転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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※本日はエイプリールフールです。
今回のお話は本編に一切関係はございません。

一切!関係はございません。

不快になってもそれは読んだウヌのせいじゃ。
ワシのせいじゃない。



#EX-Ⅰ 存在しない記憶

昼休みのチャイムが校内に響く。

給食の匂いがほのかに残った教室は春の陽気に包まれ、ほんわかとした雰囲気が漂っている。

その中で場違いな呻き声を上げて机に突っ伏す男が一人。

 

そう、我らが東堂葵である。

 

結局キングプロテアに奢られた超超超特大ラーメンを食い切ることはできなかった彼だが、その後筆舌に尽くし難い胃もたれに苛まれていた。

いくら中学生の範疇からハズれに外れたゴリラだろうが、それでも人間である以上許容上限は存在する。

プロテアが奢ったラーメンは彼のボーダーを優に超過していたのだった。

 

「おい」

「……なんだ」

 

上から声が飛びかかってくる。

顔を上げる気力すらなく、机に突っ伏したままで彼は返事をした。

 

「いいからその(ツラ)を上げろドルオタゴリラ」

 

グワシと側頭部を冷たい手のような何かにホールドされ無理やり上向きにされる東堂の顔。

彼の目に映ったのは悪い顔で笑いながら怪しい液体が入った試験管のコルク栓を外す錬金術師と自分の頭を掴んだ趣味の悪い人形の姿だった。

 

「お前何すムゴブッ!?

「あーあーうるさいうるさい。まずは飲め。話はそれからだ」

 

口の中に叩き込まれた試験管から液体が東堂の食道へと流れ込んでいく。

全て流し込んだのを確認した彼女は吐くなよと東堂に忠告して蛇口に試験管を洗いに行った。

 

五味が渾然一体となった混沌の味わいもつかの間、その液体の効果は東堂の五臓六腑に染み渡っていく。

どうヤツをのしてやろうか、などと考えていた彼だが、その液体──薬剤の効能を理解するうちに自然と怒りは収まっていった。

 

「気分はどうだ?」

「……スッキリだ」

「そら重畳。こっちもいいサンプルが取れた」

 

可愛げな制服を身にまとった錬金術師のカリオストロはその服でするべきでない笑みを浮かべた。

 

「他人の体調なんざ無視するのがセオリーだが……あまりにうるさかったんでな。おかげで午前中は調合の内職に充てるハメになったぜ」

 

東堂とカリオストロは同じクラス、かつカリオストロの後ろの席は東堂である。

一時限目からずっと腹の底に響くような声を垂れ流し続ける彼に教師もクラスメイトもすっかり萎縮していた。

授業もロクに進まず、教室の雰囲気も良くない。後普通にこのゴリラが煩わしかったのでカリオストロは胃薬をプレゼントしたのだった。

 

「悪い、手間をかけた」

「気にすんな。プロテアに付き合ってくれた礼もある」

 

カリオストロはカバンに詰めた呪具のチェックをしながらぶっきらぼうに答えた。

プロテア、その四文字を聞いた東堂は再び胃もたれしたような沈痛な面持ちに顔を変える。

 

「残念だがオレ様は心につける薬は専門外でな。そこは自分の頭で考えろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カリオストロの計らいで午後の授業を休む権利を貰った東堂は一人、屋上から校庭を眺めながらたそがれていた。

 

キングプロテアと東堂は中学からの付き合いだ。

物理的にも精神的にも学校に馴染めていなかった彼女を不憫に思い、東堂は声をかけた。

最初は失敗ばかりで壊すことしか能がないと己の境遇を嘆く彼女だったが、今ではすっかり学校の空気に溶け込んでいる。

東堂を初めカリオストロらとの特訓で力加減を覚えた彼女はもう恐れられるだけの存在ではなくなったのだ。

 

「俺は、高田ちゃんが好きだ」

 

フラれた今でも東堂の愛は尽きない。

学生アイドルとして精力的に活動する彼女への想いをどうして投げ捨てられようか。

好きな人がいたとしても、いつか俺に振り向いてもらえるのではと、そんな事を常日頃から考えている。

 

