転生者はお人形さんを作るようです   作:屋根裏の名無し

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世の中はクソ!(真理)
キャベツ刑事も、そうだそうだと言っています。

だいぶ駆け足気味かもしれない。

エイプリルフール編頑張って書いたのにキモイキモイ言われて嬉しいやら嬉しくないやらよく分からん気持ちになった。

これが恋ですか?(SAN値0)



#19 世の中クソだな

時間にしておよそ15分。濛々と部屋を包み込んでいた黒い霧が逃げるように霧散した。

なるほど、これなら1ターン5分と考えてもよろしいか。まだ他の霧とか魔法は試してないから、絶対とは言い切れないが。

 

時間帯は深夜だが、闇を色濃くしていた霧も晴れて視界が多少明瞭になったので、ぐるっと部屋を点検してみる。

まずルームメイト。

天才美少女印の眠り粉は良く効いているようでぐっすり睡眠中。カリおっさん最高!

 

次、壁とかフローリングとか。

マガツイザナギのマカラカーンが弾いたのは()()だけだったようで、勢いそのままに押し寄せてきた加茂家次期当主の血液は部屋の中にびちゃっと散布されることとなった。マジンガの影に隠れてたから俺にはかからなかったけど。

布団血だらけ壁血塗れ、スプラッタ映画もびっくりの惨状である。

今俺にこの部屋をどうこうする力はないので、解決について頭を割くのはやめた。

 

最後、ドアとメカ。

蹴破られたドアと呪骸が川の字になって入口に転がっている。

っていうかこんなにどんちゃん騒ぎしても何もないんだな。ケチって防犯カメラとか付けなかったのかしらこのホテル。

 

 

……後数刻もしないうちに呪術師がこっちに来るだろう。次期当主が俺に対して何の手も打たないわけないし。

 

ここから逃げるのはダメだ。

行方不明者ないし下手人の疑いをかけられて個人情報をすっぱ抜かれる。

狸寝入りは論外。

知らぬ存ぜぬは彼らに通じない。術式戦が繰り広げられた中で起きてないは無理筋。隣で爆睡してるルームメイトと違って事情聴取でボロ出さない自信が皆無。

……カリオストロ、わりぃ おれ詰んだ!

 

「いや、諦めるのはまだ早い。素数を数えて落ち着くんだ。4、6、8、9、10、12、14、15、16、18、20、21、22、24──いやこれ合成数だな」

 

まず回避すべきはそろそろ来るかもしれない呪術師と出会うことだ。

目と目があったら術式バトル!する羽目になるかもしれんし、至極真っ当な疑いをかけられる可能性もある。極力それは避けていきたい。

 

……マガツイザナギをホテル内のどっかに先行。そしてマヨナカテレビ作って人目のつかないトイレとかに移動するのが一番無難かな?

残穢は残るけど一から十までホテル内を精査するわけじゃないだろうし、一時的に身を隠すだけならアリ……うん、アリだな!

 

「うし、じゃあ任せた。できるだけ目立たない場所探してきてくれ」

 

そう自分の隣で浮遊するマガツイザナギに声をかけたのだが、ふらーっと前方に動いただけで探しに行こうとする気配がない。

えっごめん、何か気に障ることとかあった?

 

 

……そう呑気に思っていた時期が、俺にもありました。

 

 

 

「ねぇ、君。呪術師って興味ある?」

 

 

 

前方、蹴破られたドアの正面。廊下に怪しげな男が一人。

視界に入ってきたのはまず妙にすらっとした足。暗がりで、ちゃんと輪郭を把握するまで時間がかかった。

世の女性が見れば嫉妬に狂ってハンカチを噛みまくるに違いない。

次に目隠し。これも目を凝らさなきゃよく見えなかった。なんか見てるとヨルハ二号B型が頭をよぎる。

最後に白髪。こっちは闇に映える色だからよく分かる。この人オートマタかなんかじゃないかな。頭身高過ぎるけど。

 

 

目隠し、白髪、長身、何か胡散臭い態度。

ご丁寧にこれだけヒントを与えてくれれば、おばあさんが口酸っぱく忠告してくれた要注意人物だと分かるのにそう時間はかからない。

 

『彼奴に出会ったら逃げることはまず無理。潔く諦めて』なんてさ。割と今日この時まで冗談だと思ってたんだけど、本物見るとあれだね。蛇に睨まれた蛙というか、ジンオウガに凄まれるブナハブラというか、ガンダムを前にしたザクというか。

 

ともかく、今すぐにでも白旗掲げたくなる衝動に駆られてしまう。

なるほど、これが呪術界最強────五条悟。

 

……考えるのやーめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

「僕興味あるか聞いただけなんだけど?」

 

