扉が破砕。

彼の背後から憲紀の血液パックが放物線を描き目標の目前に着地した。

そして憲紀も共に突入するはずだが──

 

ぶわり、蹴破り入った部屋の中から()()()が外へ逃げるように湧き出した。

しかし火事特有の焼け焦げた臭いはない。呪力こそ混ざってはいるが、ただの霧だ。

見かけ騙しと断じ、呪力の中心に向けて憲紀は血縛を使おうとする──が、不発に終わる。

 

己の術式が機能しないことに目を見開く憲紀。

同様にメカ丸も糸が切られたように唐突に床へと倒れ伏し、その機能を停止した。

 

「メカ丸ッ!?」

「『術式封じの霧』だ」

 

霧の中からメカ丸以外の駆動音と共に声が聞こえてくる。立ち込めた霧のせいでその顔は愚か、姿形さえわからない。

声もどこか朧気で、憲紀には特徴がハッキリ掴むことができない。

唯一彼が観測できるのは空中でハザードランプのように明滅を繰り返す赤い点だけだ。

 

「この霧は吸い込んだ瞬間から一日、自らに刻まれた術式を使うことができない。その分代償は高くつくけどな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無論、()()()()()

 

キラーマジンガの保有するスキル『戦場の支配者SP』。その中に内包された霧系特技『黒い霧』。

効果は【戦闘の場全体の呪文を3ターン無効化する】だ。

この世界における3ターンがどの程度に該当するかはわからないが、少なくとも3秒とか30秒とか、使用に難アリのレベルではなかったのが幸いだ。

 

キラーマジンガは特性に常にマホカンタがあるけど、念には念をということで。

術式が自由に使えないのはそれだけで隙になりうるからね。

 

……どうしてロクに確かめもせずぶっつけ本番でやっちゃうかなぁ俺。

次からはちゃんと試そう、うん。

 

当然ここから離れれば術式は使えるだろうけど、この場で術式が使えないのは本当なので、彼らは攻めあぐねるだろう。

 

……いや待って、なんで俺攻撃された?

 

「あの、なんで俺攻撃されてるんです?」

「……修学旅行生の泊まるホテルに呪力の塊が飛び込んでいったとなれば疑いもする」

 

あぁそういう……。うん、ぐうの音も出ないわ。

あっちからすれば自分らが迷っている間に人死にが出るわけだし、そりゃ急くわけだ。

マガツイザナギはこっちに全速力で飛んできてたことだし、そんな勘違いもさもありなん。

 

「でもこのホテル見たなら分かると思いますけど、トラップも呪霊も置いてないし、誰にも手出ししてませんよね?」

「む、それは……確かに」

 

……言いくるめロールいけるのでは?

霧のせいで人相も何も見えないけど声色はちょっと優しげじゃないかい?

嘘と真実をごった煮にしつつ煙に巻いて、あわよくば酒呑童子の方にヘイトを誘導するッ!

ヨシ!畳み掛けろ俺!

 

 

「俺とあなた、戦う必要無くないですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんじょうきばりや、それがあんたはんの本気?」

「ハッ、どうだかな!」

 

山の斜面を分解、間髪入れずに再構築して即席の物見台を創り出す。そこから下へ向かって呪力を流し、カリオストロのいる場所を囲むように辺り一帯を錬成。

大地が身震いしたかと思うと、山肌が栗立ち鋭利な剣が天を衝く。

 

しかし全盛期の身体でなくとも彼女は大江山の鬼。

数瞬のうちに八大地獄が一つ、衆合地獄の針山の様相を呈した大江山の一部区画。そこを踊るようにステップを踏んで避けていく。

 

既に錬成した場所に追加で錬成を重ねて死角を狙う変則攻撃さえ僅かな身動ぎ一つでするりと躱す。

まるで自分が彼女に当たらぬように攻撃をしているような錯覚を覚え、カリオストロは小さく舌打ち一つ。

 

剣山の頂に驚異的なバランス感覚で着地した酒呑童子はそんな彼女の様子にクスクスと笑いながら目を細める。

 

「なあなあ、あんたはんもそないにずうっと全力出してんのはしんどいやろ。どや、少しうちの話につきおうてえな?」

「……全力をご所望じゃなかったのか、お前」

「ほんま久々の肉の身体で気ぃ上ずってたさかいに。堪忍な」

 

本気を見せろと言ったかと思えば、今度は自分の話に付き合ってくれと語る。鬼の心とはまこと読めないものである。

しかしその申し出は今のところ勝機が見出せないカリオストロにとっては渡りに船。

彼女は警戒を解かずに手振りで彼女に了解の意を示す。

おおきに、と綺麗な歯を見せてから酒呑童子はゆっくりと話し始めた。

 

「うちなぁ、はじめから自分が()だったわけやないんよ」

 

こういうの、『かみんぐあうと』って当世の人は言うんやろ?と鬼はたどたどしい口振りで話す。

カリオストロは特に瞠目も驚愕もせずに相槌を打つ。

 