東堂は校庭の花壇に目をやる。

赤いアネモネが誇り高く咲き誇り、プロテアの花がその異様に似合わずこじんまりと咲いているように見えた。

 

「だが……どうすればいい」

 

 

 

高田ちゃん 助けて

俺この娘 好きになっちまう

 

 

 

キングプロテアに好意を抱いている気持ちも東堂の中でまた芽生えていた。

高田ちゃん一筋を掲げていた東堂にとって、この心に浮かんだ泡は彼女に対しての裏切りだ。

否定したい、考えたくない。だがふと気づけばプロテアの大輪の笑顔が脳裏に過ぎる。

 

「はぁ……」

 

ブルースな気分だった。

視界が青のフィルタに覆われて、周りの景色が海に沈没して見えた。

 

「あんまり青いため息吐かれるとこっちまで下がってくるわぁ。陽気な景色に無粋とちゃうん?」

 

どうやら屋上には先客がいたようだ。

ペントハウスの上で寝転び、空を眺めていた少女がゆっくりを身を起こす。

 

「酒呑か」

「せやで。お久しゅうな、東堂はん」

 

くぁ、と欠伸をしてから鬼は屋上に降り立った。

 

「なんや、えらい深刻そうな(つら)してはるなぁ。うちに話してもええんよ?」

「実はな……」

 

悩みを彼女に明かすと「なるほどなぁ」と共感しているのかしていないのか、微妙な相槌を打った。

 

「フラれたんやろ?しかも高田はんは別に好きな人おるし。じゃあ次〜ってならんの?」

「そんな軽い気持ちで高田ちゃんを推していたわけじゃない」

 

万感の気持ちで彼女を想っているんだ、そう東堂は熱く語る。

焦るように高田ちゃんへの愛を叫ぶ東堂に酒呑童子はこんなん聞くのはちょっぴり意地悪かもしれへんけど、と前置きして首を傾げた。

 

「東堂はんは高田はんに惚れられる自分でありたいのか、高田はんに誇れる自分でありたいのか。どっち?」

「そ、れは────」

 

喉元に引っかかり、言葉が詰まる。

以前は二つを同時に並べていても何ら問題はなかった。

高田ちゃんに好かれるため、高田ちゃんのファンとして誇れる自分であろうと邁進していた。

だがキングプロテアへの好意を持ってしまった今、その二択は一方しか選ぶことができなくなってしまったのだ。

 

「高田はんは自分の気持ちに嘘つく人、好きになれるんやろか。うちはそうは思わんなぁ」

「────ありがとう、酒呑」

 

少しだけ、ほんの少しだけ、闇に光明が見えた気がした。

そんな簡単なことすら思い浮かばないほど、自分は悩んでいたのか。東堂は反省する。

熟慮は時に短慮以上の愚行を招く、今回はその典型にハマってしまったようだった。

 

「今はただ、お前に感謝を」

 

とはいえ、これからどのように行動するかなんて決めていない。まして愛の正解など齢14の東堂にはてんでわからない。

 

だからまずは、この気持ちを、自分の中に生まれたこの気持ちを大切にしよう。

そして正面から向き合うのだ。それがどんな結果に転ぶかは、神のみぞ知るであるが────

 

「んふふ、おおきに」

 

鬼は静かに笑った。

舐めるような視線で彼の様子を眺め、そしてまた愉快そうに笑った。

 




ゆ、赦して……。
指が勝手に動いたんじゃ。
ワシのせいじゃない。
まさかワシのせいにするのか……!?
この人でなし!


どうしてまた怪文書書いてるんですか?(現場猫)

ギャルゲーかな?
またろくでもないものを生み出してしまったよ。本編が遅れるだろうが!!

そういえば今日エイプリルフールだなと13時頃に思い出して筆を取りました。



東堂
→学ラン

高田ちゃん
→セーラー服

キングプロテア
→セーラー服

酒呑童子
→セーラー服

カリオストロ
→2nd Anniversaryスキン『セーシュン☆ユニフォーム』

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