彼の問いかけにぶつけられたのはそこから数手先の質問に対してのアンサーだった。

五条悟を知る人間、とりわけ呪術界から見てイリーガルな立場の人間であれば彼の質問にNoと言うことができない。

答えるか、死ぬか。己の絶対的実力を笠に着た恫喝はそれなりの効果がある。幾人もの呪詛師がそのプライド、ついでに身体を打ち砕かれた。

だが、この少年が折れることはなかった。

 

「誰が好き好んで自分を殺すかもしれない組織の中にいたいと思うんだよ」

「……それがさ、そんな物好きがいるんだよ〜。乙骨って言うんだけど」

「えっいるの?いや俺はその輪に入るつもりはさらさらないが。怖いし」

 

あくまでもそちら側にはいかない態度を貫く少年。

一応君のことを思って言ってるのにな、などと思いながら五条は一歩踏み出した。

 

「まあそう言うなよ。君が思うより案外楽しいかもしれないじゃん?」

 

一歩、されどその一瞬で少年と五条の距離が迫る。

肩を掴もうと伸ばした腕は明らかに不自然な呪力を纏った小さな呪骸によって素早く弾かれた。

 

「あー、そんなに嫌?」

「嫌だし、初対面だが俺はすでにあんたのことが苦手だ。どうしても俺を呪術師にしたいんなら──」

 

少年の左目に呪力が集中する。

集う負の力は青い焔を象り、激しく唸りを上げた。

 

 

(俺は、呪骸について以外何もできることはない)

 

 

常々、少年は考えていたことがある。

単純な呪力放出、『帳』を始めとした結界術、簡易的な式神、etc etc……。

己の生得術式に関わらない呪力を用いた技術を会得することはついぞできなかった。

ならお前には何ができるのか、と。

 

 

(逆に考えるんだ。呪骸について()()なら俺は、何だってできるんじゃないかって)

 

 

何かできることはないのかと、守られるだけじゃなくて、彼らと共に戦える術はないのかと。

そうした自問自答の末、まず行き着いた結論が──『拡張術式』だった。

ぶっつけ本番、それも最強相手に使うことになるとは夢にも思っていなかったが。

 

 

(魂分けてるんだ。俺がお前でお前が俺なら、その景色が見えても、その身体が動かせても、別に不思議じゃないだろう?)

 

 

少年の焔に呼応するように呪骸──マガツイザナギの左目も青き炎を発する。

身体の制御権が少年へと譲渡され、少年とマガツイザナギの視界が共有された。

 

拡張術式『同調(ユニゾン)』。

少年と呪骸が到達した、新たな境地である。

 

「──俺とマガツイザナギを倒してからにしてくれよ」

「……参ったなぁ。ますます君を野放しにする理由がなくなっちゃったよ」

 




負けイベです(ネタバレ)


転生者くん
→終わるなら 末まで足掻け 時鳥
第二の人生ということもあり、かなりその場その場のライブ感覚で生きている節がある。
五条悟が出てきた時点で色々かなぐり捨てた。
呪術師来るやろな〜とは考えてたけどまさか最強が勧誘しに来るとは夢にも思ってなかった。
劇中セリフの通りあんまり呪術師に対して良い印象を抱いていない。
結局捕まるんなら最期までワンチャン信じて足掻いてやるよ対戦ありがとうございました!

ヨルハ五号J型
→酒呑童子受肉の報を受けて京都に飛んで来た。でも受肉したてのベイビーで葵と他にも呪術師いるなら大丈夫でしょとか思ってる。
のりとしとたまたま会って事の顛末を聞かされホテルに来た。
優秀な人材っぽかったので勧誘したけどすげなく断られた。
放っておく選択肢もあったが『マガツイザナギ』となれば話は別。
彼を高専に所属させ自分の保護下に置くため仕方なく戦うことに。

マガツイザナギ
→これまで出番を溜めたぶんめっちゃ活躍する。
どうやら彼が持つ特級呪物『天沼矛』には秘密があるようで……?

拡張術式 『同調(ユニゾン)
→術式への解釈を広げ、多大なるプレッシャーに曝された結果生まれた全呪骸共通の拡張術式。

転生者くんと呪骸をシンクロさせて更なる能力向上を図る。
通常時の呪骸がオートで動いているとするなら、こちらはマニュアルで動かしているようなもの。
呪骸以上に呪骸のことを理解した転生者くんが扱うことでより強力で凶悪な術式となる。
もちろん術式使用中は完全に無防備。誰かに守ってもらおうね。

端的に換言すればサトシゲッコウガ。
あの時のアニポケが一番面白くて熱かったかもしれない。

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