「あら、も少し驚いてもええんよ?」

「話せよ。お前の本題はそこじゃねぇだろ?」

「せやけど、そう急かさんといてや」

 

 

特級呪物 『神便鬼毒』。

鬼種に対して劇毒、人間に対して超強力ドーピングとして作用する呪物。

呪物の範疇にこそいるものの、そのカテゴリー内ではとりわけ異質なものであった。

性質故に大江山に安置させても一定の効力は発揮するが、それよりかはドーピングとして使った方が適切だろう。

 

しかし呪術師たちがそれをできない理由があった。

 

「うちがこうして受肉できたんは、酒ん中にうちの血が混じったからなんや」

 

菩薩から頼光が賜ったありがたいものであるはずの酒が彼女を現世に浮上させるに至ったのは、酒の中に彼女の血が混入してしまったからである。

当時の呪術師たちはそれを捨てる訳にもいかず、瓢箪に封を施して大江山に封印することにした。

 

「身体は余さず焼かれてもうてな。首が京のどっかにあるとか言われとるけど、真っ赤な嘘や」

 

呪物と化す前に身体を祓われた彼女の残りカスはよりにもよって神便鬼毒に封じられ、それから長い時を過ごすことになる。

 

しかし転んでもただでは起きないのが酒呑童子。

数百年の奮闘の末、自らの血が混じった『神便鬼毒』を制御下に置くことが可能となった。

 

が、当然ながらその結果には大きな代償が伴った。

自分の一部ですらないものの中に自分を置き過ぎてしまったせいか、自分の在り方すらも()()()しまったのだ。

平安の世に生きた『酒呑童子』はほぼ漂白されてしまったも同然である。

最後に酒の中に残されたのは、自らの復活のために前進しようとする強靭な意思だけだ。

 

「『酒呑童子』を形作る呪い(情報)はいつの間にやらのうなっとった。ほんで、溶けた自分を京に広げて蒐集することにしたんよ」

 

自分を酒に溶かした酒呑童子が次に着手したのは封印の隙を作ることだった。

これもまた何百年とかけて瓢箪を戒めた封印の一片を穿った彼女は、そこから京の都に水蒸気と化した己をばらまいた。

 

彼女は自分に関しての情報(呪い)をほんのちょびっとずつ京都全域から拝借して、ツギハギながらも再び『酒呑童子』を形作ろうとしたのだ。

 

「あともう少しで呪い(情報)満タンやね〜って思ってたらな、つい昨日あたりに『酒呑童子ならこれしかない!』みたいな、情報(呪い)叩きつけられて……流れるままに受肉したら、なんでか女になってしもた」

 

そんでな、と。酒呑童子は一呼吸置いた。

昂る熱をゆっくりと冷ますように、己の好奇心が先行しないように。

 

「それと(おんな)呪い(情報)、あんたから匂うんよ。一体全体、どういうことなんかな?」

 

 




最近バイトも始めたので毎日てんてこ舞いです。
当然ながらリアル優先なので更新頻度は落ちます。だが私は謝らない。

京言葉難しいけど書いてて楽しいね。
なんか用法の間違いとかあったら遠慮なく指摘してください。
当SSは京都弁有段者のお言葉を心よりお待ちしております。


転生者くん
→言いくるめロールのダイスを振りなさい。
だいたいこいつのせい(無自覚)(認知して♡)

キラーマジンガ
→スキル開示①『戦場の支配者SP』
こいつがDQM仕様なのは既に断りを入れるので後は各自調べてくれ。

カリオストロ
→テレビとかいうアホほど作業工程が多い化合物複合体をニッケルとその他雑多な素材で錬成する変態。
大江山の一画をちょっとした針山に仕上げた。

酒呑童子
→死ねどす♡
気に入っても殺す、気に入らなくても殺す。そんな殺し愛の体現者。
今は値踏みの段階なので全力のぜの字も出してない。
鬼女の気性は秋の空よりきっと酷い。多分天変地異レベル。
カルデアのマスターはスゴイ、俺はいろんな意味で思った。

千年以上かけて封印をほんのちょっとガバガバにする作業と自分の情報(呪い)を京都全域から蒐集することに邁進していた。
が、つい昨日あたりにバカみたいに解像度が高い『酒呑童子の㊙詳細プロフィールッ!』みたいな呪い(情報)の塊が京都に堂々入場してきたので思いっきりそれに引っ張られてしまった結果、この身体になってしまった。

神便鬼毒
→鬼特攻と人間強化を併せ持つ不思議呪物。
これを飲むと人間が彼女の器として申し分ないほどに強化されるので復活するには渡りに船だったらしいよ。

バカ目隠し
→まだ来てない。一体何してるんだろうね。暗躍とか?
来たとしても修学旅行生のいるホテルで術式反転を撃つわけないでしょ!!
生徒諸共死ぬわ!!

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